152
gattu 投稿日:2002/04/27(土) 01:08
カタンコトンカタンコトン・・・・・・
主人公田中学(たなかまなぶ)は有名なK大学に3浪のち合格し
4年ぶりに合格報告のため実家に帰ってきた。(急に帰って親をびっくりさせてやろう)
と、いう気持ちで久しぶりに実家に帰って家族の顔を見れるというのと、
あの人に会えるというので、気分は上々だった。
都心から飛行機に乗り、そして電車を乗り継ぎ約数時間。いくつかの長いトンネルを抜けると。
やっとのどかな町並みが感じられる位に木々が見え始めた。
木々の間から見える、わずかな太陽の光を見て感動していた。
森を抜けると、そこには今はすっかり町並みは変わってしまっているけれども
見慣れた家々もありどこか。(あぁここが俺の生まれ育った町なんだ)
と、改めて自分の町の雄大な自然と、自然の恩恵、あと山の圧迫感を感じ俺は。
(ここの景色はいつまで経っても変わらないなぁ)
などと、考えていると自分の降りる駅がうっすら見えて来た。
アナウンス「まもなく◯◯ー◯◯ーお忘れ物のございませぬよう
ご注意くださいお出口右側です」「よし!!いざゆかん我が故郷」
電車が止まり、ドアーが開き、最初の一歩を踏み出した。
電車内の汚い空気を吐き出して、
この町の記憶を思い出すかのごとく大きく息を吸い込んだ。この町の甘酸っぱい過去・苦い過去・辛い過去それらを思い出して、
ちょっと泣きそうになっている所へいきなり口の中に虫が入ってきて
むせてしまった。この町はそんな町。そんな良い思い出は、この町にはそんなに無かった。
ただ一つをのぞいては・・・昔は体力が無くて、見るからにガリ勉タイプの俺は
いつもいじめの対象だった。
そんな時いつも助けてくれたのは、
隣に住んでいて、わんぱくな彼女だった。
今回の帰郷の目的は9割は彼女に会いに来たと言っても過言ではない。にやけながら車掌さんに切符を渡した時急な喉の渇きを覚え、
ジュースでも買おうと思い、
待合室と売店が一緒になっている所へ行って売店横の自動販売機でジュースを買い、
ついでにガムを買おうとして売店に近づいた瞬間。「あっ!!!」
小さな村なので俺が受験に東京へ行ったのも3浪しているのも、
みんな知っているはずだから、(電話でみんなに知らせたと言っていた)
驚くのも不思議はないと思い、ガムを手に取り売店の娘に(さっきのあっ!で娘だと判断)
「これください」と言って顔を上げた瞬間は、そこに誰がいたのかわからなかったが
そのかわいい娘が誰なのかを、認識するには、そう時間はかからなかった。小さな村なので俺が受験に東京へ行ったのも3浪しているのも、
みんな知っているはずだから、(電話でみんなに知らせたと言っていた)
驚くのも不思議はないと思い、ガムを手に取り売店の娘に(さっきのあっ!で娘だと判断)
「これください」と言って顔を上げた瞬間は、
そこに誰がいたのかわからなかったが
そのかわいい娘が誰なのかを、認識するには、
そう時間はかからなかった。「学君だよねぇ」
「えっ・・そっ・・そうだけど・・・お・・・お前・・・なつみ・・か・・・?」
「そうだべさーお久だねー」
「そうだなぁ約4年ぶりか」
「戻ってきたということはもしかして合格したんだべか?」
「バッチシだよ」
と、言った後になつみは顔を下に下げ一瞬暗い表情をしたが
すぐに明るいいつものなっちに戻って「待ってて、6時頃には仕事終わるから」
その申し出に俺は二つ返事でOKを出した。
そのとき額から出ている大量の冷や汗に僕はきずかなかった。OKは出したけれど6時頃まではあと2時間はあったので、
俺はなつみに、ここで待っているのか?との問いに。なつみは俺に、
駅前の公園で待ってて、と言ってきたので、
(公園?なんだそれ?)疑問に思いながらもとりあえず外に出ることにした。外に出て見るといきなり、ここでは考えられないような風景が目の前に広がってきた。
そこは公園になっていてその中心には巨大な噴水が存在していた。
その風景は電車に乗っている時には、うまい具合に駅に隠れていた。
俺はこの公園が出来たことも知らなかったので、
この日の天気が快晴ということもあり、
気分はこの青々と広がった空のようにさわやかであった。しばらく公園を見回し、噴水の下のベンチで一休みしていると、
長旅の疲れからかウトウトと眠ってしまった。意識が戻ったときには右頬が引っ張られる感触がして、ふと目を開けてみると。
そこにはなつみがつねりながら超至近距離で笑っていた。
「もう・・・やっと起きた、ずっとつねってたのよ」
どうやらわんぱくぶりは昔と少しも変わっていないらしい・・・俺は寝ぼけ眼で意識がハッキリしないで、ぼーっとなつみを見ていた。
するとなつみは頬を赤らめて、「何見てんのよーもう」
と怒って腕に一発猫パンチを繰り出してきたが、顔は笑っていた。
「よし、そろそろ行くか」
俺は4年も経っているのにも関わらず、何も変わっていないなつみを見て、
幸せを噛み締めていた。俺の家は駅から30分位の距離があるので、歩いて行くことになった。
なつみはチャリがあるのだが、俺のペースに合わせ歩いてくれた。二人で一緒に100b位しかない駅どうりを何気ない会話をしながら歩いていくと、
花屋の前でなつみが止まった。「ねえ学、せっかく帰るんだから、真琴ちゃんに花でも買って行きなよ」
真琴は一番近い中学に通っている、中学三年生だ。
もう高校入試試験は終わっているので家で休んでいるはず。「なっち君、それは良い考えだ座布団を一枚あげよう」
「やったー」
「これで座布団10枚ですので2002年府中の旅を・・・(略)」そう言いながらフラワーショップ【里田】に立ち寄った。
今日の分
花を数本買い、駅どうりを抜けると豊かな田園風景が広がっていた。
多少砂利が混じったアスファルトの真ん中を歩いていた。「いつまで居られるの」
「明日には出なきゃいけないんだ?」「そう・・・」
「ごめん帰れる時にはなるべく帰るから」「いやそんな・・・無理しなくてもいいよ、だって・・・」
「だって?」「・・・」
「だってってどういうこと?」「・・・」
「ねえってば」「うるさいなぁ」
「・・・」
「・・・」赤い太陽が今まさに山に体を沈めようとしている時、
僕は・・・なっちの・・・いやなつみの、4年という月日を感じていた・・・「・・・」
両方とも全く会話のないまま日が暮れ、外灯がポツンポツンと、
光を発し始めた。
最初に手前にある俺の家に到着した。
「じゃあな」
「・・・」
なつみは無言でトボトボと寂しそうに、隣にあるなつみの家に、
ゆっくり消えていくのをただ黙って見ているだけだった。その後俺は家族に暗い顔を見せる訳にもいかないので、
立ち直るのに(テンションを上げるのに)10分かかってしまった。
意を決して家のインターホンを押した。ピーンポーン
音が鳴ってしばらくするとガチャという音とともに、
見慣れた母の顔が目に飛び込んできた。家の中に通されると、リビングにちょっとショートボブな黒髪でとてもスレンダーな、
女の人が座っていたので、「母さんお客さんが居るの?」
そう言いながら近づいてみると、
その黒髪美人は「ひどいなぁお兄ちゃん」と言いながらこっちに振り返った。(俺の事をお兄ちゃんと呼んだということは・・・まさか!!)
「お前・・・真琴か?」
「本当に忘れていたの?お兄ちゃん」当時中1の姿しか見ていない俺にとっては、すごく魅力的な姿になった真琴を見て、
ただ呆然と時間の流れを感じていた。「お前綺麗になったな」
「ありがとうお兄ちゃん」
「これお前に買ってきたんだ」
「わぁ、ありがとうお兄ちゃん」真琴は花束を受け取り花瓶を探して家の奥の方へ消えていった。
その後は久しぶりの家族との再会を楽しみ、その話は尽きることなく、
家族全員寝る時間になったから寝ることになった。だがどこか家族のイキフン的に、
俺が帰ってきたことがあまり歓迎されていない事が何となく感じていた。2階の個室で、東京に荷物をすべて持っていって何もない(着替えは持ってきた)
フローリングスペースに急遽敷いた客用敷き布団で寝ることになった。
その敷き布団に寝る直前、昔を思い出した。
高校時代はよく宿題を聞きあいながら「電話代かからないで聞き合えるって便利だべさ」
大抵は雑談だったがそれが1日に1度の幸せな時だった。
俺はわずかの希望に賭けて窓を開けた。
俺の部屋の窓の正面にはなつみの部屋が見える。しかし今は向こうのカーテンは硬く閉ざされ姿すら確認できなかった。
ただ電気が点いているので、なつみが起きているのは確認できる。少し欠けた月と満天の星空を見ながら。まだ少しだけ残る冬の寒さに耐えながら。
なつみがその自分のプライベートを守るためのそれを、開放してくれるのを懸命に待っていたが、
ついにその遮られた心の扉が開かれる事なく、なつみの部屋は、
人工の明かりをなつみの手で消された。仕方なく窓を閉め、寒さに耐えながら布団に入った。
下がフローリングだったので、
衝撃が分散されず腰にかなりの負担をかけながら寝ることを強いられた。
それでも眠ろうとがんばってウトウトし始めた時ドアの方からノック音が聞こえた。コンコン
俺は、心臓が跳ねるぐらいびっくりして、条件反射のように上体が飛び起きた。
2〜3度深呼吸をして、冷静になってから部屋に招き入れた。「どうぞ」
ガチャッ
そこには、自分と同じくらいか、それ以上のサイズの、
でかい男物の、黒いTシャツ一枚のみを着て、真琴が入ってきた。ドアを閉め、布団の中で上体を起こしている俺の横に、背を向けて、尻を付け、
体育座りをした。真琴が座る瞬間。月明かりしか光はないが、うっすら白いパンツが見えた。
壁に、対面するような形で、こちらの目線を無視して、一回大きなため息を付いてから、
つぶやくように、一人でポツリと、話し始めた。「そんなに、安倍さんの事が好きなの?」
「いや、そんなこと、思ったことなんか・・・」「じゃあなんで、ずっと安倍さんの部屋の窓を、見ていたのよ」
俺の言葉を遮るように、真琴が続けざまに、質問を投げかけてきた。
おそらく、隣にある、真琴の部屋から見たのだろう。「そっ・・それは・・・」
「やっぱり・・・」「でも、お前には関係・・・」
「関係あるよだって・・・」「だって?」
「お兄ちゃんの事・・・・ダモン・・・それと・・・」途中の言葉は、聞き取れなかったが、その後の、「それと」が気になって、聞いてみた。
「それと、なに?」
「・・・」「なんだよ、なつみも、何も言ってくれないし、いったい何があるんだよ・・・」
「・・・」「おい!!」
肩を掴んで、こっちを向かせたとき、俺は見てしまった。
月明かりだけで、よくわからないが、至近距離に居たので、うっすら見えた。
瞳に涙を潤ませ、寂しげに、こっちを見つめる真琴の顔を・・・
「・・・」
麻琴が、目を潤ませた状態のまま上目使いでこっちを見られたので、
それ以上、何も言えず目を背ける。麻琴は涙を流しているのに気づいていなかったのか。
俺が目を背けた瞬間、初めてその《自分が泣いている》という事実を知った麻琴は、
慌てて涙を拭き、恥ずかしかったのかそれ以上何も言わずに、
スタスタと、俺の部屋から出ていった。俺は、今日起こった出来事がなんなのか、全くわからない。
答えを導くには、ヒントがあまりにも少なすぎる。
でも、考えずにはいられない。(?いったい、俺がいない間に何があったんだ。?)
(?俺が何か悪いことでもしたのか。?)
(?いや4年は掛かったけど合格してきたんだぞ。?)
わからない・・・わからないことだらけ・・だ・・・
そのまま俺は、眠りについていった。次の日。
俺は、太陽の光で、日の出と共に起きた。
カーテンがないので、おもいっきり太陽の光が、瞼を刺激していたからだ。
仕方なく起きて、リビングでテレビでも見ようと思い、
下に降りると、そこには、すでに起きて、朝食の支度をしている母の姿がある。
「あらおはよう。今日は早いのね」
「おはよう。今日も早いねぇ母さん」軽く朝の挨拶をかわし、○ざましTVを、見ていると、
次々と、(といっても父と真琴しか居ない)リビングに集まってきた。今日の朝食は、白いご飯・豆腐とワカメとネギの、シンプルな白のみそ汁
野菜は:ヒジキ・レンコン・きんぴらゴボウ
主食は:ブリの煮付け
という内容で、一般的にいう、お袋の家庭料理である。昨日は急に来たから、冷凍物で済まされたので、
これが本当に4年ぶりの家庭料理、そして家族団らん。
ブリを一口食べて一言。「うまい」
母さんの料理が、こんなにうまいとは、正直思わなかった。
その後、母さんをべたぼめして、楽しい朝食タイムは終わった。その後、父さんは仕事へ行き、
母さんは忙しいと言って2階に閉じこもりで何か片づけっぽいことを始めた
真琴は中学を卒業をしているので、
家に暇そうにじゅうたんにゴロンとして一緒に○なまるを見ていた。「なぁ、真琴」
「ん?なに?」真琴は昨日の事など全く感じさせない、
明るく美しい笑顔でこちらに微笑みかけてきた。「お前高校何処に受けたんだ?」
「一番近い高校。ニヤリ」最後のニヤリはわからないが、
ここから一番近い高校は、電車で乗り継ぎ2回で約1時間半。
大変だったなぁあの頃は・・・高校の思い出に浸っていると、真琴の方から話しかけてきた。
「お兄ちゃんいつ帰るの?」
「正午の列車に乗って帰るんだよ。お見送りよろしくな」
「はいよ!!」ずーと真琴とたわいもない話をしていると、
あっという間に出発の時刻になってしまった。家を出て真琴と雑談しながら駅に向かう途中、
フラワーショップ里田の前に立ち止まった。真琴が2〜3歩、歩いてから不思議そうな顔をしてこちらを振り返った。
すでに花を選んでいたので、真琴は怒っていた。「もう、何やってんの。もう時間ないよーお兄ちゃん」
「いやちょっと待って」
「んもう」花を買い、手を引っ張って走っている真琴に急かされながら駅に到着した。
時間は今11時55分。まだ少しだけ余裕がある
俺は真琴を改札口で待たせて売店へと走った。売店には客が誰もいなくて暇そうにしているなつみがそこにはあった。
俺は待合室のドアを勢いよく開けた。「ハァーハァな・・・なつみ。これ受け取ってくれ」
俺は普段からの運動不足を今感じていた。
学は手を膝に当て体を支えながら、右手に持っていた花を差し出した。「ごめんね、だって・・いきなり帰って来ちゃうんだもん。びっくりしちゃった」
なつみはプリティーなエンジェルスマイルで、その数本の花束を受け取った。
『ありがとう』
学はその瞬間頬に触れる暖かく柔らかい感触を感じた。
「なつみ・・・お前・・・」
お互いが見つめ合っていると・・・
アナウンス「まもなく1番線に電車が参ります」
なつみは顔を真っ赤にして。
「ほ・・ほれ電車が来たよ、ダッシュ」
なつみは背中を叩てきたのでよろけてなつみの方を見ると、
手を振っていた。「また会おうな、なつみ」
「うん」俺は、手を振り返して改札口に走った。
慌てて改札口を通過し電車に飛び込んだ。付き添いでホームまで来た真琴がこの後、
この旅一番最悪の言葉が真琴の口から語られることとなる。「あのね・・・行くから」
(ん?遊びに来るのか?)
「いつでもいいぜ。部屋2LDKだから一つ開けて待っててやるよ」
「じゃあ明後日」
「いきなりだなぁ・・まあいいや、用意しておくよ」プシューガタンガタン・・・・・・
お互い、姿が見えなくなるまで手を振るのをやめなかった。
手を振るのをやめた時。そこで俺の旅は終わった・・・
〜〜エピソード【参】帰京エンド〜〜