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遥か彼方 投稿日:2004/11/02(火) 16:50

昼休みの屋上。
君はいつも一人でこの街の景色を眺めてる。
一人で・・・。

風で靡くその髪に触れられたら。

その綺麗な瞳が僕を映したら。

君の手と僕の手を重ねられたら。

『あいつまた一人でこんなとこいるぜ』
『あぁ?・・・2組の石川じゃん』
『イジメられてんだろ?』
『そうらしいな』

君を守りたい。
僕は君を傷つけないと誓うんだ。

心をそっと、開いてぎゅっと、引き寄せたら

「あの・・・・・」

風で靡くその髪が揺れる。

その綺麗な瞳が僕を映す。

こんなに簡単なことだったなんて。

「僕、石川さんと同じクラスの渡辺・・・雄一っていうんだけど、知ってる?」

君の戸惑った瞳をしっかりと見つめ返す。
だって僕が映っているんだ。
目を逸らすことなんて出来ない。

「・・・・・・・・」

軽く頷くだけの返事。
焦るな、焦るな。

「・・・友達に、なりませんか・・・?」

その綺麗な瞳が涙を・・・。
泣かないで、泣かないで。

「泣かないで」

「・・・え・・・・・?」

「友達に、なってくれませんか?」

僕はゆっくりと手を差し出す。
君はまだ戸惑っているんだ。
でも大丈夫。

届くよきっと、伝うよもっと、さぁ・・・・・

「さぁ・・・・・」

君の手を僕の手が重なったら。
僕は君を此処から連れ出すんだ。

前よりずっと遠くへ。

奪い取って掴んだって、君じゃないなら意味はないのさ。

だからもっともっと遥か彼方へ・・・。