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剣士 投稿日: 03/02/21 21:53

「自転車置き場で」

ある、冬のもう終わり春が来るかな、と思っていた日だった。
この日は風がビュウビュウ吹き、肌寒い。風の音に紛れながら、学校のチャイムが鳴った。
「ん〜っ!やっと終わりだ・・長い一週間でした、っと」
俺はグッと背伸びをして、カバンを抱えて教室を後にいた。
「おう!またな〜!」
すれ違う友人に声をかけながら、ローカを走る俺。寒くて、ポケットの中のカイロを取り出すが、もう熱がない。
「は〜・・・さすがに朝からずっと持ってたし、しょうがないかなぁ」
俺はため息をつき、再びローカを走った。

そして、自転車置き場に到着した。
急いで返りたいと思っているのだが、自転車のカギが見つからない。
「う〜!寒いのに・・・どこだぁ!?」
と、その時、俺の頭に何か当たった。

「あたっ!」
振り返って下を見ると、俺の自転車のカギ。

「バカじゃないのぉ?カギを落としていくなんて」
バカにしたような口調だが、フニャっとした笑い顔。
「ウッセーな!ってか、これ・・どこで見つけたんだ?真希」
真希と呼ばれた女の子は、俺もビシッ!と指さした。
「それはズバリ、カイロをとろうとした時に落としてたでしょ〜!で、気づかずアンタは走って行っちゃったわけ。教えてあげようと、走ってきてあげたんだから、この後藤様に感謝しなさいよぉ〜」
真希の口調で笑いそうになったが、とりあえずこらえた。
「そっかぁ・・・サンキュ!じゃ、俺帰るわ」
俺は自転車のカギを開け、またがって帰ろうとした。
「ちょ〜〜〜っと待った!」
真希が俺を呼び止める。何だってんだ?
「可哀想なアンタに、これあげるわ」
と、真希が俺に投げた物は、キレイに包装された箱。何だ?これ、という顔を俺がすると
「義理チョコしかもらえなかったアンタに、後藤様から本命チョコだかんね!まあ、日にちはちょ〜〜っと送れちゃったけど、アンタがさっさと帰っちゃったのがいけないんだからね!」

固まった。というか、顔が熱い・・。本命チョコっておい・・・。
「・・あ、サンキュ」
さすがに口調が堅くなった。と、真希がまたフニャっと笑い
「お返しは・・・デート一回ね!約束だからね〜!」
と、言い残し、真希は去っていった。俺はしばし固まってしまった。頭をフル回転して考えついた結果は

「・・・また、アイツらしい告白の仕方だなぁ」
俺は苦笑いし、自転車にまたがり、学校を出た。
梅の花が開きはじめ、春が近いこの日、俺は生まれて初めて、しかも可愛い彼女が出来た。

・・・ちょっとナマイキなとこもあるけどさ。