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S.A.S 第二話 投稿日: 2001/06/10(日) 22:15

今日は久しぶりの部活でかなりしごかれた。テストも無事、終わって、
久しぶりの活動だったということもあるが、やたらと最近先輩からしごかれ
ているような気がする。これも期待されているからだろうか・・・。
クタクタになりながらも家についた頃には既に8時を回っていた。

「ただいまー」
誰に言うとでも無く言う。
「あら、お帰りなさい。今日は部活だったの?」
珍しく亜依ではなく、母が出迎えてくれた。
「うん。テストも終わったしね。亜依は?」
「今日は仕事で遅くなるの。悪いけどアキラさん迎えにいってくれるかしら?」
「うん。いいよ。じゃ、着替えてからすぐ行ってくるね」
疲れてクタクタだったのだが顔にはださずに二階の自分の部屋へと向かった。
前に亜依を迎えに行って以来、度々僕が亜依を迎えに行くようになった。
父も忙しい身だし、何より亜依が喜ぶらしい。僕も頼りにされて悪い気分ではなかった。
着替えを済ますと、僕は亜依を迎えに行くべく玄関へと向かった。
母も僕を見送るために玄関に来てくれた。
「今日はアキラさんと亜依が好きなハンバーグだから楽しみにしておいてね」
「亜依にも伝えておきますよ。じゃ、行ってきます」
「くれぐれも気を付けてね」

初めて来たときとは違い、このテレビ局に来るのもだいぶ慣れてきた。
顔パスとはいかないものの警備員さんにも顔を覚えてもらったようだ。
前のように変に警戒はされない。

いつも亜依(他のモーニング娘のメンバーも)が待機している部屋へと向かう。
すると、途中で亜依のマネージャーさんに会った。
「いつもお世話になってます。亜依はもういますかね?」
「あらあら、お兄さん、今日もわざわざご苦労様。それが亜依ちゃんはもう少し
かかりそうなの。控え室で待っててくれるかしら」
「わかりました。後どれくらいかかるでしょうか?」
「30分もかからないと思うわ。ごめんなさいねー」
マネージャーさんは急いでたのか会話が終わると、僕が今着た道を走って行った。
その背中を見送った後、僕はマネージャーさんが言っていた控え室へと向かった。
控え室に入ると今は誰もおらずシーンとしている。一人寂しく僕は待った。

10分程待っているとだんだん眠気が襲ってきた。部活の疲れなどが一気に来たような
感じだ。まさかこんな所で眠るわけにもいかないので、睡魔と闘っているとガチャリと入り口のドアから音がした。ようやく亜依が来てくれたのだと安心していたのだが
そうは問屋がおろさなかった。なんと入ってきたのは後藤真希だった。

正直、僕はこの後藤真希が苦手だった。僕よりも年下なのに(といっても1歳だけだが)妙に大人っぽいし、雑誌やニュースとかでも良い噂はあまり聞かない。(亜依はいい人だとは言ってたけど)
しかし、苦手だからといって無視するわけにはいかない。
「こんばんは。お邪魔してます」
無難に挨拶をした。
「こんばんはー。今日も加護のおむかえ?」
「ええ。時間が時間なんで」
何回も迎えに来てるおかげか、メンバーにはすっかり顔は覚えられた。
矢口さんにいたってはなぜか携帯の番号まで知っている。(かけたことは無いが)

しかし、なぜここに後藤真希がいるのだろう。メンバー用の控え室は
他の場所のはずだ。
「なんで、後藤さんがここにいるんですか?メンバー用の控え室はここ
じゃないはずですけど」
会話のネタもないので、年下の後藤真希にぎこちない敬語で聞いてみた。
「そうそう。今日はね、加護のお兄さんに用っていうか、頼みがあるの」
そう言うと彼女は僕が座っている椅子の隣に座った。間近で見ると
本当に大人っぽくてドキドキしてしまう。今の心境を悟られないように
なるべく平常心を保ちながら聞き返した。
「頼み?僕が役にたてそうなことなんて無いと思うけど・・・」
「そんな大変なことじゃないの。今日から日曜日までの間だけ
私の恋人になって欲しいの」

「は?」
あまりに突拍子な発言に僕は間の抜けた返事をしてしまった。
「だからね。今週いっぱいの間だけ私の恋人になって欲しいの」
後藤真希は根気強く、もう一度同じ内容のことを言ってきた。
僕の頭の中を言われた内容の言葉がグルッと一周した。
そしてようやく意味を理解する。この間、0.1秒。
「そ、そんなこと急に言われても困るよ!
そもそも何で、そんなことしなきゃいけないんですか!」
この手の事に全く免疫のない僕はすっかり動転してしまった。
「ははは、照れてるの〜?」
そんな僕を見て後藤真希は楽しそうに笑っている。
「照れてなんかいないって!理由がわからないだけだよ」
「まぁまぁ、落ち着いて。理由はちゃんと話すから」
そう言うと、テーブルの上にあった缶のお茶を プシュッ とあけて、
僕にくれた。そのお茶は飲茶楼だった。
http://www.jtnet.ad.jp/WWW/JT/softdrink/yamucha/yamucha.html
正直、このお茶はあまり好きでないのだが、僕は落ち着きを戻すた
めにもグビグビと勢いよく飲んだ。
「さっきの理由のことだけど、簡単に説明するとね、最近ストーカーにつけられてるの」

「まぁ、デビューした頃から妙な奴らとかはいたんだけど最近になってやたらと積極的になってきてねー。暑い日が続くからかな?そういうわけで今週いっぱいの間、私の彼氏になって、守って欲しいわけなの」
怪しい。彼女の言う ”理由” を聞いてからまず、最初に思った感想がこれだ。
まるで練習していたかのように、そして僕の目を見ずにスラスラと言ってのけたのもかなり胡散臭かった。しかし、それ以上に言っている内容が滅茶苦茶だ。
なぜに、今週いっぱいの間だけなのか?守るだけなのになぜ彼氏という立場にならなきゃいけないのか?疑問は次々にわいてくる。
僕の疑っている視線に気づいたのか、彼女は急に僕の右手を両手で握って言ってきた。
「お願い!本当に困ってるの!私、殺されるかもしれないのよ!助けてくれるのはあなたしかいないの!!」
瞳を潤まして訴えかけてくるという攻撃に僕はやや怯んだ。実際、ほとんどの男ならここで陥落するはずだ。しかし、疑い始めた僕には効果が無かった。
「そんな大事な事なら尚更、僕以外の人に頼んだ方が良いよ。
事務所とかには通したの?僕も部活あるから、そういうことに時間割けないと思うし」
握られている右手をスルッと抜き出して、無難に断った。

すると、後藤真希はすくっと立ち上がった。諦めて自分の控え室に戻るのかな? と、
思っていたがそれは大間違いだった。急に彼女は大きな声で叫び始めた。
「きゃーーーー!!おーかーさーれーるーー!!誰か・・・フガフガフガ」
彼女が何をしようとするか気づいた時、僕は飛び出して彼女の口を右手で塞いでいた。
フガフガ言う彼女が落ち着くのを見計らって、塞いでいた右手をどける。
「全く、あんたは何を考えてるんだ!」
「へへへ。私は明日の新聞の見出しにに『加護の兄がレイプ!』なんて載って欲しくないの。きっと加護も傷つくし、何よりお兄さん自身が警察に捕まるなんてイヤでしょ?」
僕は生まれて始めて恐怖を感じた。この女は僕を脅迫しているのだ。後藤真希は小悪魔だとか言っている奴がいるが、それは間違いだ。この女は小悪魔ではなく、悪魔だ。
「くっ・・・。わかりましたよ。
 彼氏にでもボディーガードにでもなんでもなりますよ!
 でも、一つだけ教えて下さい」
僕が了承したことで、「やったー」と喜んでいた後藤真希は 「なんでもどうぞ」
と僕の質問を促した。
「なんで、僕なんですか?もっと他の人がいるでしょうに」
僕は最初から思っていた疑問をぶつけた。
「う〜ん。加護のお兄さんって、こういっちゃなんだけど地味でしょ?だからスキャンダルとかになりにくいかな〜と、思って」

僕はまた一つ女性不信になった。

「私達はたった今から恋人同士になったわけだけど、色々と問題はあるんだよね〜」
再び僕たちは椅子に座って話していた。
「問題って、この計画自体問題かと・・・」
僕のつっこみを無視して後藤真希は続ける。
「まず、お互いの呼び方をなんとかしなきゃ。いつまでも『加護のお兄さん』って呼ぶわ けにはいかないし。それに私の方が年下なんだから『後藤さん』って呼ばれるのはおか しいわね。お兄さんの名前ってなんて言うの?」
「アキラです」
「じゃ、私は 『アキラさん』 って呼ぶね。アキラさんは私のこと
 『真希』って呼んでね」
女性の名前を呼び捨てにすることに慣れていない僕はそれには少し抵抗を感じた。
「なんかもっと他の呼び方無いですか?
 女性を呼び捨てにするのはあんまり好きじゃないんで」
「でも、他のメンバーみたいに『ごっちん』とか呼ぶわけにはいかないでしょ?
 それに私の方が年下なんだからアキラさんは気軽に『真希』って呼んでくれていいよ」「・・・なんとか頑張ってみます」
「後、その話し方も直さなきゃ。年下に敬語使ってどうするのよ」
おいおい、年長者に敬語を使わないあんたこそ、どうすんだ。
心の中で突っ込みはしたが決して口には出さない。
「あんまり話したことも無い人に馴れ馴れしく話すのはどうかなと思って・・・」
「そっかー。それじゃ、もう大丈夫だよ。なんてったって私達は恋人同士なんだから。
 これからは気さくに話してね」

「私達はたった今から恋人同士になったわけだけど、色々と問題はあるんだよね〜」
再び僕たちは椅子に座って話していた。
「問題って、この計画自体問題かと・・・」
僕のつっこみを無視して後藤真希は続ける。
「まず、お互いの呼び方をなんとかしなきゃ。いつまでも『加護のお兄さん』って呼ぶわ けにはいかないし。それに私の方が年下なんだから『後藤さん』って呼ばれるのはおか しいわね。お兄さんの名前ってなんて言うの?」
「アキラです」
「じゃ、私は 『アキラさん』 って呼ぶね。アキラさんは私のこと
 『真希』って呼んでね」
女性の名前を呼び捨てにすることに慣れていない僕はそれには少し抵抗を感じた。
「なんかもっと他の呼び方無いですか?
 女性を呼び捨てにするのはあんまり好きじゃないんで」
「でも、他のメンバーみたいに『ごっちん』とか呼ぶわけにはいかないでしょ?
 それに私の方が年下なんだからアキラさんは気軽に『真希』って呼んでくれていいよ」「・・・なんとか頑張ってみます」
「後、その話し方も直さなきゃ。年下に敬語使ってどうするのよ」
おいおい、年長者に敬語を使わないあんたこそ、どうすんだ。
心の中で突っ込みはしたが決して口には出さない。
「あんまり話したことも無い人に馴れ馴れしく話すのはどうかなと思って・・・」
「そっかー。それじゃ、もう大丈夫だよ。なんてったって私達は恋人同士なんだから。
 これからは気さくに話してね」

こんな風に恋人とはどういうものか、彼女に対して彼氏はどう接するべきか、などと
延々と真希の恋愛講座は続いた。そうこうしている内に時間は30分ほど経過した。
そして、入り口の扉が開いて亜依が入ってきたとき、僕は亜依がこの状況を打開してくれる天使に見えた。
「あ、お兄ちゃん!」
抱きついてくる亜依を受け止めて、僕は言った。
「おお!亜依、お疲れさま!疲れただろ。さぁ帰ろうな。
 今日はハンバーグだぞー」
もう僕は早く家に帰ることしか考えていなかった。
「ほんと!?楽しみだなー。亜依は準備でてきてるし、いつでも帰れるよ」
「よし、じゃ早速帰ろうか。時間も時間だしな」
「うん。じゃ、後藤さんお先に失礼しまーす」
亜依は元気よく真希に別れの挨拶をした。
「お疲れさまー。気を付けてね」
真希は亜依に返事をし、そして続けた。
「アキラさんもお疲れさまー。またねー」

亜依は ニヤリとしている真希と、動揺している僕を見て不思議そうな顔をしていた。

悪夢のような月曜が終わり、今日は火曜日。
テストは既に終わっているので授業は基本的にない。あるとすれば、ある
モノにとっては天国であり、あるモノには地獄であるテスト返しである。
今のところ返されたテストはどれもこれも可でもなく不可でもないという感じだ。
学校は昼までに終わり、午後からは昨日の事を忘れるべく部活に精を出す。
部活終了後、カラオケに誘われたが今日はそういう気分ではなかったので寄り道
せずに家に帰った。これからどうしたものかと考えながら歩いていると、ピーッという
音がなり、携帯がメールが入ったことを知らせてきた。出会い系サイトの宣伝メール
でないことを願いつつそのメールを開けてみる。・・・最悪だ。
出会い系サイトよりも、強烈なメールが届いていた。
『今日は8時に仕事終わるからちゃんと迎えに来てねー  真希より』
恐らく僕の携帯番号とアドレスを亜依か、矢口さんから聞いたんだろう。

幸か不幸か今日は亜依を迎えに行くのは僕じゃなくて、父となっている。
だから、僕が真希を迎えに行くことはもちろんできるが・・・。
もし、迎えに行ったとしたら他のメンバーにばれるかもしれない。
それはいいとしても、亜依にばれるとやっかいだ。亜依は僕を兄として慕って
くれている。最近、やたらと彼女がいるかどうか聞かれたりもするし。
女からかかってくる電話のチェックも厳しい。(きっと思春期の女の子だから
色々とあるのだろう)そんな状態で真希と僕が付き合っている(一週間だけだけど)と知ったら何かイヤなことが起きそうな予感がする。僕の良い予感は当たらないが、悪い予感は当たるというイヤな統計データもあることだし、これはなんとかせねばならない。
とりあえず、真希を迎えに行くことは避けられないだろう。もし、いかなかっ
たら亜依に何か吹き込んだりされるかもしれない。
とっとと迎えに行って誰かに会う前に退散するとしよう・・・。