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名前:ねぇ、名乗って 登校日:2004/09/21(火) 04:15
ちょっとむかしの江戸時代。ところ大江戸ある屋敷の前で年
の頃は19・20の、元気そうなな女の子が門を叩いて叫んでいた。
「御免下さーい、家主様、いらっしゃいませんかー?」」
しばらくしてもまったく応答がない。留守なのかなと女の子
は考える。
「あのー、家主様はいらっしゃいませんかー??」
再び元気よく呼びかける・・・と、ようやく
「…はーい?」
奥から声がして、一人の少年が目をこすりながらのっそりと
現れたのだった。
まだ若い、年の頃15・6の子供と言っていいくらいの少年だ。
「あんた、誰だい?」
少年はあくびをしながら聞く。
ちょっと戸惑いながらも、女の子は挨拶を始める。
「え、えーと。あ、わたくし、亜弥と申します。大旦那様から
若旦那様のお世話をするようにいわれ、やってまいりました」
「・・・あや?」
少年は寝ぼけまなこでつぶやく。
「はいっ。亜弥、と呼んでくださいね」
そういって亜弥は少年に向かってぺこりとお辞儀をした。
「・・・そういえば、親父からそんなこと言われてたなあ・・
・奉公人が来るって・・・おまえさんがそうなのか」
「はいっ。本日からこちらにご厄介になります、よろしくお願
いしまーす!」
「・・・へぇ」
と、少年はジロジロと上から下まで亜弥を眺めはじめる。
亜弥の身なりは、桃色の着物をまとい、きっちりと髪を結い
上げている。しかし何より少年の心を惹きつけたのは、愛くる
しい顔立ちと、元気な声による彼女の空気のあかるさであった。「いいね、可愛いねえ」
「・・・はっ?」
すっとんだ返答に亜弥は思わず尋ねかえす。
と、いきなり少年の手が亜弥の腕を強く引っぱった。
「・・・・あっ」
体勢をくずし、倒れ込む亜弥の体を、うまくくるりと入れ換
え押し倒す。
「なっ、なっ、何するんですかっ」
「まあまあ」
鼻と鼻がふれ合いそうな距離で、にっこりと笑う少年。
もちろん亜弥の顔はひきつっている。
「あっあっあっ・・・」
「何?」
「あややっ!!!・ビーーーーームッッッッ!!!!!」
「どびゃらはーーーーーっっ!!!」-----------------------------------------------
解説しよう。亜弥はその怒りが120%に達すると、指先か
ら謎の衝撃波、あやや・ビームを発射することができるのだっ
っっ!その威力はうちわ3000個分だったりしなっかったり!
-----------------------------------------------壁をつきやぶって外まで吹き飛ばされた少年は、三回転半し
て木にぶつかってようやく止まった。
「まったく、何するんですかー! いくら若旦那様でもいきな
り何しとりますかぁー!?」
怒りでかなり無茶苦茶だ。
少年は「いいじゃん・・・」と言ってからがっくりと気絶し
た。少年はふとんに寝かされていた。
ふと目を覚まし、もうろうとした頭であたりを見回す。
(これ、俺の部屋か・・・?)
しかしその部屋は、少年の知っているそれとは大きく異なっ
ていた。
確か朝には、着物をぬぎっぱなしで、四隅にホコリがたまっ
た小汚ない部屋だったはず。なのに今では、きれいに片され、
掃かれてある。
「あっ、気がつきましたか」
荷物をかたづけている亜弥が廊下から声をかけてきた。
思わずビクリと身がまえる少年。
一人このはなれの屋敷にずっと住んでいて、今まで家で声をかけられたことなど無かったから。
「あ、ああ・・・」
内心の動揺を押し隠すように、無愛想に答える。
「ご無事でなによりでした」
亜弥は気にした風もなく、ほっとした顔で言う。そしてとな
りにきちんと正座して、とうとうと説教を始めた。
「いいですか、二度とあのような事をなさってはなりませんよ
。いくら若旦那様といえど、いきなり奉公人を押し倒すなん
てあんまりというものですよ。だいたい・・・」
亜弥の言葉を右から左に流しながら、少年は不思議な気持ち
になっていた。
(なんで俺はこいつにこんな事を言われてるんだ?)
これまで誰かに説教を聞かされたことも、心配された覚えも
なかったから・・・。心が、落ち着かない・・・。
「い、い、で、す、か!?」
「えっ?」
いつの間にか、顔の近くで亜弥が少年の目を覗き込んでいた。
「い・い・で・す・ね!!」
目が怖い。目の奥がきらりと光った気がする。
「はい・・・」
そう答えるしかなかった。
「なら結構です。それでは、そろそろ夕食をお作りいたしまし
ょう」
亜弥はそうにっこりと笑って、台所へ歩いていった。亜弥は台所でお米をといでいた。夕食とはいっても、この材
料では精々ご飯と漬け物しか作れない。せっせと手を動かしな
がら、亜弥は少年の事を考えていた。
(・・・まったく、なんて事をするんだろ。男の方っていつ
もあんなこと考えているのかしら。私・・・、やっていける
のかなあ)
と、手を休め、
(大旦那様がおっしゃってたことは本当だったのね・・)
曰く、『三国一、女に手の早いマセガキの道楽息子』
「そんな人と一緒に暮らせだなんて、大旦那様、ひどい・・」
ついボソッと口をついてでた。
しかし頭をブンブンと振って、
「いいえ、そんな事はありませんよね! きっと若旦那様はご
立派なご当主となられます! いいえ、わたしが必ずならせ
てみせます! それを見越して大旦那様はわたしをあの方に
おつかせ下さったんだわ。だからそれがわたしの役目!」
自分に言い聞かせるように、独りごつ。
・・・と、ふと後ろから人の気配。「ハッ・・・まさか」
そしてとーとつに抱きつかれた。
「あーや♪」
「あやや・ビーーーーーーーームッ!!!」
「でどがしゃーーーーーーっ!」
「何すんですかーーーっ!」
少年だった。
「いや、かっぽう着のうしろ姿に、こう俺の心がぐっとネ・・」
「ぐっとしないでください! あなた本当にあのご立派な大旦
那様のご子息ですカー?」
「さあ?」
「さあじゃないでしょ、あれだけ二度としないで下さいってい
ったでしょ、なのに何でそーゆー事するんですかいいですか
・・・!」
少年はすでに気絶していた。月が真上に来る頃、そっとふとんを抜け出す影があった。
影の正体は少年。
むかう所は、亜弥の寝室。
こりずに夜這いをかけようというのだ。
(俺って、かわいい女は見逃さないんだよね)
何故、そうなのかは解らない。しかしそれが自分の性だとは
解っていた。
そうやって、気に入った多くの町娘と関係を持ち、色事士と
してはちょっとした有名人になった。
よく見ると、少年はなかなか、いやかなりの色男ぶりである
。そして女性に対して押しの強い性格ではあるが、どこかそれ
を許してしまう軽さがあるのだ。
その顔と性格が女の心をつかむのか。(亜弥はかわいいなあ)
だから夜這う。
音を立てずにふすまを開ける。
ふとんのふくらみを確認してにやっと笑い、枕元に近づく。
(亜弥ちゃーん)
ばっとふとんをめくる。
「・・・・あれ?」
そこにいたのは亜弥でなく、丸められた毛布であった。
「・・・若旦那様・・・」
背後から静かに声をかけられる。
ゆーっくりと、ひきつった顔で後ろを向く。
幽霊のようにたたずむ亜弥がいた。暗くて顔がよく見えない。
「若旦那様・・・、あなたって人は・・・」
わなわなと身体を震わせる亜弥。そしておもむろに
「すー・・・」
「すー?」
「すーぱー・あやや・ビーーーーーーーーーーーーームッッ!
!!!」
「だはーーーーーーーっっっっ!」
「もう知りません!」
ピシャリと戸を閉められ、冷たい夜空の下でだらだら頭から
血を流しながらもつぶやく。
「ふふっ、なーに、時間はたっぷりあるさ、亜弥♪」
・・・・・・・
・・・ギャフン!ーお わ りー