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ダイ 投稿日:2002/10/27(日) 19:40
「ふぅ〜疲れた。今日も部活疲れた〜。
ったく、なんで来週試合があるからって
なんでこんな遅くまで練習があるんだよ。」
「試合で勝つためには仕方ないことだよ。
私だってがんばってるんだから。」
いきなり愚痴をこぼしているのは、この物語の主人公。
高校に入って半年が経った。名前を橘 優介という。
そしてとなりでなだめているのは、優介の幼馴染の安倍なつみ。
俺たちは小さい時からずっと一緒にいる。
学校に行く時遊びに行く時何をする時も一緒だ。
お互い家が近いせいか、他の男友達とは合ってる回数が違う。「だけどさ〜、なんでなつみはテニス部はいったんだ?
おまえ中学の時は吹奏楽部だっただろ?」
そうなのだ。なつみは吹奏楽部で全国大会の出場経験をもつほどの腕前なのだ。
それがなぜか高校に入ってから俺と同じテニス部に入部したのである。
「だってホントは中学の時もテニス部はいりたかったけど先生の誘い断りきれなくて
吹奏学部入っちゃったんだよ。でもこれからは優ちゃんとずっと一緒だよ?」
「ああ・・・、ってか今までもずっと一緒だっただろ?いまさらなに言ってんだよ。」
「違うよ。今まで部活のときは一緒じゃなかったじゃん。これからは部活も一緒だから
もっと一緒にいようねってこと。」
「お前なんか言ってることよくわかんないぞ。」
「もぉ〜優ちゃんの意地悪〜。」そんな他愛もない話をしているとなつみの家に着いた。
「じゃあね優ちゃん。明日も迎えに行くから寝坊しないでね。」
「わかってるよ。じゃあな。」
俺は自分の家に足を向けた。
「(明日も学校いくのめんどくさいなー)」
そんなことを考えながら家の玄関を開けると、そこでまっていたのは・・・「お兄ちゃんお帰りー!!」
と言っていきなりある少女が抱きついてきた。この少女はと言うと加護亜依。
なぜ名字が違うかと言うと小さい頃に両親が死んで仲の良かった
俺の両親が引き取ったらしい。
「うわっ!!いきなり飛びついてくるなって。危ないだろ。」
「へへっ、ゴメンね。そういえばさっき矢口さんから電話があったよ。
お兄ちゃんまだ出かけてるって言ったら帰ってきたら電話してってさ。」
「ああ、わかったよ。後で電話しとく。」
矢口と言うのは中学からの友達で本名を矢口真里。ちょっとうるさいけど
ちっちゃくてかわいい奴。と言われてるらしいが俺と話すときはすごく
おしとやかでうるさいなんてイメージは全くない。まあたまにテンションがおかしくなったりするが
おれはそんなところを結構気に入ってたりする。
部屋にもどって着替えるとさっそく矢口さんに電話をかける事にした。(トゥルルルルル ガチャ)
「もしもし矢口ですけど?」
「優介ですけど。矢口さん今日俺の家に電話した?」
「うわっ優介君?!あービックリした。いきなり電話かけてくるんだもん。」
「いや驚いたのは俺のほうなんだけど。大体電話してくれって言った
の矢口さんじゃん。それで俺に何か用?」
「別に用はないんだけどちょっと話がしたいなーって思って。迷惑だった?」
「いやそんなことないよ。」
「ほんと?良かった。あのね・・・・・」
矢口さんと電話でしばらく話していると矢口さんが急に妙なことをいい始めた。
「ねぇ。優介君って好きな人いるの?」
俺は何をいきなり言い出すんだ。と思いつつも話しを続けた。
「いや。今はいない。かな?」
「かなって何?ほんとにいないの?」
「ああ、今はいないよ。」
「ホントに?!やった。あっなんでもないや・・・・・。もうこんな
時間だから勉強して寝るね。いきなり変なこと聞いてごめんね。じゃあ明日
また学校で。バイバーイ。」
「あっうん。それじゃまた。」
なんだったんだ?と思いつつ眠かったのでそのまま寝ることにした。
「(明日なつみにでも聞いてみるか。)」
などと思っていると、しだいに意識が遠のいていって気がつくと朝になっていた。「おにいちゃーん!朝だよー!!」
「あーもう朝か。なんかあんまり寝た気がしないな。」
「そんなこと言ってないで起きた起きたー。」
おれは朝の支度に時間をかけないほうだ。だいたい起きて
20分くらいで家を出る。
「さーってと、なつみでも迎えに行くとしますか。じゃあな亜依。いってくるよ。」
「行ってらっしゃいお兄ちゃん。」
なつみの家は俺の家からほんとにすぐだから「朝はやっぱ寒いなー」などと思っていると
すぐなつみの家についてしまった。(ピンポーン)
「はーい。どなたですか?」
「優介ですけど。なつみいますか?」
「優介ちゃん?!ちょっと待ってね。なつみー!はやくしなさーい!!
優介ちゃん待ってるわよー。」
なんとインターホンに出てきたのはなつみの母だった。なつみの母もなつみと同様
小さい頃からいているため仲が良い。まあ高校生にもなって「ちゃん」付けで呼ぶのは
やめて欲しいが。
などというくだらないことを考えていると、なつみがすぐに出てきた。
「ごめーん、待った?ちょっと寝坊しちゃって。」
「いや、そんなに待ってないよ。じゃあ行こうか。」
「うん。」
学校に向かい始めて歩き出したがなぜかしばらく沈黙が続いてしまった。
そんな空気が絶えられなくなって、昨日の矢口さんからの電話のことを
なつみに聞いてみることにした。「なあ、なつみ。もし好きな人いるか誰かに聞かれたらどうする?」
「えっ、なに言い出すのいきなり。」
何の前触れもなくいきなり聞いてしまった。当然なつみはビックリしているようだ。
「いやもしだよもし。好きな人いるか誰かに聞かれたらなつみならどうするかと思って。」
「優ちゃんもしかして誰かに聞かれたの?」
うっ、さすがなつみ。なんで誰かに聞かれたってのわかったんだ?まああの場面じゃそう
思うことが普通だけど。最初は全部話さないでおこうと思ったけどやはりなつみには全部話しておくことにした。
「ああ。昨日電話で矢口さんに。」
「ふーん。それでなんて答えたの?」
「おれは今はいないって答えた。」
「そうなんだ。優ちゃん今好きな人いないんだ。へー。」なつみならもっと聞いてくるかと思ったが意外に質素な反応にちょっとガッカリ?した。
「ああ。なつみならなんて答えたんだよ?」
「私は・・・・。」
しばらくの沈黙あと、なつみが口を開いた。
「いるよ。」
「えっ?!」
まさかの返答に思わずアホのような声を出してしまった。
「それ誰だよ?」
「あっやっぱ気になる?」
なつみがちょっと茶化して聞いてくる。
「いや。なんとなく気になっただけだよ。」
恥かしかったのでつい愛想のない言い方をしてしまった。
「私の好きな人はねー・・・・。優ちゃん!!。」
「はっ?!」
さっきと同様またすっとんきょうな反応をしてしまった。
「「はっ」て何よ「はっ」って。私の好きな人は橘優介君です。」
今度ははっきり言いやがった。おれがなんていおうか迷っているとなつみが、
「優ちゃんは私のこと嫌い?」
また変なこと聞いてきやがった。嫌いなわけないけどめんと向かって言うのは恥かしい。だけど
「俺もなつみのことが好きだよ。」
「えっ?!ホントに?」
今度はなつみがすっとんきょうな声を出した。
「「えっ」て何だよ「えっ」って。俺の好きな人は安倍なつみさんです。」さっきのお返しでそっくりそのまんまかえしてやった。
みるみるなつみの顔が赤くなっていく。多分俺の顔も相当赤いであろう。
しかし小さい頃から思っていたことをやっと口に出せて俺はうれしくなった。
そしてもう一度・・・・
「俺はなつみのことが好きだ・・・・。俺と付き合ってくれないか?」
ついに言ってしまった。やっぱ恥かしいな。などと思っていると、なつみもすぐに
「私も優ちゃんのことが大好き。こんな私でよければよろしくお願いします。」
なつみはこの言葉を言った瞬間安心感からか座り込んでしまった。
「大丈夫か、なつみ?」
心配になって聞いてみる。
「なんか急に力抜けちゃってさ。でもありがとう。」
普通のような言葉に聞こえるが俺は疑問に思ったことがあった。
「ありがとう?なんだ、ありがとうって?」
なつみはうれしそうな顔をして
「だって優ちゃんが(大丈夫か?)って聞いてくれたから。優ちゃん中学に入ってからちょっと
私とかに冷たくなちゃったから心配されるのとか久しぶりだな〜と思って。」なつみがうれしいような寂しそうな顔をしていってきたので
「なに言ってんだよ。俺はなつみのことずっと心配してたよ。」
なつみはさっきの顔がウソのように明るい顔に変わって
「ホントに?!」
と聞いてきたので、俺は
「なつみはドジだからな俺が見てないと心配で心配で。」
カーッ素直じゃないねー俺は。しかしなつみは
「なによそれ〜。優ちゃんの意地悪〜。」
といいつつも顔はうれしそうだった。そんななつみの顔を見て俺は
「よし、じゃあ急いで学校行くぞ。」
と言って走り出そうとした時、なつみが
「ちょっと待って。あのね優ちゃん・・・。ちょっとお願いがあるんだけど・・・」
なつみはちょっと顔を赤くしながらうつむいている。
「なんだよ。お願いって。言ってみろよ?」
と言ったがなつみはうつむいたまま口を開かなかった。
俺はちょっとの間考えてみてやっと俺はなつみのして欲しいことを察知して・・・・・「(ギュッ)ほら、なつみ行くぞ。」
俺はなつみの手をとった。
「んっありがと。」
だが、なつみはなんだかうかない顔をしていた。どうしてかは俺には分かっていた。
たぶん俺のしたことがなつみのして欲しかったことと違ったからだろう。だが、
おれにはなつみにそれをする自信がなかったからだ。だから俺はあえて自分に自信を
持てるまでそれをお預けすることにした。
学校の近くまで二人で手をつないで走って行くと、なつみの顔はすっかり笑顔になっていた。
学校に着くと二人で教室に行くことにした。教室に二人で行くのはいつものことだが
いつもとは違う新しい気がした。やはりなつみとのグっと距離が縮まったことが理由であろう。
教室に入るとそこにはすでに矢口さんがいた。矢口さんは俺に気付くと満面の笑みで
「おはよー優介君!!」
と元気よく俺に挨拶した後、俺の顔をみて
「ねぇ優介君。なんかいいことでもあった?」
俺は一瞬ドキッとした。やはり女の勘はすごいなとおもいつつ照れくささから
「いや。別に何にもないよ。」
と言うと矢口さんは納得?したのかどこかに行ってしまった。なつみはというと
俺たちの会話を聞きながら(何で隠すの?)と言う顔をしながら俺の横に立っていた。そんななつみを気にしないようにしながら
「じゃあな、なつみ。また後でな。」
「うん。じゃあね。」
といってそれぞれ自分の席についた。といっても俺となつみの席はほとんど
離れていないのだが。
つまらない午前の授業も終わりお昼になった。するとすぐに矢口さんが
俺の隣に来て
「ねぇ、お昼一緒に食べない?」
と恥かしそうに聞いてきた。しかし俺は今日だけはなつみと一緒に食べたかったので
特になつみと約束もしてなかったのに
「ごめん矢口さん。今日はなつみと食べる約束してるんだ。だからまた今度でいい?」
そういうと矢口さんは寂しそうな顔になり
「そうなんだぁ。じゃあまた今度でいいや。じゃあね。」
矢口さんが席にもどった後なつみのほうを見ると、なつみはニコニコしながら
「じゃあ、一緒にお昼食べよっか。」
と言ってきたので
「ああ、じゃあ屋上にでも行こうか。」
と少し顔を赤くしながら矢口さんから逃げるように屋上に向かっていったもちろん
教室から出たあとは手をつないで・・・・。
そのときなつみが俺に聞こえるか聞こえないかぐらいの声で
「ありがと・・・。」
と言ってきたので、俺も小さな声で
「ああ、別にいいよ。
となつみに言った。屋上に着くまでしばらく沈黙が続いた。なつみはうれしそうな顔をしていたが、
俺は正直恥かしかった。うれしくないことはないが、なつみにあんなことを
言ってしまった自分が恥かしかった。屋上について腰を下ろすとなつみが
「ねぇ、今度の休みに二人でどこか行かない?」
俺は突然のなつみの誘いに驚いた。しかしなつみから誘ってくれたことがうれしくて
「あぁいいよ。で、どこ行く?」
「う〜んとねぇ〜・・・・・。優ちゃんと一緒ならどこでもいいよ。」
うれしい。しかし恥かしい。よくこんな恥かしいこと平気でいえるよな、なつみは。
「何言ってんだよ。どこか行こうって言ったのはなつみだろ?どこか行きたい
とことかないのか?」
「え〜、だってわたしが行きたい所と優ちゃんの行きたいところって違うじゃん。
もし優ちゃんに“そこは行きたくない”とか言われたら、なっちすごい悲しいもん。」
「お前そんなこと考えてたのかよ。」
俺はちょっと呆れ顔で言った。
「優ちゃんひど〜い。私結構真剣に考えてたんだから。」
「そんなこと言うわけないだろ。」
「えっ?」
なつみは不意打ちを食らったような顔をしている。
「だ〜か〜ら〜、おれもなつみと一緒だったらどこだっていいって。」
つい勢いに乗って言ってしまった。こういうこと言って後で落ち込むんだよなー俺って。
とくっだらないことを思っていると・・・・。(ドンッ)「いてっ?!」
「優ちゃんだーい好きっ!!」
いきなりなつみが俺に抱きついてきた。
「いきなり何するんだよ?痛いだろ。」
俺が顔を赤くしながら言うと
「だってうれしかったんだもん。」
「うれしいからって抱きつくことはないだろ。」
俺に抱きついているなつみをどかそうとすると
「ねぇ、このままじゃダメ?優ちゃん変わったよね。昔はよくこうしてたのに。」
「ああ・・・・・。そういえば昔はよく抱き合ってたっけ。」
勘違いするなよ。抱き合ったと言ってもただ抱き合ってただけだ。別に行為とかそういうのはなかったからな。
「やっぱりこのままじゃダメかな?」
となつみがまた聞いてきた。“俺はたまにはこういうのもいいかな”と思って
「別にいいよ。」
となつみに言い、俺はちょっとためらいながらもなつみの肩に手を回した。
「優ちゃん!?・・・・・・。ありがと・・・。」
なつみはちょっとビックリして俺の顔をみた後、うれしそうな顔をしながら言った。
それからしばらくの沈黙が流れた後、昼休みを終わりを告げるチャイムが鳴った。
よく考えてみると、俺たちは昼飯を食べていないことに気が付いた。まあ、
何も食べてはいなかったがおなかは空いていなかった。チャイムが鳴ったので急いで二人で教室に戻り授業の用意をしていると、
机の中から一枚の紙切れが出てきた。なんだ?と思って差出人をみると矢口さんからだった。
“今日の放課後に大事な話しがあるので体育館の裏に来て下さい。 矢口”
文章を見て俺はビックリした。ホントに俺宛てか?と疑うと“優介君へ”と書いてある。
昼からの授業はまったく身が入らなかった。まあいつものことだがいつも以上にボーッとしてしまった。
なぜかと言うのは言うまでもないが、あの手紙が原因である。話と言うのが気になってしまったからだ。
まあ大体の予想はつくが。授業が終わりなつみが俺に
「一緒に帰ろ!」
と言ってきた。もちろん俺もなつみと一緒に帰りたかったが
「ゴメンな。なんか矢口さんが大事な話しがあるって言うから行かなくちゃならないんだ。
だから今日は一人で帰ってくれ。」
俺が手紙のことを言うとなつみは驚いた顔をしながら
「えっ!?ほんとに?!!そんなこと言われたの?!!!」
とすごい勢いで聞いてきた。俺はそんななつみもかわいく思いながら
「ああ。そういうことだから一緒に帰れないんだ。すまん。この埋め合わせはいつかするからさ。
今日は一人で帰ってくれ。」
と言うとなつみは諦めたのか
「そう。じゃあいいや。でも・・・・。」
となつみは言いかけ途中で止めた。まあ大体言いたいことは分かるが。
「心配するなって。俺が好きなのは安倍なつみだ。だから安心しろよ。そういうことだからじゃあな。」
となつみから逃げるように走って体育館の裏に向かった。
行く前にチラッと教室を見たが矢口さんはすでにいなかった。俺も急いで体育館裏に向かった。
そこにはすでに矢口さんがいた。俺が近づいていっても矢口さんは俺に気づいていない様だった。
目を閉じて何か考え事をしているように見えた。矢口さんがいつまで立っても気付かなかったので
「矢口さんゴメンね。待たせちゃったかな?」
と聞くと矢口さんは驚いた表情で
「うわっ優介君!!全然待ってないから気にしないで。」
「そうそれならいいんだけど。それで話って何?」
俺はいきなり聞いてみた。すると矢口さんは今までになく真剣な表情で
「うん。そのことなんだけどね・・・・。前から優介君のことが好きだったの。
・・・・・私と付き合ってください。」
といってきた。予想はしていたもののいざ言われるとやっぱり恥かしい。それに
昨日電話の時は好きな人はいないといったのにまさか次の日になつみと付き合うことになるなんて
なんか矢口さんに気の毒で言いにくかったがなつみと矢口さんの二人と同時に付きなうわけにはいかないので
「ゴメン矢口さん。昨日矢口さんから好きな人のこと聞かれて寝る前にちょっとだけ考えたんだ。
その時にやっぱり俺は“なつみが好きなんじゃないかな?”ってちょっと思ったんだ。それで・・・・・。」
俺は矢口さんにすべて話した。なつみと付き合うことにしたことも含めて。すると矢口さんは思ったより明るく
「そっか。じゃあ仕方ないね。ゴメンねこんなとこに呼び出して。じゃあ私は部活あるから。」
と言って矢口さんは振り返って歩いていった。その時一瞬矢口さんの目に涙のようなものが見えた。
気になった俺は
「矢口さん!!」
と名前を呼んだが矢口さんは振り返らずそのまま歩いていった。
“矢口さんになんか悪いことしたな”と思いながら家に帰った。今日も亜依が抱きついてきたが
今日は亜依とじゃれている気になれなかったので、亜依をどかして、そのまま部屋のベットに寝転がった。
寝転がってしばらく今日のことを振り返っていると、俺の部屋のドアをノックする音がした。「お兄ちゃん、亜依だけど入ってもいい?」
「ああ、いいよ。」
亜依の相手をするのはいつもなら全然良いんだが今日だけは相手にしたくなかった。
でもなんだか亜依が寂しそうな声で言ってきたので断るわけにもいかず部屋に入れた。
「どうしたんだ?」
いつもとは明らかに違う声で亜依に言うと亜依は
「お兄ちゃんは私のこと嫌い?」
「そんなことない。」
聞いてきた亜依の顔は今にも泣き出しそうだ。
「だって帰ってきてから私のこと相手にしてくれないじゃん!今だって私と話すのを
嫌そうな顔してるし!いつものお兄ちゃんならどんなに疲れてても亜依と一緒に
お話してくれたじゃんか!!お兄ちゃんが亜依のこと嫌いなら私はもうお兄ちゃんに
話し掛けたりしないから・・・・。お兄ちゃんのバカーーーーーーーーーーー!!!」
そういうと亜依は自分の部屋に走っていってしまった。俺にはとめることもできたが
今日はいろんなことがありすぎて頭の中で整理しきれていない。しかしベットの中でしばらく考えた後
俺は亜依の部屋に行き謝ろうと思った。立ち上がって亜依の部屋の前まで行きノックしようとした時
亜依の部屋からうめき声のようなものが聞こえた。耳を澄ませて聞いてみると亜依は泣いているようだった。
亜依はずっと泣いていた。いつまでも泣いていた。何度も何度も俺の名前を呼びながら。
亜依がやっと泣き止んだ時、俺は亜依の部屋のドアをノックした。しかし返事はなかった。
何度呼んでもみてもやはり返事はなかった。それでも俺は亜依を呼び続けた。
「なあ、亜依俺の話しを少しだけ聞いてくれないか?言い訳をするようだが聞いてくれ亜依が怒るのはよく分かるけど話を聞いて欲しいんだ。」
「・・・・・。」
やはり亜依からの返事はない。それでも俺は諦めない。
「ゴメンな亜依。今日の俺はどうかしてたんだ。いろんなことがありすぎて頭の中が
グチャグチャになってたんだ。だから俺のことを嫌いにならないでくれ。頼む。」
と言い終えて部屋に戻ろうとすると亜依の部屋から始めて返事が返ってきた。「ちょっと待って・・・・・・。・・・私のことホントに嫌いじゃない?」
亜依はまだ泣きそうな声だ。
「ああ、俺が亜依のこと嫌いなわけないじゃないか。」
俺はすぐ返事を返した。
「ホントにホント??」
まだ疑っているのか再び聞いてきた。
「ホントだよ。俺は亜依のこと好きだよ。」
「・・・・・・・・。」
亜依は俺の言葉が恥かしかったのか黙ってしまった。
しかししばらくして亜依は小さな声で
「お兄ちゃん・・・・。ありがと。」
俺は嬉しくなった。そして
「なあ亜依。もうこんな時間で悪いんだけど今から俺と話さないか?ほら今日亜依と話してないから
なんか元気が出なくて。」
「うん、いいよ。じゃあ亜依の部屋で話そう。入っていいよ。」
(ガチャ)
「亜依さっきはゴメンな。」
部屋に入ってすぐ俺が再び謝ると亜依は
「私のほうこそゴメンね。」
亜依の声はすっかりいつもの声に戻っていた。しかし目は赤くはれていた。
「お兄ちゃんそんな所に立ってないでこっちおいでよ。」
と亜依が掛け布団を上げながらいってくれたので俺は
「じゃあお言葉に甘えて。」
と亜依の布団に入っていったのだ。こんなことがなつみに知られたら面倒なことになるな。
などと思っていると亜依が横から
「お兄ちゃん大好きだよ。」
いきなり抱きついて言ってきた。
「俺も好きだよ。」
と言い亜依を抱きしめた。ほかからみれば俺たちは恋人のように見えるだろう。「ねぇお兄ちゃん。キスして。」
「はっ?!」
いきなりのことに俺は驚いた。しかし亜依のほうを見るとすでに目を閉じて俺のことを待っているようだった。
ここでキスをしないと、また亜依に嫌われてしまいそうなのでなつみに悪いと思いながら亜依に口付けをした。
口を話して亜依のほうを見ると顔を真っ赤にしながら
「お兄ちゃん大好きだよ。今日一緒に寝よ?」
また亜依はどえらいことを聞いてきたが今日くらいは仕方ないと思い
「ああ、久しぶりに一緒に寝るか。」
と言うと亜依は満面の笑みで
「やった。」
と言った。その姿はかわいく天使のように見えた。この瞬間なつみか亜依のどちらかを選べと言われたらもしかしたら、
亜依を選んだかもしれない。朝、目が覚めて横を見てみると亜依はまだ寝ていた。これ以上亜依と一緒にいるとなつみに
悪いと思いベットから起き上がろうとした瞬間誰かに腕を掴まれた。誰かにと言っても一人しかいないのだが。
「待ってお兄ちゃん。もうちょっと一緒に寝ようよ。」
「でもそろそろ起きないと学校に遅れるから。」
と言ってベットを出て行く言い訳をしたが
「なに言ってんのお兄ちゃん。今年から土曜日も休みになったでしょ。だから今日は休みだよ。」
おれは(しまった)と思ったがもう遅かった。それでもおれは出て行こうとすると亜依は
「やっぱりお兄ちゃんは私のこと嫌いなんだ。ヒック・・・うえ〜〜〜ん。」
と泣き出してしまったのだ。これではさすがに出て行くわけにはいかなかったので
「ゴメン亜依そんなつもりじゃないんだ。なっもう少し一緒に寝てやるから元気出してくれよ。」
と俺が言った瞬間
「ホント?!やったー。」
といって泣き止んだ。(おいおい今のはウソ泣きか?)と思ったが一度言ってしまったからには
一緒に寝ないわけにはいかないのでおとなしくベットに戻ることにした。ベットに再び戻り亜依の顔をみるとすごく嬉しそうだ。
「なにがそんなに嬉しいんだ?」
と聞いてみると
「そんなのきまってるじゃん。お兄ちゃんがそばにいるから。」
(まあそういってくれるのは嬉しいんだけどなつみがな・・・・・)
となつみのことを思っていると
「お兄ちゃん・・・・」
亜依が俺を呼んだのでふと我に帰り亜依を見ると目を瞑って唇を突き出している。
(あ〜あ、やっぱりしないとだめだよな)と一瞬迷ったが(これで終わりにするからなつみすまない)と思い
チュッと亜依の唇に触れた。
「ヘヘッ。ありがと、お兄ちゃん。」
と言ってきた亜依の顔は真っ赤で満面に笑みだった。そんな亜依を見た俺まで恥かしくなってきてしまい
「眠くなってきたからもう寝るぞ。」
と言い頭から布団の中にかぶってしまった。
「そんなに照れなくてもいいじゃんお兄ちゃん。私も眠くなってきたから寝るね。」
と言って二人とも寝てしまった。まあ俺はしばらく寝付けなかったのだが。しばらくして自然に目が開いた。
ふと横を見てみると亜依が寝息を立てている。
その顔はとても幸せそうな顔をしている。そんな亜依の顔をみているとこっちまで幸せな気持ちになってくる。
多分亜依にはそういう力があるんだろう。優香や井川遥ではないが人を癒す力を。
どのくらいの時間がたったのだろう。亜依の顔をずっとみていた俺だがしばらくして我にかえり時計を見てみるともう12時だ。
(そういえば今日は1時から部活があったっけな)
もうあまり時間がないので急いで支度をすることにした。まあ俺は身支度に時間はかけない方で
15分もあれば十分用意はできるのだが。亜依を起こすと面倒なので亜依に気付かれないようゆっくり
ベットから起き上がり部屋を後にした。15分後部活へ行く用意ができた。しかしまだ部活までには
まだ時間があったので俺は家でストレッチを済ましてから部活に行こうと思い、
ストレッチを開始した。それにしても俺は自慢ではないが体が硬い。小学生の時は軟らかかった方なのだが
中学、高校と時間がたつにつれどんどん硬くなっていってしまったのである。
体が硬いなりに一生懸命ストレッチをやって12:40くらいになったので家を出ることにした。
俺の家から学校までは自転車で20分くらいの距離なのだ。まあバスで行ったりもするのだが。
自転車で行くのがめんどくさい事このうえない。俺はとにかくめんどくさいことが嫌いだ。しかしこればっかりは
どうにもならないので仕方なく学校まで行っている。20分後学校に着くともうすでにほかの何人かの部員が来ていて
その中にはなつみの姿もあった。「優ちゃん来るの遅いよ〜。何かあったんじゃないかって心配したんだから。」
なつみが心配そうに言ってきた。
「ごめんな、ちょっと寝過ごしちゃって。まあ間に合ったんだからいいじゃん。」
「まあ今日は許してあげるけど今度からは遅れるときはちゃんと連絡してね。」
「分かった。今度からはそうするよ。」
なつみと話しているとをしているとみんなそろったので練習を始めることにした。
最初はウォーミングアップからだ。
コートの周りをみんなで走ってからコート半面で打つ、慣れてきたら半面でなく全面を使って打つ。
うちの部活はコートの数の割りに人数が少ないので比較的たくさん打てる。
俺が誰と打とうか考えているとなつみも打つ相手がいなさそうだったのでなつみを誘った。
「なつみ打つ人いないなら俺と打とうぜ」
「いいよ〜。」
なつみは笑顔で走ってきた。
なつみはテニスを始めたばかりだが結構うまいのだ。
まあ俺ほどじゃないけど。
ってか当たり前か。
俺は中学の時テニスで全国まで行ったし、そんな俺といっつも打ってればなつみもうまくなるか。
それからいつものように練習メニューをこなして今日の練習も終わりを迎えた。
帰りは行きよりも時間がかかるので30分くらいで家に付く。
なぜかというとなつみと一緒に帰るからだ。
一人なら坂道も自転車に乗っていくのだがなつみが一緒だとそういうわけには行かないので、
一緒に自転車を押していく。
帰り途中なつみと話していると急に夏見がうかない顔になった。
そして俺に言った。「ねえ優ちゃん。今度団体のメンバーを決める試合があるんだって。もちろん女子は女子男子は男子で。」
俺はどうかしたのかと思って
「ふ〜ん、そうなんだ。でどうしたんだなつみ?お前なら誰と試合しても勝てるって。」
と言った。それでもなつみはまだうかない顔をしていて
「そうかな。でもなっちまだテニスを始めたばっかりだし。試合とかしたことないし・・・。
それにもし負けて団体に入れなかったら優ちゃんと一緒じゃなくなっちゃうよ。」
「なんだそんなことか。」
「えっ、優ちゃんはなっちと一緒じゃなくてもいいの?」
泣きそうになりながら聞いてくる。
「いやそういうことじゃなくて、もしなつみが団体は入れなかったら俺も試合には行かないから心配するなって事。」
「え〜、そんなの駄目だよ。なっちのためにそんなの・・・・・。」
「いいって別に。試合は今回だけじゃないんだから。」
「そうだけど・・・・・。ゆうちゃんはそれでいいの・・・・・・?」
申し訳なさそうに聞いてくるなつみ。
「別にいいってそれになつみが負けなきゃいいんだから。」
「そうだね。なっち負けないようにがんばるね。だから優ちゃんもがんばってね。」
やっと笑顔になって言った。
「ああ当然だ。」
それからまた他愛もない話をしてそれぞれ家に帰った。
しかし大変なのはこれからだった。
そんなことは知る由も無い俺。
「ただいまー」
ドアをあけるとそこには亜依が泣きそうな顔で立っていた。