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どらい 投稿日:2003/11/25(火) 23:50
<短編 いつかの風景>
その日は朝から雪が降っていた。
夜も近づき、あたりはネオンと白銀色に染まった建物が浮かんでいる。駅前の広場は一段と人が増え、
アーケード内一帯はこのシーズン恒例のイルミネーションでより賑やかに見える。―――
「冬までに相手見つけるって言うたん誰やったっけ?」
「・・・やかましいわ」
「ま、俺は3年もアイツと一緒におるワケやし。気の毒やな〜、一人っきりって」
「お前、喧嘩売っとんか?」
「べーつにぃー」―――
昨日の友人との会話が浮かんできた。
今年の夏、2年と少し付き合っていたなつみと別れた。
理由は・・・、自然消滅のようなものだ。・・・・あぁ、今日ももう終わりだ・・・
俺は商店街の本屋で一人、昼過ぎからずっと雑誌を立ち読みしている。
「一人」で過ごすこの「特別な日」を、家で寝て過ごしたくなかったからだ。
去年はなつみとずっと一緒だった。
雪の色よりも白い歯を見せ笑うあいつの姿がいまだに目蓋の裏に焼き付いている。
でも、アイツとは終わったんだ、別れてから何度も自分にそう言い聞かせた。――忘れよう。アイツとはやり直さない。
夜になり、そろそろ帰ろうと店を出たとき、背中から聞き慣れた声がした。
「トシヤ?何してんの?こんなとこで」
振り返ると、忘れられなかったその笑顔があった。
「なんやねん。ええやろ、何しとったって」
俺は何をムキになっているのか、つい怒り口調になってしまう。
コイツの前では素直になれない、付き合っていた頃からそうだった。「あ〜? さては今日は一人で寂しくて誰かに会おうと商店街をうろついてたな?」
そう言いながら無邪気に笑う彼女を見ていると、自分の心がさらに透かされてしまいそうで、
無視して歩き出そうとした。「あ、ちょ・・・」
引き留めようとする彼女の手を振り払い、俺はさらに歩き始める。するといきなり、彼女が後ろから抱きついてきた。
「ねぇ、なんで行っちゃうの?」
「なんでって…もう関係ないやろ…」
「関係ある!なっちには関係ある」
「……もう終わったから」
「…ホントに終わったの?」
「………」
「ねえ?」
「……ああ」それからしばらく沈黙が続いた。
「…ゴメン。ワガママだよね、なっちって」
「………」
「でもこれだけは言っとくから」
「…なんだよ」
「……メリー クリスマス」そう言って、なつみは走り去った。
俺は、姿が見えなくなるまで走る彼女を見ていた。――これでええんや…
アパートまでの帰り道、アイツとの思い出が脳裏に蘇ってはかき消そうとしている自分がいた。
「クチ」では別れても、「ココロ」が否定する。今夜、アイツが夢に出てきたら謝ろう。
昼間に子供が作ったであろう雪だるまは、
心なしか寂しそうな表情でこちらを見つめていた。