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剣士 投稿日:2002/07/17(水) 21:58

「Brand-New Myself〜私(僕)にできること〜」

私は自分が嫌い・・・。
イジメられるし、何かこれといって出来るワケでもない。
何で、私はこんなに生まれたのだろう・・・?
最悪の人生・・・・私は何も悪いことしていないのに・・・何でこんな人生送らなきゃいけないの?
「はぁ・・・・・」
自分を愛せなんかしない。大嫌い・・・。
「またいるよ・・・あの女・・・」
また来た・・・私をいつもいびり、叩き、あぜけ笑っていく女達・・・。
「今日も遊んであげるよ。あ・べ。ハハハハハ・・・」
もうイヤ・・・・誰か助けて・・・。
痛いよ・・・辛いよ・・・。もう・・・生きるのもイヤだ・・・。
「フン。もう倒れたの?遊びがいがないね〜!アハハハハ・・・」

私は倒れながら考えた。
生きるのが辛いなら、死ねばいいんだ・・・。
そうよ!薬なら・・・確か保健室にでもあるはず!早速取りに行こう!

幸い、保健室に人はいなかった。
睡眠薬らしきものがあったので、それを全て持ち去った。
(これなら・・・苦しまないで死ねるハズ)
そして屋上・・・しかしそこには男子生徒がいた。
(邪魔!何で人がいるのよー!)
あれ?よく見るとあの人・・・。
(泣いてる・・・)
涙をぽろぽろ流していた。情けないな・・・それでも男!?
「ちょっと!何泣いてるの?」
その男は驚いて振り向いた。
「あ、すいません・・・見られましたか」
腰低い・・・ますます情けないなぁ。
「なっさけないわねぇ・・・男のクセに」
男はそれを聞くと、みるみるうちに真剣な顔つきになった。
「ふぅ・・・誰でも辛くなったら泣きますよ。当然でしょう?あなたは泣かないんですか?」
確かな意見だった。私も辛いときは確かに泣く。
「わっ・・・私は女だから・・」
「泣くのに男女関係ないですよ」
いちいち痛い所ついてくるなぁ・・・。うっとおしい!
「だから!そうじゃなくて、何で泣いてんの?」
「・・・部活の試合に負けたから」
はぁ?たかがそんなことで泣いてたの?
「そりゃあ、あなたにとってはたかがそんなことかもしれません」
ー!見抜かれてる。

「でも・・・俺にとっては大事なものだったんです」
真剣な顔・・・何で?部活なんて、そんな大事?
「俺、イジメられっ子だったんです、昔。・・・でも、イジメられんのは自分が弱いからだ!と思って、空手始めたんです」
イジメられてた・・・今の私と同じだ・・。
「6年。6年やって、強くなったかな?と思ってました。地区大会で優勝して、今までイジメをしてきたヤツらと仲良くなって・・」
私はいつの間にか、この男の話の世界に引き込まれていた。
「でも、県大会に出場したら、1分で負けた。6年の努力がたった1分ですよ」
努力が1分で・・・わかる気がする。頑張って、頑張って・・・それでも負けて。
私ならもうイヤになるだろうな。
「それでも、俺はやめる気がしないですよ。自分が強いなんて思ってませんから」
「ええ?どういうことなの?」
ワケがわからない・・・この人。

「本当に強いってことが、まだわからないです。強いって何か・・・わからない。だから負けたんですよ。技術面も確かに重要。でも、もっと大事なのは、精神面なんです」
「精神・・・面・・・」
男は立ち上がり、フっと笑った。
「俺は空手を投げ捨てたくありません。イジメられてた時も、人生を捨てなかった」
私・・・は今、人生を捨てようとしている。
「もったいなかった。まだどうなるかわからない人生なのに、もったいないじゃないですか」
今は絶望・・・でも、まだ希望が残されているの?人生には。
「希望なんて石ころのように転がってます。だから・・・・」
「え?」
男は屋上の出口に向かいながら、こう言った。
「手に持ってる薬で、死のうなんてしなほうがいいです。あなたにはあなたのいい所があるのだから・・」
・・わかってたんだ・・・私が自殺志願だってこと。
「それと・・・せめて同じクラスの人間ぐらい覚えてくれ。安倍なつみさん」
え!?同じクラス?・・えーと・・・あ!思い出した。
工藤涼君、クラスで成績トップで、空手部のキャプテン・・女子には、絶大な人気がある人。
「だめな自分を愛せはしない・・・それは確かだ。でも、強く生まれ変わることだってできる。誰だって、スゴイ人は見えない涙があるんです。
でも、そうやって人生を走り続けてる人には、熱い心があります。
何かやろうと決めたら、零にはしない。体ひとつで困難にブチ当たるしかないんですよ。」
・・・説得力がスゴイある。工藤君の言う通りだ。私は逃げてばかりいた。
「世間には、心のキレイなヤツばかりじゃない。でも、自分の心も弱くはないと言い聞かせてください。
あ、それと、あなたは歌が上手だ。・・・歌手目指してもいけると思いますよ?キレイだし」
そういって、工藤君は去っていった。
私が歌手?確かに歌は好きだけど・・・。
そういえば、確かもうすぐオーディションがあったな・・・・。
受けてみよう!自分を変えるために!工藤君の言ったことをを信じてみよう!

そして、半年後。
私はモーニング娘。というグループに入った。
そして入ってから5年もたつ。
私は娘。に入ってすぐ、工藤君にお礼を言おうと家に向かった。
しかし・・・・工藤君は亡くなっていた。
交通事故。幼稚園児を守ろうとして、代わりに車に轢かれたそうだ。

(工藤君・・・私、変わったよ。イジメられっ子で、どうしよもなかった私がアイドルだよ?
友達も出来たし、親友も出来た。何にも代え難い仲間をみつけたよ。
工藤君に直接褒めてほしかった。でも・・・仕方ないよね?もしあなたがここにいたら、
『クヨクヨすんな!』って言ってるよ。私、もっと頑張る。まだ満足してないもん。
だから、工藤君・・・天国から見ててね!)

「なっち〜!レコーディング始まるよ!・・・どしたの?」
「ん?ううん、何でもないよ。ちょっと昔のこと思い出しただけ。じゃあ、行こっか、カオリン」
「うん、皆を待たせちゃいけないもんね」

(私、もっと日本の皆に夢をあたえるよ。ダメな自分を愛せはしない。でも、強く生まれ変われ!って、
工藤君が教えてくれたことを、皆に教えるよ!)

「Brand-New Myself〜私(僕)にできること〜」終わり。