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M・P・D 投稿日:2002/03/20(水) 00:07

えー。本日も短編かいてみました。

「アイドルは唾を吐き捨てた」

俺が真希とつき合ってもう二年が経とうとしている。
最初は俺も高校生だったが、もう三月で卒業だ。

早朝、俺の部屋に泊まっていた真希に俺は切り出した。

「・・・なぁ。俺達もう別れないか」
「え?なんで・・」
「だってよぉ。俺も就職するしお前もこれから忙しいじゃん」
「・・・うん」
「もう今までみたいに会えなくなるし、ちょうどいい節目じゃねぇ?」

真希はこっちを睨んでいる。こりゃ相当怒ってるな。

「なによそれ。今まで通りお互いに時間合わしていけばいいじゃん」
「・・・」
「わたし嫌だからね。絶対別れない」
「・・・やっぱ無理だよ。方やアイドル、方や鉄工所の従業員だぜ?
今までだって無理があったんだ。だから・・・」
「なによ!あなたは私がアイドルだからつき合ったの!?」
「いや。そうじゃないけどさ・・・」
「じゃあいいじゃん今まで通りでさ」
「・・・・・」

長い沈黙の後、俺は話し始めた
「・・・やっぱり別れた方がいい。お互いのために」
「やだ」
「正直言うとさぁ・・・疲れたんだよ。やっぱしお前アイドルじゃん。
俺がいくらお前を普通の彼女として見ていても周りはそう見ねえし」
「・・・・・」
「やっぱ住む世界が違うんだよ。やっぱし世間の目が気になるしさ。
俺にはもう耐えられない」

ちょっとキツイ言い方だったかもしれない。でも俺は正直に自分の気持ちを言った。
真希は涙目になって唇を噛んでいる。
だが次の瞬間、真希の手が俺の頬を叩いた。

「なによ!!私だってふつうに恋愛したいのよ。周囲がどう見たって構わない。
・・・・あなただから今までつき合ってきたんじゃない!」
「・・・・」
「あなただけは・・・・みんなと違うと思ってたのに・・・
あなただけはわたしを普通に見てくれていると思ったのに!!ばか!!」

そして彼女は部屋から飛び出していった。

俺は一日中真希のことを考えていた。俺は結論を急ぎすぎたのかもしれない。
俺は真希の気持ちを全く考えていない自分勝手な奴だ。
激しい自己嫌悪が続く。

その晩、俺は真希の携帯に電話をかける。本当は声を聞きたかったが
留守電になっていた。おれは「ごめん」とだけメッセージを残した。

四日後、真希から電話が掛かってきた。
「・・・もしもし」
「あ。真希だけど・・・今日さ、ミュージックステーション出るんだ。
絶対見てよ。絶対だからね!」
一方的に話して切られてしまった。
・・・なんだよ。わざわざ電話で話すことじゃないのに。
あぁ今日ソロで出るからか。なんかすっげえ気に入ってる曲だっていってたな。

その夜、俺は真希の言うとおりに番組を見ていた。
番組中の真希はどこか落ち着きなさそうにしている。なんか上の空って感じだ。
緊張してんのかな。

タモリとの会話も曖昧に返事して曲のスタンバイにうつる真希の横顔は、
何か吹っ切れたようなすがすがしい顔をしていた。

ロック調のイントロが流れ曲がスタートする。が真希はAメロになっても
歌い始めようとせずじっと下を向いて立っていた。
会場も異変に気づいたのかざわついている。
そして音が止まった瞬間真希はしゃべり出した。

「えーとわたくし後藤真希。この場を持ちましてアイドル辞めさせてもらいまーす」
・・・・はぁ?

スタジオの空気が固まる。そして真希は正面の今移しているカメラに向かって
マイクスタンドを振りかざした。
破壊音と共に画面がノイズで一瞬映らなくなる。

そしてスタジオの外に出ようとする真希をハンディカメラが追っていく。
ドアの前まで来たとき、真希はハンディに振り向いた。
真希の顔のアップがブラウン管に映っている。

そしてカメラに中指立てて、アイドルは唾を吐き捨てた。最高の笑顔で。

四十分後に真希は俺の部屋に転がり込んできた。
「おまえ何やってんだよ!!無茶苦茶じゃねーか」
「だから言ったでしょ。もうアイドルは辞めちゃいました」
「何であんなことしたんだよ」
「もうアイドルに疲れちゃった。だから辞めちゃったの」
「・・・正気か?」
「ねぇ。私とさ、もう一度つき合ってくれない?今度はただの女の子として」

その言葉を聞いた瞬間、俺はなんにも考えられなくなっちまった。
真希さえいればなにもいらない。全部すてて真希と一緒に逃げようと思った。

「真希、俺が悪かった。もう絶対おまえを離さないからな」
そして俺は真希を抱き寄せ、唇を重ね合る。
そのバックではマネージャーのドアのノックする音がけたたましく鳴り響いていた。

おれはバックに荷物をはいるだけ突っ込んだ。こうなりゃもうどうにでもなれ。
そしてドアにそっと近づく。まだマネージャーはドアを叩き叫んでいる。
俺はブーツを履き、鍵を外し一気にドアを蹴り開けた。
マネージャーはドアがいきなり開いた為に顔面を強打してよろけた。
俺はその隙にみぞおちに蹴りをいれる。
「ぐぇ」と嘔吐しながら崩れ落ちていくのを横目に
「真希、行くぞ!!」と真希の手を握り部屋を後にする。
もう俺達は止まらない。何があっても・・・。

真希が空港に行こうって言うから行ってみたら、そこには真希のお姉さんが待っていた。

「あんた本当にやったんだね」お姉さんはあきれたって顔しながらいった。
「へへへ。」真希は照れくさそうに頭をかいた。
「・・・まぁ用意はちゃんとしておいたから。もう好きにしなさい」
「ごめんね。お姉ちゃん」
「いいわよ。真希、幸せになんなさいよ。ここまでやっといて別れたら承知しないからね」
「うん」

二年後
俺達二人はメキシコに来ていた。
おれはマフィアのボスに気に入られてここでマフィアとして生活している。
真希もファミリーの奥様方と楽しくやっている。
今日はファミリーの食事会に二人で招待された。
俺はそこで真希にプロポーズしようと思う。
色々あったけど俺達は楽しくここで暮らしている。それだけで十分だ。