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剣士 投稿日:2002/06/20(木) 21:36
ある日の日曜日、俺はまだぐっすりと眠っていた、が・・突然、妹の亜依が・・・。
(ドーーーン)「お兄ちゃん、おっきろぉ〜!」
いてててて・・・いきなり体当たりはないだろ、亜依。
「げほっげほっ・・・お前な!」
「だって、今日は買い物行く約束やったやんか!そいやのに、いつもでも起きへんねもん!」
あ・・・忘れてた。
「お兄ちゃん、忘れてたやろ・・?」
げ・・ばれた。ごまかさないとうるさいな・・・。
「んなことねーよ。ちゃ〜んと覚えてらい!」
どうだ?これでごまかせたか?
「お兄ちゃん、顔に嘘って書いてるで」
・・・ダメだこりゃ・・・。
「はい、忘れてました、すいません」
ん?亜依の顔がニヤけた・・・これはまずい!
「忘れてたんか〜・・ならお詫びに、お昼お兄ちゃんのおごりやな!」
やっぱし〜〜〜〜〜〜〜(涙)で、急いでお出かけ。
「なぁなぁ・・お兄ちゃん、どこ行くぅ?」
お前、決めてなかったのかよ・・・。
「そうやなぁ・・じゃあ、ショッピングモールでも行くか」
亜依は賛成と言わんばかりに激しくうなずく。
「じゃあ、行くか・・ってあれ・・は?」
よく見ると、遠くで女性が数人の男に絡まれてる。
「お兄ちゃん!大変!」
言われなくてもわかってらぁ!
「やめてください!」
女性の叫び声が響き渡る。が、男はやめる気配なんてなさそうだ。
「んなこと言わないで、一緒にどっか行こうぜ〜」
強引だねぇ・・・女性を誘う時はもっとこう・・・優しく・・・って行ってる場合じゃないね。
「おい!やめろよ!」
こんな事言ってもやめないのはわかってるけど、一応ね。
「ああ?何だテメー!喧嘩売ってんのか?」
げ・・・やっぱ怒ったねぇ。しゃーねーな。ボコボコにされるのを覚悟で、女性を逃すくらいは・・・。
と、思ったその時!
(バキィッ!)「グアァァ!」
!?俺は目を疑った。突然現れた一人の男がいきなり蹴りをかましていたのだ・・・。それにしても・・・たった一撃でヤバそうな男たちを・・・ん?こいつは・・。
「・・・よ!加護じゃん」
今前にいるのは、小中高と、同じ学校、同じクラス、幼なじみの腐れ縁、吉澤ひとみじゃないか!
ってか、男じゃなくて女・・・。よく見間違えられるヤツだけど、俺まで間違えた・・・。
「・・あんた、今私を男だって思ったろ?」
女って何でそんなに鋭いの?だって・・・
「あまりにもかっこよく現れるから・・・」
「何年友達なんだ?・・・いい加減間違えるなよ〜」
その、ハスキーボイスと、男口調なら、誰でも間違えるわい!
「お久しぶり〜!ヨッスィー元気やった〜?」
そうか・・・亜依とひとみは仲良かったっけ・・・。
「ああ、元気。亜依はあいかわらず・・・だね」
そ、相変わらずウルサイウルサイ・・・。
「お兄ちゃん!誰がうるさいやてぇ?」
冗談だよ・・・。
「じゃあ、私はこれで・・・」
お、おい。もう行くの?って・・・ったく、かっこよく現れて、サッと消えるんだもんなぁ。
「あの〜」
あ、助けた女性、忘れてたよ(汗)「あ、ありがとうございます。助けてくれて」
いや、俺じゃないけどね、助けたの。
「いや〜・・いいっていいって。あ、俺は加護慎一。よろしく」
何自己紹介してんだろ・・・俺。
「あ、ウチは加護亜依〜」
「ふふふ・・・仲のいい兄妹なんですね。私は石川梨華っていいます」
なるほど・・・梨華ちゃんね。
「しっかし・・・いきなりあんなんに絡まれたの?物騒だなぁ」
「はい・・何か、ナンパされて、断ったらああなって・・」
はは、断られて逆上ね。
「ほんなら、あいつらアホやん」
亜依、間違ってないけど、ストレートすぎ。
「まあいいか。無事だったし・・・これからどうするの?」
「あ、ショッピングモールに行く途中だったんです」
あ、俺たちと同じか・・・。!いいこと思いついた。
「じゃあ、一緒に行きませんか?俺たちもそこに行くんで」
「ええ?邪魔しちゃ悪いですよ・・・」
ん?邪魔?・・ああ、亜依のことね。
亜依、何か不機嫌そうな顔・・・。
「ええよぉ〜、一緒に行こう〜」
・・・目の錯覚だったか。
「じゃあ、お言葉に甘えて・・・」
よっしゃあ!って・・俺何で喜んでるの?(^^;)う〜ん・・・石川さんと亜依と一緒だと、何か、人の目が気になる。
そりゃそうか・・。亜依は学校で大人気だし、石川さんも可愛いしな・・・。
「?どうかしましたか?」
あ、あまりにジっと見過ぎたか。
「ど〜せ変なことでも考えてたんやろ?まったくもう」
亜依・・お前は・・・・。
「そんなんじゃねーよ!ったく・・・」
「ふふふ・・仲がよろしいですね」
はぁ?何いってんだ?この人は・・・。
「喧嘩するほど仲がいいって言いますし」
それは違う・・・・。仲・・・いいのか悪いのか微妙なんだよな・・・。
「で?何買うんだ?」
目的をすっかり見失いそうになったので、とりあえず聞いた。
「ん〜・・・そやなぁ・・・時間も時間やし・・・」
亜依が言おうとした瞬間
(ギュルルルルルル〜)
何の音?って・・・石川さんのお腹から?顔真っ赤にしてら・・・。
「了解、昼飯やな」
亜依も石川さんも賛成、と言わんばかりの笑顔だ。
「じゃあ、ここのファミレスでも入ろう」ファミレスに入って・・・30分。テーブルの上には・・皿が大量。
「ごちそうさまぁ〜」
「ごちそうさまでした」
俺は固まってしまった。亜依の食欲は知っていたが・・ここまでとは・・・。
まさに「私の胃袋は宇宙や」と言わんばかりの顔。
「・・・・亜依、お前・・・・食い過ぎだろ・・・」
やっと絞り出した言葉がこれ。
「ええやん、育ち盛りなんやしぃ〜」
育ち盛りでも、この皿の数は・・・。会計・・・万単位・・・。
「あの・・・私も出します」
んん?石川さん優しいねぇ・・・。
「いいよ。俺が出しとくよ」
何見栄はってんだ、俺・・・。
「すいません・・・ありがとうございます」
石川さんの可愛さに免じて許す!
で、会計をすませたあと、3人でブティックへ。
俺はあんまり服に興味ないから、亜依と石川さんのやりとりを見てた。
「これなんかウチにええと思うけど」
「あ〜亜依ちゃん似合うよ!」
「そう?ありがと〜!じゃあ、梨華ちゃんはこれ何かどう?」
「あ、可愛い〜!」
・・・元気だねぇ(^^;)石川さんも凄くイキイキしてら。
「お兄ちゃん!おまたせ〜」「おまたせしました」
お前ら・・・何だその両手の荷物は。買いすぎだよ。
「へへ〜!いろいろ買えて満足!お兄ちゃんありがとね〜!」
もちろん、亜依の支払いは俺。結構値がはるなぁ。
「私、今日は凄く楽しかったです。」
おお、そりゃよかったねぇ。
「ウチも楽しかったでぇ」
オメーは意味もなく毎日楽しいだろ・・・。
「あの〜・・・慎一さんは、学校はどこですか?」
「?ああ・・・○○高校、1年5組。亜依は中等部」
「ええー!私、そこの2年6組」
なんと、同じ学校だったのね〜。
「じゃあ、これからも会えますね!じゃあ、今日はこれで!」
「じゃあな!」「バイバーイ!」
「ふう・・・ん?亜依、何でそんなにピッタリくっつく?」
突然、亜依が腕にしがみついてきた。
「へへ〜・・・だって、お兄ちゃんと二人きりやねんもん」
また・・・こいつは甘えて・・・。
「じゃあ、帰るか」
「うん!」
そして俺たちも、帰り道を急いだ。翌日、学校、昼休み・・・。
「慎一く〜ん」
ん?このアニメ声は・・・
「石川さん!どうしたんですか?」
そう、教室に突然現れたのは、石川梨華。
「あのね、お昼、一緒に食べない?」
何をいきなりいいだすんだ、この小娘は!(俺より年上だけどさ)
「べっ・・・・別にいいけど・・・」
こんなクラスの皆の前で言われたら、動揺隠せないよ・・・。
「やった〜!じゃあ、屋上行こっ!」
・・・そんなに喜ぶことか?
「よ〜!凄い可愛い人じゃねーか〜。いいよな〜オイ!」
茶化すなよ・・・。
「そんなんじゃねーって!ただの知り合いだよ」
真っ向から否定してしまった俺。と・・・
「ただの・・・知り合い?」
何でそんな悲しそうな顔すんだよ・・・。
「友達じゃないんですか・・・?」
ん!ああ・・・そーいうことか。
「そうだな・・・うん、俺たちは友達だ」
この言葉で石川さんの表情はパッと明るくなった。
「そうですよねっ♪じゃあ、屋上へ行きましょ!」
・・・やれやれ・・・。そして、屋上に到着・・・。
「ヘ〜イお二人さん、お熱いね〜」
このハスキーボイス+中途半端な英語混じりは・・・。
「吉子じゃあ、火傷しちゃいそ〜」
吉澤・・お前まで茶化すのか?
「お前な・・・そんなんじゃないっつーの!」
「あ、あなたは・・・。私を助けてくれた・・・」
そーいえば、石川さんを助けたのは、吉澤だったな。
「ああ・・そうだったね。・・・石川さんだっけ?ちょっと来てくれない?」
何シリアスな顔してんだ、吉澤。
「え?あ、はい・・・」
と、二人は俺から離れていった。
「ねぇ・・・慎一のことどう思ってるの?」
「え?!いや・・どうって・・・別になんとも・・・」
何動揺してんだろ?う゛〜・・・聞きたい。
「・・ならいいの。中途半端な気持ちで慎一にちょっかいだしたら・・・許さないからね」
何か恐いよ、吉澤・・・表情が。
「は、はい・・・わかりました」
石川さんもびびってるじゃん・・・。
「じゃあ・・慎一、またね〜」
何だったんだろ?一体。
「石川さん、何が・・・?」
「え?いえ・・この前のことですよ、うん。それより、お昼たべましょ!」
それもそうだ。時間もなくなってきてるしな。
「早いとこ、食おうか。」
そしてその後、石川さんと楽しい昼食時間を過ごした。でも、吉澤一体なんだったんだろうな・・・?
俺は午後、吉澤の行動について考えていた。
(何であんな恐ぇぇ顔してたんだ?石川さんと何かあったのかな・・・?)
そんなこんな考えていたら・・・学校終わり。
「お兄〜ちゃん」
亜依がクラスにやってきた。まあ、言いたいことはわかるのだが・・・。
「一緒に帰ろ!だろ?いいよ」
もう、いっつもいつも来るので、見透かしてしまった。
「へへ〜・・・じゃあ、帰ろか!」
何で友達とかえらねぇんだ?と思っていたら、亜依は腕を組んできた。
「・・・ったく、甘えて」
口調は怒ってるが、実はちょっと嬉しい罠(爆)
「ええやん!お兄ちゃ〜〜ん♪」
亜依は気が強かったり、おもしろい部分もあるが、俺には甘えた部分を出してくる。
そこが可愛いのでもあるが・・・。
そして、家に帰ってくると、亜依がいきなりトンデモナイことを言いだしたのだ!「ねぇ〜・・・お兄ちゃん」
甘えていた態度が、さらに悪化(?)
「な、なんだよ」
さすがの俺もドキドキしたりあたふたしたり・・・。
「一緒にお風呂はいろ♪」
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
じゃなくて・・・ナンダッテ━━━━━━(゚∀゚;)━━━━━━ !!!!!
「お前何言い出すんだ!」
さすがの俺も嬉し・・じゃなくて、怒る。
「ええやん・・・たまにはさ〜・・・ウチ結構成長したよぉ〜」
そう言う問題じゃねーーー!
でも・・・男として・・入りたいって気分も・・・。
いやいやいや!いかん!理性を保たないと・・・。
「ダ・メ・だ!」
必死に「いいよ!」という言葉を抑えた。
「・・ちぇっ・・もうエエわ!」
と、亜依はイジけながら風呂場に行った。
ふう・・・危なかった。でも・・・・ちょっともったいなかったな・・・。
(トゥルルルルル♪)
あ・・・電話だ。
「もしもし?」
「あ・・もしもし?吉澤だけど」
あん?何だ突然・・・しかも吉澤から電話なんてめずらしい・・・。
「何か用か?」
「うん・・・えっとね・・・ちょっと聞きたいことあるんだけど」
・・・いつのもなく、女性っぽいな・・・どうしたんだろう?「なんだよ・・・らしくねぇな。何だよ?」
いつもなら、ズバっと聞いてくるのに、何か、らしくない吉澤。
「あの・・ね・・石川さんのことどう思ってる?」
・・・?何いってんだ?
「突然なんだよ・・・?」
「いいから!どう思ってるの?」
・・いつもの口調の荒い吉澤に戻った。
「・・別にどうとも思ってねぇよ。知り合ってまだわずかだぜ?」
何故こんなことを聞いてくるのか、と思いつつも、まじめに答えた。
「そう・・ならいいんだ!ねぇねぇ!明日放課後ヒマ?」
ならいいって何が?と聞こうと思ったが、うるさい!って言われそうなのでやめた。
「ああ・・ヒマだけど?」
「ならねぇ、美味しいパン屋さんができたんだよ!一緒に行かない?」
パン。吉澤にとってパンとは、ベーグル以外あまり見えていない。
ベーグルを食べてるときの吉澤の顔、もの凄く幸せそうな顔をしている。
「へぇ・・行ってみるかな・・・」
俺もパンは好きだから、断らない。むしろ、断った後の吉澤が恐いからってのも理由だが(w
「やった!じゃあ、二人で行こうね!誰にも言っちゃダメだよ!じゃね!(ガチャッ)」
・・・二人で?他を誘わないのか?ま、いっか・・・。
「お兄ちゃん〜。電話誰から〜?」
お、亜依だ。って、お前!タオル一枚かよ!
「お前なぁ!服着ろよ!恥じらいねぇのか?」
タオル一枚、あとは何も着けず・・。ハァハァいいそうだが、妹だ!ということで理性を抑えた。
「エエやん〜。兄妹なんやし。あ、お兄ちゃん照れてカワぇぇな〜」
オバハンか、お前は。・・まあいい・・。
「電話は吉澤から。ちょっと雑談だよ」
まさか、石川さんのことどう思う?とか聞かれたなんて言えない。
「ふ〜ん・・まあエエわ」
そう言ってまた洗面所に戻っていった。
「ふう・・・まったく亜依のヤツ」
俺はそうブツブツ言いながら、ジュースを一杯グイっと飲んだ。翌日の放課後、吉澤と共に、新しくできたパン屋へ。
「ホントにここのパンうまいの?」
念んを押して聞いた、すると・・・
「(バシッ!)美味しいって言ってるだろ?少しはアタシを信じてよ」
何も殴らなくても(涙)
で、とりあえず入ってみた。
「何にしようか・・・やっぱ俺の基本はカレーパンだな・・・」
「あはは・・・慎一は昔っからカレーパンだもんね〜」
幼なじみだけあって、よく知ってるんだよなぁ。
(忘れたいことまで覚えてるからよけいタチ悪い)
「アタシはやっぱ・・ベーグル〜」
やっぱりね・・・。ベーグルに目がないんだもんねぇ・・・。
「ありがとうございました〜」
俺たちは食べたいパンを買い、ジュースを買ってから、公園へ。
「じゃあ、食べるか・・・」
「いったらっきま〜っす!」
こん時だけ、可愛い少女に見えるな・・・。よっぽどベーグル好きなんだろうな。
「(モグモグ)そういえばさ・・・」
「(ハグハグ)ん?」
昨日のこと、あまりにも気になったらから聞くことにした。
「何で昨日さ、あんな電話してきたんだ?・・・言いたくなかったらいいけどよ」「聞きたい?」
聞きたいから聞いてるんだろうが・・・。
「ああ・・・もちろん」
すると吉澤はベーグルを食べるのをやめて、真面目な顔でこっちを見た。
「何かさ〜・・・慎一と他の女が仲良くしてるとさ・・・気になるんだよね」
あん?どゆことだよ?
「・・嫉妬しちゃうんだよね」
え・・・・?一体何言ってるんだ?吉澤・・・。
「私だけ見ててほしいんだよ!わかる?」
「おい・・それって・・おま・・。!」
口がふさがれた。吉澤の唇で。
−キス−
突然の出来事だった。
「これが・・・私の気持ち。・・・それじゃあね」
と、吉澤は去っていった。
気持ち?吉澤の気持ちがキス?どういうことだ・・・?
・・まさかと思うが、吉澤は俺のこと・・・?
それが頭に浮かんだ瞬間、嬉しい気持ちもあった。
優しいし、男勝りだけど、いじらしい、可愛い。
でも・・・何だ?何故俺は困惑してるんだ?
・・・わからない・・・。
とりあえず、俺は家に帰った・・・。「ふぅ〜・・・」
俺は家に帰ってもまだ吉澤とのことを引きずっていた。
(お兄ちゃんどないしたんやろ?)
亜依も影から俺を見守る。俺はその視線に気づいて、亜依を呼んだ。
「亜依・・・実はな・・・」
俺は吉澤とのことを洗いざらい話した。亜依は驚いた・・・がその後、真剣な顔で
「ヨッスィーはお兄ちゃんのこと好きなんやで。絶対そうや!」
亜依は少々怒りながら答えた。俺も少しはそーいうのはわかっていた。
「だけど・・何か・・・吉澤は彼氏いるじゃないか」
そう、吉澤は一年ぐらい前から彼氏がいる。俺はそれを知ったとき、やりきれない思い出でいっぱいだった。
「それがなぁ・・噂では何かうまくいってないらしいで。何かもめてるらしいし・・」
・・・そんな話があったとは・・・。
「・・それに、俺は石川さんのことが気になるんだ」
「ええ?・・知らんかったんか?石川さん、転校すんねで?」「何ぃ?」
俺は情報にうとい、という悲観と、石川さんが転校?という思いの中で混乱していた。
「確か・・明後日に出発とか・・」
「そうか・・なら・・俺、告白してみるか・・・」
「ほんなら、ヨッスィーはどないすんねん?」
・・・断る、だろうな・・。石川さんがダメなら、ということは考えられない。
「なるほどねぇ・・・」
と、その時、俺の携帯が鳴った。
「もしもし?あ、石川さん・・どうかしました?」
「大変なの!ヨッスィーが、ヨッスィーがぁぁぁ!」
石川さんはとても錯乱していた。一体何があったのか?それに・・吉澤が何だ?
「落ち着いて、何があったんです?」
「実は・・私と初めて会ったとき、絡んできた人がいましたよね?」
ああ、そういえば・・・それが何だ?吉澤と何の関係がある?
「実は、また私に変なことしてきて、それを助けようとしてくれた吉澤さんが、8人ぐらいの男に・・」
「何ィィィィィ!」
それを聞いた瞬間、俺は弾かれたように家を出た。亜依が俺を呼んだがかまってられなかった。
自転車をこぎ、石川の家へ。
「ハァ、ハァ・・・石川さん!」
もう、告白や転校のことは消えていた。
「慎一さん!ヨッスィーがぁ・・・」
「落ち着け!吉澤はどこだ?どこに連れて行かれた?」
石川よりも、俺の方が興奮していた。
「あ・・・確か、町の外れの工場とか・・・」
俺はそれを聞くと、自転車に乗り込んだ。
「慎一さん!ヨッスィーをお願い!」
言われなくても・・の思いだった。
「ああ!もちろんだ!吉澤の親や、警察に連絡しとけよ!」
そして俺は自転車をとばした。
(吉澤・・・絶対、俺が助ける!待ってろよ・・・命にかえても、助けるからな!)そして俺は、町はずれの工場に着いた、と・・・中から声が・・・。
「きゃあ!ううっ・・・」
吉澤の声だった。何かされてるようだ・・・。
「へへ・・・男みてぇな言葉使いだが、体は女じゃねーか」
どうやら・・・何か変なことをされているようだ。
(クッソー・・・!吉澤・・・。)
俺はすぐにでも助け出したかった。しかし・・・俺一人で数人は相手にできない。
しかし警察を待つとなると手遅れになるかもしれない。
(クソ!考えろ、考えるんだ!・・・そうだ!)
その時、俺の中の悪知恵が働いた。
(これなら、俺も吉澤も助かるかも・・・)(まずは・・・ヤツらの気をっそらさなきゃ・・・)
俺は空き缶を拾って、そして俺のいる反対方向へ投げた。
(カンっ!カラカラコロ・・・)
「誰だ!」
その男達は、単純で、空き缶の鳴った方向へ行ってしまった。
(よし・・・いまのうちに・・・)
俺はヤツらが戻ってこないうちに、吉澤の所へ。
(おい、吉澤!)
(しっ・・慎一?どうしてここが・・・?)
(話はあとだ!あいつらが戻ってこないうちに)
俺は吉澤の腕に結ばれてあったロープをほどき、解放した。
「ふぅ・・・よし、逃げる・・・!!!!あぶねえ!」
俺は吉澤を突き飛ばした。と、吉澤の後ろにいた男が、鉄の棒を振りかざしていた。
(ドカッ!)
「う・・・・ぐ」
俺は吉澤をかばい、頭を殴られた。
「慎一ーーーーーーーーーー!」
吉澤の叫び声が、工場に響き渡った。
俺は意識が遠くなってきた。
(あ・・・意識が遠いや・・・まあ、吉澤助けたし、いいか・・・)
「ケッ!女をかばって騎士気取りか?バカめ」
「(ブチッ)なんですって・・・・!慎一をバカよばわりしたわね・・・!許さない!」そこから先は、俺もよく覚えていない。
ただ・・男達が酷く吉澤に殴り飛ばされていた。
吉澤・・・空手・・・2段だったか・・・。
じゃあ、最初から油断しないで倒しとけよ・・・。
「やああああああ!」
(ドガッ!バキ!ボキッ!)
おいおい・・・骨折れたか?
(ウゥゥゥゥ!ピーポーピーポー)
俺が突入して、30分後、ようやく警察&石川が。
「ヨッスィー!大丈夫!?」
「私は大丈夫だけど、慎一が!」
その時の俺は、頭から出血していた。
すぐに病院→集中治療室へ運ばれた。
吉澤は警察で事情聴取を受けた後、病院へやってきた。「梨華ちゃん!慎一は?」
石川は暗い表情で、首を横に振った。
「まだわかんない・・・けど、かなりマズイって・・・」
吉澤は泣き崩れ、石川さんも涙をこぼした。
「私のせいだ・・・私があんなヤツらに捕まれなければ・・・」
「ヨッスィーのせいじゃないわ!私が・・・もっとしっかりしてれば・・・」
と、二人が自分を責めていたその時、治療室の扉が開いた。
「先生!どうなんですか?」
医者はにこりとも笑わなかった。
「なんとか大丈夫です。命は助かりました」
吉澤と石川は手を取り合って喜んだ。が・・・・・・。
「ただ、もしかしたら、頭を強打されているので、記憶喪失の可能性が高いかと・・・」
喜びが、再び悲しみに変わった。
「え・・?記憶が・・・?そんな!先生!どうにかならないんですかっ?」
「こればかりは・・・本人次第かと・・・」
石川と吉澤は再び泣き始めた。その頃俺は、二人が悲しんでいるのも知らず、意識がない状態であった・・・。俺が意識不明のまま、二日が過ぎ、とうとう石川さんの引っ越しの日。
石川さんは出発の前に、病院へやって来た。
そこには吉澤の姿も。吉澤はずいぶんやつれていた。
「あ、ヨッスィー・・・・大丈夫?ずっと見てたんでしょ?」
そう、吉澤は俺のことをずっと見てたのだ。
「うん、大丈夫。それにね・・・こうやって顔じっと見るのも悪くないかな・・・って」
おいおい、こっちは意識ないんだぞ!不謹慎じゃねーか?
「何でぇ?」
「だってね・・・慎一はいつも一人で突っ走って、私、追いつけなかった。それに、こんなにずっと一緒にも居られなかった。だから・・・・・・ね」
・・・そうか・・・そういえば、吉澤と一緒にいることって、最近なかったっけ・・。
「ヨッスィー、慎一君のこと好きなの・・・?」
こ、こらぁ!何をいっとるか!この人は!
「うん・・・だから、梨華ちゃんと慎一が仲良くしてると不安で・・・」
・・・・うそぉ!んなアホな・・・。
「あ、私は何とも思ってないから。彼氏いるし」
フラレちゃったよぉぉぉぉ!(w
「そうなんだ・・・。私、告白しようかな・・・」
吉澤がフッと・・・可愛い顔になった。
「・・まったくもう、こんなにヨッスィーが思ってくれてるのに、慎一君はいつまで寝てるのっ!」
(ドガッ!)
・・おいおい、瓶投げるな!
「う・・・ぅ・・・ん」
目覚めちゃった。なんちゅう・・・・・こっちゃ・・・。
「慎一!」「慎一君!!!!」
「何だよ・・・・ひとみ、梨華・・・」俺は目を覚ました。
石川は飛んで喜び、ひとみは泣いた。影から亜依も泣いていた(いつ来たんだよ?)
幸い、記憶も正常で、後遺症もない。
傷は残るが・・・・。
石川さんは安心して引っ越しのため車に乗って出発した。そんなこんなで一週間、俺は、病院の屋上にいた。
「あ、慎一」
ひとみがひょっこり現れた。何かモジモジしているが・・・。
「何だよ?何か用か?」
ぶっきらぼうにワザと聞いてみた。と・・・・・。
「あのね・・・私・・・慎一が助けに来てくれて嬉しかった」
「あん?・・・ああ・・あれは・・・だな・・・そう・・・うん」
俺もハッキリしねぇな。・・・実は俺、ひとみに告白したいけど・・・緊張しちまって・・・。
「それでね・・・その・・・(グッ)私、慎一のことが好きなの!!!!!!」
アンビリーバボーーー━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━!!!!!
「・・マジか?俺もそれ言いたかったんだけど・・・」
ひとみは顔を上げ、涙を流した。そして、怪我人の俺に飛びついた。
「おいおい・・・いてぇよ」
「絶対離さない!・・・私とずっと一緒にいてね・・・」
抱きしめられたまま、俺は返事をした。
「当然だろ?俺はひとみがこの世で一番大事だからな」〜END〜
番外、梨華のキモチ
(あ〜あ・・・何であんなこと言っちゃったんだろう?)
石川さんはなにかずっと後悔していた。
(私、彼氏とはずっと前に別れたのに・・・慎一君のこと好きだったのに)
あらら・・・もったいねぇな・・・(ひとみに告白される一週間前なのに)
(キキキキィィィィィ!)
「きゃっ!何なのよ〜・・・」
車が突然急ブレーキ。何かあったようだが・・・。
「何?まったくもう・・・。!・・・」
人が倒れていた。轢いたのか?
「大丈夫?ねぇ、しっかり!」
轢く寸前で、よけて転んだようだ。
「あぁ・・・だ・・ぃ丈夫」
「ホッ・・・・」
梨華は安心した。そりゃあ、引っ越し途中で人轢くなんてかなわない。
「ありがとう。もう大丈夫・・・」
「あ、そうですか・・・(何かこの人・・・)」
梨華チャン、どないしたの?
(慎一君に似てる・・・気弱そうなトコが)
「あの〜・・・すいません、ドコまでいかれるんですか?」
「ええ?××市です」
いきなり変なことを聞く男だ。
「あの・・・俺もそこ行きたいんです・・・のせてくれません?」
「ええ?・・・・・わかりました」
おいおい・・・!
(これって・・・・新しい恋の始まりかな♪)
・・・ポジティブだな・・・ま、梨華チャンのいいトコだな。〜END〜