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脱MOROPAKURI 投稿日:02/01/28 18:50

青い〜スイ〜トピ〜♪

佳織は目を潤ませている、俺は飯田佳織と松多聖子のコンサートに来ている。
最近売りだし中の松多聖子は、デビューした頃から佳織がファンであり、
俺は一緒に連れてこられたと言う訳だ。
しかし、正直この松田聖子には余り興味が無い、この曲ぐらいは分かるけど。
曲が終わり、また全然知らない曲へ…。

『佳織、ちょっとトイレに行って来る、漏れそうなんだわ』
『え〜ちょっと!すぐ戻ってきてよ正広!もうすぐ「赤い珊瑚礁」なんだから!』

会場は古めのホールなので、トイレの数が少なく、分かりにくい。
ようやく用を足し、またなにか飲み物でも…って早く戻らないと怒られるか。

ドンッ

トイレの出口付近で女の子にぶつかってしまった。
『おお、ごめんなさい』
『きゃあ、ごめんなさい…あ!コンタクト!!』
その娘は急いでコンタクトを探す余り、持っていたバックの中身もこぼしてしまった。
もちろん俺も一緒に探し始めた。とりあえず目の前に有る携帯を手にとって相手に渡した。
携帯には、その娘と姉であろうか?年上風の女性と一緒に写ったプリクラが貼られていた。
またカラペンで名前も記されていた。「圭」

『ごめんさい、探してもらっちゃって。あ!コンサート戻った方が…』
『あ〜別にいいよ、連れに無理やりって感じだったし。そっちも早くコンタクト見付けて
戻らないとね』
『実は私もポップスあまり聴いた事無いんです、それで私も付き添いなんです。』

彼女は顔をクシャッとさせながら、笑顔でそう応えた。
『あ!見つかりました、よかった〜♪本当にありがとうございました。』
『いや、ぶつかったこっちも悪かったわけだし…とにかくよかったよかった』

彼女と別れ、再び会場に戻った。ヤベー佳織怒ってるだろうなー。
それにしても彼女の笑顔が印象的だったな〜。

「赤い珊瑚礁」は完全に見逃した、佳織は御立腹状態。(でもオーラス&アンコール
は見たからイイじゃんよ!)
帰り際、歩きながら謝り倒して今度ファミレスでおごる事を約束。
言っておくけど俺も佳織も高校3年生、学生さんはお金が無いなのだ。
交通量の多い大きな交差点に差し掛かり信号待ち。

『まあ許してやるか〜。でも「青いスイートピー」が聴けて良かったぁ♪ あの、あの歌を生で
観た男女はね、むすば…

プゥワ〜〜!! 目の前を通る大型トラックのクラクションが声を遮った。

…って噂なんだよ』
『え?何て言ったの?』
『ううん、なんでも無い。とにかく感動したな〜聖子ちゃん☆また一緒に行こうね』

季節は7月、そろそろ受験勉強も本格化してきた。俺、工藤正広も夏季講習を受講するべく
予備校に登録を済ませてきた、第一志望は寺田塾大学だ!
幼馴染の佳織も誘ったのだが、佳織はヘアメイクになりたいらしく大学受験は考えて無い
らしい。家が隣同士という事も有り、佳織はよく遊びに来る。しかしそれでは勉強に身が
入らないので、予備校でしっかり勉強するつもりだ。

受講初日、さすがに古文や英語は人が多い、真ん中列の端に何とか席を見つけ座る。
もう一人誘った友達のまことは理系なので、上の階で数学、物理を受けてるだろう。
講義も終わりに近づき、ん!?あれは…。
人と人の間の斜めの角度から、1番前の席に座るあの娘(圭って名前だったかな)を
発見した。彼女はちょっと地味目のメガネを掛けて受講していた、コンタクトはしてな
いみたいだ。

『あの〜この前はどうも。僕の事憶えてますか?』
『え?あ、ハイ!憶えてます、この前はありがとうございました』
彼女はちょっと恥ずかしそうに顔をやや下目にして挨拶をしてくれた。
『え、あの、いつもはメガネしてるんです、コンタクトしたのはこの前で3回目だったんです』
さらに恥ずかしそうにこの前見せてくれた笑顔で微笑んでくれた。

『私、保田圭といいます』
『工藤正広といいます』
下の階に有るロビーでいくつか話をした。高校は俺が通う高校の隣り駅のらしい。
また、大学の第一志望校は同じ寺田塾大学というのも分かった。会話のイイ流れから
お互いの携帯メールの交換もし合った。
それで彼女はもう帰る時間、俺は講義がもうすぐ終わるまこと待ってその場で別れた。

会話の流れとはいえ…いきなり携帯メールの交換し合うなんて。大体、予備校何しに
行ったんだ?出会いを求めて行った訳じゃないのに…う〜ん。
いつも圭織といるから女に緊張するわけじゃない、でもなんだろう?
まことと別れ、家までの道で一人そんな事考えていた。

『お帰り〜正広、勝手に上がらせてもらったよ。どうだった予備校?』
『ああ、ただいま。まぁまぁかな、そっちはどう美容院のバイトは?』
『まだまだ全然って感じ』

圭織はよく家に遊びに来る、昔は俺も圭織の部屋に行ってたのだが、中学頃からほとんど
圭織が俺の部屋に来るという形になっていた。

『ねぇ、明日予備校終わるの何時?買い物付き合って欲しいんだけど』
『受験生は忙しいのですよ、圭織殿』
『ファミレスでまだおごってもらってないで〜す!』

家から予備校までの道のりは、ジリジリと太陽が照り付け死ぬほど暑い。クーラーが効いた
予備校に入ると天国を味わえるのだが、30分いるとこれまた寒い。
講義中また前の席にあの保田圭って娘を見つけた。あれ!?今日はメガネして無いみたいだ。
講義が終わったらチョット話し掛けよう。

『今日はコンタクトしてるんだね』
『あ、ハイ!ちょっと気分を変えてみたんです、これで4回目です』
『その4回中、2回拝見した者の意見としては、似合ってると思うよ、うん!』
『あ、ありがとうございます。また落としちゃわないか少し不安ですけど』

チャララ〜♪

圭織からメールだ、もう行かなくては。
『あ、あの、今度メールしてもいいかな?勉強の事も兼ねてだけど』
『ハイ、私でよかったらいつでもどうぞ』
彼女と別れ、圭織との待ち合わせ場所に向かった。

圭織のスタイルはかなり良い、足がすらっと伸びてモデルみたいな体系だ。二人で歩くと振り向く
のは男よりもむしろ女のほうが多い。ヘアメイクするより、される側の方が似合ってるのではない
かと思う。
『今日来たお客さんの一人が誕生日だったの。旦那さんと外で食事するからうんとオシャレするん
だって。圭織はまだ髪の毛洗うくらいなんだけどさ、それ聞くと気合入るじゃない!
しかもそのお客さん何歳だと思う?75歳なの!い〜よね〜憧れちゃうなぁ♪』

ファミレスで食事しながら、圭織はとにかく御機嫌だ。
『そういえば、圭織の誕生日もうすぐだったよな、来月だっけ?
あ〜拙者お金が無いのでござるよ』
『う〜ん、なんでもいいよ。 あ!すいませ〜ん、このケーキもうひとつくださ〜い』
なにか圭織が喜ぶプレゼントが有ればな、去年はTシャツだった…って今それ着てるじゃん!

今、圭織が着ているTシャツのプリント部分を凝視してしまった。
『ん!?Hね〜私の胸じっと見ちゃってさぁ』
『あぁ〜違う違う、お前が着ているそれ…』
『あ〜これ去年正広から貰ったやつね、お気に入りの一つなんだ♪洗濯する時は、縮まない様に
乾燥機には入れないの。大切に着てるんだからね♪』
本当に今日の圭織は御機嫌×2だった。

家に帰ってからもちろん勉強を始めた。今までの模試で、寺田塾大学のボーダーはあともう一つ
というのが俺の現状だった。そう言えばあの娘も寺田塾志望だし、いい参考書知ってないだろうか。
メールしてみる事にした。

《こんばんわ、工藤です。勉強中ですか?僕も勉強中ですが、何かいい参考書を知ってたら教えて
下さい》

返事が返ってきた。

《こんばんわ、保田です。加護社の参考書が分かりやすいと思います。私の使っている物
はもらい物ですから、もう新しいバージョンが出ていると思います。》
《ありがとう。もしよかったら、明日一緒買いに行くの付き合ってもらえないかな?》
《分かりました。高橋書店は大きいので必ず有ると思います。》

俺はいつも講習が始まるギリギリに教室に入る。大体同じグループが同じ場所を陣取ったりしてる。
高校では圭織やまこといつも一緒なので、やや寂しい気もする。
同じクラスの奴も何人か夏季講習に来てるのだが仲良しって事は無い、席が無い時入れてもらうけど。
あの娘は前の席に座ってる、かなり早く来ないと座れないだろう。
今日もメガネせずにコンタクトみたいだ。ん!?何か雰囲気が違うな〜斜めからじゃ分かりにくい。

『やあ、保田さん。昨日は急に無理言ってごめんね』
『あ、工藤さん、全然無理じゃないですよ私でよかったら。
それで、加護社の参考書の他に辻社の参考書も良いみたいですよ。』
『あ、そうなの。それで高橋書店だっけ、行こうか』

そうか、化粧をしてるんだ、今日は!目立つ位のメイクって訳ではないけれど、雰囲気は違う。
予備校から書店まで歩く道のりは、正直言って話した内容はあまり覚えていない。横顔をずっと
見ながら歩いていたような気がする。書店では加護&辻社の参考書を購入した。

『今日はホントにありがとう、保田さん。御礼にそこの喫茶店でも』
『いえ、そんな。別に良いですよ、工藤さん。』
『あのさ、チョット「工藤さん」ってのはかしこまり過ぎかな。工藤君か正広でも良いよ』
『でも工藤さんも私の事「保田さん」って…』
『あ!そうか、女の子だから「さん付け」が当たり前にしてた。う〜ん、じゃあ、「圭ちゃん」で』
『じゃあ、わたしは「工藤君で」お願いします』

圭ちゃんは恥ずかしそうにまたあの笑顔で答えてくれた。
とりあえず近くの喫茶店に入った。

『工藤君はどうして寺田塾大学が第一志望なんですか?』
『え、う〜ん特に決め手は無いんだけど、家から通えるしね。みんな一人暮しにあこがれてるみたい
だけど自分は家が一番だなぁって。圭ちゃんは?』
『私は寺田塾に夏教授って人がいて、その人の講義が受けたいなって。』
『へえ〜すごいねそんな理由なんだね』
『あの…こんな話してもつまらないですよね…』
『え!?全然そんな事無いよ圭ちゃん!何も考えて無い俺なんかと比べたら…
そうだ、今度日曜日、水族館でも行かない?新しい所オープンしたでしょ、決まり決まり』

強引に約束を取りつけ、圭ちゃんと別れた。
家に戻ると圭織が部屋でバカボンドを読みふけっていた。
『なんでいつもいつも居るんだよ〜圭織』
『面白いね〜これ、最近の正広の武士言葉はここから来てたんだね。
あ!誕生プレゼントなんだけどさ、水族館がいいかなって、どう?』
『うぇ、あ、あぁいいんでないかいござるよ、圭織殿』
『アハハハ〜言葉遣い変だよ。水族館はナイターもやってるんだって、闇夜に淡い光と
魚達…(ウットリ)』
『お前の方が十分変だよ〜!(スケジュール調整しなくては)』