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どらい 投稿日:2003/08/15(金) 23:47

「あれ? 隼じゃん。今日お前部活は?」
昇降口で靴を履き替えていると、裕輔が声をかけてきた。
「この前の試合でケガした事、覚えとるか?」
「あー、そうだった。俺もサボりてぇな」
「こっちも休みたいワケちゃうんやからな」
「じゃ見学くらいしたら? 明日試合なんだし、ミーティングくらい…」
「イヤじゃ。俺ゃ早く帰りてーんじゃ」

そう、サッカー部の俺は、先日の試合でケガをしてしまった。
全治2ヶ月。その2ヶ月間が無かったら…

期末テストも終わり、もうすぐ夏休み。右足をかばいながら過ごす生活にも慣れた頃。
いつもと同じように帰ろうとしていると、
「長嶺くん」クラスの女子が声をかけてきた。高橋愛だ。
「ん?」
「あの、部活無いんだよね」
「ああ」
「……いっしょに帰ろ」
「あ?…ああ」急なことだったので思わず承諾してしまった。

一緒に帰るはいいが、話題がない。
高橋は可愛く、結構人気がある。
彼女とは小学校から一緒(らしい)なのだが、彼女の存在を知ったのは中学になってから。
俺には遠い存在だった。同じ高校に進学したのがせめてもの救いかもしれない。
彼女はいつも明るくて活発な娘なのに、今日に、いや、今に限っておとなしい。
俺はと言うと、サッカー部でレギュラー。
あまり女子とは縁がない。というか、好かれるがモテないというヤツだ。
そんな高橋が、俺に何の用があって声を掛けてきたのかずっと考えていた。

しばらく無言のまま歩いていたが、俺は何か声をかけようと思って必死に話題を考えていた。

「……何で、俺なんか誘ったん?」
「…え、あ……、うん……」
「…ん?」
「……」
そっちが恥ずかしがってるとこっちも恥ずかしいっつーの。
言いたいことがあるなら早く言った方が楽になるぞ。
「……」
「……あの」
「(キター!!)ん?」ドキドキ
「私ね…」
「(クルー!!)ゴックン……うん」バッコンバッコン

「私、岡田君のことが好きなんだ」


(・_・)


「…裕輔が?」
「…うん」
「…ぁ、そうなんや」(´・ω・`)
「……はぁ〜、緊張した。人に相談するだけでこんなに緊張するんだもん」
「お前は俺の心を傷つけるために誘ったんか」(泣)
「へ?」
「あぁいやいや……、それで?」(哀)
「…あ、それで……私、好きなんだけど…」
「うん」
「…岡田君がサッカーしてるトコ見たこと無いんだ」
「放課後見に行けば?」
「私もその時間は部活ですぅ」(注:松浦口調ではない)
「あ、そっか。まあ、アイツ補欠やしな」
「岡田君のプレーを見たいんだ」
「あぁ…なるほど。あ、でも俺ケガしとるし、アイツにもチャンスはあるやろ
 明日、市民競技場で試合あんねんけど」

「うん。明日の試合麻琴と見に行くんだ」
「そっか…、まぁ頑張れよ。じゃ俺、こっちやから。ここで」
「あ、うん。ありがと、いろいろと」
「また明日な」

「うん、バイバイ」

(はぁ〜… なんだかなー)
空は夕日でオレンジに染まっていた。
あぁ虚し・・・


翌日、うちの部のサッカーの試合を見に、近くの市民競技場へ足を運んだ。
サッカー場に着き、スタンドの一番前から下にいるメンバーと話をしていた。
「よぉ。ベンチで見るか?」
「ユニホームがねえよ。たまにはスタンドからお前らのプレーを見せてもらう」
「ベンチで見ることも少ねークセに」
「…ほっとけ」
裕輔は俺のケガのおかげで久しぶりにスタメン出場らしい。

スタンドで見やすい席を探していると、高橋が同じくラスの小川と来ていた。
何やらじっとうちのベンチを見つめている。
「あ、長嶺くんだ。やっほー」
「よー」
「いつも2人で見に来んのか?」
「時々来るよ。先週から愛がどうしても行こってうるさかったから」
「ち、違うよー。そんなこと言ってへんよー」
「アイ訛ってるぞー」
しかも中途半端。

「ねー、長嶺君の代わりに誰が出るの?」
「あぁ、さっき裕輔が出るみたいなこと聞いたけど」
「岡田君だぁ」
「裕輔って女の子から見て人気とかあんのか?」
「んー、結構モテるタイプだよねー」
「なんか長嶺君は気さくで話しやすいし、モテるよりは好かれる感じでしょ?
 岡田君はサバサバしてて何かに集中してる姿がカッコイイ」
「そうそう、長嶺君って以外と彼氏にはしにくいタイプって感じ」
「俺ってそんなヤツやったんや…」

「あらら、落ち込んじゃったよ」
「でも長嶺君だって人気はあるんだよ?」
「違った意味で人気があるよね」
「…もうええわ」

試合が始まり、俺は2人にゲームの解説やらルールの説明をしながら観ていた。

途中、高橋がトイレへ行き、小川と2人になった。

「…でもね」
「…ん?」

「愛は長嶺君のことが好きなんだよ」
「……ハァ?」
だって昨日、ねぇ?

「あ、昨日一緒に帰ったんでしょ? 何の話したの?」
「え?あ、いや…いろいろと」
「あー、もしかして、告白された?」
「されへんわ」
「じゃなに話したのさぁ」
「ちょっと相談事」
「えー?何の」
「んー、言えへんなぁ」
「……。じゃぁ代わりに私の悩み聞いてよ」
「へ?」
「…いいじゃん、別に」
「まぁええけど」

「…好きな人がいるんだぁ」
またそれかよ…
「フーン」
「なにさその冷たい反応」
「あ、いや、そうなんや…」
「岡田君が好きなんだ」
「は?」

   どーなっているのかね

「でね、今日初めてサッカーしてるとこ見れてカンゲキモノだよ〜」バシバシ
「痛てーよ」
「はぁ、でも告白したいけどさぁ、勇気がないんだよねー。どうしよ〜」

なんか一人で盛り上がって勝手に落ち込んでるよ

小川が一人コントしているところで高橋が帰ってきた。

「あれ?何の話してたの?」
「ん?まぁいろいろと」
「?」
「……あぁ〜〜どーする、麻琴ぉ」
「あぁ、コイツ?勝手にブルーになっとるだけ」
「……ふーん」
なんか、イヤーな反応のしかた

試合は2−1で勝った。まぁ、ボチボチやな。
競技場を出ようとしたとき、
「あれ?声かけないの?」小川が声をかけてきた。
「んー、行きたい?」
「…いや、恥ずかしいからいい」
「高橋は?」
「………え?あ、私もいい」
…なんか声のトーンが違うような……
「私、長嶺君と同じ方向だから一緒に帰るね」
高橋は右腕をぐいぐい引っ張ってくる。
「あ、ちょ、分かったから」
何だよ。さっきから表情が硬いなー

「じゃ、私はここで」
「あーうん」
「ばいばーい」
県道の交差点で近くに住んでいる小川と別れた。

二人は駅のホームにいた。
小川と別れてから気まずい空気が流れている。
「……なんか、さっきからおとなしいな。なんかあった?」
高橋が硬い表情で聞いてきた。
「ねぇ、私がトイレ行ってるとき、麻琴なんか言ってた?」
「…ん?んー…特に」と言っておこう
「うそ」
「え?」
「正直に話して」
「いや、ホンマどーでもええこ…」
「何話したの?」
「たいしたことちゃうって」
「…どうでもいいのになんで言えないの?」
「いや、言えへんワケやないけど…」

高橋はいつもと違い、しつこく迫ってくる
「じゃあ、あの時何の話してたの?」
「いや、だから…」
「だから何なの!?」
「……なんで怒ってん」
「…別に、怒ってないもん」

「…岡田のこと話しててん」
「……あっそ」機嫌を損ねた高橋は冷たく言い放った
「なんやねん、その態度」
「別に。話の内容聞いたから返事しただけでしょ」
「……妬いてんのか?」
「な!私は別に長嶺君と麻琴が何を話してたのかが気になっただけ!
 別に長嶺君が麻琴と話してたからってそんなことで妬くわけないでしょ!」

ん?なんかへんだ。

「??……なんで俺が妬かれんねや?」
俺は岡田に対して妬いたのか聞いたつもりのに。
「!!…あ…、いや、そぅぃぅ訳じゃな…」高橋の顔が急激に赤くなってきた。
「『あ』ってなんや、『あ』って。それに顔真っ赤やし」

あらら、俯いちゃったよ。
「……いや、あの」
「なんやねんな」

……プワァァン!!

「…あの、な……」

ガガン!ガガン!!――ガタタンガタン―― ゴゴーー……

高橋の声が、通過列車の音に消された。

「…悪りい、なんやて?」
「あ!ううん、何でもない!」

気まずくなり、また会話が途切れた。

電車に乗り、座席に座る。隣に座った高橋はまだ顔を赤くし、俯いていた。

普段なら降りる駅まですぐなのに、今日はやけに長く感じる。

…っじゅ

隣から鼻をすする音が聞こえた。ふと隣を見ると…
「え?ちょ、何で泣いてん?」高橋が泣いていた。

「グズ……ごめん。何でもないから」
「何でもないっつったって…」
「ホントに大丈夫だから、うん」
「俺なんか悪いこと言うた?」
「ううん、違う。何でもないから」
「うーん…」
「……ふふ」
「何やねん、今度はいきなり笑い出して」
「あのね、そういうトコが長嶺君の人気のモトなんだよ」
「…ハァ?」
「そうやって相手に気を使う優しいトコ」
「……ふーん」
「あ、照れてる」
「…や、べ別に……」
「にへへ…」

「あのな」
「…ん?」
「…何で嘘ついてん?」
「え?」
「昨日さ、お前岡田が好きやって言うたやろ?」

高橋の顔が一気に赤くなるのを俺は見逃さなかった。
彼女は黙り込み、俯いてしまう。

「小川から聞いたで」
「……そっか」
「…で?」
「…え?」
「返事は聞かへんの?」
「……私と付き合って…くれますか?」
「オフコース」
「…ホントに?」
「んだ。一人で過ごす夏休みも暇やし」
「それが理由かよ!」
「お、今のツッコミよかった」

それから少しして、高橋の降りる駅に着こうとしていた。

「今日はありがと」
「おー」
「また明日」
「おー」
「……」
「なにか?」
「なんだかなー。反応がさぁ…」
「…反応なんて別に…」
「ほんとに私と付き合ってくれるの?」
「だから付き合うって。何回目だよ、さっきから」
「“まだ”3回」
「“もう”3回やろが」

「だってさぁ」
「だって?」
「話し方とか雰囲気とか前と一緒じゃん」
「ええんちゃう?別にそんなん意識せんでも、いつもどーりで」
「だって、何か欲しいじゃん」
「わかったよ。恋人っぽくしたらええんやろ?」
「なにそれ。イヤイヤですか?」
「…いや、そ、そんなことありません」
「…じゃあなんか、恋人らしい反応の仕方をさぁ」
「………じゃ!また明日……オッケ?」
「…まぁ…オッケ。じゃね」
「おー」
「……」

ガクっと肩を落とした後、呆れ顔でまいっか、とか言いながら
彼女は立ち上がり、ドアの外へ降りていった。
降り際に、俺の方を向いて手を振ってきたので、
軽く手を挙げ返した。

………
俺も家に着き、玄関を開ける。

「ただいまぁ」
「あ、おかえり。今ご飯出来たとこよ。早く下りてらっしゃい」
「おー」

…まただ。口癖かな…『おー』

ケガをして早2週間ぐらい?が経った。
気がつけば夏休みに入り、リハビリもまだ早いし、
高橋は相変わらず俺の態度にブーブー言ってるし。

っと言うわけで海ですよ、皆さん。夏ですから。

え?話の展開が早いって?
だって、ねぇ。そっとしてあげてください。

…で、近所の海行ったんです。

で、海に行ったら、人がいーっぱいで泳げないんです。
もうね、高橋も俺もうんざりですよ。

ってゆーか、足ケガしてんのに泳ぎに来るなよ。

で、しょうがないから……

「ねね、麻琴とさぁ、岡田君ってなかなかよくない?」
「…んあ? ああ、それがどーした?」
「くっつけない?」
「はぁ? いきなり何を突然あんたは抜かしよるんや」(何語やねん)

というわけで、小川と裕輔を呼んで
突然、この二人をくっつけちゃおう作戦やることになったんです。

んで、その日はやる気マンマンの高橋と乗り気じゃない俺で
どーしよー、あーしよーって話してたんです。
ドッキリ作戦にすることにしたんです。

とりあえず本人たちを呼び出すことに・・・

「あー、麻琴?今ヒマぁ?」
『えー?何、宿題写させてくれるって?』
「違わい!海であそぼー」
『えー!?あたし水着来たくないから行かない』
「岡田君も呼ぶけどなぁ」
『え?行く!行く行く行くから!待ってて!てか待ってろ!いいな!!
 待ってろォー裕輔ェー!今日こそヤツをゲットだぁ! プツ』

「………来るって。かなり燃えてた」
何があったか知らんが目を丸くしてそう言った。
まあ大体予想つくけどさ。

………

「そんなに裕輔が好きならとっとと告りゃえーのに」
「麻琴がセンチになってるトコ想像できる?」
「んにゃ、全然。アイツは勢いだな」
「隼くんもセンチにならないし」
「俺がセンチになってるトコ想像できる?」
「んにゃ、全然。てか恋人っぽくない」
「あ、俺お前の恋人やったんか…テッ!」

パコッと高橋に殴られ、ジッと見つめられる。

「な、なんや?」
「泣いてもいい?」
「あ、や、ま、あの、いや…」
「じゃ、キスして…痛!」

パコッと俺も殴り返す。

「こんな場所で出来るかよ。人よーけおるんやから」
「……」
「じゃ、お前はどんな恋がしたいんや?」
「甘くトロトロになる…ってウソだってば!引くなぁ!」
「……今のボケですか?本気ですか?」
「だからウソだってば。恋人っぽくなくていいから
 いつも通り一緒にいよ、ね?あたしは一緒にいたいから」
「いや、まあ。じゃ分かった。多少恋人っぽくするから、うん。
 よし、じゃ名前で呼ぶわ、な?」

………まぁ、そんなこんなで、話はややとんで……

「あ、もしもし?裕輔?今空いとるかぁ?」
『は?いや、まぁ暇っちゃ暇だけど?』
「じゃ、海こーへんか?」
『え?今から?』
「そう、今から。小川も来るって…テッ!」

パコッと高橋に殴られ、睨みつけられる。

「なんやねん。別に言うてもええやんか」
「それじゃドッキリにならないでしょー」
「もう普通に行けばえーんちゃうの」

『もしもーし?』
「あ、で、海来るって?」
『小川も行くって?』
「あー、うん。すごい勢いで来るって」
『あーじゃ俺も行くから。じゃな プツ』

「来るってよ」
「なんか文句言ってた?」
「小川も来るって言うたら、素直にじゃー行くって」
「……なるほど。岡田君も麻琴に気があるってワケね」

「俺は愛にしか気がないから」
「……やっぱキャラ違うわ。普通でいいよ……普通で」

2人が来るまで堤防の道ばたで待つことに。

陽はやや傾きはじめ、海水浴の客もぼちぼち引き返し始める。

「あ〜ぁ、海にも入らずそこら辺をブラブラして変なカップルやな、俺ら。
 それ以前に海に来るような格好してへんし」
「隼が海でも行くかって言ったんでしょ」
「んまぁそーですが」
「でもいいよね、海」
「もう少し陽が傾いてたらな」
「…うん」

海を見るのは結構好きな方だ。
というか、波の音が好きだ。
なんか知らんが、聞き飽きることがない。

「…ねぇ」
「ん?」
「もうちょっとくっついてもいい?」
「構へんよ」

愛は返事を聞くと俺のすぐ横に来て
身体を寄せてきた。

「…へへ」
「なぁーんか、お前らしくないな」
「だっていい雰囲気だもん。隼だって普段こんなこと嫌がるのに」
「最近なんか吹っ切れてるかもね」
「へ?」
「ほれ、こーやって」

愛の肩に手を回し、ギュっと自分のほうへ引きつける。
このクソ暑いのに。

「んにゃ……」
「吹っ切れるとこんなことも平気でできちゃう」
「…恥ずかしいよぉ」

確かに長い間こんなのも嫌なので、元の体勢に戻る。

「なんかもう2人きりでいたい」
「なんじゃそりゃ。アイツら呼んでからに」
「ホント。隼が変なことするから」
「…俺のせいですか」

「変なことってなに?」

ビク!!

後ろから急に小川が話してきた。

「よ!お2人さん」
「『よ』じゃねぇよ」
「あービックリした」

「岡田君は?」
「あぁ、麻琴の好きな岡田君はまだ来てないよ」
「そっかぁ、早く来ないかなってコラ、何で好きって」
「絶好のチャンスやんか。なー」
「ねー」

「そのために呼び出したの?」
「「うん」」
「じゃ、俺たち帰るから。ガンバレー」
「え?ちょちょちょっと待って、待てよおい。
 心の準備というものが…」
「麻琴の勢いでカバーすれば大丈夫でしょ」
「裕輔だったら大丈夫やろ、多分」
「多分って……」
「変なことせえへんだら大丈夫やって」
「ガンバレー」

「ホントに帰るんかい!」
「無事成功を祈る!」
「いやいやいやいや待って、待てってオイコラ。
 せめて近くにいて。お願いだから」
「あ、麻琴、後ろ」
「え?…ぎぇ!」

裕輔がこっちに向かって歩いてくるのを発見。

「ちょっどどどーしよー、って……あれ?」

もう2人は居なかった。

「よ」
「…ど、どーも」
「あれ?隼たちは?」

……

逃げたこっちは愛を家まで送る。

「大丈夫かな」
「大丈夫やろ」

その夜、裕輔に電話したら『へ?あ、うん。まぁいいかなって』って。
ビミョーな解答やな。結局2人はくっついたみたい。

はぁ、もうどーなることやら。

早くケガ直らないかな…。

さて、翌日は学校。

よく愛と2人でいることが多いが、
特にコレといったことは学校はおろかクラスの中でも広まっていない。
噂が飛んで冷やかされるのもうっとうしいが、
何も言われないのもなんか逆に寂しい。

で、気付けば昼休み。

「あ、俺学食で食うから」
「え?お弁当は?」
「なんかお袋が体調崩したみたい」
「じゃあたしも一緒に行く」
「えー…俺運動部で食いたい」
「あたしも一緒にいてもいいでしょ?彼女だもん」

『運動部』とは、なんかこの学校の学食にある暗黙ルール(?)で、
運動部の部員、しかも男子しか座らない、というか座れない『運動部シート』がある。
というかそれ以外の生徒はあの雰囲気に混ざれないから近寄らないだけ。

大体予想はつくかと思われますが、
そこに座れるのは、部員とかその彼女とかマネとかぐらい。
あとは度胸のある普通の生徒(笑)

学食に行くと、まぁ予想していたよりは少ないが、
部活連中が運動部シートにチラホラ。

隅の売店でパンを買って、抵抗を感じながら愛と一緒に運動部シートへ。
サッカー部の部員は今のところ同学年の今井だけのようだ。

「あれ?隼久しぶりじゃねーか。学食なんて珍しいな。ケガは?」
「どーも。おかげさまで順調に回復でーす」
「こんにちは」
「…へ!?隼って彼女いた!?しかも高橋ちゃんだし!いいなー彼女と飯か」
「そりはそりは…ってお前も彼女持ちだろ?はい、じゃ、俺たち向こうで食うから。
 あ、それと裕輔も昨日彼女出来たから」
「へ!?裕輔もかよ!くそぉ…」
「だからお前も紺野がいるだろ!?」

部活仲間と少し離れた場所で愛と昼を食べる。

「紺ちゃんと付き合ってる人ってあの人だったんだ」
「え?紺野知ってるん?」
「去年クラス一緒だったから」
「アイツは今井浩之っていって、結構いいヤツ」
「うん。紺ちゃんいっつも幸せそうな顔してたから」
「紺野って何か食わせるとすんげぇ幸せそうな顔するって今井言うてたけど」
「うん、何でも美味しそうに食べる。羨ましいな。…あ、紺ちゃんだ」

今井の方を振り向くと、紺野が横に座ったところだった。

「ね?幸せそうな顔」
「えーなぁ。あんな彼女がよかったなぁ」
「あ、失礼なやつ」
「おっと、失言失言。ってかもっと怒ってもええ所やろ。嫉妬とか」
「んー、隼だからね」
「はぁ…?俺だから、ですか?」

つまり、それって……何なんでしょう?