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どらい 投稿日:2002/03/12(火) 00:18
―卒業―
春がやってくる時、卒業式もやってくる。
式を終え、携帯に一通のメール。
《校舎の屋上まで来て下さい》
またか。と思いつつ、屋上まで足を運ぶ。
あの場所に行くのは何回目だろう。
今日で最後だ。屋上のドアを開け、外に出てみると、
見覚えのあるうるさくて小さい有名な女子生徒。
プラスαで中学校が一緒。「なんだ。矢口か」
いつもはうるさい矢口だが、今日は朝から静かだった。
「ごめん。突然呼んだりして」
「なんだよ。だいたい分かるけど」
「うん。あのね、松下君のことが・・・・」
「好きだったって言いたいんだろ?」
「でも! でも、つき合ってほしいとかじゃないの。
ただ気持ちを伝えたかっただけ。大学も正反対の方向だし」
「なんだ。つき合ってくれ、じゃないのか」
「え?」
「俺、矢口とだったらつき合う気あったのにな」
「・・・」
「ま、確かに大学は逆方向だけどな」
「あたしのこと、好きだったの?」
「んん。まあ」
「何で言ってくれなかったの?」
「だって前“好きな人いるか?”って聞いたとき、別の奴の
名前言ってただろ?」
「他にも好きな人は居たよ。でも、奥の方には
いつも松下君のことがあって」
「でもつき合う気はねーんだろ?」
「それは大学が・・・」
「別々になるからってか」
「・・・・」
「・・・・」「・・・・じゃ、こうしよう。大学卒業したら
ここに戻って来る。ね?」
「なんで?」
「だって大学行ってる間は会えないじゃん。
そんなの寂しいもん。故郷に戻ってきたら
また会えるでしょ」「・・・わかったよ。ここに戻ってこればいいんだろ」
「うん。その時、もう一度“好き”って言ってもいい?」
「はいはい。順調にいって4年後ね」「うん。覚えててね。約束だよ」
「へいへい」
「両想いだってこと、忘れないでね。
あたしも覚えてるから」そう言うと、矢口は笑顔でちっちゃく手を振り、
走り去っていった。「忘れっぽいお前が覚えてるわけねえだろ」
矢口が見えなくなってから、俺は呟いた。
今日、高校を卒業する俺たち。
ちょっと大人になった気分。
でも、しょうもない約束をする俺たち。
心はまだ、子供かもしれない。しばらくしてから校舎へ戻っていく。
温かい風が、春をすぐそこまで運んでいる。
「へっくしょい!」
・・・・・・花粉と一緒に。