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chicken 投稿日:2002/03/23(土) 10:22
題『凡人の一般論』
「そこ違うんだって!何度言ったらわかんだよ」
「仕方ないだろ、お前と違って才能が無いんだから」
弱気な俺の名前は「増川ひろあき」
上京し趣味でベースをやっている。でもいくらやってもうまくできないでいる。
そろそろ潮時かも・・・・
でもせっかく上京したからな〜かたや、いつも俺にベースの指導をしてくれる軽音学部の部長
また俺の親友でもある
「北川ヒトシ」(きたがわひとし)俺と違いエレキギターを担当する。
ともに高校2年生、2年ながら北川が部長なったのは理由がある。
俺達が入ってくるまで軽音楽部たるものは存在しなかった。つまり今部員は1,2年だけである。
今の3年が入ることはできるのだが
誰一人として入って来ない。最初俺は音楽とは
「聴くため演奏するためにある」
そう思っていた。しかし、ある人に「自分が演奏したものを聴いて貰いたい」と思い始めた。
ある人とは・・・・
「石川梨華」同じ学年だがクラスが違う。
悔しいことに梨華さんは北川と同じクラス。しかし俺は北川が密かに想いを寄せている人と同じクラス。
その人の名前は 「吉澤ひとみ」
吉澤とは俺が知り合いで
北川のためによくこの軽音楽部に連れてきている。連れてくる理由がもう一つある。
梨華さんは吉澤と仲がいいらしく
大抵吉澤が来るとなると
梨華さんもついてくるといったわけだ。そのお陰もあってか4人とも
あだ名で呼び合うほど仲が良くなった
俺はまだ梨華さん、と[さん]付けになってしまうが4人には共通している所がある・・・それは上京してきたという点。
そして同じ寮に住んでいる。吉澤はバレー。北川は俺と同じく音楽。梨華さんは・・・・
・・・・なんなんだろう?
聞いたことがない。増川「今日も練習おわり♪っと」
俺はベースをケースにしまう。ヒトシはまだ練習をするようだ、
必死で楽譜と睨みあっている。
さすが部長!・・・・と言いたい所だが今日は吉澤が来ているからだろう。
男って単純だなー・・・・って俺もかでも今日は梨華さん来てないみたいだしもう帰るか。
寮に戻ると会うかもしんないし。増川「じゃあ帰るわ、おつかれさん」
北川「おう!」
そう言うと俺は部室を出ようとした。吉澤「え〜っ!ヒロ君帰っちゃうの〜」
俺はその言葉に足を止める。増川「(おいおい、北川の前でそんな事言うなよ)なんか用事?」
吉澤「別に用事って程じゃないけど・・・・」
ヒトシのギターを弾く指が止まった。
増川「(やべぇ〜)じゃあ帰るわ」
俺は急いで部室を出た。ベースが重い・・・・
とりあえず寮に着く。
増川「あ〜疲れた〜」そこらにかばんを投げ捨てる。
ベースを立て、テレビをつける。増川「んっ?」
隣の部屋のドアの開く音、
俺の部屋の隣は吉澤だ。
増川「結局帰ってきたんだ・・・・」
なんかヒトシに悪い気がするな〜俺らが住んでいる寮は壁が薄い、音が筒抜けになる。
そのため俺はベースを弾くのを控えている。しかし俺の部屋にはヒトシとは違う点がある・・・それは
梨華さんと吉澤に挟まれている点だ。
美女に挟まれている、男としてはこれ以上の事はない。
美女か・・・吉澤は省いておこう(笑)
おっとこんな事を言っているとヒトシはおろか
何人の男を敵にまわすかわかんない。ヒトシの部屋は、と言うと俺部屋の下
結構離れている。吉澤はともかく梨華さんの部屋の隣りと言うのはなにか緊張する。
増川「暇だ〜」
時間的に面白い番組がない。梨華さんの部屋にでもいくか!(笑)
俺は身だしなみを整えいざ梨華さんの部屋に!
ところがいくら呼んでも返事がない。増川「いないのかなぁ〜」
突然吉澤の部屋のドアが開く。
吉澤「梨華ちゃんならいないよ」
相当のショック増川「マジでか」
吉澤「うん・・・・なんならこのよっすぃ〜が遊んであげよっか」増川「(キッパリ)結構です!」
吉澤「なんでよー!差別だよー」増川「お前と遊んでも楽しくないから」
そう言うと俺は自分の部屋に入っていった。吉澤「う゛〜、よっすぃ〜を怒らせたな〜」
俺はまた寝ころびテレビを見だした。
((ガチャ))
俺の部屋のドアが開く。
増川「んぁ?」俺は寝ころんだままドアの方を見る
すると怒ってほっぺを膨らました吉澤の姿が・・・・増川「(やべ〜)」
吉澤は俺の方に歩いてくる。
固まったままの俺・・・・寝ている俺の上に乗り,手を押さえる。
上から見下ろされる・・・・
・・・こっ・・・殺される・・・吉澤「へぇ〜そんなこと言うんだ〜」
増川「・・・悪かった・・・」
ヤバイと思いすぐに謝る。吉澤「あそこまで言われて許す人は
いないね〜」目がマジだ。俺の体の上にのって不審な笑みを浮かべている。
増川「!!」
吉澤の顔がドンドン俺の顔に迫ってくる。増川「お、おい、やめろー!何する気だよ!」
俺は顔を横に背けながら言う。こんな所もし見られたら・・・・
考えただけでも背筋が凍る。しかし吉澤の顔がどんどん近づいてくる。
吉澤「キスしちゃおっかなぁ〜」
目が笑ってない・・・・増川「そ、それは止めてくれ」
相当焦る。吉澤「う〜ん、どうしよっかな〜」
身動きのとれない事を良いことに。
増川「どけよ!この筋肉質女!・・・・あっ」まずい・・・まずいぞ・・・
自分で墓穴を掘ってどうするんだ、俺。吉澤「筋肉質女?筋肉質女ぁ〜?」
増川「つ、つい本音が・・・・
べつに悪気があっていったわけじゃ・・・」(トゥルルル...トゥルルル・・・・)
その時耳障りな電話のベルが
増川「ほ、ほら電話だし、出なきゃ」ガチャ
吉澤が電話に出る。
増川「(何でお前がでるんだよー!)」←心の叫び吉澤「ヒロ君なら今忙しいみたいです、はい」
そう言うと吉澤はすぐ電話を切った。
少し優しい声・・・・吉澤が怒っている証拠だ。しばらく見つめ合ったまま沈黙。
_____よしっ!こうなりゃお世辞だ。
増川「お前ってこう見ると結構可愛いな」
・・駄目?
・・・・・・ねぇ、どう?
しかし吉澤の目は変わらない。
吉澤「お世辞じゃん、うそ丸出しだよ」・・駄目だ、しかしここで諦めては!
こうなりゃ一つしかない
増川「どうすれば許してくれんだよ!」
逆切れだ・・・・しかしこの体制では・・・吉澤「う〜ん,っとね〜・・・・」
吉澤の手がゆるんだ。今だ!!
吉澤「きゃ!」
俺は一瞬の隙をつき
起きあがった、今までと逆の体制に。吉澤の表情がいっぺんする。
俺も今までとは違い、ざまぁみろといった感じだ。でも、違う人に今見られるとヤバイ、どう見ても
俺が吉澤を襲っているようにしか見えない。しかし・・・・
目の前には・・・・俺の理性が・・・・
心の中で格闘する。
お決まりのあいつらが(苦笑)
悪魔「やっちゃえよ、どうせお前にキスしようと
したんだぜ、お前の事が好きなんだぜ、きっと」天使「駄目だよ!君の親友の好きな人なんだろ」
悪魔「気にすんなよ、どうせこいつ処女だぜ、
気持ちいいだろうぜ、見ろよこいつの胸
すっげえじゃん」天使「駄目だって、君は石川梨華が好きなんだろ」
&%$#$%@×+※?______
延々と続く・・・・
俺の中で勝ったのは・・・・天使?それとも悪魔?
増川ひろあき
今から・・・・悪魔になります!
体制が変わってからというもの、全く吉澤が目を合わせなくなった。
顔も何か赤い・・・・俺は吉澤にやられたように、顔を近づけていく。
吉澤は今だこっちをむこうとしない
そして、吉澤の耳元で囁いた・・・・増川「“えっち”な事しよっか」
その言葉に吉澤の体が反応する。
でも抵抗はない・・・・吉澤「どうせできないくせに・・・・」
強がっていったはずなのに、なにか弱々しい。
蚊の鳴くような声・・・・
いつもとは違う吉澤がここにいる、俺もその言葉に反応したものの、
何も言い返さない。返せない。まず俺は吉澤が羽織っていた薄手の
服を脱がす、脱がすといっても
吉澤の背中が床についているせいで
完璧に脱がすことができない。それがまた俺を興奮させた。
薄手の服でわからなかったが、
脱がすことにより体のラインがハッキリと見える。脱がされる度に吉澤の体が熱を帯びてくるのがわかる。
俺の息も荒くなっていく・・・・俺は吉澤の首元に軽くキスをした・・・・
声こそ出なかったが、肌と肌が触れ合っているので
体が反応してしまうのがわかる。吉澤の胸が俺の体にあたる・・・・
なぜか床が以上に冷たく感じた・・・・
俺達の熱を奪うかのような・・・・冷たさ・・・・まだ4月・・・・その冷たさが、俺を後押しする。
増川「・・・・駄目だ・・・」
吉澤「・・・えっ」
そう一言言うと俺は、覆うようになっていた
自分の身体を起こし、床に座った。増川「ごめんな・・・・吉澤・・・・」
そう言い残し俺は自分の部屋を出た。
靴もちゃんと履かないで・・・・かかとをふんだまま・・・・階段を降りようとしたときヒトシと
はち合わせになる。北川「おう、ヒロどうし_」
増川「どけよ!」
俺は北川の言葉をさえぎるように体にぶつかった、
北川の部屋は1階
吉澤に会いに来たんだろう・・・・どうせ−なんでヒロシに
自分に腹が立ったのか?ただの八つ当たり?
親友の好きな人、
自分の最も仲のよい女友達に“女”を感じたから?いくあても無いのに、がむしゃらに走りながら
繰り返す『臆病者の自問自答』『凡人の・・・・』
いく宛もない俺はこの震えた喉をうるおすため
公園に立ち寄った。
増川「はぁ・・はぁ・・・はぁ・・・・」
気づくとうっすら汗をかいている。走り疲れた俺はそこらへんにあったベンチに腰掛ける。
辺りを見渡す・・・・辺りはもう暗くなっていた、それに今まで気づかなかった。
もちろん誰もいない・・・・突然、明るい声が静寂を切り裂く、
増川「石川・・・・・梨華?」
公園を出てすぐにある道路で
誰かとケータイで喋っている。
そういや、居なかったな・・・だから、あいつと・・・
性格のマイナス思考がでる、いつもなら声をかける、気づいて欲しいと願う俺の姿がない、
気づくな、今のうちひしがれた俺を見るな。
しかし、
石川「ヒロ君?・・・・」気づくなというのも無理な話だった。
蛍光灯に照らされ、一人ベンチに座ってるんだもんな。
木は伐採され、道路からでも公園を大きい視野で見る事ができる。石川「ちょっと、ごめん」
そう言うとケータイを切った。小走りにこちらに近づいてくる。
石川「どうしたの?こんな所で」
俺の思いとは裏腹、いつも通り明るい声しかしなぜか不安そうにも聞こえる。
買い物袋を持っている、買い物行ってたみたいだ。増川「いや、ちょっと・・・・遊んでて・・・うん・・」
・・・・・・嘘をついた、石川の前でも・・・
無理をして明るく言ったつもりだが、やっぱいつもと違う。石川「ふ〜ん、でもこんな所に居たら風邪ひくよ」
石川もベンチに腰掛け俯いた俺の顔をのぞき込み言った。増川「ありがと・・・」
俺は今だ俯いたまま、
あのこと吉澤しゃべってないんだ。
少しホッとした。石川は腕時計を見る。
石川「あ〜!もうこんな時間〜、帰ろ、ヒロ君」
立ち上がり、俺に言う。増川「ちょっと、友達の所によってから帰るわ」
今更、吉澤にあわす顔がない、、、、石川「そっか、じゃあ先帰ってるね、じゃあね」
そう言うと、手を振り帰っていった。
俺も力無く2,3度手を振る。行く宛がない・・・・明日授業がある、帰るしかないか。
吉澤はあの後どうしたんだろう・・・・
ふとこんな事を考えてしまう。重い腰を上げ、俺は寮に帰った。
寮に着いたものの、まだどうするか迷っている、
時計さえ身につけていない、誰にも気づかれぬよう、静かに階段を上がる、
吉澤の部屋の前を通らないといけない、緊張が走る、、、、
明かりがついている、
増川「・・・悪かった」
吉澤の部屋を通る時、つぶやいた、自分にも聞こえてない。自分の部屋の前に立つ、ドアノブを持ち考える・・・・
(がちゃ)
音なんか気にしなかった、吉澤にも聞こえただろう、部屋中を見渡す、
ここで4,5時間前、、そんな考えを振り払うかの用に寝そべる、
そしていつの間のか眠りについていた。
朝、,,目覚めが悪い、晩飯を食ってないのに食べる気にもならない。
増川「はぁ〜・・・・」
また布団に顔をうめる。石川の部屋からはもう水を流す音が聞こえる。
もうご飯を食べ終えたようだ、しっかりしてるよな、俺と比べものにならない。
吉澤の部屋からは昨日の夜から何の音もしない、
部屋にはいるだろう、でも何の音もしない、それが俺をもっと不安にさせる。増川「はぁ〜〜」
俺はさっきより深いため息を吐いた、
目覚まし代わりにしている、ケータイの液晶画面に目をやる。ヒトシから一件入っている、昨日の事か、、、ヒトシには悪いことをしたな
あいつは悪くないのに。俺はヒトシから送られてきたメールを見ることなく謝罪のメールを送った。
見たくなかった、恐かった・・・・高校に行く準備をし、テレビを見ていた、しかしテレビの内容が頭に入っていない。
始めて吉澤と同じクラスであることを恨んだ
こんなに高校に行きたくと思ったのは初めてかもしれない。
しかし、どんどん家を出なくちゃいけない時間になっていく。増川「そろそろ出るか・・・・」
まるで自分に言っているようだった、ガチャ))
自転車に乗る、足が妙に重い・・・
通学路は、いくつも道が枝分かれしている、
その度に俺は、通学路と違う道の方に行こうかと迷った。
そんなことを考えているうちに高校に着く。下駄箱で履き替える、チラッと吉澤の下駄箱を見る。
________来ている
心拍数があがるのがわかる、
何て言おう
喋らない方がいいのかな
廊下でいろんな人が挨拶をしてくる、俺は適当に返す。
嬉しいことに教室のドアが開いている、これなら開ける時と違い
注目を浴びなくてすむ、つまりこっそり入ることができる。教室に入るとすぐに俺の目に吉澤の姿が目に入る、石川が俺達のクラスに来ていて
吉澤と喋っている。
それがまた困る。気づかれないように自分の席に座ろうとする、
そんな俺に石川が気づく、
石川「おはよ、ヒロ君、」喋りたくなかったが、こうなっては仕方がない。
増川「おはよ」
できるだけここまでで話を終わらせたかった。石川「昨日なんであんな所にいたの、しかも
帰ってくるのも遅かったし風邪ひいちゃうよ」
ドアの音が聞こえたのだろう増川「わりぃ、ちょっと・・・・」
視界に入る吉澤はまったく喋っている俺の方を見ていない。
石川「遅かったよね、よっすぃー」
石川と一緒で俺の部屋の隣である吉澤にふる。吉澤「ん?ごめん聞いてなかった、それより梨華ちゃん____」
吉澤には聞こえていたはずだ・・・・
それなのに石川と違う話題に入っていった。
それより俺が驚いたのは、吉澤の冷たい顔・・・・俺は動揺を隠せないまま自分の机に座った、
俺の席からは石川と話している吉澤の席が目に入る、俺の席は窓側大抵寝ている、この日も・・・・
増川「いってー、何すんだよ、ったく」
ヒトシが俺を起こしに来る、最初は寝ぼけてて忘れていたが
昨日ヒトシにしたことを思い出す、増川「あっ・・・昨日悪かったな・・・・」
北川「なに気にすんな誰にだって
むかつく時ぐらいあるんだからさ」
そう言いヒトシは少し笑顔を見せた。
その言葉を聞いてすごくホッとした、でも北川「もうそろそろ準備しないとな、音楽祭の」
俺らの学校では、1年前、つまり軽音楽部ができてから学期毎に
音楽祭なるものを開くことにしている、そのために練習してるんだけどな。増川「あぁ、そうだな、誰の曲する?去年は・・・・
スマップやらミスチルとかだったな」北川「う〜ん、誰にしよっか・・・・あっ!
そこに、よっすぃ〜とかいんじゃん
何の曲が良いか聞こうぜ」そう言いヒトシは吉澤と石川を指さす。
席もある程度近いためその場所から聞こうとする。北川「なぁな____」
ヒトシが吉澤達を呼ぼうとする
増川「自分たちで決めようぜ」
俺は慌てていった、あいつらが振り向く前に北川「ん?ふ〜ん、じゃあ決めといてくれよ
そろそろ自分のクラスに戻んないと」
増川「お、おう、じゃあな」
北川「おう」
そう言うと北川は戻っていった。全ての授業も終わりその間に考えていたが一向にいい曲がない。
自分の鞄に入っているMDを見る、、MR,CHILDREN. BUMP OF CHICKEN. B`z. ポルノグラフィティ.モンゴル800
増川「う〜ん・・・この曲にするか」
部室に行こうとするが吉澤が居そうで恐い・・・・
とりあえず部室に行く、音楽祭前だからこんなこと言ってらんない。
部室の窓から中をチラッと覗く、梨華さんの姿はあるが吉澤の姿がない、
ちょっと複雑な気持ち、俺が居るからかな〜、部室にはいると真っ先にヒトシが寄ってきた。
北川「決まったか、曲」
俺が決めるって言ってしまったんだもんな・・・
増川「まぁ、一応、ほいっ」
俺はその曲が入っているMDを渡す。俺は座りヒトシが聞き終わるまで待っている。
すると梨華さんがこちらに近づいてきた。石川「いまヒトシ君が聞いて
いる曲が音楽祭で演奏するやつ?」
増川「まぁ・・・決まるかどうかわかんないけど
それより今日、一人?」
俺はさらっと聞いた。石川「うん、よっすぃー部活行くって・・・・」
増川「そっか・・・」石川「なによそれー、私一人じゃあいけないの」
軽く笑いながら言ってきた。
増川「いや。めずらしいなぁ〜っと一人で来るなんて」石川「誘ったんだけど、
断られちゃった、朝から機嫌悪そうだったし」増川「ふ〜ん・・・・そっか・・・・」
そんな話をしているとヒトシが聞き終わったのかこちらにやってくる。
増川「どうだった?」北川「良いんじゃないの、メロディーはあんましだけど、
歌詞が良いよ、泣きそうになった」
ヒトシの目には確かに光ものがあった。増川「そっか・・・・じゃあこれで決まりだな」
俺は結構嬉しかった、同じ曲で泣けたことが・・・・
それから俺らは足りない、ドラムス。ギターリストを集めて練習に入った、
曲調的に早い曲(16)なので、早めに練習しなくてはならなかった。試行錯誤のうえようやく形になり始めた頃だった。
北川「よーし、そんじゃあちょっと休むか」
汗が出るほど早い曲だった
俺達は機材を立てかけた。増川「どうだった?」
俺はさっそく梨華さんに聞いた。石川「うん、よかったよ」
笑顔で返してくれた、梨華さんも少し涙声になっていた。増川「そっか・・・・」
俺は不安そうな顔をした。
石川「どうしたの?なにか私いけないこと言った?」増川「いや、そうじゃあないんだ、うん」
石川「まぁ、頑張って!」
増川「おう!」
俺は拳を上げた。
そしてまたベースを手に取り演奏し始めた。
(がらっ)
誰かが部室に入ってきた、俺は見向きもしないで演奏している、
しかし梨華さんの一言に振り向く、
石川「あっ、よっすぃー部活終わったんだー」
増川「(吉澤!?)」
俺は手を止めた。ヒトシ達が不安そうにこちらを向く。
北川「おい、どうしたんだ?」増川「いや、何でもないんだ、わりぃ」
確かに吉澤の姿が・・・・吉澤の様子が気になりながら演奏する。
何回か練習した所で練習は終わった。
全然身に入ってない、北川「よっすぃ〜来たんだ」
演奏が終わるとさっそくヒトシは吉澤のもとへ行った。ベースを片づけながら会話を聞こうと
耳を傾ける。吉澤「うん、結構早く終わったから・・・それに」
北川「それに?」吉澤「ううん。何でもない」
吉澤は何か言おうとしていたが言わなかった。
もちろんそれは俺に向けられていた。増川「梨華さん、ちょっと」
俺は手招きして吉澤の傍にいた石川を呼んだ。石川「何ぃ?」
こちらへ来る。増川「今から言うことをみんなに言わないでくれる?」
石川「うん」
増川「昨日、公園であったじゃん?」
石川「うん」
増川「そのこと誰かに言った?」
その後石川は考えている様だった。石川「多分・・・」
増川「多分」
石川「よっすぃ〜だけだと思うけど・・・・」
一番言って欲しくない人に・・・・
増川「何で吉澤なの?」
石川「気にしてたみたいだから・・・・」増川「気にしてたぁ?俺のことを?」
石川「うん・・・・うれしい?」
そう言い俺の顔をのぞき込む増川「まさか・・・・」
今朝あんなに怒ってたのに・・・気にしてた・・・・石川「結構待ってたよ、ヒロ君のこと」
増川「そうなんだぁ〜・・・・」
石川「謝らないと、私・・・・」増川「何で?」
石川「待ってたことヒロ君に言わないで
って言われてたの、怒り口調で」増川「謝る必要ないよ、俺言わないから」
石川「ほんとに?ありがと」
吉澤は一人ぽつんっと座っている。
石川「それより昨日なんかあったの?」
増川「・・・・まぁね」
石川「何があったの」
嬉しそうに、にやつきながら聞いてくる増川「大したことじゃあないって」
石川「へぇ〜」
信じてないな・・・・こいつ増川「まぁ、吉澤今一人だから行ってやれよ」
石川「ヒロ君が呼んだのに、私を」
増川「そっか・・・悪かった(笑)」
北川「ヒロっ!かえろうぜ」
片づけを終えたヒトシが誘ってきた。増川「おう!」
石川「じゃあ私達も帰ろっか」
吉澤「う、うん」
同じ寮だから帰る道は同じ、何かイヤな予感・・・・
まだ、1年が演奏するようなのでカギをかける必要がなかった___
部室を出てそれぞれの下駄箱に行く。
俺と吉澤は同じクラスなので同じ下駄箱だ遠くからヒトシと梨華さんの笑い声が聞こえる。
方や俺達に会話はない。気まずい、
早く靴に履き替えようと思って急いだのか吉澤が教科書を
辺りに落とした。俺もさすがに拾わないわけにはいかない、
無言で拾う、“パンッパンッ”と砂を払い
吉澤に渡した。軽く会釈をして、それを受け取る。
北川「何してんだよ、早く帰ろうぜ」
学校の下駄箱を出たところからヒトシの声がした。
増川「わりぃ、ちょっと待ってくれ」
急いで靴に履き替えヒトシの所に行く。
校門を出ても吉澤は喋ろうとしない。
北川「よしこ何かあったの?
今朝から機嫌悪いみたいだけど」吉澤「別に何もないよ・・・」
相変わらず暗い北川「嘘だーっ(笑)
絶対何かあったでしょなあ、ヒロ」俺に振るなよ
増川「本人が何もないって
言ってるからないんじゃないの」北川「え〜もしかして何かしってんじゃあないのヒロ」
増川「・・・・かもな」
俺はあっさり言ってのけた。
それは逆に北川に怪しまれないようにするためでもあった。石川・吉澤「!!」
北川「お前がそう言う時は何も知らない
ときだって俺はしってんの(笑)」増川「ははっ(笑)」
騙し成功___!!その後はずっとヒトシが吉澤に話しかけていたが
会話として成り立っていなかった。
吉澤は上の空のいうかなんていうか・・・・
とにかく昨日のことが___________________そんなこんなで寮に着いた。
北川「じゃあな」
増川「おう!」
ヒトシと別れて、階段を上がった
まず吉澤の部屋が一番手前にあるのでお別れだ。石川「ばいばい。よっすぃ〜」
吉澤「ばいばい」
((ばたん
吉澤は部屋に入っていった。俺も部屋に入ろうとした____その時
石川「ヒロくん、ちょっと待って」
石川が俺の腕をつかんだ
俺としては結構嬉しい。増川「なにぃ?」
石川「よっすぃ〜に謝った方が良いって」
吉澤に聞こえないように小声で話す。増川「別にこのままでもいいし」
石川「駄目だよ!」
突然大きな声を出す、“あっ!”とした感じに口をおさえる。増川「良いって、別に・・・」
そそくさと部屋に入ろうとする。石川「駄目って、よっすぃ〜男っぽい所があるから
・・・・自分から謝らないよ、きっと」増川「そうだけど・・・・」
石川「ちょっと待ってて、
よっすぃ〜に言ってくる」増川「おい!」
そう言うと吉澤の部屋に入っていった。
石川ちょっとお節介なところがあるからなぁ〜___なにやらゴチャゴチャと話し声が聞こえる。
どうせ俺の時と同じ事を言ってるんだろう(笑)ガチャ))
石川が出てきた。石川「3人でご飯食べにいこっ!」
増川「へ?ご飯?3人って、
俺と梨華さんと吉澤で?」石川「うん、よっすぃ〜『ちょっと待って』
って、着替えているみたい」増川「ホントに?」
石川「うん」
まさか吉澤と晩飯を食う事になるとわな
増川「よく吉澤行くって言ったな」
石川「それがさ・・・・おこんない?」
不安そうな顔で聞いてくる。増川「うん・・・別に」
石川「実は結構反対してたんだけど・・・ヒロ君が
よっすぃ〜も誘おうって言ったって言ったら・・・・ゴメンね」増川「マジで・・・・」
石川「う・・・ん」
______しばし無言______
ガチャ))
吉澤の部屋のドアが開いた。吉澤「ごめん、遅くなちゃって」
石川「いいよ別に。ねぇ?ヒロ君」
俺に話を振るなーーーーーー!←心の叫び
増川「ああ、そうだな」
俺は密かに私服の吉澤を久しぶりに見てちょっとドキッとした。
そんなことを考えていると石川が話し出す。石川「何処いく?」
吉澤「別に何処でもいいよ」石川の視線が俺の所にくる
吉澤は俺の答えを待っているようだったが俺を見ず
俯いている。増川「俺も何処でも良い」
石川「う〜ん・・・・
じゃあお好み焼きでも食べに行きましょうか」今時の17歳が行こうって言う場所じゃあない気が__
お好み焼き屋についたものの、それまでなんの会話もなかった・・・・
そんな空気のせいか石川も何も言葉を発しなかった_
中に入ると野球を見ている中年男性__
活気に溢れていた。
ちょっとホッとした。テーブルに座ろうと俺は腰をかける、
そのテーブルは二人、二人セットに腰をかけるタイプ
合計4人座ることができる。石川「さぁさぁ座って」
石川が吉澤の体を押す。吉澤「おお!っと・・」
石川の計算どうり?!
吉澤は俺の隣りになった___
向かいには石川一人吉澤も心なしか俺と逆向き、通路の方に体が向いている。
注文も終わり、食べ終える。
もちろん、吉澤との会話はない。
石川とばかりだ、もちろん吉澤も−俺はぼーっとテレビを見ている、
その間吉澤は石川と話している。
最初より笑顔がみられる_そんな吉澤にほっとし始めた時だった。
「ちょっと、お手洗いに行ってくるね」
「うん」
そう言い石川は席を立った。・・・・ってことは・・吉澤と・・・・二人っきり・・・・_
石川がトイレへ行った後会話がない・・・・
俺は今まで通りテレビを見ている
でも何か緊張している・・・・・・・そんな時救いの手が!!
けたたましい音を鳴らす俺のケータイ「(メールだ・・・石川?)」
メールはさっきまでそこにいた石川からだった。「??」
全く状況が読めない俺はとりあえずメールを開いた。【今のうちに謝まりなよ、まだ出ていかないから、ガンバ!!】
「・・・・(汗)」
救いの手じゃあなかったのね(汗)
そのメールをもらっても言い出せない、
なんて言えばいいのか、
確実に怒っていることは間違いない。「あのさ〜」
ちょっと声が震えている無言で振り向く吉澤。
俺は声の震えを直すため軽く咳をする。
吉澤は目を合わせようとしない。
「昨日悪かったな・・・・やっぱ怒ってるよな?」
怒ってるのは知ってる・・・でも・・・・心のどこかで
救いの言葉を待っていた。しかし吉澤から返事がない。
「ちょっと、どいて」
突然吉澤は立ち上がった、突然のことに俺急いで席を立つ_
そして吉澤は俺と目を合わせず言った。「先に帰るって、梨華ちゃんに言っておいて」
「昨日悪かったな・・・・やっぱ怒ってるよな?」
怒ってるのは知ってる・・・でも・・・・心のどこかで
救いの言葉を待っていた。しかし吉澤から返事がない。
「ちょっと、どいて」
突然吉澤は立ち上がった、突然のことに俺急いで席を立つ_
そして吉澤は俺と目を合わせず言った。「先に帰るって、梨華ちゃんに言っておいて」
「?!」
口調は怒ってないが何かイヤなものを感じた。
恐らくあの話になったからだろう、「ちょっと待てよ!」
俺は吉澤の突然の行動に思わず手をつかんだ。手をつかんだものの言葉がそれ以上でてこない。
先ほどまで盛り上がってた店も何か静かに感じる。
「ちょっと話がしたいんだ」
そう言い俺は吉澤とひとまず店を出た、外は肌寒いあの日の事を思い出してしまう
吉澤は気まずそうな顔をしている。
「わるかった・・・」
いくつか言葉を考えたが
でてきたのはこれだけだった。・・・・・
石川にも謝り、家についたのはもう11時だった。
ヒトシにも一応謝った。それから結構たった、
ヒトシは許してくれたが、今だ吉澤とは会話がない。そんなままでライブの日を迎えることとなってしまった。
ヒトシ「緊張するな〜」
増川「ああ、そうだな」順番からすると、くじ引きで決まるのだが10組中10番目と
最後になっている、
締めだ。それも結構、伝統行事として長い間続いているそうだ。
ヒトシは緊張をほぐすためにギターを弾いている。
ヒトシ「お前練習しないの?」
増川「・・・・ああ」俺は一点を見つめている。
パチパチパチ
どんどん、自分たちの番が近づいて来る。
もちろん、全校生徒が見ているので
そんなかに、石川はもちろんのこと
吉澤もいる。ヒトシはその事も考えているようだ。
遂に俺達の番だ。_
無理矢理作ったグループとはいえ
練習量は半端じゃない。
団結力も・・・・・ある。ヒトシ「いくぜ!!!!」
三人「おう!」
そして俺達はステージライトで照らされた
低いステージへ向かった・・・・・俺達は固定の位置についた。
会場は熱気で溢れている。
俺はその熱気ののまれそうになりながらも、ベースを手に取った。
それぞれ思い思いのセッティングをする。俺達は目で合図、
______チッチッチッ
ドラムがリズムを刻む・・・・マイクからヒトシの息を吸う音が聞こえてきた、
『K』
週末の大通りを 黒猫が歩く
ご自慢の鍵尻尾を水平に 威風堂々と
その姿から猫は 忌み嫌われていた
闇に溶ける その体目掛けて 石を投げられた孤独には慣れていた むしろ望んでいた
誰かを思いやる事なんて 煩わしくて
そんな猫を抱き上げる 若い絵描きの腕「今晩は 素敵なおチビさん 僕らよく似てる」
腕の中鋺いて 必死で引っ掻いて 孤独という名の逃げ道を
走った 走った 生まれて初めての
優しさが 温もりが まだ信じられなくてどれだけ逃げたって 変わり者は付いてきた
それから猫は絵描きと 二度目の冬を過ごす
絵描きは 友達に名前をやった
「黒き幸」“ホーリーナイト”彼のスケッチブックは ほとんど黒づくめ
黒猫も 初めての友達に くっついて甘えたが ある日貧しい生活に 倒れる名付け親 最後の手紙を書くと 彼はこういった
「走って 走って こいつを届けてくれ
夢を見て飛び出した僕の 帰りを待つ恋人へ」不吉な黒猫の絵など売れないが それでもアンタは俺だけ書いた
それ故 アンタは冷たくなった 手紙は確かに受け取った雪の降る山道を 黒猫が走る
今は故き親友との約束を その口に銜えて
「見ろよ、悪魔の使者だ!」 石を投げる子供
何とでも呼ぶがいいさ 俺には 消えない名前があるから「ホーリーナイト」「聖なる夜」と呼んでくれた
優しさも温もりも 全て詰め込んで 呼んでくれた
忌み嫌われた俺にも 意味があるとするならば
この日のタメに生まれて来たんだろう どこまでも走るよ彼は辿り着いた 親友の故郷に 恋人の家まで あと数キロだ
走った 転んだ すでに満身創痍だ
立ち上がる間もなく 襲い来る 罵声と暴力
負けるか俺はホーリーナイト 千切れそうな手足を
引きずり なお走った 見つけた! この家だ!手紙を読んだ恋人は もう動かない猫の名に
アルファベット1つ 加えて庭に埋めてやった
"聖なる騎士"を埋めてやった
曲が終わった瞬間静まり返った、
その後すごい拍手が_
会場全体が「オト」で包まれた。会場が音楽でつながった瞬間だった、
涙を流している人も居る、しかし俺には、まだ歌うべき歌があった。
ヒトシが歌い終わり、場所をはずした瞬間
俺はマイクを奪い取った。会場がざわつき始めた。
ヒトシ「なにやってんだよ。早く戻るぞ」
まだ、校長の話があるので最後だからといって
わがままは許されない。しかし、俺はまだマイクを握りしめている。
そして、必死でベースを弾き始めた。
あせるメンバーを後目に。
増川「リリィ」
スポットライトの下 自分を叫び唄った
思うように伝わらなくて その度にこぼれる弱音を
「今はマズい!」と慌てて その場は巧く隠して
真夜中 鍵かけた部屋 膨れたポケット 裏返すと
ホラ 出て来る弱音の数 1日分 想像つくかい?ところが君は笑った しあわせそうに笑った
当然 僕は怒った 「真面目に聞けよ!」って怒鳴り散らした
それでも君は笑った 「かわいいヒトね」と言った
叫んでも 唄っても その一言には 勝てる気がしない低いステージの上 必死で格好つけた
自分も人も上手にだまし 夢を見て 夢を見せた「大言壮語も吐いてやろう」そういう歌も唄った
心の中 鍵かけた部屋 その歌が ドアを叩き続ける
「出て来いウソツキめ!」と自分の歌に格好悪く 脅されるんだ
ところが君は笑った「格好いいよ」と言った
これだけ僕が愚痴っても 僕の目を見て そんな言葉をくれた
「そういうトコロも全部 かわいいヒトね」と言った
ツクっても 気取っても その一言には 全て見られていた
ポケット一杯の弱音を 集めて君に放った
強がりの裏のウソを 放った ぶちまけた終電を告げる放送 慌てて駆けて行く人
右手に君の左手 もう離さなきゃ…
改札をぬける時「最初で最後のヒト」
そんな言葉が浮かんだ 言わないで 行くとしよう最後に振り返ろう 確かめたいコトがあるんだ
やっぱり君は笑った 別れの傍で笑った
つられて僕も笑った 「また会えるから」って確かめるように
やっぱり僕は唄うよ もう一度叫び唄うよ
今まで一度も使うことのなかった 言葉を混ぜて
スポットライトの下 低いステージの上
改札で言わなかった あの言葉に もう1つ言葉を混ぜてこう呼ばせてくれないか
「最初で最後の恋人」
この歌が 部屋のドアを叩きに来たって 胸を張れるから