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ジャイ 投稿日: 01/10/28 03:07 ID:lmgR18bi
僕の名前は本城 守 21歳
都内にある大学に通っている三年生だ
僕にはある秘密がある。それは超能力があることだ。
でも、TVとかで描かれている。何でもできる超能力者とは違い、
30キロ程度の物を動かしたり、危険予知能力がある程度だ。
しかも、この危険予知能力というのが働いたり、働かなかったりと
曖昧なのだ。
この能力を知っているのは幸一という従兄弟と複数の人間だ。
そして、僕は従兄弟の幸一の誘いを受け、モーニング娘。のコンサートの
会場に向かっている。会場に近づくにつれ、露店が多くなって人だかりが
増えている。その人だかりの中には特攻服を着た人やはっぴを着た人がいる。(どうも、ああいう人達は苦手だな。まあ、ファンじゃない人から見れば
僕も一緒なのかな・・・・)会場の近くのコンビニに2時間前に着いた。
(4時間前に待ち合わせをするなんていくらなんでも早いよな)
そう思ってるうちに会場の方からスーツ姿の人が走って来た。
「守くーん!!」
守:「山田さん??」この山田という人は幸一さんの部下で何度か会っている。そして、僕の能力を
知っている人間の一人だ山田:「やあ、守君。久しぶりだね。あの事件以来かな」
守:「あれ、山田さんもコンサートに??」聞いたものの、すぐに自分で違うことに気づいた。
守:「違いますよね。コンサートにスーツで来る人なんていないですからね」
山田:「あれ、まさか聞いていないの??」
守:「はい。たぶん、断ると思ったんでしょう」
山田:「そういえば、守君は能力使うの嫌がっていたもんね。おかしいと思ったんだよ」
守:「で、今日はなんなんですか?」
山田:「ここじゃなんだから、警視も待ってるし、会場に行こうか」
守:「はい」そうして、僕は山田さんに連れられ関係者入り口から会場に入っていった。
しばらく通路を歩くと、スペシャル控え室と張り紙の張っている
会議室みたいな部屋の前で止まった。
(スペシャル控え室??)
部屋のドアが開かれると、中にはスーツ姿の男の人たちが座っていた。山田:「警視、お連れしました」
すると、一番奥の席から笑顔の見慣れた顔が歩いて来た
幸一:「待ってたぞ。守」
(よくもぬけぬけと・・)
幸一:「今日呼んだのはな・・・」
そう言われ、僕と山田さんは別室に連れて行かれた
誰もいない部屋に連れて行かれると幸一さんはさっきの続きを始めた幸一:「実はな、モーニング娘。が狙われているんだ。」
守:「・・・・」
山田:「まず事務所に『活動を止めないと、悪いことが起きる』という
手紙が送られてきたんだ。最初はいたずらと思ったらしいんだが、
知らない間にステージ衣装が破られたり、収録中にいきなり照明が
落ちてきたりするようになったんだ」
幸一:「そうして、私達に警護を依頼してきたんだ」
守:「でも、警察が警護をしていれば大丈夫じゃないの?」
山田:「恥ずかしいけど、自分達が警護してても減らないんだよ。
今まで起こったことが・・・」
幸一:「そして、昨日の朝、また事務所に手紙が来たんだ。『明後日の
コンサート以降活動するならメンバーの中から一人づつ死人が出る』と」
守:「!?」
山田:「今の段階では犯人を特定するどころか、何をしてくるかさえ
分からない。もしかしたら、関係者や警備スタッフの中にさえ
犯人がいるかもしれない状態なんだ」
幸一:「今日のコンサートを中止したところで結局何の解決にもならん
そこで、お前に直接モーニング娘。を警護して欲しいんだ」
守:「俺に!?」
幸一:「頼む、守。もちろん、山田にサポートさせるが。」(おいおい、いくら僕に能力が有っても、こんな曖昧な能力で大丈夫なのかよ。
しかも、能力以外は一般人だぞ)山田:「自分からもお願いします。このまま何かあったら警察の威信にも関わります」
守:「分かったよ。警察の威信はともかく、自分を頼りにしている人がいるのに
やらない訳にいかないからね」
幸一:「そうか、ありがとう。じゃあ、詳しくは山田から聞いてくれ。くれぐれも
無理をするなよ。山田も頼んだぞ」そう言って幸一さんは出て行った。こんな、難題を押し付けて無理するなよか。
人の命が狙われて、黙ってられない性格知ってるくせに。でも、あれは幸一さん
なりの精一杯の気遣いか。
まあ、もっとも幸一さんの頼みを断れないけどね。
5年前に両親が死んで、いきなり能力を持って自暴自棄だった僕を救ってくれた
のが幸一さんだった。そして祖父母に引き取られた僕が一人暮らしをする時も祖父母を
説得してくれたのが幸一さんだったのだ。いわば、今の僕がいるのも幸一さんのお陰だ山田:「じゃあ、モーニング娘。の所に行こうか。紹介しなくちゃ」
守:「はい」
山田:「そうだ、行く前にこれ着て。これ着てれば、どこでも自由に出入りできるから」そう言われ、僕は水色のスペシャル・スタッフとロゴの入ったジャンバーを着た
『モーニング娘。様控え室』と張り紙の張っている部屋の前に来て、僕の胸の鼓動は高まった
もちろん部屋の前には警備の人がいたが敬礼をされただけだった。山田さんがノックをすると中から声がした「どーぞ」
山田:「失礼します。今からみなさんのそばで直接警備する、本城 守君です」
と言われ向かい入れられた「へー。その人も警察の人なんだ。」
(うっわー本物だ。生ではコンサートで見たことあるけど。ほとんど確認できなかったもんな)
(やっぱ、近くで見るとみんなかわいいな。誰だ、保田がかわいく無いなんて言ったの)「なんか、一般の人にしか見えないね」
(まぁ、一般の人なんですけどね)
山田:「えー。彼は警察の中でも警護に関してはNo1と言ってもいい人物なんです」
「えー。そんなすごい人なんだ」(いくらなんでも、一般の人とは言えないか。能力も秘密だし。でも、すごい紹介されたな)
山田:「さー守君からも挨拶して」
守:「えー今から警護をさせていただく、本城 守です。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いしまーす」(かわいい・・・・)
山田:「じゃあ、自分はとりあえず、周りの連中と打ち合わせしてるから」
そう言って山田さんは出って行った
その途端、視線が僕に集中する
9人からの好奇な目が痛い・・・・
そんな中一人の子が口を開いた矢口:「彼女はいるんですか??」
唐突な質問に僕は驚き、慌ててしまった。
守:「え?何ですかいきなり?」
後藤:「いないんですか?」
(このぐらいの年代の子ならしそうな質問だけど、警察の人間って言っている人に、
いきなりするか?)
守:「いないですよ」
「へーー」
吉澤「じゃあ、好きな人とかはいないんですか?」
(・・・・・・・・。)
守:「いないですよ」
(この子達は自分達が狙われているのに平然としているな)
飯田:「今、警護されてるのに能天気な連中だと思ったでしょう?」
守:「いや、そんなこと無いですよ。ただ、明るいなって・・」
安倍:「もう、なれましたよ。今回が初めてじゃないし・・」
石川:「家に変なものが送られてくることもあったし・・」
保田:「ただ、今回はずいぶん厳重ですね。いつもより警備の人も多い気が・・」
(そうか、この子達はこんな事を何回も経験しているのか。TVで見ている
分には、元気に振舞っているのに。アイドルとはいえ大変なんだな)
守:「いえ、今回は厳重に厳重を重ねているだけですよ」山田さんの指示もあり本人達には今回の重大さを伝えないことになっていた
矢口:「じゃあ、好きな芸能人は誰ですか??」
守:「みなさんですよ」
「えー本当ー」この際、僕はできるだけ明るく振舞うことにした。まあ、実際ほんとに好きなん
だけど、そして、僕は少し談笑をしてから、彼女達のスタンバイもあり、部屋を出る
ことにした守:「じゃあ、僕は部屋の外にいるので、なにかあったら呼んでください」
「はーい」僕は部屋の外で警備の人と待機していた。部屋を入っていくのはヘアーメイクさん達や
マネジャーの人達だ
(このまま何も無ければいいけどな・・それにしても、実際会ってみると普通の子達
だったな・・。インターネットでは色んなことが書いてあったけど。普通に暮らしていれば
そこらへんにいる女の子達変わりないんだろうな)そうしていると山田さんが来た
山田:「どう、いい子達だったでしょう?」
守:「はい、国民的アイドルって言ってもやっぱり普通の子達なんですね」
山田:「そうなんだよね。色んな人の警備をしたんだけど、やっぱり芸能人
ってことで、威張ったりしている人もいたんだけど。あの子達は
そういうのが無いんだよね」
守:「そういうのが大衆にうけてるんですかね?まあ、自分もそうだけど(笑)」
山田「そうかもね(笑)今、周りの警備班の状況を聞いてきたんだけど、
特に異常は無いって事だから。守君はなんか感じないかい?」
守:「いえ、今のところは何も無いです」
山田:「そうか、とりあえず僕と一緒にここで待機してようか」
守:「そうですね。ところで開演まであとどの位なんですか?」
山田:「あと、1時間だよ」それを聞いた直後に声が響いてきた
スタッフ「おはようございます」
「ご苦労様です」
一人の男が山田に話し掛けてきた
山田:「どうも、警備のほうは万全です」
「そうですか。大変でしょうがよろしくお願いします」
と言いモーニング娘。の控え室に入っていった守:「今の人は??」
山田:「マネジャーの近藤さんだよ」
守:「へー。感じのいい人だね」
山田:「そうだね。自分達にもいろいろ気を使ってくれてね。
なんでも、マネジャーはいっぱいるんだけど、その中でも
デビュー当時からの古株の人みたいだよ」
守:「じゃあ、本当の娘みたいなんだろうね」
山田:「きっとそうだろうね」それから、5分ぐらい経った時
突然、僕にいつものなんとも言いがたい感覚が来た
僕は慌てて言った守:「山田さん!!あの子達が危ない」
山田:「え・・」それと同時に彼女達の叫び声が
僕達が中に入ると近藤が果物ナイフらしきものを持って暴れていた
近藤「氏ね!!」
近藤は何とも言えない形相で切りかかろうとしたその時、
すかさず、山田は近藤の腕を抑え、間に入った。山田:「何をするんだ!!」
始めのうち僕は山田さんにかかれば、簡単に取り押さえられると思っていたが
そうはいかなかった。山田:「こいつなんて力だ!!」
逆に山田は近藤に押され切りかかられそうになっていた
僕はそれを見て花瓶をとっさに手に取り投げた
普通の人が花瓶を投げて、狙いどうりに行くわけが無いが、僕は能力を使い
近藤の首筋に当てた。
近藤は気を失い倒れた。それを見て、山田を始め、警備員が近藤を押さえ込んだ。辺りは騒然となっていた。まさか、マネジャーが犯人だとは誰も思わなかったといいたげだ
メンバーも泣いている子が結構いる。飯田:「最初はいつもどうりにリラックスしていこうなんて、言ってたんですけど
いきなり、テーブルにある果物ナイフを持って襲いかかって来たんです」なおも、メンバーや関係者に対して事情を聞いている。その時、横に山田さんが来た。
山田:「さっきはありがとね」
守:「いえいえ」
山田:「正直、びっくりしたよ。結構、力では誰にも負けない自信は有ったんだけど。
まさか、逆に押し倒されるとは・・・」これは、山田の過剰な自信でもなんでもない。事実、山田は色々な武道の有段者
でもあり、本庁きっての実力者だったからだ、過去の事件ではプロレスラーでさえ
ひとりで取り押さえたことがある。その、山田が40そこそこの見た目も決して
屈強な男といえない中年に負けたからだ守:「僕もびっくりしました」
山田:「負け惜しみに聞こえるかもしれないが、あいつの力は人間じゃないとしか思えなかった」
守:「ええ、僕も思いました。しかも、僕の能力が働いたのも直前だったし
最初、あの人を見たときもこれから人を殺そうとする人には見えなかった」
山田:「・・・・・」幸一:「守、ご苦労だったな」
山田:「はい、守君がいなかったら、今ごろどうなっていたか」
守:「近藤さんは?」
幸一:「近藤は、今も寄りの警察署に連行した。そこで、これから取り調べだ」
守:「コンサートは?」
幸一:「主催者とも話し合ったんだが、今日は中止にするつもりだ」
守:「そうなんだ」僕はさっき、彼女達と話した時に彼女達がどれだけコンサートが好きかと言う事
聞いていたのでとても残念に思ったその時、「いやです!!」
「せっかく、ファンの人たちが応援に来てくれているのに中止になんかにしたくありません」
マネジャー:「そんなわがまま言わないで。さっき、命を狙われたんだよ」
「コンサートはファンの人たちと触れ合える時なんですよ。ファンレターの中にも
次のコンサートが楽しみだって、書いてくれてる人達もいるのに」
マネジャー:「でも、もうすぐ開演の時間なんだよ。いまからじゃ」「本人達がやりたいって言ってるんだし、やらせてあげようよ」
マネジャー:「監督!」
どうやら、ツアー監督らしい人が現れた
監督:「この子達のファンに対する思いを無駄にしちゃいけないよ。
それにスタッフの奴らも同じ気持ちだしね。今からなら30分遅れ
位でやれる」
マネジャー:「しかし」
「お願いします!!」
マネジャー「・・・・・・。分かりました」
「やったー!!」山田:「警視どうします??」
幸一:「一応、犯人は捕まった訳だしな。向こうが決めたことだから、
どうしようもない。だが、何人かの警備は残らそう。山田、
指揮はお前に任せる。頼んだぞ」
山田:「はい、分かりました」
守:「僕も、残っていい?」
幸一:「いいが、どうしてだ?」
守:「せっかく、来たんだし。舞台の袖から見れるなんて普通ないじゃん」
幸一:「そうか。分かった。向こうには頼んどくよ」
守:「ありがとう」
幸一:「気をつけろよ」
守:「うん」正直、さっきのも本音だが、僕はなぜか胸にもやもやがあった。確信は無いが
もしかしたら、事件は解決していないんじゃないか?という不安があった。
今まで証拠も残さず、色んな事をしてきた犯人が警備のいっぱいる状態で
無理をしてまで、犯行を実行するだろうか?
それに近藤ならチャンスはいくらでもある。
それを幸一さんも気づいているのだろう。
だから、僕を残らせた。
だが、未だに僕の能力で感じるものは無かった・・・僕は急いで山田さんに知らせ、ステージを見た。
どこにも異常は無いように見える。
だが、どこかで危険が彼女達に迫っているはずだ。
(いったいどこなんだ)
その時、何かの映像が頭に飛び込んできた。
(照明と石川さん?)
石川さんの頭上を見ると、照明があった。
僕は周りを気にせず、一気に走り出していた。守:「危ない!!」
石川:「え?」
その瞬間、照明が落ちてきた。
僕は石川さんに飛びつき、かばった。
僕と石川さんの横で照明はすごい音をたてて、砕け散った。守:「大丈夫?怪我は無い?」
石川:「はい。あ、本城さんこそ、怪我をしてるじゃないですか」
守:「うん。大丈夫だよ」僕の左肩からは血が出ていた。石川さんをかばった時に落ちてくる照明に
接触した為だ。ステージに山田さんやスタッフの人が駆け寄ってきた。
その光景に観客達は我に返り、騒ぎ出した。今、ステージ上では警察が現場検証している。
会場の外では一時間前に起こったことでファン達が騒いでいるようだ。
僕は怪我の治療をしてもらい、お茶を飲んでいる。
幸い、出血の割には傷も深くなく、いたって元気だ。
まあ、めちゃくちゃ痛いんだけど、今考えてみれば命があっただけでも幸運だった
ようだ。無我夢中で気づいた時には石川さんと倒れてたからな。幸一:「守、大丈夫か?」
守:「幸一さん」
幸一:「連絡を受けて、来たんだが。大丈夫そうだな」
守:「うん。なんとかね。まあ、めちゃくちゃ痛いけど」
幸一:「あれから近藤の事情聴取をしたんだが、何も覚えていないと言って
いるんだ」
守:「やっぱり」
幸一:「どういうことだ?」
守:「彼女達に襲い掛かっている時、近藤さんは正気に見えなかった。
何か暗示にかかっているって言うか。普通には見えなかった」
幸一:「そうなんだ、近藤も彼女達と喋っているところまでは覚えているが
その後の記憶が無くて、気づいたら連行されていたと言っている。
正直なところ嘘をついているようには見えない。とりあえず、取調べは
続けているが、これ以上はなにも変わらないようだな」
守:「たぶんね。どこかに近藤さんを操った黒幕がいるんだよ」
幸一:「催眠術って事か。だが、こんなに簡単に都合よく人が操れるものなのか。
聞いたことが無い。催眠術で人に暗示をかける事はできるかもしれないが
それにはいろいろと状況を整えないと。相手の協力も無くてはできない」
守:「うん。でも、この状況を説明するには催眠術ぐらいしかないよね。しかも、
黒幕は彼女達を簡単に殺すことよりも精神的に追い詰めていこうとしている。
信頼していたマネジャーに裏切られたり、コンサートの最後に殺そうとしたり
わざと目立つようにしているようにしか思えない」
幸一:「恨みもしくは、愉快犯って事だな。だが、もし催眠術の類を使うって事は
他にもかけられている人間がいるかもしれないな。しかも、強力な」
守:「可能性はあるよね」
幸一:「この事件はまだまだ続くってことだな」
守:「うん」山田さんが走ってきた。
山田:「警視。スタッフの話を聞いて来たんですが、目ぼしい話はありませんでした」
幸一:「ああ、そうか」幸一さんは山田さんにさっきの話をした。
山田:「本当ですか?」
守:「はっきりとは言えないけど・・。前に何かの本で見たことがあるんだ。
人間は持っている力のほんのちょっとしか使っていないって。催眠術に
よって、その本来の力が出せたとしたら、あの近藤さんの尋常じゃない
力も説明できるよね」
山田:「そうですね。だけど、あんなことがいつどこであるかもしれないとすると
厄介ですね」
幸一:「ああ。しかし、どうしようもないな。完全に後手に回るしかないが」
守:「でも、僕が何とか少しでも早く、危険を見つけるようにするよ」
幸一:「・・・・・。そのことなんだが、相手の得体が分からない以上、もう
民間人のお前を巻き込めない」
(・・・・・・。)
守:「何言ってんだよ!!最初に巻き込んだのは幸一さんでしょ。このまま、
はいそうですかってひきさがれないよ!」
幸一:「巻き込んだのは悪いと思ってる。だが、これ以上はさっきみたいに
また、お前の命も危なくなることがある。今までの事件みたいに安全が
保証できない。そんな事件にお前を巻き込めない」
守:「でも、」
山田:「守君。私もそう思います。今回の事件はあまりにも危険すぎます。
警視だって守君をそんな危険な事件にかかわらす訳にはいかないんです」
守:「・・・・・分かった」僕は引き下がりたくは無かった。しかし、幸一さんの気持ちも痛いほど分かった。
今回の事件のように難解事件ほど僕のような能力者が必要なはずなのに、それ以上に
僕のことを大事に思っていてくれることが・・・・。一人の警官が来た。
警官:「警視、大変です!」僕達は警官に連れられ、モーニング娘。の控え室に行った。
警官:「これです」そう言って、紙を渡してきた。
『死のコンサートは始まったばかりだ。今回は失敗したが、活動を止めない
限り、このコンサートに終わりは無い。 地獄のピエロより』
と書かれていた。「なんなのこれ、いったい誰が」
メンバーにも今日の異常な出来事が今までに経験したいやがらせと比べものに
ならない事だと気づいていた。山田:「これはどこにあったんだ」
警官:「この控え室で飯田さんが花束と一緒に置かれているのを見つけました」
山田:「その間のここの警備は?」
警官:「ステージの騒ぎに気を取られて、誰もいませんでした」
幸一:「・・・・。山田、ここで、不審な人物を目撃した人がいないか、関係者に聞い
て回るように指示を出すんだ」
山田:「はい」マネージャー:「これは一体どういうことなんですか?犯人は近藤じゃなかったんですか?」
幸一:「犯人は近藤以外にもいるようです」幸一さんはチーフマネジャーにさっきの僕達の考えを伝えた。
マネージャー:「そんな、じゃあこれからも続くって事ですか?」
幸一:「はい。たぶん、そうなるでしょう。犯人が不特定多数の関係者に
も催眠術をかけるかもしれない。もはや、彼女達にも本当の事を
伝えなければならないでしょう。」長い沈黙のあと、チーフマネジャーと幸一さんたちが彼女達に今までの出来事と
それについての説明をした。
彼女達はひどく動揺し、泣いている子もいる。
「私達が何かしたんですか!」
「もう、嫌ー!!」
そんな、彼女達の姿が見ていられず僕は部屋を出た。
(彼女達を守るのは警察の仕事だ。だが、本当にこれで良かったのか)持っていたタバコに火をつけ、壁に寄りかかった。
その時、ドアが開き、誰かが出てきた。
「本城さん」
守:「石川さん。どうしたんですか?」
石川:「さっき、ちゃんとお礼が言えなかったんで。助けていただいて
ありがとうございました」
守:「いえ」
石川:「怪我の方は大丈夫ですか?」
守:「全然大丈夫ですよ。それより、石川さんの方こそ怪我はなかったですか?」
石川:「私は本城さんのおかげで何とも無かったです。でも、本城さんが助けて
くれなかったら・・・」
(石川さん震えてるんだ。無理も無いよな。命を狙われたんだから)
石川:「私、モーニング娘。に入って嫌なことも色々あったけど、それ以上に
いいこともいっぱいあったんです。それなのに、それなのに・・」石川さんの言いたいことは分かった。自分が大事にしている娘。を今壊されそうに
なっている。その事がどうしても納得いかないんだろう。「石川ー!!」
石川:「はい」僕に頭を下げ、石川さんは控え室に戻っていった。
(僕はどうすればいいんだ)
僕は海難事故で死んだ両親の事を思い出した。両親は住んでいた町で診療所を開き、
身寄りの無いお年寄りやお金の無い病人を無料で診察していたりした。二人とも仲がとても良くて、
近所の人達からも慕われていた。そんな両親がぼくは自慢だった。両親が結婚した時に
行けなかった新婚旅行に行くと言った時の母さんの顔はとても幸せそうだった。
そして、出かける朝に見せた笑顔が僕が見たふたりの最後の笑顔だった。
なんでも、船に取り残された病人達を最後まで看護していて、そのまま水没したらしい。
この能力を手に入れたのは両親が死んだ時だ。もし、能力を手に入れるのが
二人が新婚旅行に行く前だったら・・・。そう思い、この能力を嫌い、どうしようも
なく自分を許せなかった。たぶんあのままだったら、自殺でもしていただろう。
そんな時、祖父に引き取られた僕のところに幸一さんが毎日のように来てくれた。
でも、そんな幸一さんが最初はうっとうしくてたまらなかった。来てくれても、
僕は一切会話をしなかった。それでも来てくれたいた。二週間ぐらいたった時に僕は思い切って
幸一さんに能力のことを話した。最初は驚いていたが、すぐに信じてくれて、ぼくにこう言った。
幸一:「守という名前が何でついたかは知っているか?」
守:「幸せを守るとかそういう意味なんでしょ?」
幸一:「ああ、お前のお父さんが旅行に行く前にうれしそうに言っていたよ。お前は周りの
幸せを守るようなやさしい子になったって。そんなお前が自慢だってな」
(僕が父さん達を自慢に思っていたように僕のこともそんな風に思っていてくれたんだ)
幸一:「俺はその能力はお前のお父さんとお母さんがお前に授けた力だと思う。
自分達の事をかえりみず、他人を気遣うお父さんとお母さんが
他人を思いやる心を持つお前に授けたんだと。守、お前の中で
お父さんとお母さんは生きてるんじゃないかな」
(・・・・・・・・。)
幸一:「なーんてな。ちょっとくさかったかな。ん、守・・・。」
僕の目からは涙が溢れていた。ちょっと、考えれば出てきそうなセリフだが
幸一さんが言ってくれたことが、僕の心にはとてもとても響いてきた。
そして、嬉しかった。
父さんと母さんは僕の中で生きている・・・・・。(そうなんだ。何を迷っていたんだ。僕には人を守るためにこの能力があるんだ)
僕は決心した。彼女達を守ることを。そして、人の気持ちを踏みにじる卑劣な犯人を
つかまえる事を。
(僕は許せない。人の思いを踏みにじる地獄のピエロを)
僕はタバコを携帯灰皿にしまい、控え室に向かった。山田:「当面の間は活動を休止する。それでいいですか?」
マネジャー:「はい。これ以上あの子達を危険にさらすわけにはいきません
上の方でも決定しました」
保田:「それは犯人が捕まらなければ、事実上解散って事ですか?」
安倍:「それじゃ、今まで何のために頑張ってきたんだか・・」
マネジャー:「だが、どうしようもない。ユニット活動なら大丈夫かもしれないし」
飯田:「私達はモーニング娘。なんですよ!こんな事で解散なんて今まで
卒業していったみんなになんて言えば・・・」
マネジャー:「卒業して行ったみんなも分かってくれるよ」
・・・・・・・・・。
後藤:「そんなのヤダ。絶対ヤダよ」
加護:「加護もヤダ」
辻:「ののだって」
矢口:「矢口も嫌です」
吉澤:「私もです」
石川:「みんな、気持ちは同じなんです」
マネジャー:「しかし」
山田:「みんな、いつどで狙ってくるか、わからない相手なんだよ」
矢口:「だけど、こんな事で解散したくない」
山田:「だけどね、警察としてもこんな状況で複数の人間を守りきれる
保証はできないんだよ」守:「僕が絶対守ってみせる!」
山田:「守君!!」
守:「このままじゃ、犯人の思うつぼだよ。幸一さん」
幸一:「・・・・。」
守:「地獄のピエロは彼女達を苦しめて、楽しんでる。そして、
彼女達のファンだって悲しむはずだ。そんな奴を僕は許せない。
僕は父さん達のように人を守れる人間になりたい。父さん達も
そう願ってるハズだ。お願いします。幸一さん、信じてください」
幸一:「守・・・・・・。分かった。」
山田:「警視!!」
幸一:「山田!責任は全部、私がとる。護衛と捜査メンバーを選抜するぞ」
山田:「はい!分かりました」
幸一:「中川さんでしたね。彼女達の身辺は私達が責任もって警護させて
いただきます。活動させてあげていただけませんか?」
中川:「ですが、彼女達は親御さんから預かった大切なお嬢さんなんです」
飯田:「お願いします。中川さん」
メンバー:「「お願いします」」
中川:「・・・・・分かりました。上と相談してみます」
メンバー:「「やったー!!」」
守:「幸一さん。信じてくれてありがとう。でも、大丈夫?」
幸一:「ああ。上層部はなんとかする。後は彼女達の事務所が決めることだ。
だが、守、お前の能力が公になるかも知れないがいいのか?」
守:「いいんだ。ここで諦めた方が後悔するよ」
幸一:「そうか。だが、お前も気をつけるんだぞ」
守:「うん。僕には父さんと母さんもついてるから」次の日、彼女達モーニング娘。はこのまま活動する事が決まった。
中川さんが事務所の上司を説得してくれたようだ。
そして、幸一さんも上層部を説得してくれた。
ただし、ユニットやソロ活動などのメンバーがバラバラになる仕事は
警護のしにくさ(僕がいつでもみんなと一緒にいれるように)から
全部キャンセルになってしまったが、モーニング娘。の活動休止は
まぬがれた。それについてはメンバーも本体の活動休止よりはと納得してくれた。そして、僕のモーニング娘。警護生活が始まった。
01/11/14 放置宣言