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TMC 投稿日:2002/10/23(水) 16:40

「坂道にて」

学校からの帰り道に一本の坂道がある。
ゆるやかな傾斜の少し長めの坂道だ。
俺は生まれた時からここに住んでいるから
ずっと俺の成長を見ていた坂でもある。
悲しい時も嬉しい時も、ちょっと切ない時も・・・

坂から夕焼けが一番大きく見えるころ
いつもなら乗っているはずの自転車を押しながら歩く。
隣に同じクラスの辻さんがいるからだ。
好きな子と一緒にいる時の独特の緊張感で胸がドクドクと鳴っていた。

「つ、辻さん!」
緊張のせいで声が裏返ってしまった。
「あはは!どうしたの?」
彼女の笑顔から可愛らしい八重歯がこぼれる。
実際はそんなことないのだけれど
だんだんと傾斜がきつくなってくるような気がした。

「付き合ってください!!」
覚悟を決めて出したのはありきたりなこの一言だった。
その瞬間からのしばらくの沈黙の間背中に冷や汗がつーっと流れていた。

辻さんはナゼか優しく笑っていた。
返事までの時間をどれだけ長く感じただろう。
「えーっとぉ・・・」

今からこの坂道に新しく刻まれる僕の姿は
果たして笑っているだろうか?それとも泣いてるのか?
その結果がわかるのは数秒後だ。