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元作者A 投稿日:2002/08/05(月) 12:12

家を出る直前。「また逢えるよな」との質問に、
彼女は「暇ならね」と、そっけなく答えてその場を去っていった。

またしばらく会えそうに無い、しかしそれもいつものこと。
今に始まったことではない。

初めからそうだったので、今ではそれほど苦にならない。。

次の週、私はビデオを入れ、録画準備をしていた。
しばらくして○ステーションが始まる。何度も聞いた音楽。
そして、トークもそこそこに歌に入る。

左手を見ると、二人にしかない愛情の証が輝いている。
この映像を納めるためだけに、僕は今、生きている。

デビューからずっと撮り続けて、部屋がビデオだらけでも、今ではそれほどうざくはならない。
それが私達の絆だから…。

無事番組が終わってしばらくすると携帯に電話がかかってきた。
携帯の画面を見てみると。

〔矢口 真理〕

俺は慌てて電話の通話ボタンを押そうと親指を伸ばし、
ボタンを押して、携帯を耳に押し当てた。
心臓の音が、確実に携帯の持つ右手に伝わっていくのが感じられた。

「も・・・もしもし」

「はーい、今の○ステーション見てくれた?私これから暇なんだけど・・・」
彼女が少しだるそうに聞いてきた。
「いいよ、何処で会う?」
「んーとねぇ・・・あそこで!」