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保全変わりに・・・ 投稿日:2002/12/20(金) 23:42

「初恋と失恋」

夏になると思い出す。高校時代の、あの甘酸っぱいというか、切ない恋。何年たっても忘れられない。
「ここだったかな」
今年で23歳、社会人となった俺は、その思い出の地を再び訪れた。
「ここで出会って、別れたっけな。・・懐かしい」
俺はボーっと海を見ながら、昔を思い出した。
     
      真希と出会った、あの夏の思い出を。

6年前の夏、俺はダチと海に来ていた。サンサンと照る太陽に、多い観光客。俺は正直ウンザリしていた。
「お!あの子達なんかいいかもな!おい、行くぞ!」
俺は何を?って顔でダチを見た。
「バカ!決まってんだろう?ナンパだよ!行くぞ!」
気乗りしない。正直な俺の感想だった。だけど、このナンパがなければ、真希と出会わなかったな。

ダチはさっそうと、女性二人を連れて戻ってきた。
「おい!紹介すんぜっ!この人が矢口さん!で、この人が後藤さんだ!」
俺が顔を上げると、真希が凄くまぶしく見えた。この人だ!と感じた。
「あの、どうかしましたか?」
あんまりジっと見過ぎたためか、声をかけられた。俺としたことが、と思ったっけ。

その後、ダチは矢口さんとどっかに行ってしまった。メールで『こっちも頑張るから、そっちも頑張れよ』だって。余計なお世話だ。
「どうしましょうかぁ?私疲れたんで、ちょっと休みませんか?」
メールを見ていた俺の前に、ヒョコっと顔を出す。そしてフニャっとした笑い。なんとも可愛い顔だ。
「そうだな・・・じゃあ、あそこの浜茶屋で、何か食うか」
俺たちは浜茶屋でメシを食い、一緒にどこの行くか決めた。
「じゃあ、とりあえず・・・どこ行きましょう?」
すると、真希は焼きそばをほおばった状態で
「ほうれふね〜。らあ、わらし達の宿行きまひょうよ」
何言ってるか、半分ぐらいしかわからないが、まあ・・相づちうっておいた。

そして、宿に着くと、すっかり夜になっていた。

「はぁ・・疲れたぁ」
さすがに俺も疲れた。荷物が重かったし。
「ね〜ね〜!聞きたいんだけどさぁ?」
・・・疲れてたんじゃなかったのか?と思う俺。
「付き合ってる人、いるのぉ?」
やっぱりな。いつか聞かれると思ったよ。
「いないです」
俺はサラリと答えた。まあ、気になる人なら目の前にいたんだけどね。
「ほぇ?じゃあフリーなんだ・・へぇ、フーン・・・」
意味ありげな顔で俺をジっと見る真希。この時、俺はそうとう鈍かったな。
「じゃあ、俺は休みますよ。疲れちゃったし」
俺はそう言うと、ザコ寝してしまった。この時の真希のふくれっ面が忘れられない。

そして次の日、メルアドと携帯番号を交換して、俺たちは別れた。
そして何ヶ月かして、向こうからメールで告白してきた。俺はその場でガッツポーズしたっけなぁ。

そして、何度かデートして、キスまでした。なのに・・・
「どうしてそうなのよ!アタシはねぇ!」
「そっちこそ、何でなんだよ!」
ささいな事でケンカになっちまって、たった半年で別れたっけなぁ。

「懐かしい・・けど、何か思い出すと俺もバカだったよな」
俺は海をボーっとながめながら、苦笑い。と、その時、突然目の前が真っ暗になった。
「だ〜れだ?」
この声・・・まさか!?
「真希、か?」
すると手を目からスっと離し、あの頃と変わらない、フニャっとした笑いを見せた。
「久しぶりだねぇ」
俺は何か不思議な気分だった。今思い出してた、その本人が今出てくるなんて。

その後、俺と真希は車で帰宅した。その途中、真希が突然
「ごめんね」
と謝ってきた。俺が何で?と聞くと
「私の誤解でケンカになっちゃって、別れたじゃん」
俺はフっと笑い、気にしてない、ということを告げた。
「ちょっとは気にして欲しかったなぁ」
このふくれっ面も、なつかしいな。
「ねぇ」
俺が何だ?と聞くと、真希は頬にキスしてきた。
「もう一度、やり直さない?」