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ねぇ、名乗って 投稿日: 01/12/05 22:22

・・・・・・ピリリリリリリリリ・・・

「・・・〜もう朝か・・」
俺は目覚ましを止めながらフト隣りに気配を感じて寝返りをうった
「!!!・・・ウオッ!?」
そこには幼なじみの真希が眠っていた

昨日から俺の家に住むことにはなっていたが部屋は別々だし久しぶりの再開で
昨夜はちょっと気まずかったんだけど・・・
とりあえずこのままだと遅刻するから起こさないとな

「ヲイ!起きろ!今日から学校だろ。ていうか何で一緒に寝てるんだよ」
「〜〜んぁ?もう朝なの〜?もうちょっと寝かせてよ〜」
眠そうな瞼をこすりながら真希はこっちを見ている
「ダメだ!転校初日から遅刻なんかしたら俺が先生に怒られるんだよ」
「そっかぁ〜じゃ起きるとしますか。起こしてよリョウちゃん」
そういうと真希は両手を大きく広げて起こして欲しそうに俺を見つめた

「・・・・・・」
「ちょっとぉ〜何ボサっとしてるの〜?早く起こしてよ!」
俺は一瞬真希に見とれていたようだ
「・・・ぁああ。ほら早く起きろよ」
手を差しのべながら真希のほうに向かって腰をかがめた・・・その瞬間・・・

ガバッ

「!!!」
真希が突然俺に抱きついてきた
「ずっと淋しかったんだよ・・・リョウちゃん」
俺の耳元で真希がそう呟いた
「・・・えっ!?・・・はぁ?」
俺がテンパってると真希はすぐに腕を放した
「さっ。遅刻しちゃマズイんでしょ!支度しなくちゃ」
真希はスタスタと俺のそばから自分の部屋へ消えていき
俺はその場でただ呆然としていた

その朝俺はボーっとしてて家を出る時間を忘れていた

「こんなにのんびり朝ゴハン食べてて大丈夫なの?」
「・・・へ?真希今何時だ?」
「えーっと8時10分かな?ヤバイ?」
「・・・かなり。こりゃチャリ飛ばしてもギリギリくらいだよ。はぁ〜」

とにかく遅刻はさけたいので俺達は急いで家を出た
いつもなら1人でとぼとぼ歩いて登校するのだが今日は真希を後ろに乗せて
猛スピードでチャリをこいでいる

(何でこんな事になったんだ?朝のことも遂に聞けずじまいだったし・・・)
「・・・ちょっと〜・・・」
(昔はいつも一緒に遊んだ記憶はあるんだけど真希って突然あんなことする
 キャラだったかなぁ?)
「・・・・・・ちょっとっていってるでしょ!」
「はっ!っなんだよ!突然大きな声出すなよ」
「もうちょっと安全運転できない?怖いんだけど」
いつのまにか真希は俺の背中に必死になってしがみついていたらしい
俺の背中が少し熱くなっていた
「・・・ごめん」
「うん」

・・・結局俺達は遅刻した

「・・・アンタ後藤の御両親から後藤のこと頼まれてるんやろ?しっかりしぃや!」
「はぁ・・・」
 1限は現国教師で俺達の担任の中澤だった。こりゃ休み時間いっぱい絞られるなぁ
 酒飲んだときと機嫌悪いときは近づきたくないんだよな・・・

「先生スイマセン。リョウちゃ・・じゃなくて桜井君は悪くなくて私が悪いんです」
「!?へ?」
「どういうこと後藤?」
「私が寝坊しちゃってそれで桜井君ギリギリまで私を寝かせてくれたんです。ごめんね桜井君」
 そういうと真希は俺のほうに向かって舌を出してウィンクをした・・・気がする
「あぁ・・・」
「そうやったの。まぁ今日は初日やし大目にみとくわ、次からは承知せぇへんで。
 後藤はもう教室戻ってええよ」
「ちょっ・・・先生俺は?」
「君はもうちょっと残りなさい」
 やっぱりな。はぁ〜一応抗議してみるか

「先生もう休み時間終わりますよ。次は英語だし抜けられんなこりゃ。うんうん」
「平家先生ゴメンやけどコイツ次の英語ちょっと遅れるけどええかな?」
「あいよ〜程々に頼みますヨ〜」
「アリガト。今度なんか奢るわ」
「期待せんと待ってますよ〜じゃ、しっかりね。桜井君」
「・・・・・・(最悪。何なんだこのコンビは)」

「・・・桜井、アンタは独り暮らしで只でさえ生活のリズムが狂い易いんやで。
 今日のことはしゃぁないけど次からは許さへんよ」
「はい。肝に銘じておきます。それじゃ僕は授業がありますのでこれで・・・」
 そういってその場を去ろうとした俺の腕を掴んで中澤はとんでもないことを口にした
「ちょっと待ち!アンタ石川と付きあってんねんやろ?後藤とも仲良さそうやし
 どうなってんの?」
「どどどど、どうして俺が石川さんと付き合ってることになってるんですか?」
「へ?ちゃうの?そんなに動揺せんでもええやん(w」
「付き合ってませんよ。元クラスメイトです!っていうかそんなこと誰から聞いたんですか?」
「そんなん言えるわけないやん」
「それに後藤とは何もありませんよ!小学校4年の2学期から会ってなかったんですから」

「あれ?職員室にいるの桜井君じゃない?」
「どれどれ・・・あっホントだ。あいつまた中澤先生に絞られてるみたいだね。梨華ちゃん」
「ホントよく怒られてるよね。桜井君(w」
「中澤先生案外リョウのこと好きだったりして・・・」
「よっすぃ!怒るよ!もぅ〜」
 こらぁ!そこ!準備体操中に喋ってさぼると怪我の元だぞぉ〜!

「ふ〜ん・・・ま、えっか。じゃぁもうええよ。はよ授業いき」
「はい。それじゃ失礼します」
 俺は半分逃げるように職員室を出た

 まったくなんて事聞いてくるんだよ。動揺してしまったじゃねぇか!
 梨華ちゃんのことはともかく真希とは昨日再会したばかりだし、会話だって・・・あれ?
 今日になって急に普通に喋れるようになったな・・・変だな

 それにしてもよりによってあの中澤に俺と梨華ちゃんのこと吹き込んだのは・・・!
 真里かひとみあたりだなきっと。
 あいつら今度会ったらどうしてくれようか・・・

あ〜終わった終わった。4限に数学は堪えるな。腹減るし集中できん
抜き打ちで小テストまでやりやがって・・・
クラスの野郎共にはヘッドロックされながら真希のこと根掘り葉掘り聞かれるし
ゆっくりトイレも行けやしない・・・今日は散々だ

さて、そろそろ飯にするか・・ん?俺飯持ってきたっけ?・・・忘れた
いつもならおにぎり作って持って来るんだが朝の一件があったからなぁ
仕方ない食堂行ってパンでも買ってくるかな

「リョウちゃん、リョウちゃん」
斜め後ろの席の真希が話しかけてきた。そうだコイツも昼飯無いんだったな・・・
「ん?真希か。お前昼飯どうする?俺は食堂行くけど」
「ヒドーイ。私が来なかったら一人で行くつもりだったんでしょ!」
少し頬を膨らまして不満そうに俺を見る・・・ちょっこっとカワイイじゃねぇか
「い、いや、そんなつもりはないよ全然。うん。これから誘おうとしてたところ
 ナイスタイミングだよ、後藤君」
「ふ〜〜ん。へ〜〜ぇ。怪しいもんだね!こっちは右も左もわからないか弱い乙女
 なんだからね。校舎くらい案内してよ」
「・・・・・・」
「ちょっとぉ。何黙ってんの?お腹空いたんですけど!」

バシッ!

「イタッ!わかったよ!か弱い乙女を1名喜んで御案内いたしますとも」
「よしよし。男は素直が一番だよ!さ、早くいこっ」

俺は真希に腕を引かれて教室を出た
ほ〜桜井君やるねぇ〜という野郎共の言葉を背中に浴びながら

「あっれーーっ!?リョウじゃん!珍しいね食堂来るなんて」
来たか。一番ウルサイのが・・・

「おっおぅ!真里久しぶりだな」
「はぁ?昨日も学校であったじゃんか。バッカじゃない?
 ところで隣にいる子は誰?見ない顔だけど」
真里の視線が俺から真希に移動した。真希も真里のほうに顔を向けた

「今日からリョウちゃんと同じクラスに転校してきた後藤真希です。ヨロシク」
「へぇ〜そうなんだ。ヨロシク。私は矢口真里。コイツとは中等部で3年間
 それに去年も同じクラスだったんだ」
「・・・矢口さんリョウちゃんと仲良いいみたいですね」
「ん〜〜どうかな?いつもケンカしてたし。それと敬語はナシね、同い年なんだから」
「そっか。うん、ありがと」
「ま、そういうことっス。それとオイラのことはまりっぺでいいよ」
「じゃ、私のこともごっちんで」
「OK!ごっちんね!あ、ちょっとリョウ!こっち来てくれる?」
「あぁ?なんだよ。金ならこないだ返しただろ!・・ッタ!すねを蹴るな冗談だろうが。で何よ?」
俺は真里のほうへ歩いていった

「リョウ、アンタあの子とめっちゃ仲良さそうだけど何なの?元カノ?」
俺が近づくと真里は急に小声でそう俺に聞いてきた
真希はこっちを見ないようにしているのか辺りをキョロキョロ見ていた
「ち、違うよ!幼なじみ。只の幼なじみ」
「ホントにぃ〜?」 「ホントだって」 「怪しいな〜。吐いちまえよ!」
そういうと真里は俺の襟首を締めだした。背が低いくせに無理して背伸びして締め上げてくる
「ヲイ!ホントだって!小学校4年から会ってなかったんだから。は、放してくれよ」
「・・・ま、今日はこれくらいにしといてやるか」
(なんて女だよ・・・)

俺から手を離した真里の後ろから見馴れたひとみと梨華ちゃんの姿が俺の視界に入ってきた

「えーーーっ!あんた達一緒に住んでるのぉーっ?!」

結局パンは買いそびれ食堂で尋問を受けることになってしまった・・・
いつかは知られることだから俺は素直に事の次第を話すことにした

「真里、声でかいよ。みんなこっち見てるだろ」

俺は、今俺の両親が海外で暮らしていること、今住んでる家はおじいちゃんが
残してくれた家で俺が独り暮らししていたこと、俺の親と真希の親が仲良かったこと
真希が幼なじみで小学校4年まで一緒に遊んでいたこと、真希の両親が引っ越すとき
真希は生まれ育ったここで生活したいといったこと、そのことを告げた手紙が
4日前に届いたこと・・・

「・・・そんな訳で一緒に暮らすことになったのさ」
「ヤバイよ絶対!年頃の男と女が一つ屋根の下に暮らすなんて・・・ヤっちゃった?」
「・・・ゴッゴホッ!ゲフッ!んなわけないだろ!アホかお前は」
真里のツッコミに思わずむせてしまった
「またまた〜ゴッチンはどうなの?」
「・・・そんなわけないよ〜やだなぁ」
「ん〜〜〜怪しいなぁ」

「ちょっと!アンタ達いい加減にしなさいよ・・・梨華ちゃん大丈夫?顔色悪いみたいだけど」
「う・・うん。私は大丈夫。アリガトよっすぃ。でもちょっと気分が悪いから教室戻ってるね
 ごめんね。それじゃみんな・・・後藤さんこれからよろしくね」
「い、石川さん・・・!?・・・ん?」

「梨華ちゃんは私が送っていくからリョウはお昼御飯食べてなさい!」

梨華ちゃんは席を立ってひとみに付き添われて教室に戻っていった
俺も付き添いたかった。ひとみの役は俺であるはずだった
・・・でも隣りに座った真希が俺の袖をギュッと掴んで放さなかった
その手は真里にばれないように静かに力がこもっていた

真希はさっきから俺の前を鞄を後ろに両手で持ちトコトコ歩いている

何から聞くべきか。俺は帰り道自転車を押しながらそればかり考えていた
朝のことは聞いて良い事なのか?食堂での事は?・・・いや聞いてどうする?
気まずくなるとこの先の生活に支障が出ないか?
それに梨華ちゃんのこというべきかな?・・・やっぱ今度にするかぁ
そんなことが頭に浮かび上がっては消え、結局言い出せそうになかった

「あのさ、リョウちゃん」
突然真希が振り返り、真希の後ろ姿を見ながら[考え事]をしていた俺を驚かせた
「!?んぁ!な、何?どうした?」
「?。い、いやそんなに驚かなくてもいいじゃん(wヘンなの」
「あ、あぁ、ごめん。ちょっとボーっとしてたから」
「ふーん。そんなこといって私に見とれてたんじゃないのかな?桜井君?」
真希はちょっと上目づかいで俺を見てくる
「ま、まさか!で、で何か言おうとしてた?」
「・・・あのさ、今日の晩御飯何にする?」
「うーん・・・俺は何でもいいよ。真希は何か食べたい物でもある?」
「今日寒いからおでんなんてどうかな。昨日は宅配のピザだったしね」
「いいね!それ食おう!それに決定!」
「なんかヘンだよ?私に何か隠してる?」
立ち待った俺の顔を覗いてきた
(・・・今かなタイミングは?・・・でも・・・やっぱり)

「・・・何も無いっスよ」

結局俺は何も聞けなかった

「やぐっつぁん今日のアレはマズイよ」

帰りのバスで景色を見ながら吉澤はそう切り出した
「アレって?」
「梨華ちゃんの前でごっちんとリョウの事聞いてたやつ」
「やっぱマズかったかな〜。あたしもちょっとやり過ぎたと思ってるんだよね
 あれから梨華ちゃんは大丈夫だったの?」
「まぁ私がフォローしといたけどちょっとショックでかかったみたい。
 知らなかったこといっぱいあったって」
「リョウがはっきりしないっていうのもあってさ。ついね」
「まぁ確かにねぇ。もう梨華ちゃんとリョウが知り合って1年になるもんね」
「リョウは女の子と付き合ったことないから女心っていうモノがわからないかもね」
「結構ヘタレなとこあるよね。お互い好き同士のハズなのに・・・」
「・・・よし!ここはこの矢口さんが一肌脱ぐか!」
「何する気!?また変なことするんじゃ・・・」
「よっすぃ〜ちょっとは私を信用してヨ〜。思い立ったら何とやら。
 早速メール送ろっと」
素早くメールを打ちだした。やぐっつぁん大丈夫かな・・・
「・・・送信完了っと」
「で何送ったの?」
「今度の土曜日にごっちんの歓迎パーティーをリョウの家でするぞ。って」
「ん〜それって大丈夫かなぁってもしかして私たちも行くわけ!?」
「モチ。梨華ちゃんリョウの家行ったことないでしょ。行ってみたいと思うんだ。
 ましてごっちんと一緒に住んでるとなればなおさらね」
「・・・2人のために頑張りますか」
「そういうこと」

俺の家は山の手にあってそれも結構上の方だ。一方大型のスーパーは駅のある山の下にある
学校はちょうどその中間にある。
普段の買い物は週末にまとめて買いに行くが、今日の晩ごはんのおでんのタネが無いので
そこまで2人で買い出しに行くことにした

「じゃ行こっか」

俺達はカバンをおいてすぐに家を出ることにした

テンテケテンテケテンテケテケテケ・・・
「!」
「プッ。カワイイ着メロにしてるんだね」

また真里のやつ勝手に俺の着メロいじりやがって・・・
・・・このメールその真里からだ
[いや〜今日はゴメンね。ちょっと反省しています
そのお詫びといっちゃなんだけど今度の土曜日にごっちんの歓迎会を
リョウの家でする事に決定しました。もちろん梨華ちゃんやよっすぃも来るよ
それじゃね。あと、ごっちんに手出しちゃだめだよ。]

「はぁ?」
思わず声が出てしまった
「ん?どうしたの?」
「真里達が今度の土曜に真希の歓迎会をここでするんだってさ」
「・・・」
「あれっ?どうした?」
「う、ううん何でもないよ。リョウちゃんこそ大丈夫なの?」
「・・・主催が真里っていうのがちょっと引っかかるんだよなぁ」

とにかく俺達は暗くなり始めたので駅の近くのスーパーに向かうことにした

「しらたき買ったしぃ厚揚げ買ったしぃ・・・」
楽しそうに真希は買い物をしていた
「リョウちゃん何か入れたいものある?」
「う〜ん餅入りきんちゃく」
「OK!餅入りきんちゃくGET!」
結構本格的なおでんになりそうだ・・・

買い物が終わって外に出るとすっかり日は落ちてかなり寒くなっていた
「いっぱい買ったねぇ」
「こんなに食えるかな?」
「大丈夫!私が作るおでんは美味しいからどんどん食べれるよ」
「期待してるよ」
「まっかせなさい!」

なんか真希今日は昨日に比べてえらい明るいなぁ・・・!!!!!!!!!!!!!!!?!!
俺の左側を歩いていた真希が突然手を握ってきた
「今日は冷えるねリョウちゃん」
「・・・あっあぁひ、冷えるなぁ」
「リョウちゃんの手暖かいね・・・」
「そ、そうかな」
「リョウちゃん、あのね。私さ今日嬉しかったんだ。
 昨日はリョウちゃんあんまり口きいてくれなかったでしょ?
 でも今日私のこと真希っていってくれたし、昔みたいにしゃべってくれたよね」
「・・・そうか」

俺はそれから真希と手をつないで家まで帰った。梨華ちゃんのことはこの時忘れていた

グツグツ・・・
「もういいかなぁ」
そういうと真希は鍋のふたを開けておでんの煮込み具合を確認した
その仕草はとても女の子らしくて俺はつい見とれてしまっていた
「じゃ食べよっか?」
「・・・・・・」
「どうしたの?お腹減ってない?」
「ん?いや、うん食べようぜ!」
「変なの」
そう言いながら真希は取り皿に適当におでんを取ってくれた
「はい。どうぞ」
「サンキュー。どれどれ・・・むぁ!っちぃ!!」
「あはは。バカだなぁ、熱いのに焦って食べるからだよー」
真希は烏龍茶を出してくれて、口を拭いてくれた
・・・・・・女の子っていいなぁ。
「今度はふーふーして食べてね」
「俺はガキじゃないって!まったく」
ちょっと俺は真希がふーふーしてくれるのを期待したのかもしれない
俺には愛しの梨華ちゃんがいるというのに

「なんかいいよね。楽しくて。久しぶりだよこんな楽しい晩ごはん」
「俺もかな・・・ずっと一人だったし」
「新婚さんってこんなのかな?」
「ゴホッ!グヘッ!」
「どうしたの?変なこと想像した?」
「ち、違うよ!いやーそれにしてもおでんが美味いなぁ!」
「・・・ふーん。アリガト。でもリョウちゃんさっきからむせてバッカなのにぃ・・・」

土曜日

俺達は何とか共同生活を過ごしていた

「放課後買いだし行くから付いてきてね」
「なんで?」
「なんでって・・・今日はアンタの家でパーティーだろ!」
俺を見上げて真里はそういった・・・ムニッ
「いてててて。ほっぺをつねるな!」
「いーい?わかった?また来るからね」

結局午後は真里と真希と俺で買い出しに行った。いや行かされた・・・

「こんなに買ってどうするんだよ!」
「さっきからうるさいなぁ」
「うるさいってお前、金は俺持ちだし荷物も持ってるし
 お前ら美味そうなたこ焼き食ってんのに俺にくれないまま食べ終わるし」
真希は俺のほうを振り返ってクスクス笑っていた
「まりっぺ、そろそろ荷物持ってあげない?ずっと上り坂だったしさ」
「お、真希いいこと言った!」
「〜。ごっちんはやさしいなぁ。ダメだよこんなヤツ甘やかしちゃ」
・・・こいつ絶対前世は魔界仕切ってたな
「だってもう家近いしさ。ほら見えてきたよ」
「ホントだ。ごっちんなかなかやるねぇ」
「でしょ?」
真希は悪戯っぽい笑顔で俺の荷物を手から取り早足で家に向かった

料理の準備は真希と真里がワーワーいいながら台所でやっている
俺は居間でセッティング係を 真 里 か ら 仰せつかっていた
ホットプレートに電磁調理器、テーブルクロスを引っぱり出してきて・・・
やっとセッティングが終わった。暇だし台所に行って様子でも見てくるか

「おーい。こっちはできたぞー。そっちはどうだ?」
俺はそういいながら台所へ入っていった

今日の献立はちゃんこ鍋と焼き肉で今ちゃんこに入れる具を調理しているらしい
ちなみに焼き肉は真里の強い希望で無理矢理献立に入れられたんだよな・・・
梨華ちゃんが焼き肉好きだからまぁ許したけど
低めの台に乗りながら一所懸命料理している真里は、まな板を見ながら俺に返事をした

「んーもう少しかかるかな?そっちはどう?ごっちん」
「こっちはだいたい終わったよー」
そういう真希は制服のブレザーを脱いだその上からエプロンをしていて
腕まくりをしてる。右手には菜箸をもっているようだ
「じゃあさ、ふたりでお鍋の用意してきてよ。もうそろそろ部活組も
 来る頃だし」
「はいよ。じゃ真希、俺鍋持っていくから具頼むよ」
「はーいOK!」

そこへ玄関の引き戸が開く音がした。ガラガラ・・・
「お邪魔しまぁーす!リョウきたよー!」
元気のいい、その声の主はひとみだった
「おーよく迷わず来れたなー。今、俺ちょっと手が放せないから勝手に上がってくれー」
俺がそういうや否や
「桜井〜!ゲスト呼んどいて出迎えもなしかぁ〜?」
・・・・・・中澤だ。また真里か・・・
俺は一瞬鍋を落としそうになったが気を取り直して答えた
「・・・今ホントに手が放せないんで勘弁してくださいよ〜」
「じゃあ勝手に上がるでぇ〜」
俺は急いで鍋を居間の電磁調理器の上に置き玄関に向かった
廊下に出て玄関へ小走りにいくと十中八九酒の入った袋をもつ中澤と平家先生
ひとみ、梨華ちゃんがこっちに来るところだった

「お邪魔します、桜井君」
テニスラケットを両手で胸に抱える梨華ちゃんが俺にそういった

「桜井!挨拶は?」
「は?」
「は?やないやろ。ここはあんたの家なんやからあんたが挨拶しぃ」
何で俺が挨拶しなくちゃならん・・・まったく真里め、余計なゲストまで呼びやがって
!?何だあの嬉しそうな顔は!!!してやったりみたいな顔しやがって
あとで思い切り飲ませてやる!!!
「ちょっとぉ〜。さ・く・ら・い・く・ん・あ・い・さ・つ・はぁぁぁ?」
歯を食いしばりながら中澤は俺をにらんでいた

「え、え〜ただいまご紹介に預かりまあsじょいふぉうぃ・・した・・・」
・・・ププププ。アイツ噛んでるよ超おかし〜キャハハハ!!!
桜井君て結構上がり症なのかな?ヒソヒソ・・・梨華ちゃんまで!!ガ━━(゚Д゚;)━━ン!

「も、もう、か、かんぱ〜い!!!」
必死だった・・・

わけのわからん宴の序盤、俺はウェイターに徹していたというより無理矢理・・・鬱
「リョーウ!お肉まだ〜!」
「桜井ー!氷たれへんでぇ!」
「リョウちゃん!取り皿足りないよー!」
うるせー!いっぺんにできるか!タコ共がぁ!と心の中で叫んで、
台所で肉と氷と取り皿を用意してると梨華ちゃんがやってきた

「大丈夫(w?桜井君」
そう声をかけてくれた梨華ちゃんは髪を後ろで縛って掛けてあったエプロンを付けていた
「もう必死さ・・・あいつらうるさいし。ってこれは内緒ね」
「うん。内緒にする。でもみんな無茶苦茶いうよねぇ」
「まぁ慣れたといちゃ慣れたけど。特に真里は。アイツときたら・・・」
「ねえ桜井君・・・」
「ん?なに?」
「えーっと・・・真里ちゃんのことどう思ってるの?」
「どうっていわれてもなぁ。別に悪友って感じかな」
「じゃ、後藤さんは?」
「えっ?何で?」
「だって・・・・・・一緒に住んでるじゃない?幼なじみだっていうし・・・」
もしかして梨華ちゃん俺にヤキモチ焼いてるのか?

「一緒に住んでるのは真希の都合だし、幼なじみっていうのもそれだけ。何もないよ」
俺は舞い上がっていた。あの梨華ちゃんが俺に気があるかも知れないということに
「・・・・・・ホントに?」
「マジだって」
俺がそっけなくそういうと梨華ちゃんは少しうれしそうだった。イケるかも知れないと思った
「あのさ、今度映画見に行かない?」
少し上目づかいに梨華ちゃんがたずねてきた
「い、いいよ。いつにする?」
心の中では動揺していたが返事はすぐにできた。
「じゃ、じゃぁ来週の日曜日にしよ!」
こうして俺は梨華ちゃんとデートすることになった。知り合ってから1年くらいたってようやく・・・