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関西人Z 投稿日:2002/12/31(火) 23:59
「もうすぐ今年も終わりかぁ」
俺は一人部屋でTVを見ながら、呟いた。
今TV番組はカウントダウンをするための前振り的なものをやっている。
はっきり言っておもしろくない。
壁に掛けている時計を見ると、新年を迎えるまであと10分程度になっていた。「そろそろ行くかな」
立ちあがり、コートを手に部屋を出た。
台所にいる母に一言掛け外に出ると、冷たい風が頬に伝わってくる。
寒さに一瞬身体を震わせ、手をコートのポケットに手を入れ歩き始めた。
向かう先はすぐ近くにある神社。
別に初詣をするわけじゃない。
ただいつのころからか、新年を迎える時は神社に行くことにしていた。
その神社には、裏に大きい木があり、薄暗く気味が悪いそこはあまり人が入らない。
俺はいつもそこで一人時間を過ごす。
自分でも何故かはわからない。「おー、人が集まってるなぁ」
神社に着くと、既に長蛇の列が出来ている。
俺はそれを横目に、裏手に回った。「ふー、寒」
木にもたれるように座り、ポケットから来る途中で買ってきた缶コーヒーを取り出した。
軽く振り、フタを開けようとしたその時、「ん?」
何か人の気配を感じた。
しかし周りを見渡しても、誰もいない。
気のせいかとも思ったが、気配は確かに感じる。
どこだろうと思い、立ち上がって木の後ろ側を覗いてみた。
するとそこには、俺より歳上だろう女性が一人座っていた。「…こんばんは」
思いもしない出来事に、俺は驚いて声も出ない。
「どうしたん?」
「い、いや、別に…」とりあえず平静を少し取り戻しながら女性を見ていると、俺のほうをじっと見ながらニコっと微笑んだ。
「横に座りぃや。ここで年越すんやろ?」
「は、はぁ」横に並んで座る。
「もうあと1分で年越すで。一緒にカウントダウンしよう、な?10、9、8、7、6、5」
親しみを持てるような表情に、俺は初対面ということを忘れてカウントダウンを始めた。
「4、3、2、1」
「明けましておめでとう!」
女性は喜んだ表情を浮かべ、俺に握手を求めた。
俺は少しその女性の手を見て、握手した。「あけましておめでとうございます」