少年少女 〜2〜
- 1 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月12日(金)14時57分22秒
- ヽ^∀^ノ<ちわっ、ヽ^∀^ノ引越しセンターです!
花板から引っ越してきましたー。花板のアドレスは下記の通りです
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=flower&thp=998156300
ヽ^∀^ノ<えー、ひっそりと暮らしたいので、ここはsageでお願いだそうです
じゃ、ヽ^∀^ノ引越しセンターからの連絡でしたー
- 2 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月12日(金)14時58分00秒
- CHAPTER42 〜甘い夜〜
「ねぇ、いちーちゃん」
「……ん?」
仲直りした後は、仲良くお手手を繋いで、甘えにかかる。
後藤は、見た目は冷たそうに見えるんだけど、かなりの甘えん坊で。
15歳、もうすぐ16歳の後藤真希は、市井の前だとすごく可愛い。
「……なに?」
「ん〜……、やっぱいい」
「なんだそれ」
ぷっと吹き出して、笑う。
「気になるから言えよぉ」
「いいよ。言ったらいちーちゃん怒るもん」
「怒ることを言おうとしたのか」
「や、そーでもない」
「なんだよ、一体」
本当に変わったヤツだな、と改めて思う。
一体、どっちなんだ。
何が、言いたいんだ。
ここまで何を考えてるのか読めないっていうのも、すごい。
- 3 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月12日(金)14時58分31秒
- 「で、結局何を言おうとしたのさ?」
「えー。もぉいいじゃ〜ん、忘れようよぉ」
「ダメだ! こーいうの、気になってしょうがないんだよ、なんか」
言いかけたことは、言って欲しい。
どんなくだらないことでも、言ってくれなきゃ気が済まない。
「……ふむ。言いかけて止めたことは、気になると……」
それを聞いた後藤は、何やら手に字を書く真似をする。
「……何してんの?」
「いちーちゃん情報を、忘れずにメモしてるの」
「……………」
可愛いヤツだ。
前髪に触れて、分け目を作る。
頬に触れて、その柔らかい感触を実感する。
唇に触れて、言葉の代わりに想いを伝える。
もう、ドッポリつかってしまった。
抜け出せないし、抜け出したくない。
願わくば、ずっとこうしていたい。
ずっとこうして、触れていたい。
- 4 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月12日(金)14時59分07秒
- 「あのね……?」
「……ん〜?」
唇を離しても、髪に触れている手を、頬に触れている手を離さない市井。
そして、その市井を、潤んだ目で見つめる後藤。
ドラマとか、漫画とか。
よくあるじゃん、こういう風に思うこと。
この子のためなら、どんなことでも出来る。
望むなら、何でもしてあげたい――、とか。
潤んだ後藤の目を見てると、自分までそんな気持ちになってしまった。
後藤のためなら、どんなことでも出来る。
一緒にいたいと望むなら、その願いを叶えてやりたいとも思う。
だけど自分は、ドラマの世界や漫画の世界なんじゃなく。
現実の世界に生まれた、一人の女の子。
けど今だけは、全部知られるまでは、彼女が望むことを叶えてやりたいと思う。
それが明日まで、1週間先、いつかはまだ判らないけど――。
- 5 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月12日(金)14時59分41秒
- 「………どした?」
見つめたまま、恥かしそうに目を伏せる後藤の顔を覗き込む。
一体、何を言おうとしたのか。
市井が怒ることとは、どんなことなのか。
恥かしいのを我慢して、後藤は言った。
「………あたしのこと、好き……?」
「…………はい?」
だから、前に好きだって言ったじゃん。
そう言うと、前は前でしょ、今じゃないじゃん、と反対に言い返された。
「ほら。だから怒るって言ったじゃん」
「別に怒ってないよ。ただなんでそんな聞きたがるのか不思議なだけ」
「……女の子は、常に愛されてるか気になるものなの」
まあ、例外はあるけど。
……そうだね、ここに例外があるね。
女の子なのに、女の子の気持ちが判らないお馬鹿さんが1人。
- 6 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月12日(金)15時00分14秒
- 「ごとーは、いちーちゃんのこと、好きだよ?
もう、大好き。誰よりも、宇宙で1番好き」
「………よくそんなこと、はっきり言えるね」
「だって、ホントのことだもん」
「……………そう」
だからって、そうはっきり言えるのは、日本で半分もいないと思うぞ。
面と向かって、照れもせずに。
「だからぁ、いちーちゃんの気持ちが聞きたいのっ。
それ聞いたら、もうなんか、例え切れないくらい嬉しくなるから……」
「うー……」
だけど、恥かしいぞ。
恥かしいという考えは、変わらない。
だけど、後藤がそう望むのなら。
叶えてあげれる時ならば、その恥かしさを押し殺してでも、叶えてやりたい。
「……好きだよ。もう、すっごい好き。
オカシクなっちゃうくらい、好き」
「…………………」
「な、なんだよ。なんか言ってよ……」
余計、恥かしくなるじゃないか。
- 7 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月12日(金)15時00分46秒
- ヽ自分からふっといて、黙って俯いている後藤。
そりゃあ、ないじゃないか。
そう思って覗き込んだら、市井よりも何倍も赤い顔をした後藤がいた。
「………うぅ」
「ど、どした?」
「………死ぬ程うれしい………」
「……そりゃあ、よかった」
喜んで、嬉しがってくれたなら。
言ったこと、後悔しなくていい。
前に過ごした夜とは違って、打って変わったようにラブラブな夜。
そんなラブラブが、いつまで続くのか。
裏では保田が動いていることを知らずに、今日は2人、甘い夜を過ごしたい。
- 8 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月12日(金)15時01分25秒
- ――
こっちだって、甘い夜を過ごしたい。
だから、こうやってやって来たっていうのに。
いないってのは、どういうことだ。
携帯は相変わらず、切られた時から繋がらないし。
避けられてるのか、事務所ではかち合わないし。
挙句、マンションにもまだ帰ってないなんて。
「っていうかさ、ホントにあたしが何したってのさ」
ただ、梨華ちゃんの言う通り、松浦と一緒に観覧車に乗っただけじゃないか。
梨華ちゃんが、乗って、なんて言わなけりゃ、乗らなかったさ。
吉澤は愚痴る。
そうして吉澤が、マンションの前を、うろうろしている時だった。
一台の車が、マンションの少し前に止まる。
運転席から出てくる、知らないオッサン。
そして後部座席から出てくる、知ってるお姫様。
(おい、梨華ちゃんじゃん!)
そう、石川梨華だ。
- 9 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月12日(金)15時02分14秒
- 大好きなピンクを身にまとって、オッサンに頭を下げてる。
ちょちょちょ、ちょっと待ってよ!
誰だよ、おいらのヒメサマの肩に触れてるのは!
この際、イメージなんかどうでもいい。
これからは素直になるって決めたんだから、思ったこと全部言ってやる。
「梨華ちゃん!」
飛び出して、驚いてる石川に駆け寄って。
オッサンからお姫様を守るように、王子様が立ちはだかる。
「よ、よっすぃー!? なんで……」
「なんでじゃないよ! それより、この人誰なんだよ」
送り迎えは、マネージャーの仕事。
なのに、今石川を送ってきたのは、飯田じゃない。
吉澤には、面識のない、知らないオッサン。
「誰って……花畑事務所の社長さんだよ!!」
「え………」
花畑事務所の社長さんと言えば、つんくの友達。
そして、石川がレンタルされるカントリー娘。が所属する事務所。
「つんくさんとこの、吉澤くんだよね?」
「は、はい…」
「梨華ちゃんと、お友達?」
「……………」
変なトコに、割って入ってしまった。
間に挟まれ、悩む。
- 10 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月12日(金)15時02分59秒
- ………あれ? 行進したのに、(〜^◇^〜)さんがいない。
まさか、引越し先判らないんじゃ!?
い、急いで代理に誰か………あ、( ´ Д `)!
( ´ Д `)<………んぁ〜、じゃあ頼まれたしぃ、後進
(;0^〜^0)<って、後ろに進んでどうすんのさ!
て、てか、市井……。
市井………市井………おめでとぉぉぉぉぉぉ!!!
昨日から一日中泣きっぱなしだ………(グスグス
- 11 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月12日(金)17時13分29秒
- お引越しご苦労さまでした。
甘いいちごまいいっスね〜。
市井も復帰だし。いいことばかりだ。
- 12 名前:名無し娘。 投稿日:2001年10月12日(金)22時34分12秒
- いちごま、あまー!(w
久しぶりの展開にこっちが恥ずかしくなりました(///▽///)
- 13 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月13日(土)03時35分39秒
- いちごま最高!!……ってか市井最高!!(爆
作者さん、そういうことで保田さんの計画はなしってことで…(爆
すいません。ちゃむ祭りではしゃぎすぎてかなり壊れてます(w
- 14 名前:ぐれいす 投稿日:2001年10月13日(土)18時54分16秒
- イイっすねー。いちごま。鳥肌が立ちそうです(w
いしよしの進展に期待!
- 15 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月14日(日)01時36分42秒
- CHAPTER43 〜王子と姫の生バトル!〜
「別に、下心があって送ったわけじゃないよ。
圭織ちゃんがスタッフとの打ち合わせがあるから、その代わりに送ってきただけ」
吉澤の心を見透かしているのか、田中社長は語る。
吉澤はただ黙って、縮こまっている。
「ご、ごめんなさいっ。あ、あの、私とよっす――吉澤さ、…吉澤くんは幼馴染みでっ。
そ、それで心配して出て来てくれたんだと……」
「いやぁ、別にいいよ」
社長に生意気な口を利いた吉澤を、必死に庇う。
それを、笑顔で応える田中社長。
吉澤は相変わらず、黙ったまま。
それから何度も石川は頭を下げ、謝る。
吉澤は黙ってその様子を見ていたのだが、石川に
「ほら、よっすぃーも謝ってよ!」
と、怒られたので、謝ることにした。
- 16 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月14日(日)01時37分12秒
- 「じゃあ、そろそろ、俺帰るから」
さんざん謝られて、田中社長もまいったのか、さっと運転席のドアに手をかける。
「あ、送ってくれて、ありがとうございました!」
「うん。つんくさんと、圭織ちゃんによろしく」
「はい!」
嬉しそうに返事する石川に、多少むかつきを感じながらも、吉澤は頭を下げる。
どっからどう見ても下心ありのオヤジに、どうしてそんな嬉しそうなのか。
吉澤は判らない。
「……吉澤君、ちょっと」
「……はい?」
乗って、窓を開けたと思ったら、不意に名前を呼ばれる。
そして耳を傾けてみると、こんなことを言われた。
「…………君がいなきゃ、部屋まで送ってたのになぁ」
「な……!」
「でもナイト様も、北海道まではついて来れない」
その言葉にかっとなって言い返そうとしたが、車のアクセルを踏むのが早かった。
言うだけ言って、エロい微笑みだけを残して、車は去って行く。
- 17 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月14日(日)01時37分42秒
- 呼ばれなかった石川は、そんな2人の会話はもちろん聞いてない。
だから、田中社長の真意なんか、知るハズもなくて。
「梨華ちゃん、今日送ってくれた時、何かされなかった?
何か、変なこととか言われなかった?」
「………何それ。義剛さんのこと、疑ってるの?」
「だ、だって…」
今さっき、疑うも何も、そう言う風なことを言ったじゃないか。
……はたして、そう言っても、石川は信じてくれるのだろうか?
人を疑ったり出来なくて、何でも信じてしまう石川に、今の吉澤が言っても信じるのだろうか?
「どうして、そうやって変な目で見るの?
よっすぃーは、変な目で見ることしか出来ないの?」
「……………………」
今の吉澤じゃ、自分の方が悪者だ。
だけど、幼馴染みとして、他称王子様として、石川のことを想ってる自分として。
一生懸命、説得を試みてみる。
- 18 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月14日(日)01時38分27秒
- 「北海道って、絶対行かなきゃダメなの? 北海道って、あの社長さんもいるの?
別に、東京でも出来るじゃん。それに、今ならまだ断われるよ」
なんだかこれじゃ、石川と離れるが嫌で、ダダをこねてる子どものようだ。
………いや、実際、それもあるんだけど。
「……もう、断わるどころか、北海道行く準備進めてるもん。
義剛さんもいるし、りんねちゃんやあさみちゃんも、飯田さんもいるよ?」
なんでそういうこと聞くの、と問い詰められる。
「や……」
言ったって、さっきみたいに言い返されるだろうし。
そう思って黙ってたら、石川は違う方と勘違いしたようだ。
俯いて、石川の大好きなピンク色に染まる頬。
喋る前に舌で濡らした唇が、田中社長とは違う意味でエロくて。
ただただ、吉澤はその唇に釘付けになった。
「……もしかして、もしかしてだよ…?
よっすぃー、私が、北海道行ってほしくない…とか…?」
「…………」
ここで、そうだよ、なんて言えば、元通りになるのかな。
ここで、そうだよ、なんて言えば、その濡れた唇に自分の唇を合わせることが出来るのかな。
そうだよ。
そうだよ。
行ってほしくない、傍にいてほしい。
だけど、唇から出てきた言葉は――。
- 19 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月14日(日)01時39分01秒
- 「……べ、別に。ただ、東京でも出来ることを北海道まで行ってしなきゃ
ダメなのかなぁ〜………ってね」
――いっつも、いつもそう。
素直になんかなれたら、もうとっくに抱き締めてる。
相変わらず素直じゃない吉澤の返事を聞いて、石川が俯く。
「………わたし……もうよっすぃーのことわかんない。
なんかもぅ、よっすぃーのこと好きでいる自信、なくなっちゃったよぉ……」
「……………」
「よっすぃーの傍にいたくて、芸能人になったはいいけど、ならなきゃよかったっ。
だって、逢う時間余計なくなっちゃうし、よっすぃーのこと好きな子、いっぱい知ってるし。
私より可愛い子ばっかりの世界で、その女の子達はよっすぃーが好きで…。
亜弥ちゃんの時だって、私、もしかしたらよっすぃーが亜弥ちゃんの方いっちゃうのが恐くて……」
だから、それを見るのが恐くて、帰ってきた。
そう言うと、吉澤の顔色が変わる。
「……なにそれ。梨華ちゃんの方があたしのこと、変な目で見てんじゃん。
梨華ちゃんがあたしのこと、疑ってばっかいるんじゃん!
どうして、信じらんないの!? どうして、信じてくれないの!?」
初めてこんな大声で、石川に怒鳴った気がした。
- 20 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月14日(日)01時39分31秒
- 「……何て言えば、信じられる? 何すれば、信じてくれる?
梨華ちゃんだけを見てれば、信じてくれんの? でも、言われなくても見てるよ。
ちっちゃい頃から、ずっと梨華ちゃんを見てた。
見てても、見てないフリなんかもしたけど………」
初めて聞く、吉澤の想い。
だけど、冷静なんかで聞いてられない。
こうなったらもう、こっちだって全部ぶちまけてやる。
「私だってずっと見てたよっ! 絶対、よっすぃーより前から!!
私は、見てないフリなんかしてない、ずっと、よっすぃーを見つめてきたんだもん!!」
「……っ、べ、別にあたしは、見てないフリをしたかったワケじゃないよっ。
ただ、気持ちが判るのが恥かしくて照れくさくて……反らしてただけだよ」
石川みたいに真っ直ぐ見つめてくるのとは違い、どうしてもそれを交わして意地悪してしまう。
小さい頃からずっと成長していない、自分。
石川もそんな吉澤が大好きだったのだが、今日は話が違う。
- 21 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月14日(日)01時40分03秒
- 「よっすぃーは誰にでも優しすぎるんだもんっ! だから、亜弥ちゃんと…」
「亜弥ちゃんと、何さ。何かすると思ったの?」
「お、思わないけど、もしかしたらって……!」
「もしかしたらもないよ。あたしが何かしたいって思うのは、梨華ちゃんだけだもん」
「なっ、何言って……。冗談はやめてよっ」
「冗談じゃない、本気だよ」
今までに見たことのない真剣な顔。
そんな吉澤の顔にドキっとするものの、それは顔に出せない。
意地を張って、そんなの信じれるワケないよっ、と突っぱねてしまった。
「……じゃあ、どうすれば信じてくれるの」
「それは……」
近付いてくる吉澤。
後ずさりする、石川。
それも、マンションの壁で、もう後ろには下がれない。
「言ってくれないなら、勝手に決める」
「えっ…」
――そして唇は塞がれた。
- 22 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月14日(日)01時41分23秒
- ( ´ Д `)<Zzzz………
(;0^〜^0)<ご、ごっちん、寝てる場合じゃないよ、後進しなきゃ
矢口さんまだ来てないし、飯田さんも治ってないんだから
( ´ Д `)<……んぁ〜? あー、はいはい……後進ね、後進……Zzzz
(;0^〜^0)<って、また寝んのかい!
( ゜皿 ゜)さん、早く帰ってきて…。
えー、田中社長の口調や性格、それは、この中のフィクションってことでお願いします。
>>11
ほんっと、甘いですね。読み返して思いました。
確かに最近、市井復帰を聞いてから、私生活でもいいことばかりだ(w
>>12
書いてる時はそう思わなかったんですが、いざ載せて読み返すと、ほんとすごい(w
多分これが、おいらの書くいちごま甘々の限界です(ニガワラ
>>13
(〜^◇^〜)<これを機に、もっかいさやまり見たいと思う矢口は逝ってよし?
市井最高さ!市井が最高じゃなきゃ、誰が最高なんだ!
そういうことで、保田さんの計画はありってことで…(爆
すいません。俺も死ぬ程壊れてます(w
>>14
( `.∀´)<ぐれいすさん、良い事言うわね。そうよ、その通り!
あたしは『目的のためなら手段を選ばない女』よ!!
(;0^〜^0)<……何も、そんなはりきって言うことないと思いますが…
鳥肌立ちそうですか(w
いしよし、こんな感じになりました。
- 23 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月14日(日)02時00分04秒
- んももおおおお!!!いいところで終わってますね〜!!
ってマンションの入り口ですよね?しかも事務所の隣のマンション。
こんなトコロで…そんな…危険な状況。
見られてないだろうか。
でも、萌え〜〜です!
- 24 名前:ぐれいす 投稿日:2001年10月14日(日)07時55分46秒
- イイ!!こんなにもいしよしがおいしいなんて今まで気付かなかった自分が恥ずかしい…
王子様と姫様を応援します!!
- 25 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月15日(月)03時03分26秒
- いしよしはこれで上手い感じでいくのかな?
いちごまが置かれている状況に比べたら……うらやまし〜(w
- 26 名前:名無し娘。 投稿日:2001年10月16日(火)03時17分24秒
- (・∀・)イイ! とにかく(・∀・;)イイ!(w
素直になれない吉澤がまた(・∀・)イイ!
そのあとの言い合いもかなり(・∀・)イイ!
そして、良いところで終わるのが(・∀・)イイ!(w
うざくてすみません・・・・(ニガワラ
ホントに良かったんで。
- 27 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月17日(水)19時36分25秒
- CHAPTER44 〜素直になって〜
一体、何が起こってるんだろう。
目の前にある、吉澤の顔。
どこまで目の前かと言うと、唇と唇がくっつくくらい。
…………いや、もうくっついている。
「……やっ!!」
何が起こっているか判った瞬間、その唇を自分から離そうと身体を押した。
案外簡単に離れる、身体。
もっと、抵抗するかと思ったのに。
その予想は、外れ。
「………ははっ、もっと信じてもらえなくなった?」
ちぇっ、自信あったのになぁ。
そう言って、自嘲気味に笑った。
- 28 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月17日(水)19時36分55秒
- ファーストキスなんだよ?
大事に大事にとってきた、ファーストキスなんだよ?
ファーストキス………なのに………。
「こんなの、違うっ…! 無理やりじゃない、そんなのヤダ……」
「違うって言っても、ヤダっていっても、キスはキスだよ。
梨華ちゃんに信じてもらおうと、キスをしたんだよ。
だってどうやったら信じてくれるかって聞いてるのに、梨華ちゃん答えてくれないから。
だから、キスしたら信じてくれるのかなって思って、したんだ」
「い、いちいち説明しないでよ、そんなのっ!」
「……だって、梨華ちゃんがキスじゃないとか言うから……」
「そりゃ言うよっ! だ、だって、ファーストキスなんだよ?
夢にまで見た、ファーストキスなんだよっ?
も、もっとこう……なんていうか、優しくて甘くて、胸がキュンってなるような……」
「それは、少女漫画の見過ぎだよ、梨華ちゃん」
「うっ…」
ズバリ的中され、返すことが出来ない。
- 29 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月17日(水)19時37分46秒
- 「…………でもさぁ、こんなの………ないよ」
そりゃ、夢に見たキスと現実とのキスが違うのはしょうがない。
多少、過剰演出が入ってるんだし。
だけど、あまりにも現実のキスが違いすぎる。
何もこんな時に、こんな感情の時に、して欲しくなかった。
吉澤だって、それが判らないわけでもない。
だけど、どうしても信じてもらいたくて。
こんなことをするのもしたいと思うのも、石川だけ。
それを証明しただけなのに。
「…………ごめんなさい」
目の前で泣いている石川。
言いたくないけど、つい謝ってしまう。
謝るってことは、石川の言うことを認めてしまったワケだから。
「謝るんだったら、最初からしないでよ…」
「………」
だって、謝んなきゃ、梨華ちゃん泣くじゃんか。
もっとも、謝っても謝んなくても、梨華ちゃんは泣くんだけど。
- 30 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月17日(水)19時38分23秒
- 「……もうヤダぁ」
「………梨華ちゃん」
ぐしゅぐしゅ泣いて、しゃがみこんで。
そんなことを口にする。
「………梨華ちゃん、もう、あたしのこと、嫌いになる?
もう、顔も見たくなくなった?」
しゃがみこんでる石川の視線に、自分も合わす。
だけれど石川は、答えちゃくれない。
ただただ、泣くだけ。
どうして、こんなことになるんだろうか。
あたし、何かしましたか?
「梨華ちゃん……」
その綺麗な髪に、触れてみる。
「梨華ちゃん……」
顔を上げて見つめる瞳から流れる涙に触れてみる。
「梨華ちゃん……」
さっきよりも濡れた唇に触れてみる。
冷静になって、ありったけの気持ちを込めて。
それで嫌われたんなら、仕方ない。
- 31 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月17日(水)19時39分10秒
- 抵抗する様子もなく、嫌がる様子もなく。
石川は、ただただされるがままになっている。
重ね合わせるだけの、ライトなキス。
事実上は2回目のキスになるんだけども、まるで初めてのような。
ただ、ぎこちなく唇を合わせている。
「……………」
しばらくして離される唇。
必然的に、見詰め合う瞳。
「………嫌いになれるワケないじゃない。だってこんなに好きなんだから……」
「………よ、よかったぁ。嫌われたらどうしようかと思った……」
今度は吉澤が泣く番。
――もちろんそれは、嬉しくて。
- 32 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月17日(水)19時39分49秒
- 「……ごめんね」
今まで、無視とかしちゃって。
亜弥ちゃんとのこと、疑っちゃって。
よっすぃーのこと、信じれなくて。
謝ることは、いっぱい。
そして、吉澤も同じように、謝ることはいっぱいあって。
「……ごめん」
今まで、ずっと意地悪ばっかしてきて。
気持ち気付いてたのに、わざとはぐらかしてばっかりして。
なかなか、素直になれなくて。
これからは、改善しようと思う。
だから、ホントの気持ち言うよ。
「……好きだよ梨華ちゃん」
言ったら、今まであったもやもやが、一気に消え去った気がした。
それは、石川も一緒。
- 33 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月17日(水)19時40分31秒
- お互いに、その一言を待ってたんだ。
吉澤の、その一言を。
「ばかぁ……もっと早く言ってれば、こんなことにならずにすんだのにぃ…」
「へへへ……ごめん」
「反省してないよぉ…」
「やぁ、してるしてる。めっちゃしてる」
「………ばか」
そんなおバカなキミでも、大好き。
そんなことを思うワタシは、もっとおバカなんでしょうか?
いいよ、もう。
どっちでも、いい。
だって、おバカでもなんでも、好きなもんは好きなんだから――。
- 34 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月17日(水)19時41分19秒
- 「うわっ」
「し、しーっ!!」
「んん〜っ!」
3回目のキスをする2人の20mほど後ろから漏れる声。
他の誰でもない、市井と後藤だ。
「ば、ばかっ。気付かれたらごとー、吉澤に殺されるぞっ!」
「だ、だってぇ…ビックリしたんだもん……」
人のキスシーンを見る機会は、そんなあるもんじゃなくて。
2人がキスをした所を見る度に声をあげそうになり、市井に口を塞がれる。
「バ、バレたかなぁ…」
「いや、多分大丈夫」
キスに夢中になってるみたいだし。
「………でもさぁ」
「ん?」
「あたし、いつ帰れんの?」
「………………」
寮から駅への道は一本しかなくて。
その一本は、ただいまキス中につき、通行止め。
先程からずっと、空港や駅のホームではなく、木の陰で足止め状態。
「…………とりあえず、待つしかないだろ」
「…………そだね、それしかないね」
2人が帰ったのは、それから1時間ほどしてからだった。
- 35 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月17日(水)19時42分36秒
- (0^〜^0)<まったく、ごっちんのやつ
後進するの面倒くさいとか行って、どっか行っちゃってさ……
あ、でも、ごっちんまでどっか行ったってことは、更新できるのあたしだけ?
え、えーと(ドキドキ)……こ、こうし――
(;゜皿 ゜)<コ、交信デス!(マ、マニアッタ……)
(0^〜^0)<………………ちっ
( ´ Д `)が逃亡したと思ったら、( ゜皿 ゜)さんの復活か。
それより、ちょっと間を空けてました。空けてたのは、こんなの作ってたからだったりします。
ttp://www.geocities.co.jp/MusicStar-Keyboard/6175/keikoku.html
HPにしか載せてない話もいくつかあるので、見に行ってくれたら、嬉しいです。
>>23
ご心配ありがとうございます。
よし坊はアホなんで、そこまで考えてないんです(w
>>24
(;^▽^)<鳥っ!? きゃー、やめてくださーい!
いしよしおいしいですか。
よしごまな人間が書いてるいしよしでもそう思ってくれるなんて…。
今回のカップリングは自分の中にあるのを全部崩したんで、そう思ってくれて、ほんとうれしいです。
おバカな2人ですが、応援よろしくお願いします。
>>25
(〜^◇^〜)<呼びたいけど、呼んだら放送禁止になっちゃよ〜
(;0^〜^0)<放送禁止になるようなことするんですか…?
これって、上手い感じでしょうか? 読者さんの判断に任せます(w
いちごまはね、いちごまは……
>>26
いや、うざくなんかないです。
一行目の二番目の(・∀・;)イイ!が、ひそかに汗書いてるのに萌えました(w
- 36 名前:ぐれいす 投稿日:2001年10月17日(水)19時48分51秒
- やっぱり甘いのはいいですね。大好きです!
早くいちごまも安心できるといいのになぁ…
- 37 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月17日(水)19時49分10秒
- い、一時間も…萌え!!!!!!
興奮しまくりです!
やっぱいしよしはエエなぁ〜
通行止めくらったのがいちごまだけであることを祈りつつ。。。ドロンッ。。。
- 38 名前:yo-na 投稿日:2001年10月18日(木)02時49分29秒
- ttp://www.geocities.co.jp/MusicStar-Keyboard/6175/keikoku.html
いけない(泣)なんで・・・
- 39 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月18日(木)03時36分38秒
- 激甘っすね!!
でもこれが病み付きになっちゃうんだよな〜(w
いちごまでも、いしよしでもやっぱり甘いのが1番です。
- 40 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月18日(木)12時56分33秒
- >>38
頭に h 付けてるよね。
- 41 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月19日(金)03時10分17秒
- エガッタ、エガッタよ!!
まさしくカッケーよっすぃ〜、新曲買うか。
- 42 名前:名無し娘。 投稿日:2001年10月19日(金)23時42分17秒
- (;・∀・)イイ!!!!!!
ついにくっついちゃいましたかーー!(w
いしよしマンセー!!
- 43 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月20日(土)00時51分55秒
- >>38
wwwからコピペでもOKだよhttp://は自動で付くから
- 44 名前:mo-na 投稿日:2001年10月21日(日)03時37分58秒
- オーライ!hもつけてまっせー。
調子わるいのかな?再トライします。さんきゅー
- 45 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月21日(日)06時01分00秒
- いしよし…みちのりながかったねー
それもこれも全部悪いのは圭ちゃんだ。
( `.∀´)<なんでよ!そっちは関係ないじゃない。
- 46 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月22日(月)03時30分33秒
- 新曲よっすぃ〜を見て、ここの続きを読みたくなった
やっぱモテ男役が似合〜〜う
- 47 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月23日(火)02時05分30秒
- CHAPTER45 〜計算済み〜
『ヤグチは、その辺に転がってるカメラマンと違うんだから。
……………報酬は、高いよ?』
『………そうでると思ったよ』
2人が手を組んで(と言葉にしたらおかしいが)から1週間。
矢口は、マンションに閉じこもり、1人、悩んでいた。
「……あの時、なんでオッケーなんかしちゃったんだろ……」
ただ、あの時は、なんか頭の中がおかしくなって。
気付いたら、保田の思う通りの言葉を口にしていた。
そして、自分が何を言ったのか、今になって気付き、後悔する。
矢口の目の前には、まずは契約金、と言って渡された封筒、100万円。
高すぎる、とは思わない。
相手もお金を持ってるんだし、金額を指定していないのにこれだけもらえるのは嬉しい。
それに、自称名キャメラマンに相応する金額は、もっと上でもいいくらいだ。
- 48 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月23日(火)02時06分08秒
- しかし、この100万という大金、突っ返せばそれで終わる。
頭じゃそれは判ってる。
だけど、お金大好きな矢口としては、なっかなかそれをさせてはくれない。
100万あったら、バーゲンを待たなくてもいっぱい服が買える。
ずっと前から欲しかったふわふわソファも買える。
大好きなプーさんのぬいぐるみのレアものだって買える。
100万あればこそ、買えるものばかり。
けれど、その100万、涙を呑んで突っ返すことにしよう。
突っ返せば、それで終わる。
頭じゃそれは判ってるつもりなんだけど、だけど頭の良さは向こうの方が上。
矢口が想像する以上に、あの手この手を使って引き止めるだろう。
それに、向こうには、矢口の弱点を知られている。
思い出したくもない、過去。
知られたくもない、過去。
石黒にも言わなかった、過去。
プライドが人一倍高かった分、傷ついた、過去。
後藤真希に、負けた。
ヤグチは、敗北者。
- 49 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月23日(火)02時06分39秒
- プライドなんか高くなかったら、突っ返すことが出来たかもしれない。
そんな過去がなければ、こんなことにならなかった。
だけど、高いものはもう直しようがないし、そんな過去も作ってしまった。
昔には、戻れない。
だからと言って、懐かしむようなことはしたくない。
あんな屈辱的な過去、他人に知られたくない。
保田は、そのことを熟知していた。
別に長年一緒にいたワケではないのに、友達でもないのに。
マネージャーという職業柄か、大抵、その人間がどんな性格か判るらしい。
芸能界向きの子か、そうじゃない子か。
矢口は、芸能界向きの子だった。
プライドが高く、負けず嫌い。
そんな子は、芸能界の荒波に立ち向かって行くのには、大歓迎。
だから、矢口が受かると思ってたんだけど――。
「くっそ……、人の弱みにつけこむのはヒキョーだぞぉ……」
矢口の呟きは、ごもっとも。
- 50 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月23日(火)02時07分15秒
- そもそも、そんなスクープ撮りたいなら、自分、特ダネ持ってんじゃない。
市井と後藤がデキてる、なんていう、大きな特ダネが。
そう言うと、それが出来たらアナタになんかに頼んでないわよ、と答えが返ってきた。
「あの子の性格の事だから、撮られたら撮られたで、
『やったー、これでこそこそ隠れて逢わないで済むー』って喜ぶに違いないわ」
「……や、でも、どっちにとってもマイナスになるだろうから、別れさせられるでしょ?」
「それをさせられるから、出来ないの。
あの子、反対されたって何したって、自分がこうと思ったらてこでも動かないから。
下手に、無理やり引き裂こうとなんかしたら、何言うか判んない」
だから、2人を引き裂くという、手荒な真似は出来ない、と。
けれど、後藤の方から別れを告げさせる、なんてことは出来るワケで。
別に市井の方から別れを告げさせることも出来るんだけど。
やっぱりそこは、長年一緒にいるマネージャー、後藤のことが可愛いらしい。
後藤に幻滅して別れた、なんて、許せないのだ。
それでも、後藤が、市井に幻滅して別れたは、許せるを通り越して、よくやったと褒めてやりたい。
「だから、なんでもいいから、市井の撮ってよ」
「………………」
矢口の返事は、ご存知の通り。
断わってたら、目の前に100万なんかない。
- 51 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月23日(火)02時07分46秒
- ――
「えー、マジでぇ?」
「マジよ。さっき渡したスケジュール表に書いてるじゃない」
「ぅー……」
不満の声をあげて、唸って。
天下の後藤真希さんは、さっきから不機嫌な顔。
明日からのスケジュール。
イベントのため、名古屋へGO。
そしてその後はまた戻って、新曲のレコーディングのため、スタジオにれっつGO。
れっつGOしながらも、レギュラー番組の収録、雑誌の撮影と休む暇がない。
「ちょっと待ってよー。なんか、そぅとぅハードスケジュールなんですけど。
これじゃあ、ガッコー行けないじゃーん」
「何言ってんの。行けないも何も、アンタ、行ってないじゃない」
「………わはは」
「……それって、笑って済む問題なの?」
「……でも、真顔で頷く問題でもないよね」
「……まあ、そうね」
- 52 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月23日(火)02時08分18秒
- そう言った後、保田と笑い合ったけど。
後藤の心の中は、ブルーだった。
(これじゃあ、いちーちゃんとデートどころか、逢えやしないじゃん…)
向こうだって、人気急上昇の少年。
今までだって、過密なスケジュールの合間を縫って逢ってたんだ。
もちろん、そのためには頑張って仕事を早く終わらせなきゃいけなかったけど。
でも、この後逢えるんだと思い、だからこそ、過密なスケジュールを頑張れたんだし。
安心出来る場所は、家じゃなくていちーちゃんの傍。
それはもう、後藤の中では常識になっていて。
仕事が忙しくて、めまぐるしい1日も、市井に逢うと忘れられた。
けれどこのスケジュールを見る限り、なかなか、安心出来る場所には行けないらしい。
そんなことは、保田の計算済み。
「ねぇ圭ちゃん、こんなの、あたし身体持たないよ」
一応、訴えてみる。
「大丈夫。1週間経ったら、2日間オフがあるから」
「えっ」
その訴えは、意外と簡単に通ったみたいだ。
そしてもちろん、これも、保田の計算済み。
- 53 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月23日(火)02時09分02秒
- 前もって中澤に確認した、いちよしコンビのスケジュール。
後藤の2日間オフの時、その時2人は、仕事で北海道へと行くらしい。
別れさせる作戦その1、まずは、逢わさないようにする。
それで、冷めてくれれば1番手間を取らないで済むんだけど。
念の為、矢口に、北海道行きのチケットと必要なお金を持たせ、スタンバイさせよう。
仕事で行ったって、少なくとも1時間以上はオフの時間があるハズだ。
スクープなんかないだろうけど、備えあれば憂いなし。
とことん矢口を利用させてもらおう。
「……圭ちゃん?」
「………へっ? な、なに?」
「や、ボーッとしてたから……」
いつもボーッとしてる後藤と違い、保田がボーッとしていることは珍しいので、不審に思ったんだろう。
「あぁ、ごめん。それより、次移動しましょ」
「あ、うん」
急かされて、頷く。
様子がおかしいな、とは思ったが、後藤もあえて口にはしなかった。
- 54 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年10月23日(火)02時09分35秒
- ( ゜皿 ゜)<交信オクレテゴメンネ
最近めっちゃ調子が悪く、なっかなか文章に出来ないんです。
ストックはあと2、3話あるのですが、自分はもっと余裕がないと嫌なんで…。
これから交信が遅れがちになるかもしれませんが、それでも待っていてくれると嬉しいです。
何故か少年少女だけスランプに入っちゃってる…。
先は、まだまだ長いです。
>>36
甘いのは、次当分先ですね。つっても、まだ出来てないけど(w
もうしばらくお待ちください。。
>>37
喜んでもらって、幸せです。
いしよしね、いいですよね。確かに。
書いてて徐々に徐々に好きになってく。
>>39
(〜^◇^〜)<よぉ〜し、じゃあ2人でラジオやっちゃうかぁ!
( ´ Д `)<………………………出来るならね(ボソッ
激甘は、極たまに。
読者さんの心を掴んで離さないように、頑張りたいです(w
>>41
カッケーっすか?ここのよっすぃー。
どうやら市井を差し置き、矢口と同じくらい人気があるようで嬉しい限りです。
じゃあ、次は市井のカッケーの書いて、アルバム10枚以上買ってもらおうか…(おい
>>42
ついにくっついちゃいました(w
44回目にして、よし!ですね(サムッ
>>45
そうですね、悪いのは圭ちゃんっすね(w
( `.∀´)<ヤなことは全部あたしのせいかよ!
>>46
続き、遅くなってごめんなさい。
>mo-naさん
どうでしょう…いけました?
40さんと43さんのやり方どっちでもいけるはずなんですが…。
もしそれでもダメなら、もっかい言ってください。
- 55 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月23日(火)03時21分26秒
- え〜と、実際の圭ちゃんも憎く見えてきたんですけど、どうしたらよいですか?(w
- 56 名前:mo-na 投稿日:2001年10月23日(火)03時50分25秒
- ご心配有り難うございます。
いけました!さてさて更新してますね。嬉しいです
いまここの「いちごま」は目が離せません。
- 57 名前:名無し娘。改め(;・∀・)イイ! (w 投稿日:2001年10月23日(火)04時09分10秒
- いや〜、偶然にも現実でも事務所が男前吉澤を押してきましたね。
Mr.Moonlightの吉澤はマジでかっこよすぎです。
この小説でもあんな感じなんでしょうね。
今この小説を読んでる偶然って、ステキやん?(w
- 58 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月24日(水)00時32分01秒
- ヤッスーの作戦よりもいちよしが北海道に行くことに反応した私
- 59 名前:クロルカルキ 投稿日:2001年10月27日(土)15時07分25秒
- >>58
私も。
石川と同じ日に・・・?!
- 60 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月30日(火)23時01分47秒
- そろそろ禁断症状が…
- 61 名前:ちび 投稿日:2001年10月31日(水)00時41分30秒
- 同じく禁断しょうじょうが…
- 62 名前:名無しロバ 投稿日:2001年10月31日(水)03時27分50秒
- 自分はもう末期症状で幻覚が見えたり見えなかったり。
- 63 名前:ななしの一 投稿日:2001年11月04日(日)22時51分19秒
- すでにおれにはワニがみえるよ、ジェイクかもしらん
- 64 名前:mo-na 投稿日:2001年11月05日(月)05時58分53秒
- う〜〜ん作者さん どうしたんだろう?
体調でも崩しちゃったのかな?心配です。
- 65 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年11月05日(月)09時09分35秒
- えー、大変申し訳ないのですが、まだまだアップするのに時間がかかりそうです。
決して、サボってるワケじゃないんです。
少年少女だけが、思いのほか、抜け出せないくらいのスランプになっちゃって…。
本当にすいませんが、もう少しだけ、待っていただけないでしょうか?
無理して、残ってるストック全部放出しても、今は次が書けない状態なんで。。
今度はこれの倍以上待たしかねないんで、ごめんなさい。
でも、再開は11月中旬を目指しておりますので。早く抜け出せたらストックが溜まり次第。
あともうしばらく、待っていてくださると助かります。
……しかし、よくここまで詰まらないで書けたな、と思う。
このまま詰まらなかったら、ある意味すごいよ(苦笑
- 66 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年11月05日(月)09時11分00秒
- >>55
(〜^◇^〜)<馬鹿っ! お金があれば、どれだけのプーさんが買えると思ってんの!
紗耶香の好きな漫画とかもいっぱい買えるんだから!
矢口はそれを思って、そのお金を受け取ったんだよ
(0^〜^0)<矢口さん、正当化してるつもりでしょうけど、正当化されてませんよ…
( `.∀´)<あたしが憎く見えてきたですって!?
アンタ、今すぐ眼科行って精密検査してもらってきなさい!!
>>56
行けたんですね、よかったです。
目が離せないと言っていただけたのに、大変申し訳ない…。
出来る限り甘く出来るように、頑張って書きます。
>>57
おおっ、(;・∀・)イイ!さんに改名したんですね(w
何気にしんすけ(字忘れた)も入ってたり、嬉しいです(w
- 67 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年11月05日(月)09時12分11秒
- >>58
北海道行きますよー。
行くんだけど、行ってからがまだ出来てないんです。。(涙
>>59
石川と同じ日にかどうかは、シーッ。
CDでーたはもちろん買い(w
>>60-61
うぅっ、ごめんなさい!
もうちょっと、もうちょっとだけ…それまでなんとか持ち堪えてもらえないでしょうか…?
一刻も早く禁断症状がおさまるように、頑張りますんで!
>>62-63
末期ですか、幻覚ですか。随分長くお待たせしたせいで、そこまでいかせて申し訳ないです。。
ななしの一さんはワニまで見えるようで……ぅぅ、ごめんなさい!
>>64
ご心配をおかけして、すみません。
体調はちょっと前に崩し、今は回復に向かっている所です。
ただ、少年少女の体調はもう絶望的で。。
早いトコ回復に向かうように、必死こいて頑張っているところです。
本当に申し訳ないのですが、もうしばらくお待ちください。
- 68 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月05日(月)09時47分41秒
- どうぞごゆっくり。気長に待ってますので
- 69 名前:ななしの一 投稿日:2001年11月05日(月)13時04分27秒
- あ、ども。
ワニが「じっくりまて」といったので、
神のお告げかと思っていたら、作者さんの降臨が。
放棄でなければいいです、まってますから。
- 70 名前:ちび 投稿日:2001年11月05日(月)18時00分01秒
- 作者さんに待てと言われればいつまでも待ちますぅ。てへてへ。
気長に待ちますよ!じっくりどうぞ
- 71 名前:mo-na 投稿日:2001年11月06日(火)01時50分37秒
- ほ〜〜い。まってます。
いや、またせて下さい。
- 72 名前:名無しロバ 投稿日:2001年11月06日(火)03時45分49秒
- とりあえず11月の中旬まで、薬で症状を抑えておきます。
でもそれ以上は………(w
- 73 名前:(;・∀・)イイ!改めARENA (最終型) 投稿日:2001年11月06日(火)12時09分09秒
- いつまでも待ってますよー。
その間にこの小説の復習をして。
- 74 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月09日(金)23時04分29秒
- 気分直しに短編でも…ってダメ?
- 75 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月11日(日)18時47分38秒
- >74 HPに行けば。
- 76 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月12日(月)22時24分49秒
- >>75
サンクス。あっちではいろいろ更新されてるのね。
もう帰ってこないのかなあ。
( `.∀´)<かえってこ〜い〜よ〜
(●´ー`●)<こぶしまわってないべ。
- 77 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年11月15日(木)14時26分48秒
- お待たせいたしました。
とりあえずは溜まったので、更新いたします。
ただ、前みたいに毎日更新や1日置き更新はちょっと無理みたいなんで。。
次の更新まで時間が空くかもしれませんが、どうぞお付き合いお願いします。
長い間待たせるようであれば、すぐに連絡いたしますので。
また、色んな所でパクリ問題が出ていますが、こっちもやばいだろうということならば、
管理人さんに迷惑をかけないためにも、自分の所で続きを書きたいと思います。
色々問題が多いこの話ですが、最後までお付き合いできると、とても嬉しいです。
- 78 名前:CHAPTER46 投稿日:2001年11月15日(木)14時27分46秒
- 「えっ、スペシャル番組っすか」
文章にすると、一見驚いてなそうな言葉。
けれど、それを口にした市井にはそれがめいっぱいで。
目をきょとんとさせて、中澤の言うことに耳を傾ける。
「2時間、ばっちり。しかも、ゴールデン枠やで。もっと売り出すチャンスやし、
何より自分らがメインの番組やからな」
「おおー」
驚く市井と、喜ぶ吉澤。
タイプが全然違うこの2人を、視聴者の人にも判ってもらうチャンス。
確実に本格的に売り出し始めました。
「で、まず、その企画やねんけど」
「「はぁ」」
「北海道に、行ってほしいんやんか」
「「はぁ。……えっ?」」
ちょっと待って、いきなりそんな。
「それって決定? っていうか、なんで北海道!?」
「だからぁ、企画で」
「どんな企画だよ、北海道に行くなんて」
- 79 名前:CHAPTER46 投稿日:2001年11月15日(木)14時28分16秒
- えらい遠いロケですねぇ、と呟いて。
吉澤も驚くよな、と横を向けば、
「………北海道………梨華ちゃんいる………」
と、こちらもまた意味不明なことを呟いている。
「そ、それって、いつ頃ロケなんですか?」
そわそわしながら、だけども真剣な表情で聞く吉澤。
「え〜っと……一週間後の予定やけど」
「よっしゃ!」
「? 何がよっしゃなの?」
「いやっはっは」
ごまかし笑い。
どうして、喜んだのか。
その理由は、石川梨華が関係する。
(一週間後っていったら、梨華ちゃんも北海道いるじゃん!
よーし……よし! もしかしたらこれであのエロ親父の魔の手を防げるかも!)
「ねえ中澤さんっ」
「ん?」
「仕事で行くのはもちろん判ってますけど、でも、ちょっとくらいは自由時間ありますよね?
別に、好きなトコ遊びに行っていいんですよね?」
「……まあ、時間通り帰ってこれれば」
「よっしゃあ!」
大きくガッツポーズ。
- 80 名前:CHAPTER46 投稿日:2001年11月15日(木)14時28分56秒
- 「なんやぁ? なんか北海道行って買いたいもんでもあんのか?」
「や、特に」
「じゃあ、北海道に友達でもおんの?」
「や、別に」
「じゃあ、なんでそんな嬉しがんの」
「………………」
黙ってしまった吉澤に、市井が気付く。
そして、判った。
「石川だ。石川んトコに遊びに行くんだろ」
「ぎくっ」
「なんや、図星か」
「…………」
判り易い性格をしている。
「まぁ、行ったらアカンとは言わんけど、アンタは吉澤ひとみと違うねんからな。
吉澤ヨネオやっちゅーこと、忘れんといてや」
「……ヨネオって言わないでください」
未だに、気に入ってないし。
未だに、許してないし。
時々、後藤に「ヨネオくーん」とか言われて、からかわれる。
「……まあ、スネオよりましやん」
そんな中澤のフォローは、市井を怒らせることに。
「アンタが決めたんだろ、スネオって! 誰も好きでこんな名前じゃないっ!」
「ま、まあまあまあ」
「まあまあじゃないだろーっ!」
トリオ漫才は、まだ続く。
- 81 名前:CHAPTER46 投稿日:2001年11月15日(木)14時29分30秒
- ――
ピ、ピ、ピ、と。
携帯を操作して、番号を呼び出す。
そして画面に出てきた名前を見て「にへっ」と笑い、電話をかける。
―「もしもーし」―
「もしもしー、あたしが誰だか判りますかー?」
―「……んなの、名前出るんだから、取る時に判ってるよ」―
「えへへ。でも言ってみたかったの」
―「…………ばーか」―
うひひ、と嬉しさが込み上げてくる。
照れ隠しのように言う「ばーか」は、とっても好き。
後藤は、誰にも使ったことのないような甘え声に変わる。
「いちーちゃん、浮気してないよねぇ」
―「はっ? 何、いきなり」―
「やぁ、いつも一緒にいれないからぁ、ごとーは不安で不安でたまらないんだよ」
―「……の割には、全然不安そうな声に聴こえないけど」―
「そりゃあ今は、いちーちゃんの声を聴いておりますもの」
―「……なんだ、その喋り方」―
「……あはっ」
- 82 名前:CHAPTER46 投稿日:2001年11月15日(木)14時30分08秒
- ほんと、幸せだなぁって思う時は、こんな時なんだ。
好きな人と、電話越しだけど、こんななんでもない会話をして。
愛しさで胸がいっぱいになる。
「ねぇいちーちゃん……」
―「んー?」―
「あたしね、一週間後オフなんだぁ」
―「へぇ、よかったねぇ」―
「うん。しかも2日間あるんだよ」
―「おお。奮発してくれたんだね、保田さんも」―
「えへへ〜、うんっ」
一緒に喜んでくれる、優しさ。
とっても有難いし、素直に嬉しい。
「でね? その2日間のオフね、いちーちゃんさえよければ、
そっちの仕事が終わってからでも逢えないかなぁーって……」
―「あー……」―
……あれ。
意外に、濁る返答。
もしかして――、
―「……俺らさぁ、ちょうど後藤がオフの日、北海道行くんだよね」―
――すれ違い。
- 83 名前:CHAPTER46 投稿日:2001年11月15日(木)14時30分45秒
- 「えー、なんでぇ? そ、それって、いつ帰ってくんのぉ?」
―「最低でも、2日はいると思うよ。まだそんな詳しいこと聞いてないけど」―
「じゃ、じゃあ、あたしも北海道行く! どうせオフなんだし」
―「はぁ!? や、やめなよ。こっちは仕事で行くんだから」―
「なんでっ。行く、いちーちゃんに逢いたいもんっ」
―「んな、どうせまた帰ってきたら逢えるんだからさ。子どもみたいに言うのやめろよ」―
「子どもだもんっ! まだ15だし、まだ処女だもんっ」
―「……や、そ、そーいう子どもとかじゃなくて……」―
そんな、年齢は判るけど、処女とか言われちゃったら。
どもって、口篭もるしかないじゃん?
電話の向こうで、市井は思う。
「いちーちゃんは、後藤に逢いたくないのっ?」
―「や、逢いたいけど、仕事なんであって…。
とりあえず、北海道帰ってきてからでいーじゃん」―
「…………でも、逢いたいもん」
―「それは、判るけど」―
あーもう、と困っている声が受話器越しに伝わる。
別に、困らせるつもりじゃないんだけど、やっぱり逢いたい。
そこら辺が、さっきいちーちゃんが言った「子どもみたい」なんだろうね。
- 84 名前:CHAPTER46 投稿日:2001年11月15日(木)14時31分15秒
- 「………わかった。我慢する」
これ以上、困らせるのも嫌だし。
呆れられて嫌われるのは、もっともっと嫌だし。
ここら辺で、手を打とう。
「その代わり、帰ってきたら絶対逢うんだからねっ」
―「うん。……ごめんね」―
「…………しょうがないもん、仕事だったら……」
こういう時、芸能人というお仕事は不便だな、と思う。
すれ違いがほとんどだし、両方忙しかったら、逢える時間もない。
でも、芸能人じゃなかったら、出逢えなかったんだし。
――それは、後藤も責められない。
「………じゃあさ、納得した代わりと言っちゃなんだけど」
―「…………なに?」―
「えへへ……、『愛してる』って、言ってみて?」
―「……………………」―
ひたすら無言。
こういう時、照れ屋な彼氏は不便だな、と思う。
でも、そういう照れ屋なトコも含めて好きなんだし。
――それは、後藤も責められない。
- 85 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年11月15日(木)14時31分50秒
- ( ゜皿 ゜)<マタセテゴメンネ
交信です。
しかも、あんまり意味のない内容ときた(苦笑
待たせてもらった割に、とんでもない交信で、本当にごめんなさい。
あともう2、3話で、動き出します。
あと…、今回から、サブタイトルなくしました。
理由は、CHAPTER毎の題名が思いつかなくなったから(w
………ごめんなさい。。
>>68-73
ありがとうございます。こんなワガママに付き合ってくれて。。
うぅっ、いい読者さんを持って幸せです。。
>>74
短編、こっち用に書き下ろししようと思ったんですが、都合により出来ず、すいません。
>>75
代わりにお答えくださり、ありがとうございました。
>>76
ヽ^∀^ノ<帰ってきたよ!!!
- 86 名前:クロルカルキ 投稿日:2001年11月15日(木)17時36分51秒
- おかえりなさいっ!ヒサブリ交信ですね。
中毒症状も解消です(w
後藤さん・・・処女って、言わなくても。。
- 87 名前:ちび 投稿日:2001年11月16日(金)00時14分00秒
- お疲れ様です。
バカップルっぷりがいい更新ですねえ。
大好きです。中毒緩和ですよ!
じっくりガンバって下さい
- 88 名前:名無しロバ 投稿日:2001年11月16日(金)02時41分49秒
- 自分も“いちごま甘々テレフォン”だけで十分完治です!!(w
でもこの先、( `.∀´)の魔の手が控えてると思うと……(ブルブル
- 89 名前:ARENA 投稿日:2001年11月16日(金)15時38分54秒
- おかえりなさーい\(^▽^)/
うーむ。逢えない中の電話。
こういう恋は障害があってこそ萌えるんです!(w
- 90 名前:ちび 投稿日:2001年11月16日(金)18時39分05秒
- 中毒緩和じゃなくて禁断症状回復でした(^^;
もうすぐ紗耶香とごっちんが一緒にテレビに出るかもしれんと思ったら
かなり嬉しいです。楽しみだぁ!
この続きもすっごい楽しみだぁぁ!!
- 91 名前:闇の住人 投稿日:2001年11月26日(月)00時10分08秒
- 甘甘いちごま最高!市井はいつ後藤にカミングアウトするんだろう・・・?市井切ねえなぁ。いしよしも楽しみっす。
つづき期待してます!いつまでも待ってますぞー!!!
- 92 名前:ダメ経営者 投稿日:2001年12月03日(月)16時07分25秒
- えー……大変最悪なお知らせをします。。
楽しみにしてくれている皆様には、本当に、本当に申し訳ないのですが、
「少年少女」しばらく休止させてください…。
理由は、続きが書けないためです…。
HPを見てくれたことがある方は、てめー、HPで書いてるじゃねえかゴルァ!!
と怒る方もいるかもしれません。。
けど、「少年少女」だけが書けないのです。。
本当に、大変申し訳ないのですが、「休止」という形で。。
何か個人的に言いたい事がある方は、こちらではなく、HPの方でお願いします。
ここだと、色んな方に迷惑がかかるといけないので…。
アドレスをもっかい貼り付け。
www.geocities.co.jp/MusicStar-Keyboard/6175/damegoya.html
本当に、申し訳ないです。。
- 93 名前:R 投稿日:2001年12月03日(月)19時23分36秒
- 大好きな作品なので残念ですが、書けないときはしょうがないっすもんね。
放置じゃなくて、コメントしにきてくれただけでも読者として感謝します。
いつか戻って来てくれるのを待ってます。
- 94 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)01時06分14秒
- 気長にやってください。気長に待ってますから♪
- 95 名前:ちび 投稿日:2001年12月04日(火)23時57分01秒
- コメントしてくれるだけで嬉しいっす♪
↑のかた同様気長に待ちますし
- 96 名前:ナナシン 投稿日:2002年01月07日(月)20時49分47秒
- もうこっちではやらないのかな?
このままHPのほうで続きをやるのかな?
- 97 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月11日(月)14時53分04秒
- どこいっちゃったんですか?誰か教えて下さい。
- 98 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月13日(水)01時14分20秒
- >>97
>>92 をよ〜く読んでみればわかる。
- 99 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年02月16日(土)01時39分01秒
- 大変、お待たせしました。
待っていてくれている方がいてくれたのかわかりませんが、再開したいと思います。
本当に、待たせてすいませんでした。
以前のような毎日交信は厳しいかもしれませんが、それでもなんとか、頑張っていこうと思ってます。
どうか、応援よろしくお願いします。。(ペコリ
- 100 名前:CHAPTER47 投稿日:2002年02月16日(土)01時40分01秒
- 「…………寒い」
「あぁ、寒いねぇ」
空港から出てすぐ、半袖姿で出てきた2人のご感想。
………寒い。
「アンタらアホちゃう? 北海道行くって知ってたのに、なんでそんな思いっきり半袖なん。
いくらまだ9月やいうても、東京とは気温全然違うねんで」
1人長袖を着ている中澤は、さも当然のように答える。
中澤の言うことは判る。でもその前に、
「……っていうか、それだったら、到着する前に言ってくれればよかったんじゃん」
「タレントの管理は、マネージャーの仕事でしょう」
そう、言ってくれればよかったのに。
「ま、まあまあ。それより、もうすぐ迎えの車が見えるからな。
その車乗って、打ち合わせのホテルへ出発や」
「話、反らさないでくれる」
「誰も今、そんな話してない」
「うっ……」
サングラスの奥に宿る瞳が、怒っているのが判る。
なんとかして、ごまかさねば。
そんな中澤の必死の願いが通じたのか、スタッフの車が到着。
「あっ、こ、こっちでーす!
ほら、市井吉澤っ、さっさと乗る!!」
なんとか、殴られずに済んだようだ。
- 101 名前:CHAPTER47 投稿日:2002年02月16日(土)01時40分39秒
- ――
「はぁー、疲れたぁ」
「お疲れー、梨華ちゃん」
「初めてだもんね。そりゃあ、疲れると思うよ」
北海道にある、花畑牧場。
カントリー娘。のりんねとあさみが、実際働いている花畑牧場。
そこに、石川もいた。
レンタルオッケーとは言ったけど、何もここまでレンタルされなくても。
北海道に着いて喜んだのはいいが、次に見たのは馬や牛。
誰が、世話するの。
そんなの、聞いてなかったんです。
「飯田さんはズルイよぉ。知ってたクセに言わないなんて。
それに、飯田さん手伝ってくれないしさ」
愚痴る石川に、りんねとあさみは苦笑い。
「まぁ、かおりはマネージャーとしての仕事があるからさぁ、しょうがないよ。
それに、慣れたら結構、世話したりするのも楽しくなるよぉ」
「そ、そうですかねぇ…」
年上で、飯田と友達のりんねに言われちゃ、言葉を返せない。
戸惑いながらも、頷く。
- 102 名前:CHAPTER47 投稿日:2002年02月16日(土)01時41分09秒
- 「はい、牛乳持ってきたよー」
「あ、ありがとー」
席を立ったと思ったら、両手に人数分の牛乳を持ってきたあさみに礼を言う。
やっぱり、取れたての牛乳はおいしい。
こんな牛乳が飲めるなら、毎日働いてもいいかという錯覚に陥ってしまう。
しかし、石川もバカじゃないので、騙されない。
そもそも北海道の牧場で毎日働くことになったら、吉澤と逢えなくなるのだし。
そんなの、絶対に嫌だ。
「ん? 梨華ちゃんどうしたの?」
嫌だ、と思った時に、ぶるぶると横に首を振ってしまったのがいけなかったのだろう。
あさみが、首を傾げながら尋ねる。
「……あ、ううん。何でもないよ」
「えー、今なんか絶対隠したよね」
「うん、隠した隠したー」
「か、隠してないってー」
オーバーに両手を振って、隠してないことをアピールする。
それでも、この半農半芸アイドル2人は、許してくれない。
- 103 名前:CHAPTER47 投稿日:2002年02月16日(土)01時41分42秒
- あさみは、うーん、と考えて、思いついたように顔を上げた。
「梨華ちゃん、よっすぃーのこと考えてたんじゃないのー?」
「えぇっ!?」
まさか、読まれた?
そう思ったけど、どうやら違うみたい。
「『北海道行ってる間に、浮気してたりして…。いや、でも、よっすぃーはそんな人じゃないもん!
ちゃんと、私だけを見てくれてるもん!……でも……あぁ、疑いたくないのに疑ってしまう……。
ダメよ、梨華。ちゃんとよっすぃーを信じなきゃ! 私がよっすぃーを信じないでどーするのよ!』……とか、考えてたんじゃないのぉ?」
「………………」
「……あさみちゃん……」
あまりに凄いあさみの妄想(?)に、2人とも何も言えなくなってしまう。
しかし、ここで黙ってしまったら、余計空気が重くなる。
それに、そんなこと考えてないよ、と、アピールをしとかなくては。
「わ、悪いけど、首振ったのは、そんなことを思ってたワケじゃないからね…?
……あ、っていうか、なんでそこでよっすぃーが出てくるのよぉ」
結構自分でも上手く、話を逸らせた。
りんねも、助かったとばかりに、石川の話に乗る。
「えー、だって梨華ちゃん、いっつもよっすぃーの話ばっかりしてるしぃ。
てっきり、付き合ってるのかと思ったよぉ」
「つ、付き合ってる……」
思わず、かぁっと顔が赤くなる。
- 104 名前:CHAPTER47 投稿日:2002年02月16日(土)01時42分14秒
- 「え、何々? ホントに付き合ってるの?」
「うっそ」
2人身を乗り出して、石川へと迫る。
やはり、女の子。
そういう恋のウワサ話やらは、大好きなようだ。
りんねとあさみの2人は、信用のおける友達だ。
だから、週刊誌なんかに言ったりなんかしないだろう。
それに、友達なんだから、やっぱりこの幸せを判ってもらいたい。
そう思って先日のことを口にしたら、えー!、と大声を出された。
「梨華ちゃんうらやましー! いいなぁ、いいなぁ」
「えー、なんで? うっそぉ、超うらやましい」
うらやましい、うらやましい。
よかったね、どころか、そればっかり。
「ちょっとぉ、祝福してくれたっていいじゃない。なんか淋しいよぉ」
「だってぇ、うらやましいんだもん」
「うん」
今、どれだけ人気があるか。
世の中の、10代20代だけでなく、幅広い年代に「可愛い」なんて言われている2人のうち、
そのかたっぽが、今目の前にいる子の彼氏だなんて。
羨ましい以外、何者でもない。
- 105 名前:CHAPTER47 投稿日:2002年02月16日(土)01時42分53秒
- 好きな人を褒められて、悪い気はしない。
好きな人を格好いいとか可愛いと言われて、悪い気はしない。
けれど、全国にそれだけそう思っている人がいるんだと思うと、不安にもなる。
よっすぃーは、お人好しだから。
よっすぃーは、優柔不断だから。
よっすぃーは、お調子者だから。
心配要素は、まだまだいっぱい。
「でも、大丈夫だって。よっすぃー信じてるんでしょ?」
「うん」
「だったら、信じなきゃ。そりゃよっすぃーはカッコいいけど、梨華ちゃんだって
他の女の子に負けないくらい可愛いもん! だから、大丈夫!」
「りんねさん…あさみちゃん……」
一生懸命励ましてくれる、2人。
友達って、いいなぁ、なんて。
そう思いたくもなる。
だけど……
「……やっぱ、梨華ちゃんうらやましいなぁ」
「1回でいいから、変わろうか?」
――やっぱり格好いい彼氏は、うらやましいもんみたいです。
- 106 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年02月16日(土)01時44分22秒
- (〜T◇T〜)<みんなにやっと逢えたよ〜!
ヽ;^∀^ノ<ほんとごめんね、でもなんとか戻ってきたよ!
( ´ Д `)<……でも今回のはいちごま入ってなかったね…
(^▽^)<いいの! 私は入ってたから!
(;0^〜^)<自分だけが入ってたらいいのかよ!
いちごまもいしよしも、ちゃんと書きます。
待たせて本当にすいませんでした(ペコペコ
- 107 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年02月16日(土)01時46分00秒
- ( ´ Д `)<……いちーちゃん、100get言い過ぎ…
ヽ;^∀^ノ<うっ……だ、だって嬉しかったんだもん…
- 108 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月16日(土)02時25分33秒
- 再会に涙・・・ホントに嬉しい。
- 109 名前:CHAPTER48 投稿日:2002年02月16日(土)23時49分45秒
- 「……っていうかさー、なんでこんなトコいなきゃいけないワケ?」
両手には、大きなバッグ。
首には、身体に似合わぬ大きなカメラ。
自称名キャメラマン矢口は、見知らぬ土地、北海道へと来ていた。
- 110 名前:CHAPTER48 投稿日:2002年02月16日(土)23時50分24秒
- 保田から渡された、交通費。
保田から渡された、北海道行きのチケット。
保田から渡された、いちよしのスケジュール表。
「っんで、これじゃパシリじゃんか。くっそぉー」
有無を言わさず行ってこいと命令されて。
いくら犬でも、素直に言うこと聞きゃしないぞ。
だけど、素直に言うことを聞かせているのは、裏に金があるから。
「だってさ、もう、断われないしさ。
それに、こんないいもうけ話、他にないんだよねー」
誰に言い訳するでもなく呟いて、自分自身に納得させる。
そうでもしなきゃ、自己中でワガママな彼女矢口真里が、人に命令されて素直に言うことを聞くなんて納得出来ないから。
すべて、お金のためだ、と言い張ってみる。
こうやって出張したのはいいけど、金も全部保田持ちだし。
チケットやらホテルの部屋まで、何から何まですべて用意してくれている。
もちろん、市井を一日中密着、というのは条件だが。
それでいい写真が撮れなくても、金は入ってくる。
矢口にとって、カメラマンにとって、これほどいい仕事はない。
- 111 名前:CHAPTER48 投稿日:2002年02月16日(土)23時51分00秒
- 「……もっとも、ブ男密着だったら、サイアクだったけど」
密着の相手は、さわやかできりっと真面目な男前風。
矢口のタイプの、好奇心旺盛な少年タイプにも、ちょこっと当てはまらなくもない。
どのみち、美形は大歓迎だ。
「よぉーし、こーなったらヤグチがアタックしようかぁ?
ぶちゅーっとキスをかました所を自分で撮って、自分で出回らして。
保田さんの依頼もこなせるし、提供したら金また入るし、キス出来るしー。
んだよぉ、これって最高じゃーん」
きゃははは、とはしゃいでみせる。
次々刺さる、好奇の視線。
「………はいはい、調子に乗るのはやめますよ。
……………だから、そんな冷たい目で見ないでよ」
好奇の視線に耐えて、愚痴って。
さっきまでのおちゃらけた顔はやめ、真面目な顔になる。
「………さぁーて。密着開始しますかぁ」
- 112 名前:CHAPTER48 投稿日:2002年02月16日(土)23時51分36秒
- ――
北海道、室蘭市。
そこのとある場所で、いちよし達は撮影していて。
つい今しがた、撮影が終わったばかり。
「うー、寒い寒い」
突風が吹いたと思ったら、市井のそんな弱気な声。
そんな、めちゃくちゃ寒がるほど、寒いワケじゃないのに。
どうにも、寒さには弱いらしい。
「こらぁ、冬生まれのヤツが、寒い寒い言うなっ」
「……冬生まれが、関係あるんですか」
「あたしの中では、関係あんねん」
だから、今度言ったらシバキな。
……意味のわからない説教をされ、市井はちょっと不満。
「吉澤ぁ、お前も何か言ってやれよ」
こうなったら、2人がかりだ。
2人で言えば、いつまでもスタッフさん達と話すのを諦め、ホテルへと連れてってくれるだろう。
そう思って、吉澤にフッたのに。
「え、だってあたし寒くないですもん」
………首絞めてやろうか、そう思った。
- 113 名前:CHAPTER48 投稿日:2002年02月16日(土)23時53分22秒
- げしげし吉澤を蹴って。
少しでも、寒さを紛らわせて。
中澤がスタッフの人と話し終わるのを、待つ。
時間にして、15分くらい。
その間、ずっと吉澤をいじめていたんだけれど。
不意に、ポケットに入れた携帯が鳴る。
確認してみると、そこには“後藤”の文字。
「……もしもし」
―「あ、もしもしいちーちゃん? 今、電話ダイジョーブなの?」―
「あー、うん。どしたの?」
―「……んー? いや、別に」―
にへら。
そうやって後藤が笑う様子が、想像出来る。
傍にいたら、こう、頭を撫でてやるのに。
実際のところ、後藤より身長が微妙に負けているのをバレないように、さりげなく厚底の靴を履いて。
それでも、後藤が厚底を履いたら負けるんだけど。
まあ、頭を撫でるのに、そんなに差はないから、苦労はしない。
- 114 名前:CHAPTER48 投稿日:2002年02月16日(土)23時53分58秒
- けど、撫でてやりたいけど、今は撫でれなくて。
東京と北海道。
2人の距離は、遠くに遠くに離れてる。
帰っても、今度は後藤のスケジュールの都合で、また2人の距離は遠くに離れてしまう。
なんか、すれ違いばっかだな。
計算されてることを知らない市井は、ただただそう思うことしかできない。
―「……ん? いちーちゃんどうしたの?」―
黙っている市井を、不審に思ったんだろう。
どんな顔して黙っているかなんて、電話じゃわからない。
だから、聞くしかないんだけど。
「いや、別になんでもないよ」
―「……えー、うそだぁ。絶対なんかあったんだ」―
「だから、なんでもないって」
素直に、逢って頭を撫でてやりたい、と言えればいいんだけど。
どうにも照れ屋な市井は、そんなこと電話越しでも言えなくて。
それに、そんなことを思ってたんだと知られたら、引かれる―――そんな風にさえ思ってしまう。
もちろん、思うハズはないのだけども。
電話じゃ、それが伝わることもなく。
逢うってことじゃなく、気持ちまでもすれ違ってしまう。
そうこうしている内に、中澤も話を切り上げ、車に乗り込むために2人を呼ぶ。
2人というのはもちろん、市井と吉澤なワケで。
「おーい、早く電話切りー」
と、助手席の窓から頭を出して、市井に言う。
「……ごめん、もう集合だから切るね」
- 115 名前:CHAPTER48 投稿日:2002年02月16日(土)23時54分34秒
- 普通に言ったつもりなんだけど。
後藤には、冷たくあしらわれたような気がして。
つい、ワガママを言ってしまう。
―「もうちょっと、もうちょっとだけ……ダメ?」―
「うん、ダメ」
―「…………………」―
じゃあ、ほんと急いでるから、切るね。ばいばい。
あっさり過ぎる、電話。
そして、冷たすぎる、会話。
顔を見てても、考えていることが判り難い人なのに。
顔を見てなくては、それこそ何を考えているか判らない。
「………もうちょっと、優しくしてくれてもいいじゃん」
元々、甘えん坊な性格で。
恋っていうものも、初めてしたから。
仕事なんだってのはわかるけど、やっぱりワガママを言ってしまう。
でも、そんな、聞けないようなワガママじゃないんだ。
なのに、間を置かず、即返事するなんて――。
若い2人の恋は、少しでも離れると、どうなるかわからない。
――保田は、それが狙いであった。
- 116 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年02月16日(土)23時55分09秒
- ( ゜皿 ゜)<サテ……カオリノデバンハイツカナ……
ご、ごめん( ゜皿 ゜)さん…。
>>108
待っててくれてありがとうございました(ウッウッ
これからがんがりますです。
- 117 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月17日(日)16時48分33秒
- 待ってました(w
これからどうなるのやら…
- 118 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月17日(日)23時25分05秒
- 自分もず〜っとお待ちしておりました!!
これからのいちよしコンビの恋の行方にドキドキしながら、
正座して更新をお待ちしてます。
- 119 名前:CHAPTER49 投稿日:2002年02月18日(月)01時07分56秒
- 「う〜、う〜」
朝、5時に叩き起こされて。
唸りながら、石川は馬の世話。
……なんだって、こんなことしなきゃなんないのだ。
「梨華ちゃん、サボってないで早く〜」
「さ、サボってなんかないよぉ〜」
意外とチェックが厳しいあさみに注意されながら、タタタッと駆け寄る。
そもそも、自分はグラビアアイドルで。
いつの間に半農半芸アイドルになったのだ。
そう、昨日電話で飯田に言うと、「まあ、これも仕事仕事」と片付けられて。
馬の世話のせいだけじゃなく、石川は朝から珍しく機嫌が悪い。
「ねぇ、あさみちゃん」
「ん?」
「あさみちゃん達って、いつもこんなに早起きして、馬の世話とかしたりしてるの?」
よく、そんなに頑張れるねぇ、と感心して。
「ん〜、だって、好きだもん。嫌いだったら、絶対出来ないよ」
「………そうだね」
だから、余計感心する。
- 120 名前:CHAPTER49 投稿日:2002年02月18日(月)01時08分32秒
- 馬の世話が終わったら、今度は犬のえさあげ。
恐々しながら、あさみに教えられたとおり、えさをやっていく。
さっきの馬よりかは、大分マシだったのだが。
その後は、石川だけ小休止。
りんねやあさみは、まだ他の世話をしている。
それを眺めながら、適当な場所に腰を下ろして、ボーッと昨日のことを思い出していた。
昨日、夜遅く電話があって。
隣で寝ているりんねやあさみを起こさないように、外へ出て電話に出てみると、吉澤の声。
こんな夜遅くにどうしたの、と聞くと、梨華ちゃんに知らせたいことがあるんだ、とのこと。
明後日、そっち行くから。
その言葉は、あまりに唐突だった。
- 121 名前:CHAPTER49 投稿日:2002年02月18日(月)01時09分06秒
- いきなりそっち行くからと言うことにも驚いたけど、もっと驚いたこと。
いつ、こっち来てたの。
私、聞いてないよー、とちょっと怒った風に言うと、いつもの調子でへらへらと謝った。
どうやらハナから驚かせようと思っていたらしい。
北海道での撮影は、もう既に取り終わったらしく。
明日、明後日と2日間、オフがあるらしい。
本当ならば明日に行きたかったのだが、色々と都合があり、明後日になったと。
それでも、来てくれるのはとっても嬉しい。
「……おう、梨華ちゃん頑張ってる?」
「あ、義剛さん」
おはようございます、と頭を下げて。
ニコニコ笑ってる田中社長につられ、自分も笑う。
「なんか、嬉しそうだけど、どうしたの?」
「え…」
昨日の電話を思い出してにやけていたのを、見ていたんだろうか。
かぁっと顔が赤くなる。
「べ、別に何もないですっ。ちょっと思い出して……」
「何思い出してたの?」
「あ、いや……」
- 122 名前:CHAPTER49 投稿日:2002年02月18日(月)01時09分53秒
- 照れて、にやけて。
どんどん赤くなっていく石川が、田中社長は可愛くて仕方がない。
こう、なんか、男心をくすぐって。
年齢差とかも関係なく、素直に抱きたいと思ってしまう。
スッと手を伸ばせば、少しウェーブのかかった、綺麗な石川の髪。
頬はこすったのか、少し汚れているものの、柔らかそうでツルツル。
これを、自分の物に出来たら………、それは、どんなに嬉しいことか――。
「梨華ちゃん――」
声を出すのを同時に、伸びてくる手。
石川は、それに気付かず、まだ照れている。
そしてその手は――
「……実はね、明後日よっすぃーが遊びに来てくれるんです」
――石川の言葉を聞き、寸前の所で手が止まった。
- 123 名前:CHAPTER49 投稿日:2002年02月18日(月)01時10分52秒
- 「……へぇ」
にやにやした顔が、途端に無表情になって。
スッ、と、石川に気付かれる前に、手を下ろす。
「……なに、吉澤くん、今こっちにいるの?」
「なんか、らしいです。昨日、電話で私も聞いたんですけど」
「……ふぅん」
そう、一筋縄じゃあ、いかないか。
見た目も性格もお姫様なこの子を守る、王子様。
その王子様はどうやら、あの車の中で言ったことを、覚えていたらしくて。
まったく、執念深い王子様だ。
田中社長は、笑う。
「……梨華ちゃんは、素敵な王子様がいて、羨ましいね」
「えっ?」
「よっすぃーっていう素敵な王子様がいて、羨ましいね、って」
「そ、そんな……。も、もうっ、何言ってるんですかぁー」
「ごめんごめん」
でも、王子様が1人だけしかいないなんて、誰も決めちゃいない。
たとえそれが、どんなにオッサンでも、どんなに悪党でも。
俺が王子様だ、と言えば、王子様にはなれる。
- 124 名前:CHAPTER49 投稿日:2002年02月18日(月)01時11分24秒
- 「梨華ちゃんは、俺のこと好き?」
「…え? 好きですけど。いきなりどうしたんですか?」
「いや……」
特に意味はない。
本当に聞きたいのは、これ。
「じゃあ、俺も梨華ちゃんの王子様になって、梨華ちゃんを守ってもいい?」
「え?……あ…あの……」
向こうが、こっちの行く手を阻むなら、こっちもそうするまで。
お姫様を守る王子様は、2人もいらない。
王子様は1人だけでいいのだ。
邪魔な、憎たらしいガキの王子様がいなくならば、この子はもう自分の物。
どうしようが、自分の勝手。
こんなに性欲が湧く子は、そうそういない――。
いやらしい目で微笑む田中社長が、初めて怖いと思った瞬間だった。
- 125 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年02月18日(月)01時14分14秒
- ( ゜皿 ゜)<ヨルモオソクニ交信
春高バレー、大阪府決勝見ながら、交信。
しかし、応援チームは東京の○王子実践という、最低なおいら。
>>117
待っててくれてありがとうございました(ウッウッ
これから、とりあえず、市井と吉澤の山場越したら、後はスパートかけますです。
もう少々、お待ちください。
既にもう大分待たせてしまってますが…(汗
>>118
待っててくれてありがとうございました(ウッウッ
正座されて読まれるような大したもんじゃないので、どうぞ崩してお読みください(w
- 126 名前:haya 投稿日:2002年02月18日(月)16時46分37秒
- はじめてカキコしますが、ず〜〜〜っと、読ませてもらってます。
すんごいおもしろいですねぇ!
梨華ちゃんに魔の手がっ!
はやくよっすぃ、来いぃぃぃっ!!
- 127 名前:REDRUM 投稿日:2002年02月18日(月)19時39分06秒
- 復活ありがとうございます。
エロオヤジには吉の右フックを!
- 128 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月18日(月)20時49分35秒
- いやあああああああ!!
大事な大事なお姫様がエロ親父の手にっ!!
よっすぃー!!きっちり護ってね!!
- 129 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月18日(月)21時47分48秒
- >>128
sageようよ。
作者さん復活&更新ありがとうございます。
HPのはしょっちゅう覗かせてもらってたんですが、HPの方が
お忙しそうだったので、もうこちらの更新はないと思ってました。
いや、ホントに嬉しいです。
これからも頑張ってください。
- 130 名前:128 投稿日:2002年02月18日(月)22時32分15秒
- おう!気付きませんでした。
ついうっかり、
作者様、申し訳ないです。
- 131 名前:syo 投稿日:2002年02月18日(月)22時48分43秒
- ついに復活している。頑張ってください。
- 132 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月19日(火)20時47分03秒
- >>131
129見えない?
- 133 名前:ブルりん 投稿日:2002年02月20日(水)12時44分35秒
- 更新がむばって!!
(^▽^)<ポジティブ、ポジティブ!!
- 134 名前:名無しロバ 投稿日:2002年02月22日(金)03時27分22秒
- いつのまにかの復活、おめでとう&ありがとう!!
で、早速ですが、早いとこいちごまに幸福な日々をお願いします(w
あっ!ついでにいしよしもね!!(爆
- 135 名前:クロルカルキ 投稿日:2002年02月22日(金)23時56分03秒
- おぅ!いつの間にか復活ですね!?
久々に続きが読めて嬉しい限りです。
てか、いきなり梨華ちゃんピンチ?
よっすぃ、しっかり守るんだぞ(w
- 136 名前:CHAPTER50 投稿日:2002年03月18日(月)23時47分10秒
- ホテルから、車で30分。
そこに、お土産屋さんがあって。
市井達は、試食をしながらお土産を選んでいた。
「吉澤、吉澤はもう決めたの?」
「んー、まだです。弟達のお土産が…」
あいつら、行く時に色んな注文をしちゃって。
まんじゅうはヤダ、クッキーは嫌だとか。
まったく、わがままな弟達を持つと苦労する。
「市井さんは決めたんですかー?」
「家はね。でも、後藤の何にしようかなって…」
「ああ、ごっちん」
でも、ごっちんならなんでも食べるでしょ。
いや、それはそうなんだけど。
逢えないのを、我慢してもらってるワケだし。
ただのお土産じゃ、ちょっと悪い気がして…。
何にしようかなー、と頭を抱えながら悩んでる市井を見て、吉澤が笑う。
「んなの、悩むほどでもないでしょー」
「?」
「もう、それでいいじゃないですか。で、あとは、愛の抱擁でカバーすれば」
「な、何言ってんだ!」
よくそんなこと、冗談でも言えるな!
そうやって蹴る真似をすると、吉澤が逃げる。
そしてそのまま追いかけっこになる所を、中澤に殴られて、追いかけっこは中止。
吉澤は中澤に殴られたまま、会計の所に連れて行かれる。
市井も一緒に、慌ててその会計の所に並んだ。
- 137 名前:CHAPTER50 投稿日:2002年03月18日(月)23時48分23秒
- ――
結局、散々悩んで買った後藤へのお土産は、サブレで決まり。
多分嫌いじゃないだろうけど、もしも嫌いだったと仮定をして。
吉澤の言う通り、愛の抱擁とまではいかなくても、甘えさせてあげれば機嫌は治るだろう。
後藤が1番欲しいのはお土産じゃなくて、市井だと思うから……なんて、恥ずかしいことを思ってみる。
「……市井さん、顔ニヤけてますよ」
「えっ、え!? うそっっ!!」
口元を押さえて、必死にいつもの形に戻らせる。
だが隣の吉澤のニヤニヤ顔は、早々元には戻らない。
…といっても、半分は元からなんだろうけど。
「なぁーに考えてたんすかぁ? エロい事でも考えてたんでしょ〜」
「ち、違う!」
「いーや、考えてたね」
「だから違うって!!」
顔をニヤつかせながら訊ねる吉澤と、顔を真っ赤にしながら照れる市井。
そんな二人を、同行スタッフに車を運転させて助手席から眺める中澤。
そしてもちろん、自分もその輪に入る。
「まぁなー、思春期の男の子やからそりゃしゃーないわな〜」
「お、男じゃなー―」
「ですよねぇ、真面目な市井さんでもやっぱエロい事は考えるみたいでね〜」
からかわれて何が何だかわからなくなり、つい否定しようとした市井の口を押えながら。
これで、スタッフさんがいなければ、こんなことをせずに済んだのだけれど。
とりあえず中澤の話に、吉澤も合わせる。
- 138 名前:CHAPTER50 投稿日:2002年03月18日(月)23時49分11秒
- 別に、そうやって突っ込まなくてもよかったのだけど。
そこは一応、もっとこのスタッフにも刷り込んでおかなきゃという中澤の作戦。
見た目からして中世的で、口調こそ男勝りだけれど。
市井がこんな興奮状態じゃ、いつ「あたし」などと言ってしまうかわからない。
……もっとも市井の一人称は「市井」だったんだけど。
だけど中澤がそこまで考えなくても、同行スタッフは十分この二人を男と思っているらしく。
(まあ、あれだけテレビや雑誌で男として登場させているのだから、それも当然なのだが)
なんだかそういういちよしの言い合いが微笑ましくて、自分も運転しながら会話の中に入る。
「市井くんはさ、今現在、彼女とかいるの?」
「か、彼女ですか? い、いませんよっ」
「おー、焦ってんねぇ〜」
「あ、焦ってなんかないですってば!」
隣から前から、からかわれる市井。
中澤なんかは、助け舟を出すことなく笑ってる。
「でもモテるでしょ、やっぱ二人」
「いやぁ、そんなことは…」
「はい、モテますねぇ」
「おいっ」
だけど吉澤が言う事は、ほんとのこと。
うん、確かにモテるのだ。
- 139 名前:CHAPTER50 投稿日:2002年03月18日(月)23時49分48秒
- 「そうそう、この前なんかね、移動中、信号かなんかで止まった時、気付かれたんですよ」
「ありゃりゃ」
「あれはもう大変やった。車動きませんでしたからね」
中澤がその時のことを、一生懸命喋る。
あの時はまだ移動の最中で、その後の仕事もあったのに。
ライトなファンじゃなく、たまたま濃いヲタ達に見つかってしまって。
轢かないよう、撒くのがものすごく大変だったのだ。
それでなくとも女の執念はものすごいのに。
「モテんのはいいけど、本人だけでなく周りが大変やからねぇ。
でもこの問題児達が勝手に動きやがるから、マネージャーも大変なんです…」
ぽろり、なんてハンカチを用意して、出てもいないのに涙を拭いてみせる。
だけど運転席のスタッフさんは、運転に集中して気付いてくれない。
「…チッ」
舌打ちをして、ハンカチを仕舞う。
「裕ちゃん、何やってんだよ…」
「うるさいっ、結構この人タイプやったの!」
後ろからしっかり突っ込む市井に言い返す。
もちろんそれは、スタッフさんに聞こえないように。
- 140 名前:CHAPTER50 投稿日:2002年03月18日(月)23時50分45秒
- そしてそれから車は快調に飛ばしていたのだけれど、ホテルまで後5分辺りのとこで、珍しい光景。
なんだか、細い道路なのに、そこに大きな人だかりができている。
こんな所で人だかりが出来るなんて、珍しいことなのに。
「なんやぁ? 路上パフォーマンスでやってるんか?」
「いや〜、いくらなんでもそれで、あんなに人だかり出来ないでしょ」
「ですよね。んじゃなんやろ?」
「事故とか?」
吉澤の方に身を乗り出して市井が訊く。
でも吉澤が言うには、違うらしい。
「……あれって、安倍さんじゃないですか?」
- 141 名前:CHAPTER50 投稿日:2002年03月18日(月)23時51分32秒
- 人だかりの中心に、背が低かったけれど、なんとか見えたその顔。
ここは、北海道。
安倍なつみの地元である、北海道。
いても、おかしくはない。
「でもなっち、東京で仕事――って、1週間ほどオフで北海道に帰るって言ってたわ」
「――それで、市井くん達と同じく、濃いファンに囲まれちゃったってワケね」
「そして俺達は、それに巻き込まれましたと」
「………サイアク」
信号で止まってる間、ずっとその様子を見ていたのだけれど。
その人だかりははけることなく、ますます増えていくばかり。
そうやって黙って見ている内に信号は青になり、後ろの車からクラクションを鳴らされる。
スタッフさんはその様子が気になりながらも、アクセルを踏み車を発進させる。
だけれどやっぱり、そんな安倍を見て見ぬフリが出来ない、この人。
「安倍さん1人みたいだし、あのままファンの子達に囲まれたままって危険だよ」
――だから、助けてあげよう。
キリッと真面目な王子様が、言った。
- 142 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年03月18日(月)23時53分29秒
- ( ゜皿 ゜)<………マタ放置?
ゲホゲホッ!!!!
い、1ヶ月もまたお待たせしてしまい、本当にごめんなさい!!
読んでくださってる読者さんを更に減らすような事ばっかしてます……本当にすいません。
メール欄にも書いた通り、この交信は非常に不安でして…。
見直したり悩んだりしている内に、気付いたら1ヶ月でした。ごめんなさい。
それと。。
このスレの>>1にも書いてはいるんですが、分かり難かったのならすいません。
ここはsageでお願いします。
>>126
どうも。初めから読んでくださって本当にありがとうございます。
王子は、もうちょっと時間がかかりそうです(w
>>127
復活に気付いてくださり、ありがとうございます。。
エロオヤジには、フックなりそれなりの対応を!
>>128
(0^〜^)<任せといて!
>>129
うわぉ、HPの方も…ありがとうございます。
放置はしても、放棄だけはもうしたくないんで……な、なんとか頑張ります(汗
>>131
ウッス。頑張りまっす。
>>132
代わりに言ってくださり、ありがとうございます。。
>>133
( ´ Д `)<ネガティブネガティブ…
ヽ;^∀^ノ<こ、こら後藤!
>>134
(〜^◇^)<……そうだね、いちごまは真実……
いちごまに幸福……え、えーと(ストック確認中)…も、もう少しお待ちください!(w
いしよし? …も、もう少し(w
>>135
( ゜皿 ゜)<圭織ヲマッテクレテル人モイルンダ…
てか、いきなり石川ピンチです。
いしよし好きな人に怒鳴られないように守らせたいと思います(汗
- 143 名前:正座をして待っている読者。 投稿日:2002年03月20日(水)21時11分36秒
- 更新、お待ちしておりました!
作者様の中で色んな葛藤はお有りでしたでしょうが、
楽しく拝見させて頂いてます。
いちよしのやりとりも大好きっす!
- 144 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月21日(木)03時40分51秒
- はい。守って下さい(w
- 145 名前:ぐれいす 投稿日:2002年03月24日(日)00時25分46秒
- いや〜いままで再開してることに気づきませんでした(恥
今回の交信、全然大丈夫だと思いますよ。
他の人がどうなのかまでは分からないけど楽しく読ませてもらいました。
もう行進してることに気づいたのでいつまででも待てますので頑張って下さい!!
ダメさんはそれほどダメじゃない!!!
- 146 名前:CHAPTER51 投稿日:2002年03月27日(水)15時40分18秒
- ヲタの怖さは、同じ業界にいて、少しでも知ってるつもり。
ましてや安倍は、女の子。
そしてそんな安倍のファンは、やっぱり男の子が多くて。
囲んでる子達の半分以上が、何処から駆けつけてきたのか、男の子が多い。
そりゃやっぱり、色んな意味で危ない。
見た所、聞いた所によると、安倍はオフらしく、周りにはガードマンの姿もない。
よって、守ってくれる人はいない。
1人で来てる上囲まれているから、逃げるに逃げれない状態だ。
「つーかさ、マジやばくない? あのまま誘拐されそうな勢いだよ」
違法だが、道路脇に車を止めて、覗き見る。
確かにあんな状態じゃ、いつのまにか安倍の姿がなく、誘拐されてましたと言われてもわからない。
「そうやな…うん。ちょっとあたし行ってなっちを――」
「裕ちゃんだけが行ったって、ダメだよ。人だかりの中心に入る前に断念しちゃう」
「でも早くしな、なっちが…」
「――なっち誘拐は、市井達に任せてよ」
- 147 名前:CHAPTER51 投稿日:2002年03月27日(水)15時40分48秒
- 1人は、人だかりと反対方向に。
1人は、人だかりの中に。
そして人だかりの中に入った1人――吉澤は、近くにいた女の子の肩をポンポンと叩いて。
「…ねぇ、あっちに、いちよしの市井がいたよ」
すると、どうやら反応あり。
「うそ!?」と叫んで、その女の子が人だかりの反対方向に歩いている1人――市井の元へと走って行く。
そして言われた通り確かめると、なんと本当に市井がいた。
ご丁寧に、被ってる帽子も取って。
安倍の所でキャーキャー言っていたことも忘れ、目の前の市井に向かってキャーキャーと叫ぶ。
しっかり、握手なんかもしてもらったりして。
そしてその叫び声は、なんだなんだと人だかりをまた囲むように覗いていた、帰り途中の女子高生達にも聞こえて。
キャー!と叫んで、市井の元へと駆けてゆく。
そしてまたその声を聞いて、人だかりがだんだん崩れていって。
女の子達は、みんなが走っていく先には市井がいると聞き、また走っていく。
市井はというと、人だかりが出来る前に逃げ出して。
ヤローや子ども達だけが残った、安倍の周り。
走り出した女の子達が気になったのか、ちょっと安倍から目を離したのをチャンスに、吉澤が安倍の横につく。
「安倍さんっ」
「ご、ごめんなさい、本当にプライベート中なんです! お願いですから通してくださ〜いっ!!」
「あ、安倍さんっ、あたっ…オレです、吉澤です!」
「……へ?」
囲まれて混乱している安倍の服を引っ張って、こっちを向かせる。
すると一度きょとんとした顔を見せて、驚く。
「よっすぃ〜!?」
「――安倍さんを、誘拐しに来ました」
- 148 名前:CHAPTER51 投稿日:2002年03月27日(水)15時41分23秒
- ――
「は〜っ、作戦成功!」
スタッフが運転する乗用車の後部座席にもたれながら、吉澤が嬉しそうに言う。
隣には、未だに混乱中の、安倍。
そして車の中から見える人だかりの中心は、いつのまにか誘拐されてた安倍が何処に行ったのかと、必死になって探すヲタの姿。
そのヲタの中に、市井を追っていた女の子達も混ざっていて。
途中で撒かれてしまった安倍&市井を、ヲタ達がギョロギョロと目をぎらつかせながら捜している。
「何? 何なの?」
囲まれたと思ったら。吉澤に出会ったと思ったら。誘拐されたと思ったら。
なんだ、ここは。
「何なのってアンタ、助けてあげてんやんか」
「た、助けてあげたって、なんで裕ちゃんとかがいるの!」
「こっちは仕事や! そんで仕事帰りに囲まれてるなっち見て、助けてあげたの」
正確には、お土産買った帰りなんだけど。
まあ別に、そこら辺は気にせずに。
- 149 名前:CHAPTER51 投稿日:2002年03月27日(水)15時42分07秒
- 「アンタ、ほんま不用意やで。飲酒といい、今回といい。
なんでバレるようなカッコすんねん。あたしらが気付かんかったら、アンタ危なかってんで?」
「………………」
中澤に注意されるのも、無理はない。
帽子は被ってないし、サングラスはしていないし。
これじゃ、私は安倍なつみです、サインさせて下さいと歩いているようなものだ。
「市井に礼言いや〜。身体張ってなっちから人だかり減らしてくれてんから」
「っていうか、その市井さんがまだ帰ってきてません」
「あ」
そうやそうや、と忘れてはいけないことを忘れてて。
身体張って安倍を救ってやった市井のことを、さっそく中澤は忘れてる。
「……市井くんも、いるの?」
「いますよぉ。囲まれて困ってる安倍さん見て、助けてあげようって言ったの市井さんですもん」
「…………そーなんだ」
ゆっくりしようと、うるさい記者達から少しでも離れようと思って帰ってきた北海道。
そして、久しぶりに帰ってきた北海道の空気に浸ろうと思って街を散歩していたら。
浸るんじゃなく、囲まれてしまって。
本当は眼鏡もしてたんだけど、何人かに気付かれて逃げようとした時、落ちてしまったんだ。
それで余計にバレて、あんな風になってしまった。
- 150 名前:CHAPTER51 投稿日:2002年03月27日(水)15時42分49秒
- そんな時、現れたのが2人の王子様(もっとも1人は今、逃亡したまま帰ってこないが)。
天使を守るために、白馬――車を降りたのだ。
そして現在に至る。
「でも、市井くん大丈夫なのかな…?」
「え?」
「今頃、ファンの子達に追いかけまわされてるんじゃ…」
その可能性も否定できない。
一応、人だかりが出来る前に逃げて、最終はこの車がとめてあるトコで待ってるとは言ったのだが。
「逃げて振り切ったのはいいけど、道がわかんない可能性の方が高かったりして」
ふと吉澤が、そんなことを呟く。
「えーっ、それってやばいっしょ! なっちちょっと見てくる!!」
「ててっ、ちょっとなっち! アンタ出てってたらまた騒ぎになるやろ!」
「でもっ」
元はと言えば、自分を助けてくれたワケでこうなった。
じゃあ、自分が今度は助けなければ。
そう思って言ったのだけど、それはどうやら不必要だったみたい。
- 151 名前:CHAPTER51 投稿日:2002年03月27日(水)15時43分20秒
- ぜぇはぁ息を吐きながら、ものすごく疲れた顔で車の窓をノックする人。
「「「「あ」」」」
車の中にいた全員が気付き、声をあげる。
「……はぁはぁ……マジ死ぬかと思った……」
――
後部座席に3人という狭さの中、車は快調に走る。
もうホテルはすぐそこ。
あまりにしつこい女の子の達の追っかけに息を切らし逃げ、汗を掻きながら帰ってきた市井もやっと疲れを癒せる。
「なっちはどうする? 家帰るやろ?」
「ん? うん……」
そんな市井をこっそり見ながら、返事を濁す安倍。
そう、中澤の言う通り、家へ帰るつもりなんだけど。
だけどやっぱりこれだけは、家へ帰る前に言わなきゃいけない。
「市井くん」
「………はい?」
「本当にありがとう」
- 152 名前:CHAPTER51 投稿日:2002年03月27日(水)15時43分57秒
- 狭い座席の中、丁寧に頭も下げて。
「えっえっ、ちょっと安倍さんっ? そ、そんな、頭なんか下げないでくださいよっ」
狭い座席の中、市井を困らせる。
だけど安倍は謝っただけじゃ気が済まなかったらしく。
「ねえ裕ちゃん、仕事で来たって言ってたよね?」
「うん」
「いつ帰るの?」
「…明後日。なんで?」
「じゃあ、明日ってオフ?」
「うん……だからなんで?」
「ん〜?」
聞きたい? と無邪気に顔を綻ばし。
「はよ言え」とばしっと中澤に叩かれながら、ぶーたれながらも、話を続かせる。
「明日、お礼になっちが北海道案内してあげる!」
その急な申し出は、断わることが出来なくて。
嬉しそうに言う安倍の傍で市井は、ただ「ハイ…」と頷くしか出来なかった。
- 153 名前:CHAPTER51 投稿日:2002年03月27日(水)15時44分37秒
- ( ゜皿 ゜)<ホント……オッソイ交信……
う、うるさいな( ゜皿 ゜)さん……。
もう( ゜皿 ゜)さん出してやんない!(プイッ
(〜^◇^〜)<次からはおいらの出番だぁ〜! キャハハハ!
>>143
交信、ほんとにお待たせしましたっ。
アナタ様の足がしびれる前に交信しようとは思うのですが…。
頑張りますです。一生懸命。
>>144
(0^〜^)<守るよ!
>>145
再開は、ひっそりと……気付いてくれた方だけ。。
色々と問題作なんで、こそこそとゆっくりペースでやってます。。
>ダメさんはそれほどダメじゃない!!!
ありがとうございます(涙
- 154 名前:Buru大凶 投稿日:2002年03月28日(木)06時45分41秒
- 更新されてる!ダメさんお疲れ様です。
(〜^◇^)<最近出番が・・・暇だから遊園地でも逝って着ぐるみ・・・
ヽ;^∀^ノ<あ"ーん"ん"っ!
(0^〜^) <市井さん風邪すか??
最後に一言(アセ・・・いつも素晴らしい文をありがとう!では・・・
(^▽^)<ふぇいどぅあーうとぅ!
- 155 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月29日(金)09時48分27秒
- また、一波乱ありそうですな(w
- 156 名前:正座をして待っている読者。 投稿日:2002年04月01日(月)23時22分51秒
- いえいえ、痺れを堪えて待つのもこれまた気持ちいいですので(w
マターリと作者様のペースで進めてください。
まだまだ波乱の予感がしますね。
なっちの動きも楽しみです(^^)
- 157 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月21日(日)15時04分15秒
- 期待!
- 158 名前:くわばら。 投稿日:2002年05月05日(日)02時41分41秒
- 同じく期待です。
- 159 名前:名無し読者。 投稿日:2002年05月05日(日)04時32分29秒
- いつまでも待ってます。
- 160 名前:ひと休み 投稿日:2002年05月16日(木)02時58分34秒
- まってますよ〜。
超面白いので 完結するまで応援してますね〜
- 161 名前:ひと休み 投稿日:2002年05月16日(木)02時59分58秒
- しまった・・・上げてしまった。
作者さん すみません sageでしたウワ〜〜〜(泣)
- 162 名前:ヒ・ミ・ツ 投稿日:2002年05月26日(日)20時36分29秒
- もうダメさんは帰ってこないような気がする…
- 163 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月26日(日)22時21分42秒
- 信じる者は救われるです。
ダメさんを信じます。
ヽ^∀^ノの今後が気になりまくり。
- 164 名前:ななし 投稿日:2002年06月18日(火)18時52分00秒
- そうはいっても心配になる…
- 165 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月14日(日)03時50分59秒
- 復活を期待して保全
- 166 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月17日(水)14時22分25秒
- 同じく保全
- 167 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月02日(金)23時19分49秒
- ほぜ
- 168 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月21日(水)15時49分50秒
- 保全
- 169 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月06日(金)17時51分40秒
- HPのほうは?
- 170 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年09月08日(日)17時21分59秒
- 随分もの間、挨拶もなしにご無沙汰してしまい、申し訳ありません。
もうすぐ放置して半年になろうとしているのに、こうしてまだ倉庫に行かず残っているのに、
読者さんの優しさを感じさせずにはいられません。
保存、本当にどうもありがとうございます。
実は、自分がどうしても書けなかった所を、やっと乗り越えることが出来ました。
で、自分を追い込むためにも、読者さんをこれ以上待たせないためにも、こうして書き込むことにしました。
恥ずかしいのをぐっと我慢して、最初から読み直し。
市井達の性格も忘れているため、自分で書いたセリフの言葉や言い回しを何度も読み返し。
それでも決して、完璧だ、とは言えないのですが…。
更新は、今までと違い、4日に1回、一週間に1回、もしかしたらそれ以上かけるかもしれません。
それでもいいという方、どうか最後までお付き合いください。
では。
- 171 名前:CHAPTER52 投稿日:2002年09月08日(日)17時22分45秒
- 「……くぁ」
可愛い顔を、少し歪ませて。
午前8時、大きなあくびをしながら矢口真里――起床。
やっぱり最初は、10分ほどベッドの中でゴロゴロして。
本格的に起き始めるのは、それから。
バシャバシャと顔を洗って、歯を磨いて。
寝癖もしっかり整えて、メイクもバッチリキメて。
そして、毎日欠かさずやってる、カメラのレンズ磨き。
ゆっくりゆっくり、自分の命とお金の次に大事なこのカメラを、10分ほど磨きつづける。
そして時間はいい時間。
午前9時。
そろそろ、朝食を食べに、ホテルの1階へと降りる。
- 172 名前:CHAPTER52 投稿日:2002年09月08日(日)17時23分29秒
- 矢口が現在寝泊りしているホテルは、もちろんいちよしが寝泊りしているホテルと同じ。
だがさすがに、いちよしが食事をする時間まではわからなくて、1階に降りた時に探してみたのだが、どうやらいないみたいだ。
いたらいたで、食事と同時に見張りもしなきゃいけないから大変なんだけど。
朝1番はやっぱり、カッコいい男の子を見たい。
バイキング形式の朝食で、傍に立っているのは、矢口の大嫌いなブ男。
朝の目の肥やしには、どうにもならないみたいだ。
そして、1人寂しく食事をしていると、遠目で見える男前発見。
裸眼じゃ自信はないけど、今はちゃんとコンタクトをしてるから、絶対に男前だと自信がある。
で、その男前は誰かを待っているらしく。
ホテルの入り口の所で、キョロキョロとしている。
前髪は、軽く全部下ろしていて。
度の軽そうな、デザインのいいメガネ。
片手には、どっかの球団のロゴ入りのキャップ。
食事を手早く終えて矢口は、カメラ両手に抱え、男前ウォッチング。
- 173 名前:CHAPTER52 投稿日:2002年09月08日(日)17時24分22秒
- だけど、ふと気付いた。
あの顔って、どっかで見た事ない?
メガネ外して、前髪上げて。
そしたら想像出来る、端正な、男前な少年の顔。
「って、市井じゃん!」
うっそぉうっそぉ、ヤグチってやっぱついてるぅ?
すかさずカメラを合わせて、レンズを通して確かめて見る。
そして確かめた結果。
「……うん、やっぱ市井だ」
で、わからないのが一つ。
その市井の、待ち人だ。
マネージャーの中澤ならば、絶対に一緒に降りて来ているハズ。
スタッフを待っているとしても、中澤は絶対に隣にいるハズ。
じゃあ吉澤?
それだったら尚更、一緒に降りてくるだろう。
……じゃあ、誰なんだ。
- 174 名前:CHAPTER52 投稿日:2002年09月08日(日)17時25分06秒
- 「……これってもしかして、スクープの予感?」
ヒヒヒ、と、子どもっぽい笑顔を作り。
きゃはは、と、胸を躍らせる。
待つこと、十数分。
時刻は午前10時を5分ほど回ったところ。
市井はというと、10時を回った頃からソワソワし始めたため、
どうやら10時に待ち合わせしていたんだろうということが窺われる。
だけど、相手はまだ来ない。
市井と同様に、矢口もソワソワし始める。
まさか、このままスッポカシとか!?
そんなんダメ! 絶対ダメ!
神様、ヤグチのこと好きなら、ヤグチのお願い叶えてよ!
すべての男、世の中の神様はヤグチの虜、なんて思っている矢口は、ついそんなお願いまで言ってしまう。
けれど世の中、そんなに矢口の都合通りに行くハズがない。
そう、行くハズがないのに……。
- 175 名前:CHAPTER52 投稿日:2002年09月08日(日)17時25分48秒
- 「あっ、スネオくんごめーん。ちょっと遅れちゃった」
「ス、スネオくんって言わないで下さいっっ!」
神様は、やっぱりヤグチの虜なのか。
市井の待ち人、来たる。
しかも、なんとなんと。
「えー、だって『市井くん』だったらバレるかなぁって」
「バレるのは安倍さんの格好でしょ!」
安倍さん――市井はそう言った。
それに、その安倍さんの格好。
メガネをただかけただけで、それは変装とはとても言い難い。
そしてそんな変装じゃ、プロのカメラマンをごまかせるハズもない。
「……うっそ、マジ?」
市井と、安倍なつみ?
ちょっとちょっと、大スクープじゃん。
張り込み、追跡は、カメラマンの仕事でもある。
ただ、シャッター押すだけじゃないんです。
財布、携帯。
とりあえず必要な物があるのを確認して、ホテルを出て行く2人を追うのは、矢口にとっては当然だった――。
- 176 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年09月08日(日)17時27分31秒
- ∬´▽`∬<こーしんです!
まこ共々、一生懸命こーしんします。すいませんでした。
……って、前にも言いましたよね(汗
- 177 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年09月08日(日)17時40分01秒
- レスを頂いていたのに返すのを忘れていました(大汗
>Buru大凶さん
更新にまたまた間が空いてしまい、申し訳です(汗
やぐ、出番これからちゃんとあるんで、遊園地行かなくても大丈夫だから(w
作者が少年少女で一番好きなキャラだったりします>矢口
>155さん
HPもこちらも、両方見ていただいてありがとうございます。
その一波乱が越せず、これほど時間がかかってしまいました(涙
>正座をして待っている読者。さん
痺れも越えて、もう下半身麻痺以上にまで病状を悪化させてしまい本当にすいません。
なっち、書くの難しいんです(涙
>157、くわばら。さん
こんな駄文に続きを期待していただき、本当に感謝しています。
めちゃくちゃ遅れましたが、こーしんしました。
>159、ひと休みさん
あり難いお言葉、感謝してます。
随分とお待たせさせました。ごめんなさい。
>ヒ・ミ・ツさん
帰ってきました…
>163さん
少しでも163さんを救えることが出来れば、と頑張りました。
でも、遅いですよね(汗
>164さん
心配、大変おかけしました…
>165−168さん
保存、本当にありがとうございます。
こうして、seekでもう一度書けることになったのも、皆様のおかげです。
>169さん
…?
HPの方は、細々とやっております。
- 178 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月08日(日)23時36分17秒
- 待ってましたよ!
ゆっくりでいいから頑張って下さいね。
- 179 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月08日(日)23時42分25秒
- 作者さん お帰りなさい!!
- 180 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月09日(月)00時01分31秒
- 待っててよかった・・・(感涙
マータリがんがってください。マターリ待たせていただきます
- 181 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月09日(月)00時05分50秒
- 作者さん、帰ってきてくれてアリガトウ!!
- 182 名前:CHAPTER53 投稿日:2002年09月10日(火)23時35分04秒
- 手を後ろに組んで、変装が足りない安倍に市井が貸した帽子を被った安倍が、市井の少し前を歩く。
その足取りは、密かにウキウキしていて。
だがその様子は、北海道の街を興味深そうに歩きながら見渡してる市井には気付かれない。
ただ、こっそりと追跡してる矢口にだけ、気付かれてる。
「っていうかさぁ、市井くん?」
「?」
「よっすぃーとか裕ちゃんって、なんでいないの?」
確か昨日、一応全員に言ったつもりなんだけど。
だけど今いるのは、市井1人だけ(+後ろに矢口)。
そういえば、返事をしたのも市井1人だけだった気がしたけど。
「吉澤は、花畑牧場に。裕ちゃんもそれに付き添いに」
「えっ、りんねとかいるトコ?」
「はい」
「なんでまた」
「石川がいるらしいんで。で、裕ちゃんは吉澤1人にすんの危ないからって」
「へ〜」
で、現在2人っきりなのか。
理由はどうであれ、何気に嬉しい。
- 183 名前:CHAPTER53 投稿日:2002年09月10日(火)23時36分13秒
- 「で?」
「…はい?」
「やっぱりよっすぃーと梨華ちゃんって、付き合ってるの?」
「は、はあ?」
どうしてそんなこと聞かれなきゃ。
それ以前に、どうしてそんなこと知っているのか。
「……なっちは事務所の先輩だよ〜。後輩達の恋愛知らないほど、他の人に興味ないわけじゃないよ」
「…誰かに付き合ってるとかって聞いたとか?」
「違う違う。ただ前、事務所でよっすぃーと梨華ちゃん一緒なった時、異常に仲よかったもん」
「でも、幼馴染だから……」
「い〜や。絶対あれは、幼馴染なんて関係超えてる」
「そ、そうなんですかね?」
「絶対そうだよ〜」
恋バナが好きなのか、嬉しそうにニコニコと話続ける。
石川と同じく、終わりのないトーク。
だけど石川と違う所は、話し続けてくとネガティブになるんじゃく、更に嬉しそうになるとこか。
市井も苦笑するばかり。
- 184 名前:CHAPTER53 投稿日:2002年09月10日(火)23時37分48秒
- そして、散々幼馴染のこと+自分のことが話し終わった安倍。
だけどまたすぐに、別の話に。
「ね、お腹空かない?」
「え? あ、はあ……」
「じゃあ、どっかで食べよう」
「え」
気付くと時間は、もう昼頃。
安倍が、戸惑ってる市井の手を掴み、信号の先にある中華料理屋へ向かう。
「あ、安倍さん、手っ」
「ん?」
「手っ、やばいっす!」
「だーいじょうぶだよぉ、だって今はちゃんと顔隠してるし」
…だけど、その顔も、初めから隠してなきゃ意味がない。
「……ぜーんぜん、大丈夫じゃないんだなぁ、これが」
照準を、しっかり握り合った手に合わせ。
カシャ、カシャ。
とりあえず、さっきホテルの中で撮った写真と合わせ、二枚目の写真を確保。
- 185 名前:CHAPTER53 投稿日:2002年09月10日(火)23時38分39秒
- ――
波乱の始まりな相方市井さんと、これから波乱が待ってる、吉澤さん。
視点は変わり、その吉澤へと移る。
花畑牧場に着いた頃には、大分時間が経っていた後で。
午後1時を少し回った時間。
ホテルに戻る時間を考えるとそんなに長居は出来ないのだが、だけどそれでも吉澤は嬉しかった。
顔を綻ばせ、何日かぶりに顔を合わせる2人。
中澤はそんな2人の関係を知っているからか、とっても吉澤の様子が微笑ましい。
……だけど、2人は女同士なんやよね。
もっとも本人達は自覚して、付き合ってるんだろうけど。
「あー、中澤さんだぁ!」
1番最初に見つけて声を上げたのが、りんね。
なんだか結構懐かれて、くすぐったくもある。
「あれー、どうしたんですか。って、よっすぃーもいる!」
「あ、ほんとだよっすぃーだ!」
きゃあきゃあと、あっという間に囲まれて。
ちょびっとだけ吉澤もビックリしてしまう。
- 186 名前:CHAPTER53 投稿日:2002年09月10日(火)23時39分18秒
- 「あ、あの、梨華ちゃんは…」
「『梨華ちゃん』だってぇ〜。付き合ってるんだから呼び捨てにしたらいいのに〜」
「そうだよぉ、言ってみなよ『梨華』って」
「な、なに?」
「こらこら、吉澤困ってるやんか」
もうその辺にしといたりぃ、と中澤が間に入ってくれて。
「面会時間がそんなないから、石川何処におるか教えてあげてくれる?じゃないとコイツ、うるさいから」
「な、中澤さんっ」
「うっわ〜、ラブラブ〜」
「梨華ちゃん想われてんじゃん〜」
「だからぁ、その辺にしといたりって」
いいかげん、しつこいで自分ら。
中澤にそう言われ、素直に「は〜い」と従う2人。
「梨華ちゃんはぁ、小屋の中にいるよ」
「多分義剛さんも一緒だったと思う。さっき入って行くの見えたから」
「ふーん、ありがとう…」
義剛さん――社長と一緒、か。
誰にも聞こえないように呟いて、りんねに差された小屋の元へと向かう。
その背後で中澤が
「圭織はー?」
などと質問していたが、吉澤の頭には石川と逢えるということしかなかった。
- 187 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年09月10日(火)23時40分24秒
- ( ‘д‘)<更新したんやけど
>>170の訂正。
>読者さんの優しさを感じさせずにはいられません×
読者さんの優しさを感じずにはいられません○
…ごめんなさい。
本編の方ですが、えー、次からいしよし続きます。3つか4つくらい続きます。
いちごま待ちの方、お待ちください。ごめんなさいごめんなさい。
>178さん
大変お待たせしました。。。
ゆっくりでいい……本当にありがとうございます。その言葉、すっごく救われます(涙
>179さん
ただいまです! この言葉が言えたのも、皆様のおかげです、本当に。
>180さん
待っててくれてよかった…(感涙
お言葉に甘えさせていただいて、マターリがんがります。
>181さん
こちらこそ、こんな奴を待っててくれてアリガトウ(号泣
放置野郎のひどい奴に、本当に優しい有難い言葉、感謝しております。
期待を裏切らないためにも、自分の首を誰かに絞めてもらいながら、マターリマターリ頑張りたいです。
- 188 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月11日(水)15時08分03秒
- 義剛・・・(((((;゜д゜)))))ガクガクブルブル
- 189 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月11日(水)20時09分40秒
- いいっすね!いしよし。
いしよし好きなんで楽しみにしてます
- 190 名前:CHAPTER54 投稿日:2002年09月14日(土)00時28分52秒
- 時間は、30分ほど前に遡る。
まだかなまだかな。
大好きな人が、やって来る瞬間。
まだかなまだかな。
端から端の小屋の中を、ウロウロウロウロ。
椅子に座って大人しく待つことが出来ないから、つい小屋の中をウロウロと。
石川は、朝からずっと落ち着かないでいた。
原因はもちろん、もうすぐやって来る吉澤のせい。
来る、とは聞いていたけれど、正確な時間は聞くの忘れてて。
いや、聞いても多分、吉澤のことだから教えてくれなかったろう。
吉澤はどうやら、石川をビックリさせるのが大好きみたいだから。
もう、ずっと逢いたくて。
ちゃんと顔が見たくて。
ちゃんと声が聴きたくて。
友達がいると言っても、心細いこんな土地の中で、1人思ってた。
だけど今日はやっと、その願いが叶う。
りんねやあさみも気を使ってくれて、今日はこうして小屋の中で待機させてくれた。
あとは、待ち人が来てくれるのを待つだけ。
もう12時もとっくに過ぎてるし、もうそろそろ、来てもおかしくないんだけど……。
そんな石川の心を読んだかのように、近付いてくる一つの足音。
よっすぃー?
……違う。これは――
「りーかちゃんっ」
低いけれど、同じ呼び方だけれど。
違う。
よっすぃーの声は、もっともっと優しくて。
違う、これは――
「――義剛、さん」
- 191 名前:CHAPTER54 投稿日:2002年09月14日(土)00時29分34秒
- 「おー、振り向いてもないのによくわかったね」
「ははは……」
感心感心、とか言いながら、肩に手を乗せてくる。
小屋の中には、人はいない。
石川と田中社長、2人っきり。
「梨華ちゃん、何してるの? もう手伝いは終わった?」
「あ、ちょ、ちょっと休憩を…」
「そうか」
笑って細める、その目。
前までは、それが純粋に笑っているように見えたのに――。
よく、考えれば。
この人、絶対におかしい。そう思うことが度々あって。
必要以上に触ったり、手を乗せてきたりするし。
いるとこいるとこ、現れるし。
何より、色んな打ち合わせのためにここに来たハズなのに、すべて行くのは飯田1人だけ。
肝心のタレントは、ここで牧場のお手伝い。
昨日飯田が帰って来た時に聞いたが、人手が足りないから石川の手でも借りたかったらしい。
おかしい、おかしい。絶対おかしい。
自分で言うのもなんだけど、私、役立たずだし。
ましてや、人、たくさんいるじゃない。
そして、私を見る義剛さんの目が、なんだか恐いんです。
それを飯田にも言ったのだけれど、心底困りながらも、今日もまた何処かへ行ってしまった。
- 192 名前:CHAPTER54 投稿日:2002年09月14日(土)00時30分20秒
- 別に、牧場の手伝いが嫌ってワケじゃないけど……。
なんだか、わざと1人残されるように仕向けられてる気がする。
ネガティブで思い込みの激しい石川の考えは、どんどんドツボにハマってしまって。
今更しても意味がないことかも知れないが、警戒心を思い切り強くさせる。
すると、田中社長が気付いたのか、まだ肩に手を乗せながら尋ねてくる。
「何、梨華ちゃん。ちょっと堅いねぇ」
「え、そ、そうですかぁ? き、緊張してるんですよぉ」
「なんでさー。姫が王子様の前で緊張することないんだよ。あ、それとも俺が格好いいからか!」
わはははと高々に笑っちゃって。
石川は笑えるハズなんかもちろんなく。
(王子様はよっすぃーだけでいいし!)
だけど突っ込みは所詮、心の中でだけ。
調子に乗ってる田中社長の前じゃ、全然届かない。
- 193 名前:CHAPTER54 投稿日:2002年09月14日(土)00時30分57秒
- 「す、すいません私、りんねさん達の手伝いに戻りますね…」
ここはもう、逃げるが勝ち。
そう判断した石川は、さっさと出て行こうとするが、田中社長に手を握られる。
「きゃっ」
男の人の手。
よっすぃーじゃない人の手。
そう認識したら、なんだかものすごく嫌悪感を感じてしまって。
ぱしっと、田中社長の手をはたいてしまった。
「痛……」
「あ、ご、ごめんなさっ――」
「ごめんなさいじゃねぇだろー!!」
「きゃあっ!」
引っ張り上げられる腕。
目の前には、いつも優しく見えた田中社長はもういない。
だって、気付いてしまったから。
――この人は、危険だ。
それも、とってもとっても危険だっていうことを――。
- 194 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年09月14日(土)00時31分59秒
- ( ‘д‘)<更新!>∬´▽` ∬
うp少しミスっちゃった……。
ええと、謝ってばっかなのですが、また謝らせていただきます。
田中義剛ヲタ及びファソの方には、本当に申し訳ない扱いをしています。ごめんなさい。。。
>188さん
もう少し(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル は続きそうです(w
>189さん
こんなのをいしよしと言っていいのかどうか分かりませんが…
おいらに書ける精一杯で頑張りたいと思ってます。
ずっと長く書いていて、いつのまにかよしごま派だったのがいしよし寄りになってしまいました(w
そして吉絡みで一番好きなのはいつのまにかよしあや(あやや)になってます(w
- 195 名前:正座をして待っている読者。 投稿日:2002年09月15日(日)23時13分22秒
- 遅ればせながら…作者様のお帰り、お待ちしておりました!
痺れに打ち勝つために比延山にて修行をしておりましたので、
全然問題ありません!(w
田中社長がとうとう本性を現しましたね。
本当の王子様が早く助けに来てくれることを祈って…。
ドキドキしながらお待ちしております。
- 196 名前:CHAPTER55 投稿日:2002年09月16日(月)14時48分54秒
- 「でもさーでもさー、ほんっと世の中って危険だらけだよね」
「はあ…まあそうですね」
「しかも、東京なんか何処見渡しても危険だらけだもん。絶対北海道のがいいよ〜」
中華料理屋でご飯を食べながら、終始安倍さんトークショー。
昨日の話じゃ、北海道を案内してくれるって言っていたのに。
なんでかこうして、料理を食べてる時までトークが続く。
まあ、愚痴なら、まだいい。
でも、誰も聞いちゃいないのに、自分の家族の様子やそんなものまで語られると、どう相槌打っていいかもわからなくなる。
安倍さんは、喋りたがり。
市井の頭の中には既に、その方式は出来上がっていた。
「北海道の人はいいよ〜、みんなのんびりしてて優しくて。絶対に」
「はあ……」
その“絶対”の自信は、何処から出てくるのか。
そんなことは分からないけど、とりあえず話を合わせておく。
「北海道人は、いい人ばっかり! そんで、東京は悪い人ばっかり!」
「ははは……」
一応、市井の想い人は、東京人なんだけど。
だけどとりあえず、笑っておく。
そしてまだ、トークショーは続くのだ。
- 197 名前:CHAPTER55 投稿日:2002年09月16日(月)14時49分37秒
- ――
安倍が絶対と言い切った、北海道人はいい人。
けど、けどさ。
世の中、北海道人全員、いい人ばかりじゃないんです。
「…っ、やぁ!」
「なんで顔反らすの! 顔こっち向けて…」
「いやっ、やだぁ」
「……梨華ちゃんはもっと、聞き分けがいい子だと思ってたんだけどな…」
腕を上に上げられたまま、そのまま壁に押し付けられて。
空いたもう一方の手で、無理やり石川の顎を掴んで、正面を向かせる。
ハァハァ。
血走って正気を失った目と、荒い荒い息。
その息は、どんどん石川の唇に近付いてきて。
ガチガチと震える身体、そして唇。
大の男に抑えられ、その上恐さが重なって。
逃げ出せるハズが、ない。
- 198 名前:CHAPTER55 投稿日:2002年09月16日(月)14時50分20秒
- 時刻はもう、午後1時を回って。
それでもまだ、本当の王子様は現れる気配はない。
偽者の王子様のキスなんか、いらない。
欲しいのは、本物の王子様のキスなのに――。
どうしてもっと、あの時、よっすぃーが心配してくれた時に、疑わなかったんだろう。
よっすぃーは、この人の本当の姿を気付いて、言ってくれたのに。
どうにも出来ないこの状況で、涙を流しながら思うこと。
それはやっぱり、吉澤のことで。
1番信じなきゃいけない人を、あの時、田中社長に家まで送ってもらった時、信じなかった――。
意地を張っていたからも、ある。
だけど吉澤は、自分にとって“絶対”の人。
自分にとっての“王子様”は彼女だけなのに――。
- 199 名前:CHAPTER55 投稿日:2002年09月16日(月)14時51分08秒
- イヤだ。イヤだ。イヤだ。
助けて。助けて。助けて。
そして、そんな石川の悲痛な想いを受け止めたのは、この人で。
「嫌がっても、助け呼んでも、誰も来ないよ」
ハァハァと、息を更に荒くして。
ニヤッと不敵に笑い、片手で石川の両手を掴み、豊かなその胸を鷲掴みにする。
そして再び近付く唇。
「いやぁっ!!!」
「だから、嫌がっても誰も…」
両手を抑えつけても、尚も抵抗しようとする石川。
今は胸を鷲掴みしているため、顔も固定していない。
それを幸いとして、どうしてもキスを避けようとする石川に対して、田中社長の顔が怒りで真っ赤になってくる。
「王子様のキスが受け入れられないのっ!?」
「よ、義剛さんは王子様じゃないっ」
「俺は梨華ちゃんの王子様だ! 俺が1番王子にふさわしいんだ!」
「ちが――」
「――違うね。梨華ちゃんの王子様は、この吉澤だもん」
- 200 名前:CHAPTER55 投稿日:2002年09月16日(月)14時52分02秒
- 「なっ――!?」
「よっすぃー!!!」
いきなりの登場に、2人して固まる。
その一瞬の隙をついて、まずは石川の両手を固定して胸を鷲掴みにしている田中社長を、
全身の力全部を使って突き飛ばす。
それからは、いつもの形。
石川を後ろにして、その前に吉澤が立って。
――王子が姫を守るのは、当然のこと。
「アンタに、王子なんか似合わない。クソ野郎だよ、アンタは」
「な、なんだと!?」
「クソ野郎だよ、って言ったんだよ!」
「がっ……」
最後の言葉と同時に、男の最大の急所を蹴り上げて、蹲った田中社長を上から睨みつける。
「姫を守るどころか汚す王子なんて、いらない。アンタは、王子なんかじゃない。
そもそも、王子って年ですかよ、ほんとに。ワガママな王様だったらまだ分かるけど」
「……のヤロウ」
邪魔しやがって。罵倒しやがって。
正気を完璧に無くした田中社長。
蹲ってる姿勢から低い姿勢になって、見下ろしてる吉澤めがけてタックルを。
- 201 名前:CHAPTER55 投稿日:2002年09月16日(月)14時53分06秒
- 「ぅわっ、ぐ!」
そこはやっぱり、男の力。
それにガタイも結構いい田中社長にタックルされ、そのまま吉澤は壁に激突となる。
だけどそれだけじゃもちろん、攻撃は終わらない。
「邪魔すんじゃねえよ! 俺は今から梨華ちゃんとヤるんだから〜」
「だ…れがヤらすかっ」
「…お前は寝てればいいんだよ!!!」
「――かはっ!」
「よっすぃー!!」
腹を思いっきり蹴られ、その一撃で身体がまったく動かなくなる。
密かにボクシングをやってて、鍛えているハズなんだけど。
やっぱ、敵わない。
決定的な違いがあるから。
若さでは勝っても、所詮は男と女。
いくら相手がオヤジでも、力の差は歴然――。
「くっ……そ…ぉ」
動かない身体に、この状況に、自分が女だということに。
吉澤は、悔しくて悔しくて涙を流す。
そうやって吉澤が涙を流してる間にも石川の叫びは聞こえてて。
「うるさい! いいかげん大人しくしろ!!!」
「きゃっ――」
パシン。
頬を、殴られる音。
- 202 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年09月16日(月)14時54分20秒
- 川o・-・)<……更新しました。……では逝ってきます
∬;´▽`∬<えっ、何処逝くのあさ美ちゃん!
オガコンっていいね。
義剛ヲタ及び石ヲタの方には、本当にひどいことしてますごめんなさいごめんなさい。
一番謝らないといけないのは、いちごまヲタな方なのですが(汗
>正座をして待っている読者。さん
!!!よ、よかった…生きてくれてた…(ゴウキュウ
本当にお待たせして申し訳ありません。。
正座のさせすぎで、後遺症が残っていないか心配です…(w
田中社長本性表しました…本当ならばここまで悪くさせるつもりはなかったのですが…
最後までドキドキしてもらえるような話を書きたいです。頑張ります。
- 203 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月16日(月)20時01分06秒
- (O`〜´O)<オイラが梨華ちゃんの王子様だっ!!
(#/▽)<きゃ
吉澤くんカッケー!!梨華ちゃんを助けろ!!
- 204 名前:ミニマム 投稿日:2002年09月17日(火)00時51分47秒
- 中澤さ〜〜〜ん
- 205 名前:ポロポロ 投稿日:2002年09月17日(火)18時24分16秒
- は!!知ってたはずなのに、吉君が男だと思ってしまった^^
- 206 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月19日(木)21時12分17秒
- 義剛さんがTVチャンピョンに出てるのを見たら
なんとも言えない気分になった^^
ヤバイ。この小説にはまりすぎてる
- 207 名前:CHAPTER56 投稿日:2002年09月29日(日)01時44分54秒
- ちっちゃい頃から、真面目だった梨華ちゃん。
ちっちゃい頃から、よく両親の言う事を聞いていた梨華ちゃん。
甘やかしてたワケじゃないけど。
素直でいい子な梨華ちゃんだから、両親にも誰にも、殴られたことはなかった。
そしてもちろん、人を殴ったこともなくて。
疑うことを知らなくて、人を信じることが出来る人。
そんな梨華ちゃんが、大好きで。
梨華ちゃんには、殴られた痛みを知ってほしくない。
こんな痛いの、知ったら梨華ちゃん泣いちゃうよ。
それに梨華ちゃんは、何も悪いことしてないのに。
悪いことをして殴られた痛みと、何もしてなくて殴られた痛みは、違うんだよ。
そこに、愛なんかないんだ。
悪いことをして殴ってくれる愛。
だから、痛かったのも忘れることが出来るけど。
そこに、愛なんかないんだ。
何もしてなくて殴られたそこには。
だからその痛みは、心に残る。
- 208 名前:CHAPTER56 投稿日:2002年09月29日(日)01時45分29秒
- 動かない、身体。
痛む、身体。
悔しくて悔しくて、溢れ出る涙。
それでも、自分にはやることがある。
お姫様を、守らなきゃ。
だから自分は、立ち上がらなくちゃいけない。
「わーーっ!!!!」
張り上げられるだけ声を張り上げて。
どうやって動いたのか自分でも分からない身体を、田中社長にぶつける。
「な、なんだ!? まだ動くのか!?」
「守るんだっ………りかちゃん……守る…」
「そんな身体で守れるワケないだろ!」
腰に手を回して離さない吉澤を、なんとかかんとか振り切って。
今度はさっきとは反対に、蹲ってる吉澤を、上から見下ろす。
「ビデオでもなんでもなく、生で梨華ちゃんの身体が見れて、喘ぎ声が聞けるんだから、
結構その場で蹲ってるのも得だと思うけどね」
「…っ、ヤダ、させるもんか…」
「しつこいな」
もう腰に手を回す力も立ち上がる力もないけど、それでも必死に足にまとわりついて。
泣きながら、なんとかこっちに向かせる。
- 209 名前:CHAPTER56 投稿日:2002年09月29日(日)01時46分11秒
- 本当なら、こっちに向かせている間に、石川に逃げてほしかったんだけど。
服も半分くらい脱がされて、それでも自分の身体を気にすることなく吉澤を泣きながら見ている石川。
なんとか止めようと田中社長に喰いかかるが、払われる。
気を利かせてるんだろう、外の人達。
だから一向に、こっちに誰も来る気配がまったくなくて。
気を利かせて2人っきりにしようとしてくれてるのはいいけど、今この中に3人いるんだよね。
しかも、1番厄介なヤツが。
1人で戦って勝ちたかったけど、無理みたい。
最低でみっともなくて恥ずかしいけど、吉澤は心の中で必死に助けを呼ぶしかなかった。
そして、その声に応えてくれた人が――。
「石川! 石川いる!?」
切羽詰まった、何度か聞いたことのある声。
石川なんかは、ほぼ毎日聞いたことのある声。
「飯田さん!!!」
――――そう、飯田だ。
- 210 名前:CHAPTER56 投稿日:2002年09月29日(日)01時46分44秒
- バァン! と格好よくドアを蹴り上げて。
後ろになぜか警察官と、1人の女の子。
警察官がこの状況を見て、すぐに田中社長を取り押さえる。
呆気に取られていた田中社長は、当然すぐに捕まって。
同じく呆気に取られて動けない石川は、飯田が介抱して。
呆気に取られて+動けない吉澤は、騒ぎに駆けつけた中澤が。
そしてりんねやあさみも駆けつけて、驚く。
まずはこの状況。そして田中社長が捕まったこと。
そしてもう一つ。
飯田の傍にいる、女の子に。
「な、なんでまいちゃんが!?」
まいちゃん、女の子の名前は里田まい。
以前あった、カントリー娘。の追加最終オーディションで落ちた女の子だ。
けれど結局、そのオーディションは該当者なしで終わり、今現在石川梨華をレンタルしてるワケなんだけど。
「あたし……あたし…」
「――この子も、石川と同じ目に合わされたんだよ」
- 211 名前:CHAPTER56 投稿日:2002年09月29日(日)01時47分16秒
- 昨日、石川に今の自分の心境を訴えられた飯田。
田中社長を信じていないワケではなかった。
だけど1番大事なのは、いくら自分トコの社長と仲いいと言ったって、やっぱり石川だ。
その可愛い可愛いタレントが泣きそうになりながら訴えてるんだ。
ジャーマネとしては、立場を考えたけれど、やっぱり自分の可愛いタレントを取った。
おかしい、恐い、と言う石川。
だから今日、打ち合わせに行ったと見せかけ、少し田中社長のことを調べさせてもらって。
そこで調べていく内に偶然出逢ったこの里田まいの話を聞いて、念の為警察を呼んでから駆けつけたのだ。
本来なら、カントリー娘。に選ばれる予定だった里田まい。
よって、直接田中社長の元に呼ばれ、色々と話をしていたのだけれど。
なんだか必要以上に迫ってきて、石川みたいなことをされ。
なんとか逃げ出したのはいいけれど、次の日電話で「オーディションに落ちました」と言われた。
受かったって、どうせ辞めるつもりだったけど。
ものすっごく悔しくて、何日も泣きまくった痛みを、今でも里田は抱えている。
だから、オーディションを受けた子達に飯田が何か田中社長について聞いていると知った里田は、
もうその子に、自分と同じ想いはさせたくないと思い、こうして来たのだ。
- 212 名前:CHAPTER56 投稿日:2002年09月29日(日)01時47分53秒
- 「ほら、ちゃんと歩けっ」
「ぐぅっ…」
両脇に警察官。
田中社長だった人はもう、そこで社長じゃなくなって。
「「義剛さんっ」」
りんねやあさみが泣きながら声をかけるが、悔しそうに唸るだけ。
ずっと世話してくれていた人を目の前で失った瞬間。
そんな2人を後ろからそっと、飯田が抱きしめる。
2人のことも、考えなかったワケじゃない。
考えた上で、こう判断したんだ。
けどまだ状況が完全に把握出来ないりんねとあさみは、泣くしかない。
そして周りのみんなも、2人の気が済むまで泣かせてあげた。
- 213 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年09月29日(日)01時49分21秒
- (;‘д‘)<なんか…いきなり更新ペース落ちたけど、大丈夫なんかい
( ´ Д `)<…大丈夫。きっと大丈夫
(;0^〜^)<……宣伝? ごっちん…
……義剛ヲタさん、どうか許してください。
実は載せようかやめようか、変えようかと散々悩みましたここ。
>203さん
こんな形になっちゃいました…
>ミニマムさん
从#~∀~#从<なんやぁ?
>ポロポロさん
男と思ってくれたということは、嬉しい限りです。
…もっとも現実の吉澤は嬉しくないのかもしれませんが…(w
>206さん
はまってくださってくれて、本当に本当に嬉しいです。
ですが、義剛さんはいい人なので(w
しかしそう言ってる自分も、ハロモニの北海道ロケに出てた時はなんとも言えない気分になりました(爆
- 214 名前:正座をして待っている読者。 投稿日:2002年09月29日(日)04時57分38秒
- 作者様の小説を読まずに逝ってしまうわけにはいきません(w
嫌だと言われても、最後までスッポンのようについていきます♪
このお話を読むと、足の痺れが不思議となくなってしまうのです(w
しかし…恐山に修行しに行っている間にこんな展開に…(w
よっすぃー、よく梨華ちゃんを守ってくれた!さすが王子様!
- 215 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月15日(火)21時28分45秒
- 保全
- 216 名前:\1980 投稿日:2002年10月19日(土)02時58分08秒
- 川o・-・)<保
- 217 名前:\1980 投稿日:2002年10月19日(土)03時05分50秒
- 川o・Д・)<田
こんな形で登場!!(w
続きが気になって来てしまったら
義剛さん・・・こんな姿になって・・・(w
なんと言ってもよっすぃ〜の王子様はなってカコイイんでしょう。。。
師匠って呼んでもいいっすか?(w
- 218 名前:CHAPTER57 投稿日:2002年10月22日(火)23時35分22秒
- 「…っ、いったぁ〜!」
情けない声が、静かな車の中によく響く。
情けない声をあげたのは、つい先ほど怪我を負った、石川梨華の王子様。
「大丈夫…?」
隣に寄り添うように座っている石川がそっと語りかけるのに気付き、笑ってみせる。
だけどこれが、実際にはかなり痛くて。
地面の悪い道を進む度、傷口に響く。
あれから、さすがにあの場は居づらくなり、色々と細かい話もあったため、
石川と飯田、まだ混乱中のりんねとあさみ、そして里田も乗せて、
とりあえず中澤達が泊まっているホテルに移動することになった。
そして、それからどれくらい走ったのかは分からないが、次第にガタガタ揺れなくなり、
情けない声をあげずに済む。
「………ふぅ」
そうして一息をついてみたのはいいけども、痛いのはやっぱ痛くて。
だけどこの痛みに意味があったのなら、我慢だって出来るんだけど…。
「…ほんっと、情けない……」
「…?」
「情けなさ過ぎるよ、ほんとに…」
- 219 名前:CHAPTER57 投稿日:2002年10月22日(火)23時36分01秒
- 独り言のつもりだったのに、どうやら隣の石川には聞こえてて。
ん?、と吉澤の方に向けて、首を傾げてる。
「よっすぃー、どしたの…? 傷、痛む…?」
泣きそうな顔をしていたのだろうか。
石川が真剣に、だけど心配そうにそう尋ねて。
「ん、傷は痛むけど……情けないな、って」
「情けない?」
「だって、そうじゃん」
助けに行ったのに、実際やられっぱなし。
助けたのは、マネージャーである飯田。
自分は田中の足元で蹲ってただけ。
王子様になりたかったのに…………これ以上、情けないことってある?
「そんなことないよ。嬉しかったよ、私。よっすぃー来てくれて」
「来たって、何もしてないもん。出来なかったもん」
「してくれたよ? 殴られたり蹴られたりしたのに、諦めないで必死に止めてくれたもん」
「そんなの……誰だってしてくれたよ、きっと。っていうか、自分以外の人だったら、やられずにちゃんと梨華ちゃん守ってくれたって」
「でも、その人はよっすぃーじゃないじゃない」
「え…」
「私の王子様は、よっすぃーだけだよ」
- 220 名前:CHAPTER57 投稿日:2002年10月22日(火)23時36分46秒
- 相手をボコボコにしてくれたとか。
そんなこと、どうでもいい。
身体を張って、必死になって、守ってくれた。
たとえそれが、ボコボコにされただけだとしても――それだけでとっても、格好いい。
それだけでとっても、感動できる。
それだけでとっても、もっと好きになれる。
それだけでとっても、――――立派な王子様なんだ。
「梨華ちゃん……」
「よっすぃーっ……怖かった、怖かったよぉ…」
「大丈夫、もう、絶対離さないから…」
「うん…絶対だよ…」
王子様と、お姫様。
そんな2人の誓いのキスは――
「……アンタら、あたしらもおるってこと覚えといてや」
「「……あ゛……」」
――失敗に、終わる。
- 221 名前:CHAPTER57 投稿日:2002年10月22日(火)23時37分30秒
- 「まったく、敵わんわこのバカップルめ!」
「そぉだよ! 何さ、1番の王子様はこの圭織じゃんかー」
「アンタはそこが不満なんかっ」
ギャアギャアと、静かだった車内は一新。
バカップル(中澤談)のせいかおかげで、車内は一気にうるさくなる。
けれど、そんな空気に入れない、入ろうとしない1番後ろの座席の2人。
りんねとあさみだ。
「「あ……」」
うるさかった中澤と飯田も、顔見合わせ固まってしまって。
何を言えばいいのか思案するも、なかなか出てこない。
下手なことを言うと、更に落ち込む可能性もあるし。
2人の精神的なショックなどは、自分達ではどうすることも計ることも出来ない。
安らげることは出来るかもしれないが、完璧に治すのは不可能だ。
けど、2人の芸能人としての将来を、完璧にフォローする事は出来る。
それがせめてもの、中澤達に出来ること。
- 222 名前:CHAPTER57 投稿日:2002年10月22日(火)23時38分47秒
- 「カントリー娘。は、つんくファミリーが引き取ったる!
大丈夫、うちらの手にかかれば、アンタらすぐにでもスターやからな!」
「そ、そうだよ! 圭織に出来ることはなんでもするよ!
なんならデビュー曲の作詞、圭織がしたげる!」
「…いや、圭織、それはちょっと…」
「なんでよー! 裕ちゃん、圭織の詩の才能知らないでしょ!」
「知ってるから反対をしてんねんやん」
「………むかつく」
2人の言い合いを見て、まず石川と吉澤が笑う。
そして里田も笑い、少し遅れて、やっとりんねとあさみにも笑顔が見れた。
それを見て、中澤と飯田も心底笑える。
「よっしゃー、アンタら覚悟しときや。つんくファミリーが力入れたら、
眠る時間もないほど忙しくなるからなー」
「まず朝早くから仕事とかー…って、りんね達は朝早くは慣れっこか。
……じゃあ里田、朝は遅れずにちゃんと来ることね! 遅刻は厳禁だから!」
「え? あたし?」
「そうだよ。里田も、カントリー娘。じゃん」
「え……」
「ね? りんね、あさみ」
当然のような、飯田の問い。
そしてその飯田の言葉に、2人一度見合わせ、当然のように返すりんねとあさみ。
「「――そうだよ。まいちゃんはカントリー娘。」」
「りんねさん……あさみちゃん……」
まだ、完全じゃないけれど。
まだまだ、不完全だけど。
それでも今のみんなの笑顔は、とっても楽しそうだった。
- 223 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年10月22日(火)23時39分46秒
- (;‘д‘)<ひえ〜、どうしよ、更新おそなった
( ´D`)<大丈夫だよあいぼん、誰も見てないから
(;‘д‘)<それはそれで寂しいで…
指を怪我して、なかなか更新できませんでしたごめんなさい…。
連絡もせず、1ヶ月近く空けてしまったこと、反省しています。。
次は、やっと入ります……いちなちです。
>正座をして待っている読者。さん
またまた足を痺れさせてしまいました(大汗
もう、おいらが逝きそうです。逝ってきます!(ダッ
>215さん
保存ありがとうございます。
>\1980さん
(;‘д‘)つ<保田さんかいなっ!
義剛ファンの方には、本当に最悪な扱い方をしてると思ってます。
吉を褒めていただき、ありがとうございます。
- 224 名前:ドライマー 投稿日:2002年10月23日(水)20時16分37秒
- 吉王子カッケーっすね。
- 225 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月25日(金)21時08分07秒
- 次回、いちなち…、期待…。
- 226 名前:CHAPTER58 投稿日:2002年10月25日(金)22時55分02秒
- やっぱり、街案内は断わるべきだった。
だって、街案内どころか、延々と安倍さんトークショーだもん…。
結局、お昼食べ終わってから店の中で1時間半。
そしてまた歩いて(その間もずっと話は続いて)今は、喫茶店でトークショー。
自分が喋る所を探そうと思う方が難しい。
喋る隙間も与えてくれないし、2人しかいないから席を立つことも許されない。
市井に出来る行為は、苦笑と運ばれてきたジュースに口をつけることだけ。
安倍はというと、喋りながら器用にジュースを飲み、そして笑う。
だけど喋るのはやめようとしない。
じゃあ、こっそりと観葉植物に隠れながら見張っている矢口が出来ることは――?
「ったくもー、自分の話ばっかしないで仲良く市井と会話してよ!
………お、話終わった。今度こそ2人が盛り上がるような会話を……って、また自分の話かよ!」
――矢口に出来ること、それはこっそりと安倍に突っ込むことだけ。
自分の話に夢中な安倍のせいで、仲良く会話してる写真も撮れやしない。
- 227 名前:CHAPTER58 投稿日:2002年10月25日(金)22時55分46秒
- もうね、カツカツと歩いて行って、頭はたきたいくらい。
短気でも呑気な性格でも、延々自分の話ばかりする安倍に怒りはくる。
ましてや矢口は、2人が仲良く喋ってる2ショットを撮りたいのに。
1人は笑顔、1人は思い切り愛想笑いじゃ、誰がどう見ても仲良くない。
「そもそも、この2ショット自体がおかしいんだよ……。
喋りたがりのなっちと比較的無口な市井が合うワケない………まあ、だからこそ合うのかも知れないけど。
しかし、ホント苦笑いしかしないな」
誰が。市井。
その気持ちも、とってもとってもよぉく分かるんだけども。
だけど人間、絶対に限界というものがある。
そして市井は、もうその限界に来ていた。
頭の中は、今日で詰め込まれすぎた安倍さん情報。
もう何が何だか、誰がどうしただとか、分からなくなってしまっていた。
「ね、ねぇ安倍さん…」
「それでその時なっちさ――え?」
「…あ、いや…」
もうそろそろ、帰りたいのですが。
もうそろそろ、本来の目的の北海道案内に戻って欲しいのですが。
……言えれば、もうとっくに今頃喫茶店なんか出てる。
- 228 名前:CHAPTER58 投稿日:2002年10月25日(金)22時56分46秒
- そうして言い出せずにモゴモゴしてる市井にやっと気付いたのか、安倍の顔が慌てる。
「あっ、そ、そうだよね、ゴメン! ていうかなっちばっか喋ってるよね…ご、ゴメンねホント。退屈だったでしょ?」
「あ、いや、全然!」
人間というものは、不思議なもので。
思っていること考えていることをズバリ当てられたら、つい否定してしまう。
「あっあー、そうだ。いやっ、ジュースなくなっちゃったんで、
何か注文しようと思ったんですが、安倍さんもどうかなぁ……って、思って声かけたんですよ!」
この際、とことん安倍に付き合おう。
この際、北海道案内は諦めよう。
今にも泣き出しそうな安倍を前に、市井はそう決意を表明する。
「……あ、じゃあ…バニラアイス」
「バニラアイスですねっ、はい!」
そして店員を呼んで、注文。
けれど店員が去った後、なぜか静かな沈黙。
……安倍が喋るのを止めたからだ。
その様子に、もちろん矢口も気付く。
だがどっちみち喋るのをやめたところで、写真なんか撮れないし。
今撮って題をつけるとしたら、【別れ話】の最中みたいなものだ。
矢口が撮りたいのは、【安倍なつみ&市井の熱愛発覚!】であって。これじゃ、順序が違う。
- 229 名前:CHAPTER58 投稿日:2002年10月25日(金)22時57分55秒
- 「……もぉ〜、何時間経ってもいい写真なんか撮れやしないじゃん、これじゃ」
可愛い愛しいカメラくんと共に、こっちはいつでもスタンバイはオッケーなのに。
確かに何も収穫がなくても、金は入ってくる。
けれど、何も収穫なく帰るのは、名キャメラマン矢口と自称する矢口のプライドは納得いかない。
もうちょっと。もうちょっと。
もうちょっと、粘ってみる。
――なんだかこのまま諦めて帰るのは、矢口の勘は望んでなかった。
そしてそんなしぶといミクロ星人に見張られてるなんて知らない2人。
まだまだ、気まずい沈黙が続く。
「…あ、安倍さん」
「…え」
「……しゃ、喋らないんですか?」
――って、しまった!
言ってから後悔する。安倍は、喋り過ぎたと市井が思っていることを悟ったのに。
そんなの、喋れるワケないじゃないか。
「ちがっ、違うんです。いやそのっ…別にいちー安倍さんのことうるさいとかそんなこと――」
「……………」
――墓穴。
思ってない、と続けなくても、「うるさい」なんて言葉口にするべきじゃなかったのに。
- 230 名前:CHAPTER58 投稿日:2002年10月25日(金)22時58分46秒
- 「俺」じゃなく「いちー」とつい発してしまったことに気付かないくらい、市井は慌てていた。
そして安倍は、市井にほんの少しでも「うるさい」と思わせてしまったことに、ショックを受けていた。
「ははっ……ごめんね。なっちさ、なんか話しちゃうと止まらなくなっちゃうんだよねっ。そうだよね…うるさいよね」
「いやだから、ちが――」
「だって、なんか嬉しかったんだもん!」
「…………え?」
「なんかさなんかさ、市井くんと2人でいて、嬉しかったんだもん。
だからなっち、なんかもっと自分のこととか知ってほしくて、聞いてもいないことから、聞きたくないこととか色々喋っちゃって…」
「あ、安倍さん…?」
「……あはは。な、何言ってんだろうね、なっち」
――それは、こっちが聞きたいです。
市井は、ワケが分からなかった。
頬を女の子らしくピンク色にして俯く安倍。
頭の中で安倍が言ったことを真剣に考える鈍感市井。
そして……
「…やぁっと来たよ、――出番が」
レンズを通して、ほくそ笑む矢口。
矢口の勘が、証明されようとしていた。
- 231 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年10月25日(金)22時59分24秒
- ∬´▽`∬<更新しましたよ!!
川o・-・)<麻琴ちゃん元気だね…
川’ー’川<新曲でソロパートと見せ場あるからね
(ё)<………私のソロパートと見せ場は…
元気なのはまこじゃなく、まこヲタのこのおいらです。
>ドライマーさん
吉のキャラは書きやすいのか書きにくいのか…作者に取っては掴み難いキャラなのですが、
一番書きにくかった箇所なんで、そう言ってもらえて救われました。ありがとうございます。
>225さん
いちなち…、期待…、応えられたらいいのですが…。
- 232 名前:ちに 投稿日:2002年10月26日(土)16時42分03秒
- 続き楽しみにしてます!
ところでストーリーの流れとは関係ないんですが、この話での
市井と吉澤ってどういういきさつで知り合ったんですか?
そのエピソードを、よかったら書いてくれませんか。よかったら。
こういう、いちよしの関係好きなんで。
- 233 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月02日(土)14時15分50秒
- いちなちですねぇ。
なっちはいちーさんが好きなんでしょうか?
- 234 名前:CHAPTER59 投稿日:2002年11月06日(水)03時16分14秒
- 軽い事情聴取が済んだ、中澤ご一行。
吉澤、石川にそのマネージャー、そして最後にカントリー娘。をつれて、ホテルにご到着。
とにかく落ち着こうと、中澤の部屋へと入る。
りんねやあさみは、部屋に入った途端、やはり我慢していたのだろうか、必死で笑っていた目から、涙が零れる。
自分達を育ててくれた社長が、捕まったのだ。
田中もりんねやあさみに手を出していなかったことを考えると、本当の娘のように可愛がっていたのだろう。
けれど、その2人以外の女の子には、色んなことをしていたのだ。
これからの将来を案じてくれても、慰めてくれても、りんねやあさみがショックなのは今はしょうがない。
里田は、そんな2人の横について、密かに一緒に泣いていた。――彼女はもう、メンバーなのだ。
自分に対してされたことを考えても、メンバーが泣いてると、自分まで泣けてくる。
里田は、自分が受けた過去の傷を打ち明けれた強い子だった。そして、メンバーを想ってなける優しい子でもあった。
カントリー娘。は、ちゃんとやってける――2人の敏腕マネージャーは、見合わせて頷いた。
そして、もう一組。石川と、吉澤だ。
ベッドの端に腰掛けて、しっかりと手を握り合い再度石川が吉澤の傷を心配している。
心配されている吉澤の顔は、王子様の顔と思えないくらい、デレデレだった。
- 235 名前:CHAPTER59 投稿日:2002年11月06日(水)03時16分59秒
- 「梨華ちゃん…」
「ん?」
「…へへっ、まだちょっと疲れてるから、膝枕してもらっていい…?」
「えーっ?」
「よっこいしょ、と」
まだ了解もしていないのに、石川をベッドの上に引き上げ足を崩させ、その上に乗る吉澤。
それだったらそのまま1人でベッドに寝た方が気持ちいいと思うのに。
「……なんかよっすぃー、甘えたさんになった?」
「んなことないよ」
「え〜、そうかなぁ?」
「そうだよぉ」
キャッキャッとじゃれ合う恋人達。
カントリー娘。のことももちろん気にかけ心配しているんだけど、2人はバカップル。
膝枕しながら、じゃれ合いを続ける。
そんな2人を呆れながら見ていたマネージャーの内、飯田が思い出したように声をあげた。
「…ねぇ、そういや市井くんは?」
- 236 名前:CHAPTER59 投稿日:2002年11月06日(水)03時17分47秒
- ―――
総合的に考えれば、中澤達の方が色々大変だった1日だったと思う。
しかし市井達は、これから大変になろうとしていた。
注文をしていたジュース、アイスが運ばれてくる。
さっきからずっと照れている安倍は、なかなかアイスを口にすることが出来ない。
見かねた市井が、声をかける。
「…えーと。とりあえずアイス食べません? 溶けちゃいますよ」
「あっ、そ、そうだね!」
上手く話を交わされて、安倍的にはどうだったんだろう。
鈍感な市井は分からず、「わーおいしそう」とアイスを頬張る安倍をただ見てるだけ。
鈍感なのも、ここまで来ると罪だ。
安倍は確実に、昨日助けてもらったことで、市井に好意を持っている。当然、男と思って。
そして市井は、それに気付いていない。
安倍が照れながらも早口で、2人でいれて嬉しい、自分のことを知ってもらいたい、そう言ったのに――。
さっきからずっと安倍の顔を見て考えているんだけど、市井にはどうしてあんなことを言ったのかがわからなかった。
しばらくそうやって見ていると、安倍もその視線に気付いたのか、アイスから顔を上げる。
でも、どこをどうやって勘違いしたのか、
「…あ、アイス欲しかったの?」
……なんて。
- 237 名前:CHAPTER59 投稿日:2002年11月06日(水)03時18分33秒
- じっと見ているのが、物欲しそうな顔に見えたんだろうか、そのことに少なからず市井はショックを受けてしまう。
けれどそこで、「違います。安倍さんを見てたんです」と言ってしまったら
更なる誤解を招きそうなので、抵抗せずにそのまま頷いておいた。
「いやぁ、おいしそうに食べてるから、つい」
そう言って、話を変えるために話題を探そうと頭を切り替えたその頭の目の前に差し出されるスプーン。
「……え?」
目の前には、にこにこ微笑んでる天使の笑顔。
え、っていうか、何でしょう。
そうやって微笑む意味が市井には分からない。
「あげる」
笑顔。
「は…?」
引きつる顔。
「欲しいんだったら、なっちの少しあげるよ」
更に笑顔。
「…………」
固まる顔。
- 238 名前:CHAPTER59 投稿日:2002年11月06日(水)03時19分20秒
- 一度、整理してみる。
ええと、ええと、これは、親切心なんだろう。
誤解だけどアイスを物欲しそうに見てたと肯定した市井に、優しい安倍が分けてあげるという親切心なんだろう。
整理をして、そういう結論が出た。
果たして、その親切心をどうやって受け取るのが問題だ。
安倍は、スプーンの口をこっちに向けて差し出している。
器は、安倍の手元。
どうやらこの状況から察するに、“1人で食べろ”、“自分も注文しろよ”とは言ってないらしい。
これは、“食べさせてあげる”だ。
「い、いや……お気持ちは嬉しいですがとてもとても…」
こんなトコ写真になんか撮られたりしたら、多分命はないんじゃないだろうか。
この目の前の天使の笑顔には、後藤のヲタよりも更にすごいヲタがとり憑かれてそうで。
「えー、どうして? すっごくおいしいよ?」
「はあ…」
しかし市井は両手が使えないワケじゃない。おいしいなら、そのまま器ごと渡してくれれば食べれる。
いや、もし渡してくれたとしても、これは、“間接キス”というものではないか。
女同士や男同士、性別が同じ人は大概、友達などで平気に回し飲みしたりなんか出来るのに。
そして市井と安倍も、友達と呼べる関係ではないにしろ、女同士なのに。
外見が男になっているからか、それとも自分は、ノーマルと信じ込んでいたのに後藤を好きになってからオカシクなってしまったのか。
とにかく、お口開けてあーんも間接キスも、想像するだけで恥ずかしかった。
- 239 名前:CHAPTER59 投稿日:2002年11月06日(水)03時19分51秒
- 「いいです、ホントいいです。どうしても欲しかったら、自分で頼みますこの際」
「えっ、もったいないよ。だったらなっちのあげるって」
「いやだからいいんですってば」
あげるいらないあげるいらない。
その攻防は、一向に収まりそうにないみたいで。
その内に安倍の顔が、だんだんと曇って落ち込んでゆく。
くれるというのなら、そのまま器ごと渡してくれたら、この際、間接キスだうわぁ、なんて照れずに食べるさ。
だがしかし、相手の頭には口あけてあーんしかないみたいで。
周りの目はあるし何より恥かしい市井は、オッケーが出来ない。
だが、こうして、落ち込まれてしまうと……。
「あ、安倍さんっ、あの」
「……そうだよね、食べかけなんてヤダよね……なっちに食べさせてもらうなんてイヤだよね…」
「あ、安倍さぁ〜ん」
いやだから、食べれるから。1人で食べれるから。
今そう言うと、安倍の親切、好意を完全に拒否したということで、
時には非常に冷たい市井であっても言うのは躊躇われた。
代わりに口に出たのは、もう降参。
「………分かりました、そんじゃ、いただきます……」
- 240 名前:CHAPTER59 投稿日:2002年11月06日(水)03時20分22秒
- ( ´ Д `)<深夜遅くに後進…zzz
>ちにさん
市井と吉澤の関係っすか……書きたいのは山々なんですが、
今はこの話を終わらせるのに精一杯の自分なんです(ゴウキュウ
もし無事終わることが出来て、余裕が出来た時、HPにでも載せたいと思います。
せっかくのリクエストを断わってしまい、申し訳ありません。
>233さん
いちなちですねぇ。
なっちはいちーさんが好きなんでしょうか?(聞き返してどうする
- 241 名前:ちに 投稿日:2002年11月06日(水)13時43分24秒
- いえいえ、とんでもないです。
駄目で元々、「希望を言ったらもしかしたらいつか…」と一応
書いてみただけですから。でもHPに載せてもらえるなら、
それでも充分、嬉しいです!
市井、いよいよ保田の罠に嵌まってしまうのか!?
- 242 名前:爆走息子。 投稿日:2002年11月08日(金)20時58分47秒
- こんにちはダメさん、こっちの方は更新されてると聞いたので、
こっちの方に来てみました。
いや〜やっぱり面白いですね。期待してるんで頑張って下さい。
- 243 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月10日(日)17時25分33秒
- >>242
(0^〜^0)<ageんなYO!
- 244 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月12日(火)20時15分48秒
- い…いちなち…(;´Д`)ハァハァ
めちゃめちゃ良いです…
- 245 名前:CHAPTER60 投稿日:2002年11月19日(火)23時37分42秒
- ちゃんとと言っていいかは分からないけど、お互い顔は隠しているし。
それに、周りは自分が思っているほど、自分達のことなんか見ちゃいない。
一瞬口に入れるだけ。そうしたら、安倍の機嫌も治るハズ。
クールな市井くんは、優しかった。
――そして、神様も矢口に優しかったのだ。
ヤグチは勘がいい、そして何より神様に愛されてる。
今日ほど、そう確信したことはなかった。
2人は市井が思っているほど、周りに見られている。
レンズを2人にキチンと合わせている矢口が、何よりの証拠だった。
- 246 名前:CHAPTER60 投稿日:2002年11月19日(火)23時38分59秒
- 「でも、今見たら溶けちゃってるよ…」
あげるいらないと繰り返している内に、アイスは確かに最初来た時よりも溶けてはいる。
だが、トロトロに溶けている、というワケではない。
「別にいいですよ、どっちかっていうと、溶けてるアイスのが好きなんです」
…なんて、大嘘。
本当はガッチガチに固まってるアイスの方が大好きなんだけど。
素直な安倍は、「よかったぁ」と安心して一口サイズのアイスをスプーンの上に乗せる。
「……はい、あーん」
「あ、あーん…」
――恥かしすぎる。
たとえ泣かれても怒っても、もう二度とやらない、市井はそう心に決めた。
そして、そのスプーンが市井の口に運ばれる決定的瞬間を目撃した&激写した矢口。
スクープを撮った瞬間こそ、幸せな時ってない。それを実感していた。
2人の交際が真実か嘘なのかは、矢口には分からない。
だけどそんなことは関係ないし、記事が勝手におもしろおかしく書いてくれる。
矢口はただ、合成でもなんでもない、付き合ってても付き合ってなくても、2人はこんなことをしてましたと証拠写真を撮るだけなのだ。
「……やっぱ、ヤグチって天才? 早速圭ちゃんに連絡しなきゃ♪」
圭ちゃん――保田圭。
保田の矢口北海道派遣は、保田にとっては成功なんだろうか。
その結果はすべて、現像が終わり、雑誌に載った時に明らかになる。
- 247 名前:CHAPTER60 投稿日:2002年11月19日(火)23時39分52秒
- ――
そして、帰り道。
色んな所に寄り道したので、ホテルまでの帰り道がはっきりしない市井を、安倍に送ってもらう。
ふと安倍を見ると、何か考え事をしているようだ。
邪魔しても悪いと思い、市井も黙って同じように考え事をする。
考え事の内容は、もちろん後藤のこと。
確か前の話では、2日のオフがあるといっていた。
じゃあ今頃はきっと、遊びにでも言っているのだろうか。それとも寝ているのかな?
そうして想像していると、なんだかついつい笑ってしまって。
気付くと安倍に不思議そうな顔で見られていた。
「ふーん……スネオくんって、そういう風に笑うんだね」
「…いやだからスネオくんって――」
「……なっちそういや、今日ずっと一緒にいたのに、笑った顔初めて見たや」
「えっ…」
言われて、考える。
そうだっけ。そうだったっけ?
そういえば、確かに、苦笑いばかりしていたのかもしれない。
でも元々、感情を表に出すのが少ないというか何と言うか。
頭の中で色々と言葉を出そうとするのだが、それが口の外に出てくれない。
- 248 名前:CHAPTER60 投稿日:2002年11月19日(火)23時40分36秒
- 「…なっちさ、恥ずかしい話なんだけどさ、男の人と付き合ったことってないんだよね」
「……?」
「なんかね、好きになることは多いんだけど、どうしてかその人が笑うのは、なっちを見てじゃないんだ」
安倍は一体、何が言いたいんだろう。
この話は、市井の笑った顔を初めて見たといった話に関係あるのだろうか?
市井には、安倍の思考に少々ついていけなかった。
「今日は北海道案内したげるって自分から言っといて、案内しなくてごめんね?」
「えっ、あ、いや全然っ」
「…このまま真っ直ぐ戻っていったら、ホテルだから」
「安倍さんは?」
「なっちはぁ……つらくなるからやめとく」
「……?」
つらくなる? 何が? 体調が?
勝手にどんどん進んでく安倍の話に、市井はまだついていけない。
必死で必死で追いかけていくと、安倍が待っていてくれた。
「……もうっ、鈍感だなぁ。なっちは、市井くんのことが好きになりかけてるのっ!」
「えっ………」
追いついて、安倍が言わんとしていることが今やっとわかる。
そうか、そうだったんだ。
- 249 名前:CHAPTER60 投稿日:2002年11月19日(火)23時41分20秒
- 2人きりで嬉しい発言、もっと自分を知ってほしい発言。
しかし自分のことを喋り過ぎたあまり市井に不快な思いをさせてしまったというショックの大きさ。
バニラアイスを、ただあげるじゃなく、食べさせてあげるという行動。
それを断わられた時の、落ち込み様。
そして、さっきの突然の話。
やっとこさ、辻褄が合う。
「はぁ…なっち男運ないのかなぁ。なんで他に好きな人いる人好きになっちゃうんだろう…」
「いやっ、別に俺は…」
「――じゃあさっき笑ったのは、何を考えてたから?」
「………」
「好きな人のこと、じゃない?」
「………そぉです、はい」
「……っていうか、なっちが隣にいるのに話さないで、1人で他のくだらない事で思い出し笑いとかしてる方が嫌だし」
だったら、好きな人の事を想って笑ってくれた方が、こっちとしてもショックはそうひどくない。
好きな人がいないのに安倍の事なんか放って思い出し笑いにふけっている方が、完璧に安倍なつみという女のプライドはズタズタだ。
それだったらまだ、傷が浅い内にはっきり出来てよかったと思う。
- 250 名前:CHAPTER60 投稿日:2002年11月19日(火)23時42分24秒
- 「正義のヒーロー!……に見えたんだけどなぁ。市井くんはなっちだけのヒーローじゃなかったんだ…」
「いやいや…」
「じゃあ、なっちだけのヒーローになってくれる?」
「えっ」
ズイ、と顔を近づけられて。
小さい顔、可愛らしい顔が、市井の目の前に広がる。
けれどその小さい可愛らしい顔が、安倍じゃなく後藤の顔へと変化する。
その後藤の顔は、とっても不安そうで。
市井はまた笑ってしまった。
(……大丈夫だよ、んな、心配しなくても………)
保田の思惑とは違い、離れていても、何処にいても、市井の心は変わらなかった。
「…お気持ちは大変嬉しいんですけど、安倍さんだけのヒーローにはなれないです」
「………フラレちゃった」
「役不足だと思います。きっと、他に素晴らしい人がいるかと」
「いるかなぁ…」
「きっと。多分。おそらく」
「……物凄く他人事だね」
「あ、いや…」
- 251 名前:CHAPTER60 投稿日:2002年11月19日(火)23時43分14秒
- 慌てて訂正しようとする市井を見て、あははと笑う安倍。
なんか可愛い、とからかわれてしまう始末。
可愛い安倍にそう言われると、なんだか照れくさくなってしまう。
「…ヒロイン、大事にしてあげなね」
「ヒロイン?」
「ヒーローの相手役は、ヒロインっしょ?」
「あぁ……」
王子様にはお姫様。ヒーローにはヒロイン。
しかしどちらも、市井に使っていい言葉なんだろうか。
疑問を持ちながらも、無理して笑顔を作ってくれてる安倍に頷く。
「バイバイ」
「今日はありがとうございました」
「お礼を言うのはこっちの方だよ〜」
そしてもう一度バイバイと言って、市井の背中を見送る安倍。
その市井の背中を見送っている安倍の背中は、小刻みに震えていた――。
- 252 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年11月19日(火)23時44分32秒
- ( ´D`)<こうしんれすよー
(;‘д‘)<な、なんでののが更新報告してんねん!
( ´D`)<テヘテヘ
作者<ののたんハァハァ
……嘘です。( ‘д‘)ごめんなさい。
前更新報告者( ゜皿 ゜)さんと(〜^◇^〜)さんもそういやいないや……見捨てられちゃった・゚・(ノД`)・゚・。
自分のあまりの更新の遅さに、涙がでそうです。
毎日更新目指してた若かったあの日に戻りたい……まだ笑えないよ新垣!・゚・(ノД`)・゚・。
>ちにさん
いちよし編はホント書きたいです。希望です。現実はつらく哀しいですが…。
市井、どうでしょう……これから長い戦いが続きそうです…どうか見捨てずお付き合いください。。
>爆走息子。さん
ありがとうございます。少年少女はHPではなくこちらでやらせてもらってます。
あと、それと………sageでお願いします(ゴウキュウ
こんなのが海板の一番上にあった日は、おいら一日中布団の中にもぐりっぱなしです・゚・(ノД`)・゚・。
>243さん
(0^〜^0)ありがとう・゚・(ノД`)・゚・。
>244さん
ありがとうございます。。いちなちはたしてどうか…的で書いてましたので、救われます。
でも、いちなちは一番難産でした(w
- 253 名前:爆走息子。 投稿日:2002年11月20日(水)16時39分32秒
- >>252
すみません!1をよく見てなかったので・・・今後気をつけます。
個人的にこの安倍ちゃんのキャラ、大好きです。
これっきり安倍ちゃんの出番がなくならないか心配ですが、
ダメさんなら最終的に、面白い作品になると思うので、期待しています。
- 254 名前:CHAPTER61 投稿日:2002年11月27日(水)16時36分56秒
- そして1人になった、ホテルまでの帰り道。
途中、行く時に貸してあげた帽子を返してもらうのを忘れて戻ろうと思ったが、やめた。
なんだか、今は戻っちゃいけない気がしたのだ。
だからつけているのは、メガネだけ。
けれどそのメガネも外して、市井は小さな息を吐き、あまり身動き出来なかった身体を上に伸ばす。
女の子に告白されたのは、初めてじゃない。
でも安倍も、市井のことを男として見て告白して。
そして市井は、男として断わった。
嘘が、どんどん積み重なって周りに酷い影響を与えてる。
本当のことを話した時、バレた時のことを考えると、怖い。
そして考えてみる。
もし、本当に自分が男だったら、安倍の告白に応えていたのかどうか――と。
だがそれは考えただけで、答えは1つ。
市井は、後藤が好きだから。
そしてまた、考えてみる。
もし、自分が本当は女だと言ったら、後藤の気持ちは変わるのかどうか――と。
仮定だとしても、今はまだ考えたくなかった。
- 255 名前:CHAPTER61 投稿日:2002年11月27日(水)16時37分29秒
- でもなんだか今日は、おかしくて。
なんだか自分を追い込んでしまうことばかり、考える。
安倍が言っていた、正義のヒーロー。
ヒーローの相手は、ヒロイン。
正義のヒーローなんてものは、簡単だ。
嘘が上手くてバレなければ、誰にだってなれるのだから。
だがしかし、それが、バレてしまえば?
ヒーローになりきっていたことで、自分は最悪の悪役だということが判明する。
もちろん、ヒロインと悪役が結ばれる話なんか聞いたことない。
吉澤は、たとえどんなことをしても、お姫様との絶対の信頼感がある。
隠し事もない、純粋に愛し合っている王子様とお姫様。2人はその称号に相応しいとさえ思う。
じゃあ、自分は………。
王子様とお姫様になるには、大臣や王様に邪魔されてる。
かといって、ヒーローとヒロインになんかも、絶対になれない。
嘘に嘘を重ねたペテン師と、素直で可愛い女の子。
そんな2人の恋も、終わりは見えているんじゃないだろうか。
ダメだダメだとその想いを振り解いても、消えてくれない。
なんだかとても泣きそうになって傍にあった電信柱にもたれたら、携帯の着メロが鳴った。
着信【後藤真希】。
- 256 名前:CHAPTER61 投稿日:2002年11月27日(水)16時38分05秒
- ……なんていうか、見られてたんじゃないか、そう思ってしまう。
タイミングが良すぎるんだ、コイツは。
市井は、ヒーローなんかじゃない。本当は、後藤の方がヒーローなんじゃないか。
そんなことを思って、おもしろくて今度は泣きそうになった。
「……もしもし」
―「あ…もしもし。今大丈夫?」―
「うん、大丈夫だよ」
―「周りのスタッフさんとか…移動中とか」―
「今はオフで、1人でいるから平気だよ」
―「…よかった」―
前に電話した時、急いでいて市井が切ったことを後藤はちゃんと覚えていたんだろう。
今度は最初にキチンと確認して、大丈夫なんだと分かると、傍にいないのに電話の向こうで笑顔になった後藤が見える。
「この前は勝手に切っちゃってごめんね」
―「ううん…仕事だもん。ワガママ言ったこっちが悪かったし」―
「ごとー…」
市井の方が年上だし、後藤の周りは大人達ばかり。
せめて恋人の市井には甘えさせてあげたいと思うのだけど……後藤は市井より大人だった。
- 257 名前:CHAPTER61 投稿日:2002年11月27日(水)16時38分44秒
- ―「オフ、何してたの?」―
「えーっとねぇ、安倍さんと一緒に出かけてた」
―「は!? なっちと!?」―
「うん」
―「へぇ……」―
「つっても、後藤が思ってることはなんもないよ」
―「いちーちゃん信じてるもん。別に、なんも思ってないもん」―
「声、慌ててるけど?」
―「ち、ちぃがぁう!」―
「ははっ」
後藤には、嘘をつきまくっている。
だからせめて、オフは1人だった、なんて嘘はつきたくない。
告白された、ということは言おうかどうか迷ったが、安倍の想いもあるので、それはやめておいたのだが。
―「…ねぇ、いつ帰ってくるの?」―
「そうだなぁ……来週になるかも」
―「ウソっ!?」―
「うーそだよっ。可愛いなぁ」
―「っ………バカ」―
- 258 名前:CHAPTER61 投稿日:2002年11月27日(水)16時39分20秒
- すんなりと出て来た言葉。――可愛いなぁ。
鏡があれば、自分がそう言ってた時、死ぬ程とろけそうな顔をしていたことは間違いない。
市井は、幸せだった。後藤と話している時。
そして、ちゃんと決意した。
バレるまで、男をちゃんと演じる。後藤との交際を続けていく。
市井は結局、自分が可愛かったのだ――。
- 259 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年11月27日(水)16時40分01秒
- (〜^◇^〜)<キャハハ! 行進しにきたよ!
…( ゜皿 ゜)さんも探してこないと…。
>>爆走息子。さん
な、なっちのキャラ好きですか? あ、ありがとうございます・゚・(ノД`)・゚・。
そう言ってもらえたら一番嬉しいかもしれません・゚・(ノД`)・゚・。
なっちには、散々悩まされました。その割に報われてないんですが…。
ななななっちの出番ですか………フンフフーン♪(冷や汗
- 260 名前:DK 投稿日:2002年11月27日(水)16時53分50秒
- やっぱチェックしおいて良かったです。
更新お疲れ様です。自分は花板の方で
書かせてもらっているんですけど作者様みたいな文才が欲しいです〜〜
- 261 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月17日(火)19時13分36秒
- 保全
- 262 名前:CHAPTER62 投稿日:2002年12月20日(金)10時36分29秒
- そうして、北海道から東京へと帰ってきたみんな。
帰ってきてからのスケジュールは、なんだかもうバタバタで。
カントリー娘。の事務所移籍やそこに石川を足して来春デビュー発表だとか。
そして、忘れていた。
あの写真が掲載されたのだ――。
載った雑誌は、もちろん“センチメンタル♂向き”。
未だ根強すぎるファンのいる安倍と、今や人気爆発となった市井の熱愛記事。
巻頭カラーにするのは、当然のことだった。
その記事は、テレビの芸能ニュースでも取り上げられる。
テレビでは、本当に調べたんだろうか二人は確実に付き合ってると言い張る芸能リポーター。
そして、1人でも行ったこともない○○で2人を目撃したという視聴者からのファックス。
またその2人の熱愛についてどう思うか、と道行く人に声をかけて
「市井許さない」「うーん…なっちだったらまだいいかなぁ」「なっち天使!」
などと語る道行く人。
市井達は黙って、そんなテレビを見さされていた。
- 263 名前:CHAPTER62 投稿日:2002年12月20日(金)10時37分03秒
- 「…で、こんな記事を見て、2人が思うことは?」
市井達の横に立って、一緒にテレビを見ていたつんく。
記事に対する問い合わせがひどかったのか、その目の下は少しクマが出来ていて。
「……不用意でした。ごめんなさい」
「……ごめんなさい」
素直に、非を認める。
「でもっ、市井くんは悪くないんです! なっちが無理やり…」
「いや、無理やりでも嫌だったらちゃんと断わりました。だから、応えた市井が悪いんです」
「市井くん……」
「まあ、どっちが悪い悪ないなんて正直どうでもええ。実際この行為をしたのは確かなんやし。
一応交際全否定のファックス送ったけど、2人に直接インタビュー来ても全否定やで」
「「はい」」
「…で、問題は全否定の説明や」
いくら仲良く友達という設定でも、あーんして食べさせるのか?と突っ込まれてしまえば何も言えない。
しかし、他にいい案も思いつかない。
「……あ、あの」
「……なんや安倍」
「あーんして食べさせた理由、考えてみたんですけど」
「おおっ、ホンマか!」
オズオズと手を上げて遠慮がちに喋る安倍。
そしてつんくの許可をもらい、言ってみる。
- 264 名前:CHAPTER62 投稿日:2002年12月20日(金)10時37分49秒
- 「――毒味させてた、とか」
「……もう喋らんといてくれ、安倍」
「うぅ…」
「あのな、アイスの毒味させてたってことは、レストランの方にも迷惑かかるし、
何より、お前めっちゃ悪者なんで。市井のファン聞いたら殺される」
「あ…そっか。市井くんが実験台にされてるってことですもんね……」
「天使が悪になったら困るで…。それとも、悪なっちで売るか? 今度から。そやったら別にええで」
「もう喋りません……」
「…よろしい。……で、や」
結局こうして話していても、いい案が思いつかない。
とにかくいい案が思いつくまでは一切ノーコメントで通すことに。
その内に話題も冷めるだろうということで、その場はお開きとなった。
キチンとドアを閉めたのを確認して、2人どっと息をつく。
「…ははっ。撮られちゃってたんだねぇ」
「みたいですねぇ…」
「なっち気付かなかったよ」
「でも向こうは気付いてたみたいですね…」
しまった、やられた。
北海道だからって、油断してはいけなかったのだ。
あの時口を開けてしまったことを、市井は悔やむ。
しかし、一方で気になる点も。
- 265 名前:CHAPTER62 投稿日:2002年12月20日(金)10時38分37秒
- 「でも、あの雑誌に載ってる写真、ホテルの中からのも1枚撮られてますよね」
「あー。あの時変装とかしてなかったから……」
「…でも、なんかおかしいような」
だって、2人が逢う事はあの時車の中にいた中澤と吉澤と運転していたスタッフしかしらない事実。
もし、ホテルに泊まっていた人が偶然見つけたとしても、偶然カメラなんか持っているだろうか。
それに、あんなに綺麗に写っているなんて。
しかもご丁寧に、2人の行くとこを追っている。
そんな技術、そんな暇人、明らかにどちらかを狙ったカメラマンがいるんじゃないか――?
写真を提供した人の名前が今回書かれていなかったため、素人かそうじゃないかが断定が出来ない。
そして、証拠もない。
つけられていたことも写真を撮られたことも気付かなかったから。
保田の思惑を知らない市井は、そうやって疑うだけしか出来ない。
「まあとにかく、交際全否定ってことだよね。っていうか、実際付き合ってないしね」
「そうですね…」
まだ少し釈然としないまま、安倍の言葉に頷く。
安倍は市井ほど気にしていないのか慣れているのか、次の仕事あるんだよねぇ、と疲れた声を出した。
- 266 名前:CHAPTER62 投稿日:2002年12月20日(金)10時39分15秒
- ドアの前で手を振って、くるりと向きを変え、別れる。…と、思ったんだけど。
「…そうだ、帽子返すの忘れてた」
「…あぁ」
いいですよ、と繋げようとしたが、それより先にカバンから帽子が。
「……ずっと持ち歩いてたんですか?」
「だって、いつ会えるか分かんないだもん。それに、ちゃんと返したかったから」
気持ちを断ち切るためにも、思い出すような物はキチンと返す。
安倍は、その辺はキチンとしていた。そして帽子を市井の頭に被せてあげる。
そうしてニッコリ笑ってまた向きを変えたと思ったら、またこちらに身体が向く。
「あ、彼女に電話とかしなくていいの?」
「えっ?」
「だって、こんなオオゴトになってるから、心配じゃないのかなぁって」
「あ」
雑誌に載せられ、テレビで報道され、社長に怒られ。
同じ事務所でもあり同じ芸能人である後藤の耳に、入っていないワケがない。
「忘れてた……」
「もぉ〜。なっち知らないよぉ?」
「知らないって、安倍さんっ」
さっきはカッコいいこと言ったけどそもそもアナタが……言っている内に、安倍の姿が見えなくなる。
「……逃げられた」
- 267 名前:CHAPTER62 投稿日:2002年12月20日(金)10時39分54秒
- これも一種のフラれたということになるんだろうか。なるんだとしたら、お互い様だ。
共犯の1人が逃げ出したことにより、1人の残される市井。
これから後藤に説明しなきゃならないことを思うと、なんだか泣けてくる。
「怒ってるかな……怒ってるよなぁ………」
あの時、安倍と遊んだ、とは言った。
だけどアイスを食べさせてもらったなんてもちろん言ってなんかない。
交際否定は信じてくれても、その事実だけはどうしても変えられなかった。
先生、バナナはおやつに入りますか。
先生、これって浮気になるんですか。
答えてくれる先生なんか、今ここにはいない。
市井にとっての先生は今、控え室でその雑誌を読んでいた。
- 268 名前:ダメ経営者 投稿日:2002年12月20日(金)10時43分22秒
- (;゜皿 ゜)<ゴ、ゴメン、メンテナンスガ…
すすすすいません。気付くと20日経ってました(大汗
もう、アフォです。殴ってください・゚・(ノД`)・゚・。
>DKさん
チェックしてもらっているのに、また半放置みたいになってしまい、申し訳ないです。
自分には、文才なんかないです。もっといい人の文才を欲しがった方が、いいですよ……・゚・(ノД`)・゚・。
>261さん
保存ありがとうございます。助かってます。
- 269 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月20日(金)21時22分01秒
- この小説が更新されてたときの嬉しさといったら!
いつまでも待ってるんで。
- 270 名前:DK 投稿日:2002年12月20日(金)21時29分51秒
- もしかして次回は修羅場?
期待してマターリ待っています。
頑張って下さい。
- 271 名前:ぐれいす 投稿日:2002年12月28日(土)15時32分20秒
- うわ〜い修羅場だ!
- 272 名前:和尚 投稿日:2002年12月29日(日)22時20分22秒
- 何か先生の頭から角が生えているのが見えるんですが・・・・
- 273 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月04日(土)23時43分34秒
- (0^〜^0)<しゅ・ら・ば!しゅ・ら・ば!
- 274 名前:CHAPTER63 投稿日:2003年01月05日(日)11時06分38秒
- ――ビリッ
ページを見開いて読み、つい力が入ってしまっていたからか。
気持ちいい音をして、ページが破かれてしまった。
「……あ、やばい」
と言いながらも、少しも慌てた様子なく、破れた箇所を元に戻す。
けれど豪快に破かれていて、破れたところを中心にページ全体に皺が寄ってしまっていて。
後藤が収録前に待機している控え室にさりげなく置いていた保田が買ってきた雑誌。
読めないこともないが、修復するのは不可能そうだった。
「…どうしよう」
買って来ようか素直に謝ろうか、どっちにしよう。
そう思っていた時に保田が控え室に戻ってきたので、素直に謝って買ってくることに決めた。
「ごっちん、後20分で出番だって」
「うん……ね、圭ちゃん」
「?」
「…雑誌、破っちゃった。ごめん」
「あっ、見たの?」
と、雑誌を破られたというのに、心持ち嬉しそうな顔。
一体なんでそんな顔するんだろうと疑いを持ったが、先にやらなきゃ言わなきゃいけないこと。
「弁償するよ。どこで売ってた?」
財布を持って立ち上がり、雑誌名をもう一度確認する。
雑誌名は――センチメンタル♂向き。
- 275 名前:CHAPTER63 投稿日:2003年01月05日(日)11時07分21秒
- 「いや、いいよいいよ。週刊誌だから2、300円だし」
「でも…」
「もう何年以上も一緒にいるマネージャーに気なんて使わなくていいの」
「…………」
「それより、見た?――なっちと市井くんが付き合ってたとはね」
我ながら白々しい演技だ。絶対女優になれないなと保田は心の中で笑う。
そして、気付かれないように唾を飲み込んで、後藤の言葉を待つ。
「あー、でもウソでしょ? これって」
「えっ…」
しかし、保田が想像した後藤とはまったく違い、さも当然と言い放つ。
何処から来るんだ、この自信は。
それほど市井を信頼しているっていうんだろうか。
保田は、予想外だったその言葉に、沸き上がる怒りを抑えきれない。
「…ウソかどうかなんて、どうやって分かるのよ? ホントに付き合ってるのかもしれないじゃない」
「……でも、ウソだよ」
「どうして。なんでそんな断定出来るの?」
そんなの付き合ってるからだよ、と後藤が言えないのを保田は一番分かっている。
過去も今も、「恋愛禁止」と言い続けているのだ。
そんな保田に、後藤は言えない。
- 276 名前:CHAPTER63 投稿日:2003年01月05日(日)11時07分58秒
- 「…い、いちーちゃんに彼女いるの、あたし知ってるもん。だから、違うよ」
「へぇ、あの子彼女いたのね。でも、彼女いても二股っていうのがあるわよ」
「そんなの、いちーちゃんしないもん!」
「なんでアンタにそこまで分かるのよ。アンタが思ってるより、あの子ひどい子かもしれないじゃん」
「…………圭ちゃんは、いちーちゃんが嫌いなんだね」
「……あたしは、アンタが好きなだけよ」
妹のように面倒を見てきた後藤。弟しかいない保田には、妹は可愛かった。
だから、この世界で素晴らしい才能を持っている後藤には、頑張って欲しい。この世界で生きて欲しい。
それには、市井が邪魔なのだ。
市井のためなら全部捨ててしまいそうな後藤が、心配なのだ。
市井と一緒にいるよりも、こうして自分と一緒にいてもっともっと上を目指した方が絶対に幸せだ、保田はそう思う
。
そのためにはどうしても、市井が邪魔なんだ。
「…しっかし、白昼堂々とやるわねぇ」
「………ちょっとトイレ行ってくる」
「…行ってらっしゃい。20分までには戻ってきてよ」
「分かってるよ!」
……まったく。
嫌われ役も、つらいところだ。
だけどそれも全部、後藤のため。
- 277 名前:CHAPTER63 投稿日:2003年01月05日(日)11時08分31秒
- ――
ハァハァと息を整えて、トイレの中に誰もいないかキチンと確認して。
時間を気にしながらも、携帯をポケットから取り出す。
保田がいる前じゃ、かけれない。
かといって、家に帰って落ち着いてからなんて、遅すぎる。
信じてはいるけれど、保田の一言一言に気になる後藤がいた。
カチカチと操作して、名前を呼び出す。
実はもう呼び出さなくても番号を暗記してしまっているのだが、呼び出した方が早いと思いそうした。
そして、かけてみる。
………だけど、出ない。
「おかしいな…」
呟いて、一度切る。
すると、切ったと同時に後藤の着メロがなる。
――市井だ。
どうやら、向こうも同時刻にかけていたらしい。
- 278 名前:CHAPTER63 投稿日:2003年01月05日(日)11時09分05秒
- 「もしもしっ、いちーちゃん?」
―「おわっ、早いね出るの」―
「だってこっちからもかけようとしてたもん」
―「あ、そうなんだ……」―
言って、黙る。
どうやら後藤からかける事について思い当たる節があるのだろう。
後藤が尋ねる前に、市井が言う。
―「…あれ、ウソだから」―
「…………そうだよね、ウソだよね」
―「うん、ウソだよ」―
「…でも、手ぇ繋いでるのとか、あーんってしてもらってるのは、ウソじゃないよね?」
―「あ、いやそれは……不可抗力というか何と言うか…」―
モゴモゴ口篭もる市井。
言いたい事があるならはっきり言えばいいのに――、そんな風に後藤は思わない。
後藤は、やっぱり信じていた。
そして市井の声を聴いて、この気持ちをもう一度確信する。
保田の言葉なんか、信じない。
「とにかくぅ、二股の心配はないって事は分かったけど、いちーちゃんはタラシの傾向があるねぇ」
―「はあっ!? なんだよそれっ、なんでタラシなんだよっ!」―
「ごとー一筋だったら、他の人に食べさせてもらわないもん」
―「ひ、一筋だよ、後藤……」―
「えー、聴こえなーい」
―「だ、だから後藤一筋………」―
「絶対? 命懸ける?」
―「懸けるよ…」―
「じゃあ今度、あたしとあの記事に載ってたことしようね」
- 279 名前:CHAPTER63 投稿日:2003年01月05日(日)11時09分45秒
- 電話の向こうで、大きな動揺の声が聴こえる。
だけどいくら反対したって反抗したって、許してやんない。
これくらいのワガママは、聞いてもらわなくちゃ。
「なっちとはしたじゃん」
―「い、いやでも、あれからいちーは…俺はもう二度としないと誓ったワケであって」―
「そんなの、あたし知んないもーん」
―「ご、ごとぉっ」―
電話の向こうで慌ててる声を聴き笑ってる内に、「後藤!」と保田に声をかけられる。
話している間に、もう出番が来たようだ。
まだ慌ててる市井に出番が来たからと言って、前のお返しと言わんばかりに電話を切ってやる。
きっと切られた後のいちーちゃん悔しがってるだろうなぁ、等と想像して、呼ばれた声の方に振り向く。
――振り向いて見えた保田の顔は、なぜか自分を冷たく睨んでいた。
その理由を、出番までに戻って来なかったからと納得した後藤は本気で謝って、
携帯を保田に預けてスタジオに走ってく。
そして預けた携帯を握り締め、保田は憎らしそうに後藤と電話していた相手の名前を見ていた。
――保田の作戦は、意味なんてなかったのだ。
保田の作戦は、後藤達にとっては甘かったのだ。保田の考えは、甘かったのだ。
- 280 名前:ダメ経営者 投稿日:2003年01月05日(日)11時11分40秒
- ( ‘д‘)<あけおめ!ことよろ! 今日はあたしが更新のお知らせや!
やはし、ボンヲタなので…。
新年明けましておめでとうございます。もう正月は過ぎてしまいましたが…
目指せ、少年少女、年内完結!(爆
う、嘘です、12月まで待たせません。どうか、終了まで数少ない読者さまお付き合いくださいませ…
>269
そのお言葉、本当に嬉しいです。
当初予定していた更新ペースよりも遅くなっていますが、お付き合い頂けたら幸いです。
>DKさん
大丈夫です、こんなの修羅場と言いません(w
自分としては修羅場大嫌いなんですが、少年少女はこれから修羅場が多くなってく予感です・゚・(ノД`)・゚・。
>ぐれいすさん
修羅場に期待しないでください!(w
修羅場の何が大変か。収集がつかなくなるんです…・゚・(ノД`)・゚・。
>和尚さん
( ´ Д `)<角が生えてるのは圭ちゃんだよ
>273さん
(0^〜^0)もかよ!(w
まあ、(0^〜^0)は人事だからね…(w
えー、修羅場期待してた方、すいませんでした。
- 281 名前:ちに 投稿日:2003年01月08日(水)12時09分39秒
- つじのひつじ年れす!今年も付き合わさせていたらきます!
ごっちんの想いの深さ、市井ちゃんとのやり取り…。もう、すんげぇイイ展開でした!
さて圭ちゃんの次なる作戦は…。
- 282 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月26日(日)15時17分51秒
- 保全
- 283 名前:CHAPTER64 投稿日:2003年02月07日(金)12時05分49秒
- 1日の仕事が終わって、携帯を取り出し、何処かへ電話をかける保田。
その顔は、怒っていた。
そして、電話で待ち合わせた喫茶店。
保田の怒っている顔とは反対に、笑顔でやってくる矢口真里。
「お〜す、圭ちゃん。ね、どうだった? どうだった? 完璧だったでしょ!」
あの写真、あのアングル。
てっきり褒められるんだとばかり思っていた矢口は、自分のカメラマンとしての腕を自分で褒めまくる。
「あの決定的瞬間を撮った時は、もう感動したよ。
……あ、そっちはどうだった? 後藤真希、怒って市井くんと別れちゃった?」
「………ワケな…でしょ…」
「は? え、なんて?」
「別れるワケないでしょ!!!」
ガシャン!と手元に置かれたコーヒーカップが割れる。
慌てて駆け寄りかけらを集め始めた店員も無視して、保田は怒る。
「別れるどころか、余計絆強くしちゃったじゃない! 何やってんのよ!!!」
「な、何やってんのよって……し、知らないよ、んなの!」
こっちはスキャンダルを撮れっていうから、撮っただけなのに。
結果が違ったからといって、矢口が怒られるのは筋違いだ。
- 284 名前:CHAPTER64 投稿日:2003年02月07日(金)12時06分25秒
- 「…そんな文句あんなら、探偵か何かに頼んで、調べてもらえばいいじゃん!
んなの、付き合えきれないっつうの、ヤグチは!!!」
「なっ……アンタ、恨みあるんじゃないの!? お金欲しいんじゃないの!?!」
「……この前はアンタに洗脳されて、つい乗っちゃったけど、恨みはもうないよ。
そりゃ、金は欲しいけど………圭ちゃんに関わる方が、なんか怖いよ」
「……なんですって?」
「………なんかさ、後藤真希に愛とか情とかあんのかどうか知らないけどさ。……エゴだよ、それ。
後藤真希の気持ち、考えてんの?」
「考えてるから、こうやって……」
「――じゃあ、後藤真希への愛の形が、歪んでんだ」
「っ!」
ガラスが割れる音がしたと思えば、今度は頬が叩かれた音。
矢口は頬を押さえて保田を睨みながらも、頑張って言った。
「……とにかく、もう悪いけど、圭ちゃんとは仕事出来ないから」
「………バラすわよ」
「え…」
「アンタが、後藤真希に負けた、敗北者だって、バラすわよ!!!」
「っ……」
- 285 名前:CHAPTER64 投稿日:2003年02月07日(金)12時07分28秒
- そう言われて気付く。…そうだ、彼女にはこの手があったのだ。
じゃなきゃ矢口だって、OKしなかった。
だけど、そろそろ過去と向き合わなければいけないのかもしれない。
笑いが耐えない生活を夢見る矢口に、未来になって笑いが起きる過去を受け止めることも必要なのかもしれない。
「……い、言ったらいいじゃん。言えばいいじゃん。
あの時後藤真希に負けて号泣してた矢口真里って奴は、
今じゃアイドル追っかけてスキャンダル狙ってるカメラマンになってるんだ、って」
「…言われたくないんじゃないの?」
「それはっ……」
「同情した目で見られるよ。あの時落ちた子が……今じゃそうなってるんだって」
「それはっ……」
さっき決意したばかりなのに、またどんどんと、保田のペースにハマっていく。
このままじゃ、ズルズル戻る一方だ。
矢口の勘は、戻っちゃいけないと言っている。矢口の勘がいいのは神様の保証つき。
なのに、断われない。
目だけでも逸らそうと、斜め下の方向に顔を向ける。そして、そこに見えたのは、カメラ。
そのまままた引き戻されそうになってる矢口を助けてくれたのは、
オーディションに落ちた時からずっと一緒にいたカメラだった――。
- 286 名前:CHAPTER64 投稿日:2003年02月07日(金)12時08分16秒
- (……そうだよね………ヤグチには、キミがいるもんね……)
4人座れる椅子に、向かいあって座っている保田と矢口。
その矢口の横に、ちょこんとカバーを着せられ、座っているカメラくん。
「言えばいいじゃん……別に、ヤグチはそれでどう思われても、もう関係ない。
ヤグチは、芸能界よりももっと、自分に合う仕事見つけたんだ。パートナー、見つけたもん。
やりがいだって、感じてる。誇りだって持ってるもん!!!」
負けた時の屈辱的な悔しさのプライドより、今の仕事に対する愛情のプライドを見せた矢口。
そう思わせてくれたのも、いつも一緒にいた、悲しい時も嬉しい時も決定瞬間を撮った時も一緒にいたパートナーのカメラ。
――“自称”名キャメラマンも、もう“自称”を外していいのかもしれない。
「…とにかく、ヤグチはもう降ろさせてもらうから。
…あっ、で、でも100万は返さないからね! もらったもん勝ちってことで!!!」
ここだけは絶対譲れないと思って言ったのだが、保田は何も言わず下を向いたまま。
矢口に断わられたことがショックだったのか、話を聞いていない。
これ幸いとばかりに、
「じゃ、じゃあ帰るから! じ、自分から呼んだんだから支払いヨロシクね!!!」
とすたこらさっさと逃げて行く。
そして、喫茶店を出て一言。
「こ、恐かったぁ〜……」
念の為、携帯番号も変えておこう。
矢口はあの場から離れて、心底安心していた。
- 287 名前:CHAPTER64 投稿日:2003年02月07日(金)12時08分47秒
- 一方、矢口に断わられ、置いていかれた保田は、まだ下を向いていた。
泣いているんだろうか、店員がこっそりと巡回するフリして確かめると――違う。
保田は、笑っていた。
「……そっか、探偵か。そうだよ、最初から探偵に頼めばよかったんだ……」
後藤への歪んだ愛の形は、市井達にとっては最悪の形になる。
- 288 名前:ダメ経営者 投稿日:2003年02月07日(金)12時10分15秒
- (;‘д‘)<本当に、申し訳(土下座
謝っても謝っても足らないですよね…。
のろすぎる更新で、本当にすいません・゚・(ノД`)・゚・。
>ちにさん
今年も、どうかよろしくお願いします。
今年で、少年少女終わらせたいのですが……どうでしょう(汗
ヤススの次なる作戦は、書いてる自分でも嫌になりました(w
>282さん
保存、ありがとうございます。
保存しなきゃいけないほど、のろい更新で本当にすいません。。
- 289 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月07日(金)14時19分49秒
- ヤ、ヤッスーこえぇ!!
- 290 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月07日(金)14時40分15秒
- 愛情ってよりはもう執着ですな。
続きに期待!
- 291 名前:ぐれいす 投稿日:2003年02月07日(金)18時58分23秒
- か、加護ちゃんが土下座なんて!!
こっちは土下寝をするんで元気出して!!
- 292 名前:市真 投稿日:2003年02月08日(土)00時38分22秒
- 初めましてデス。
名キャメラマン矢口さんの次は、、、たっ、探偵っすか・・・(ニガ
(;0^〜^)<保田さぁ〜ん、怖いっすよぉ(汗
(;〜^◇^)<圭ちゃんコワイよ・・・(汗
- 293 名前:和尚 投稿日:2003年02月08日(土)00時54分41秒
- 更新ありがとうございました。
一難去ってまた一難・・・・
保田さんメチャメチャ怖いッス!!
そんな保田さんに自分の主張を言った矢口さん立派!!
- 294 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月18日(火)17時42分04秒
- 関係ないんですけど、ダメさんのHPに逝けない…。
どうかしましたか?
- 295 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月19日(水)22時18分36秒
- >>294さんと同じく自分もダメさんのHPに逝けません…
どうなさったんでしょう?心配です
- 296 名前:CHAPTER65 投稿日:2003年02月20日(木)13時38分53秒
- 道を歩いていて、感じる違和感。
背中に突き刺さるような、視線。
市井はもう、うんざりしていた。
安倍との記事が出たことで、徹底的にマークされ始めた市井。
もちろん、これまで色んな子とウワサになっている吉澤も一緒に。
人気がどんどん上がっていくにつれ、市井だけじゃなく吉澤も気が滅入り始めていた。
忙しくなれば、それだけ自由な時間がない。
遊びに行く時間も恋人に逢う時間もなければ、休憩する時間もないくらい。
2人は今日も昨日も明日も多忙だった。
「疲れたよぉ〜…」
夜ご飯に用意されたロケ弁も食べず、床に寝転がる吉澤。
けれどそう愚痴ったところで、今日の仕事はまだ終わらない。
- 297 名前:CHAPTER65 投稿日:2003年02月20日(木)13時39分30秒
- 「梨華ちゃんも忙しいみたいで、メール返ってくるの3時間後とか…ありえない」
「あり得てるじゃんか」
「揚げ足とらないでくれますかっ?」
「はいはい」
苛々してる吉澤を適当にあしらいながら、弁当に入っていた具のからあげをしっかりと頬張る。
まだある仕事のため、少しでも何か腹に入れておかなければと市井は考えているのだ。
本当は、あまり食欲なんかないのだけれど。
「市井さんはごっちんに逢いたくないんですかぁ?」
全然文句言わないけど。
だけれどそれは、言わないだけで。本当は、めちゃくちゃ文句言いたい。
「…だって、しょーがないじゃんか。向こうは天下の後藤真希だし…」
「…まあ、そうですよね」
「その代わり、めっちゃマメにメールはくるけどね」
多分向こうも市井と同じ気持ちなんだろう。
逢えない分、電話やメールで、必死で寂しさを埋めている。
「へぇ、どんなメールですか?」
「なっ、なんでお前に言わなきゃいけないんだよっ」
「いいじゃないですか、減るもんじゃないし」
「じゃあお前の見せろよ!」
そんな風にじゃれて時間を過ごす2人に、中澤からの終了の一言。
「そんじゃ、そろそろスタンバイやから〜」
- 298 名前:CHAPTER65 投稿日:2003年02月20日(木)13時40分07秒
- ――
結局、仕事が終わったのが午後10時。
コンビニで買い物をしたかった市井は、車に吉澤を残し先に帰ってもらい、寮の帰り道にあるコンビニに寄っていた。
そのコンビニで、雑誌やお菓子を買い、レジに向かう。
そして買った袋を提げて、帰り道をのったりと歩くのだけど――。
(…………なんか。なんかなぁ……)
違和感。
視線。
うんざり。
カメラマンもしつこい奴だ。
安倍と付き合っているかどうかなんて、そんなの張り込んでたらもう分かっているハズなのに。
それとも、他に違う女と逢おうとしているのを狙っているのか。
だが残念だが、こんなに密着されているのに他の女と逢うなんてこと、それこそあり得ない。
じゃあ、何を狙っているんだろう?
後ろを確認すると、見えない人影。
けれど、絶対にいる人の気配。
もしかしたら吉澤もかもしれないとこの前聞いたのだが、吉澤は覚えがないと言った。
元来、マイペースで元々そんなことが気にならない吉澤だからかもしれない。
けれど、この世界に入って、散々写真を撮られているので、少しくらいは敏感なハズだ。
- 299 名前:CHAPTER65 投稿日:2003年02月20日(木)13時40分53秒
- そんな吉澤の言葉が本当だとすると、狙われているのは市井だけとなる。
いくら市井が神経質で気にしすぎだ、と注意されても、どうしても気になっていて。
もう、うんざりも通り越して、怒りが湧いてきた。
誰だか知らないけどさ。
何が目的か知らないけどさ。
もういいかげんにしてほしい。
一本道で路地も何もない所に出て隠れる場所を与えずに、一度止まってみる。
そして、思い切って振り返って、来た道を走って戻ってみるのだけれど。
「……いない」
もしかしたらつけられている、なんていうのは想像だったのか。
それとも気付かれている、と相手も感付いたのか。
市井の犯人当ては、失敗に終わる。
- 300 名前:CHAPTER65 投稿日:2003年02月20日(木)13時41分46秒
- ――
「…どうも、感付き始めているみたいです」
「……そう」
事務所に通され、口を開いたと思ったらそんなことを言われた。
どうやらあの子は、そういうことに関しては鈍くないらしい。そして何より、警戒心が強い。
「どうします? とりあえず追跡みたいなことなどしましたが、そんなに気になる点はなかったです」
「じゃあ、周辺に聞いてみてよ」
「周辺といいましても、情報があまりにもないです」
「それを調べるのがアンタ達じゃない!」
「…はあ、まあそうなんですが…」
あまり大きな事務所に頼むより、ひっそりとした所に頼んだ自分が悪かった。
ひっそりとしたその事務所は、本当に経営者もひっそりと大人しくて。
けれど金を払った以上、とりあえずは仕事をしてもらう。
「っていうか、プロフィールも名前だけっていうのが妙なのよ。
専属スタイリストやメイクさん、それにつんくさんや裕ちゃんの団結力。
よく考えれば、あの子達はおかしいところだらけなの」
「はあ……」
「何か、裏がありそうじゃない?」
「そうですかねぇ…」
「もう、しっかりしなさいよ!」
これじゃまるで、自分が探偵みたいじゃないか。
- 301 名前:CHAPTER65 投稿日:2003年02月20日(木)13時42分40秒
- 「とにかく、もっと調べてよ。必要だったらお金は払うから」
「はあ……」
「じゃ、あたし忙しいから」
「あ、わざわざ来てもらってすいません。……でも」
「…何よ?」
「――本当に、いいんですか?」
こんなこと、して。
こっちが言えることじゃないんだけれど。
「仮にも、同じ事務所のタレントなんでしょう。
そこにいるマネージャーが事務所のタレントを調べてるなんて知ったら、あなたは――」
「それもこれも、後藤のためよ」
何でもする。何でもしてあげたい。
可愛い妹を、守ってやりたい。
保田の後藤に対する愛は、後藤のことを何一つ考えちゃいない、一方的な愛だった。
- 302 名前:ダメ経営者 投稿日:2003年02月20日(木)13時55分49秒
- 川VoV从<更新しちゃったよ
えっと、お知らせなんですが、>>294-295さんの言う通り、HP逝けません。
それどころか、HP消えてしまいました。
心配やご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした。
大丈夫です、ちゃんと生きてます。
ジオの方に移転のお知らせをする前に消してしまったので、こちらで新しいサイトのお知らせをさせて頂きたいと思います。
ttp://members.tripod.co.jp/damekeieisha/keikoku.html
申し訳ありませんが、今後、HPはこちらの方で活動させて頂きます。
HPの方は、藤松ばかりです。正直言ってキショいです。
少年少女共々、どうかよろしくお願い致します…。
>289さん
( `.∀´)<誰が怖いのよ!
>290さん
ヤッスー、どこかで少し狂ってしまったようです。
遅い続きですが、今後とも宜しくお願いします。
>ぐれいすさん
許してもらえるなら、土下座だけじゃなく靴も磨かせてもら(ry
土下寝、笑わせてもらいました(w
>市真さん
初めまして。レスありがとうございます。
ヤッスー、怖いです…おいらも怖い…・゚・(ノД`)・゚・。
こんなに話を大きくするつもりなかったのに、探偵まで出て来て大変です…。
>和尚さん
一難去って一難どころかもっともっと災難が訪れそうです。あぁ、つらい・゚・(ノД`)・゚・。
矢口、頑張ってます。
>>294-295さん
心配をおかけしました。なんとか生存しております。
多分、↑のアドレスから逝けると思うのですが…
- 303 名前:294 投稿日:2003年02月22日(土)12時40分13秒
- よかった。まだ生きてて。
逝けましたよ、ダメさん。
それにしても保田さん、恐ろしい。
愛情の形がこんなにも…。
わがまま言って申し訳ないですが、さやまりもよろしくお願いします。
ダメさんの書く小説のさやまりヲタなんで。
- 304 名前:ちに 投稿日:2003年02月26日(水)10時24分06秒
- イイ!297のいちよしのやりとり、めっちゃイイ!
こーゆーいちよし最高!
そしてやすすはついに……!楽しみです!
- 305 名前:Blurry 投稿日:2003年03月07日(金)11時30分24秒
- え〜、めっちゃヒサブリに来ました。
正直、半年読んでませんでした・・・ゴメンナサイゴメンナサイ
しかし帰って来るべき場所はやはりここでした。
久しぶりに文章読んでワクワク、続きが早く読みたい!
という気持ちになりました。これからも頑張って!
- 306 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月27日(木)21時19分58秒
- 保全だよ
- 307 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月07日(月)15時03分54秒
- ガンバレ、ガンバレ
- 308 名前:: 名無し読者 投稿日:2003年04月25日(金)03時43分35秒
- 一応保全だよ
- 309 名前:ちに 投稿日:2003年05月12日(月)18時37分54秒
- ( `・ゝ´)<保全してみるわ。
- 310 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月12日(木)01時00分18秒
- 保全
- 311 名前:名無しミトコンドリア 投稿日:2003年06月15日(日)13時53分12秒
- 今日すべて読み終えました。
本気で良いです。リアルすぎて(まぁ市井と吉澤が、男子でデビューって所ですでに現実ではないんですけどw)
読んでる最中ハラハラドキドキしっぱなしです。
自分の中のいちごま、この作品が一番近いかもしれません。
ラブラブすぎず、ちょっと控えめな市井さんがツボです。
作者さん応援しております。更新頑張って下さい!!
- 312 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月15日(日)13時55分12秒
- まだ更新なしかな。もう放置かな…(泣)
いつまでも楽しみに待ってますよ!
- 313 名前:市真 投稿日:2003年07月13日(日)21時19分02秒
- 覗きに来ました。どうなってくのかなー(笑
楽しみに待ってます(0^〜^)OK牧場!?
矢口さんが良い感じです。(〜^◇^)<名キャメラマンだかンね。もち
保田さんが怖いっす・・・。ヽ^∀^ノウッ、ウム。(汗
( ´ Д`)<んぁ。こうしんきたいしてるよぉー
- 314 名前:ちに 投稿日:2003年07月28日(月)17時13分15秒
- 保・全・物・語
- 315 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月03日(日)11時21分46秒
- ほ、放置ですか・・・?
ずっと待ってますよ〜。
- 316 名前:保 投稿日:2003年08月26日(火)09時37分44秒
- 全
- 317 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)00時55分24秒
- 作者さん待ってますよぅ・・・
- 318 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)01時00分05秒
- 更新キタと思って喜んだのに_| ̄|○
- 319 名前:CHAPTER66 投稿日:2003/09/12(金) 23:16
- 「あ〜や〜っぺ〜〜〜」
「……暑苦しいなぁ」
ベターッとへばりついて、なんとも言えない声で名前を呼ぶ犬。
周りにはもうその犬の飼い主だとされている石黒は、夏も過ぎたというのに、そんなことを言ってみた。
けれど、暑苦しいと言って素直にどいてくれる、可愛い犬ではない。
「どっか行こどっか行こどっか行こ」
「……うるさいなぁ」
こちとら、バリバリに仕事をしているんだけど。
背中にへばりついている犬こと矢口真里は、ちっとも聞いてはくれないみたい。
彼女がこうしてまとわりつくのは珍しい事じゃないのだが、最近になって多くなった。
どうしてかと聞いた所、最近何やら怖いことがあったみたいで。
怖がりで寂しがり屋の矢口は、こうしてスクープも探さずにまとわりついているのだ。
「もぉ〜。ちょっとあたし今、本当に悪いんだけど相手してる暇ないのよ。
さっきも言った通り、この原稿5時までに仕上げなきゃいけないの」
「…じゃあヤグチも手伝う」
「…遠慮しとく」
前回承諾して、目を離したスキに原稿が意味の分からない絵ばかり描かれていたことがあった。
それ以来、大事な大事な原稿に矢口は触らせてもらっていない。
- 320 名前:CHAPTER66 投稿日:2003/09/12(金) 23:16
- 「…外行って遊んできな?」
「……うぅ、だって圭ちゃんがどっかに潜んでそうで、怖いんだも〜〜ん」
ひぇーんと泣きマネ。
圭ちゃんっていうのは、前ここに電話があった女の人と矢口が教えてくれた。
そしてもっと矢口に話を聞いていると、電話で会う事をOKし、そこで頼まれた依頼もOKしたのはいいが、
どうやら依頼人は性格に問題があるらしく、怖くなって断わったらしい。
だけどもその断わったことで何かされそうで怖いのか、矢口は何処かへ行く時、石黒を誘う。
それでもどうしても石黒が行けない時は、渋々友達とや1人で遊びに行くのだけど。
「…でもいくらその人が怖くても、もうそんなこと忘れてるって」
「い〜や、あれは根に持つ顔だね。絶対根に持ってるね」
「でも矢口、今だって生きてんじゃない」
「……まあ、そうだけど」
って、当たり前だ。
殺したりなんかしたら、それこそ犯罪なんだから。
「…時に矢口」
「はい?」
いきなりの話題変え。
「なっちと市井くんの写真あったじゃない?……あの記事載せた雑誌の売上げ、いつもの売上げよりかなり多いんだって」
「へ〜」
1人は純粋な天使が売りの、固定ヲタがガッチリついてる安倍なつみ。
もう1人は、只今人気爆発の市井。
その2人の熱愛とくれば、世間だって騒ぐワケだ。
- 321 名前:CHAPTER66 投稿日:2003/09/12(金) 23:17
- そして長い付き合いの石黒と矢口。
石黒が次に言う言葉は、矢口にはもう分かっている。
「もう一回、2人の写真撮ってくれないか――って?」
「当たりはあとはあと 編集長からも頼むつもりだったんだけど、編集長風邪で今寝込んでるから」
「でも、せっかく期待してくれて悪いけど……」
今後、あの2人のツーショットは撮れないと思う。
長年アイドルを追っかけている矢口には、それも分かっていた。
「え〜、なんでよぉ。結構この2人のカップル、好印象の人も多いらしいし」
「いやぁ…周りが好印象でも、本人達がどうかは…」
それに矢口は、本物のカップルを知っている。
安倍ではない、市井の彼女は後藤。
「とにかく、ダメ元でいいから張ってみてよ。ギャラ出すから」
「え〜…でもダメ元でしょ? 可能性ないのに女密着なんかしたくないよ」
「じゃあ、矢口は市井の方でいいよ。なっちは別の子に張ってもらうから」
「マジで?」
美少年を見張るだけで入る金。矢口にとっては、魅力十分のお仕事。
保田の仕返しのことなど忘れ、その日その場の内に即OKを出した――。
- 322 名前:CHAPTER66 投稿日:2003/09/12(金) 23:18
-
――
その日の夜。
早速、尾行して張り込むことにした、名キャメラマン。
けれど喋るのが、動き回るのが大好きな彼女にとって、大人しく黙っているこの仕事は非常につらかった。
それでも金のために、一生懸命頑張る。
「でもなぁ……」
――ガード、キツすぎるんだよ。
不満がつい口に出る。
安倍との記事が表に出たことで、事務所も本人も更にガードがキツくなってしまっていた。
それにより、安倍との写真を撮るどころか、他の写真だって撮れない状態。
でも人間、どこかでそんな集中力が途切れることも、少なくない。
後ろから追っていた、市井達を乗せたマネージャーが運転する車。
その車が、急に曲がってコンビニの前に止まる。そして1人降りてくる、人。
その人を置いて去る車。
――人は、市井だった。
こんな時に問題になった市井を1人で帰らすなんて、気を抜いてる証拠。
そんな時が、矢口達にとっては大チャンスなのだ。
矢口も気付かれないようにコンビニの中へと入り、様子を窺う。
中に入った市井は特に奇行な雰囲気もなく、適当な雑誌やお菓子を買い、何事もなく外へ出て歩き出す。
矢口もその後ろを一定の距離を空けてついていっていたのだが、あるおかしな事に気付く。
- 323 名前:CHAPTER66 投稿日:2003/09/12(金) 23:19
- 矢口の何メートルかほど前に、同業者だろうか、同じように市井をつけているような雰囲気が。
だけど矢口のように、カメラを隠し持っている雰囲気はない。
じゃあただの市井の追っかけ――? しかし市井と同性の見た目30過ぎのオッサンをそう決め付けるのには、かなり馬鹿な気がした。
考えられるのは、矢口の頭では2つくらい。
1つは、それこそ奇行なイカレ親父。
もう1つは――限りなく矢口と近い職業者。
アイドルを調べている、探偵――そういったところだろうか。
物騒な世の中。金さえ支払えばアイドルを調べ上げてくれる探偵もいるのかもしれない。
そんなのアイドルの気持ちとなっては、気持ち悪い、それは当然のこと。
しかし矢口の頭には、ただアイドルを調べている探偵だけには見えなかった。
神経質になっているのか、何度も何度も後ろを向いて誰かがいるのかいないのか確認する市井。
それをいち早く感知し、隠れる人。
姿を見られず隠れるなんて、普通の人間にはなかなか難しい所。
よっぽど反射神経がいい人、勘がいい人、そして、気付かれないように隠れるのに慣れている人でなければ、無理な話。
矢口はもうその人を、探偵と断定していた。
そして、考える。
どうして市井に、探偵がついているのか。
……矢口は、思い出していた。保田の怖さを。
そして、自分があの時言った言葉を――。
――…そんな文句あんなら、探偵か何かに頼んで、調べてもらえばいいじゃん!
んなの、付き合えきれないっつうの、ヤグチは!!!――
「………オイオイ、ヤグチのせいかよ………」
こんな形でお返しされるとは、さすがの矢口も思ってもみなかった。
- 324 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/12(金) 23:20
- 本当に長い間申し訳ありません・゚・(ノД`)・゚・
もう、謝るしかないです・゚・(ノД`)・゚・
感想をくれた方、放置している間保全をしてくれた方、本当に本当に、ありがとうございます。
- 325 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/13(土) 00:39
- ダメ経営者さん!!
最近、みきあやばかりだから諦めてました!!
これからも待ってていいよね?
- 326 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/13(土) 00:50
- 待ってました〜!
続き期待☆
- 327 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/13(土) 02:02
- おいおい、またageてるやついるのかよ…。
と思って見てみたら。
こっ、更新来てたーーーーーー!!
ageた人に感謝ですよ(w
- 328 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/13(土) 09:30
- 諦めないでよかった……と言いたいところですが、正直、諦めてました。
なので、再開が本当に嬉しいです。
いちごま・いしよしも見捨てられてなかったんですね…
ここの二組は大好きなので、これからも頑張ってください。
あ、保田も救われんことを。
- 329 名前:読者 投稿日:2003/09/13(土) 16:35
-
もう、みきあやしか書いてくれないのかと思ってました。
ありがとーございます!
このお話大好きなので、これからも楽しみに待っています。
- 330 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/13(土) 18:32
- ――CHAPTER67
「お疲れ様でーす」
本当に疲れた声でそう言って、スタジオを後にする後藤。
そんな後藤をお迎えして、携帯やら上着やらを渡すマネージャー保田。
はたから見たら、とても仲のいい2人。
実際も仲だっていい。後藤も保田を信頼していた。
けれど最近、その保田の様子がおかしいのだ。
「ねえ圭ちゃん、今日ラーメン食べて帰ろうよ。お腹減ったぁ〜」
「あー……今日はちょっとね。それにアンタ夜中に物食べ過ぎたら太るっていつも言ってるじゃない」
「ぶ〜…」
「拗ねない拗ねない」
用意が出来たらさっさと衣装から着替えて用意した車に乗る、と保田のゲキが飛ぶ。
でも後藤は、不服そう。
「圭ちゃん最近付き合いわるーい」
「忙しいのよ、あたしは」
「あっ、彼氏でも出来た?」
いつもいつも後藤一番の保田だったため、その後藤の誘いを断わるなんてよっぽどだ。
そのよっぽどの理由、それは、彼氏が出来た、そうとしか思えない。
- 331 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/13(土) 18:33
- 「ばぁ〜か。何言ってんの」
けれどそれも、あっさりと否定される。
「じゃあなんなのさぁ〜」
「だから、忙しいんだって」
「なんで?」
「なんでって……そうね、ちょっと推理に凝ってるから?」
「……はあ?」
どうも最近、保田の頭の中には、ついていけない。
「とにかく、早く車に乗って。家帰ろう」
「ん〜……うん」
まだ納得出来ないものの、こっちは送ってもらう身。
渋々頷いて、表に止めてある車に乗り込む。
そうして進む車の中。
後藤が、ハッと思い出す。
「そうだっ、圭ちゃんごめん! 本屋寄ってくんない?」
- 332 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/13(土) 18:33
- 止めてもらったそこは、そこそこ大きな本屋さん。
「何買うのよ?」
「いやちょっと」
ゴソゴソと鞄の中を探って、財布があるのを確認してから、車の外へと出る。
そして、保田にご挨拶。
「今日はここでいいよ。お疲れ様です」
「えっ、でもこの本屋だったら電車乗らないと帰れないわよ?」
「タクシー拾うからいい。圭ちゃん、用あるんでしょ?
あたしゆっくり見て回りたいから、時間かかるし。ここでいいよ」
「………そう。ありがとね」
何か用事があるらしい保田を気遣い、笑顔を作る後藤。
保田は笑ってその頭を撫でて、お疲れ様、と言って去って行った。
「……よし」
車が見えなくなったのを確認して、サングラスもかけて。
もう一度財布を確認して、本屋の中へと入る。
保田を帰したのは、予定のある保田を気遣ったから。それも、もちろんある。
でも、一番の理由は、自分が買おうとしているもの――市井が載っている雑誌だからだ。
- 333 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/13(土) 18:34
- 恋人でもありファンでもある後藤は、市井が、いちよしが載っている雑誌の発売日はキチンとチェック。
出てるテレビも、こっそりと専用のビデオテープを使って、録ったりなんかしてる。
そして今日は、市井単独で表紙の雑誌の発売日だった。
「へっへ〜…あったあったはあとはあと」
探さなくても飛び込んできた、男前な表紙。
足早に駆けつけて、胸に抱きしめる。
表紙の顔を堪能した後は、ペラペラとページをめくり中の顔も堪能して、元の位置に戻す。
なんで戻したのか、それは、積まれている下から2、3番目の綺麗なものを取るためだ。
みんなが読みまくっている一番上の雑誌なんか、後藤は買わない。
これは綺麗だ、と思う雑誌を見比べて、一番綺麗な雑誌を手に取ると、レジへと向かう。
そしてお金を払って、心底嬉しそうにその本屋を後にした。
タクシーの中。胸には、さっき買った雑誌。
いつも無表情だと言われている彼女も、にこにこと笑っている。
「あ、そーだ。いちーちゃんに電話しよ」
電話して、雑誌の感想を言おう。
本当は声が聴きたいだけなんだけど、表向きに理由を作り、電話をかける。
すると、わずか2コールで電話に出てくれた。
- 334 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/13(土) 18:34
- 「もしもし」
―「もしー。もう終わったの?」―
「うん、そっちは?」
―「もう終わって、今寮にいるよ。寝ようとしたとこ」―
「あ、そうなんだぁ」
じゃあ事務所で降ろしてもらって、直接家に行けばよかった。
一瞬後悔をしたが、今更しても遅いので、諦める。
本当だったら今から行きたい勢いだったが、寝ようとしていると聞いたので、遠慮した。
「あ、そだ。っていうかね、雑誌買ったよー」
―「え、うっそ。マジで買ったの? やめろよぉ〜、恥ずかしい」―
「なぁ〜んで。カッコいーじゃんはあとはあと」
そうして楽しく喋っていると、時間が過ぎるのはとっても早いことに毎度毎度悲しくなる。
気付いたら車が止まっていて、タクシーの運転手が料金の支払いを要求している。
「んあ、いちーちゃんごめん。もう家着いちゃった。そろそろ切るね」
―「うん。おやすみ」―
「寝るとこ邪魔してごめんねぇ」
―「いいよ別に。後藤も夜更かししないでちゃんと寝なよ?」
「うんっ」
じゃあねおやすみ、言って、電話を切る。
切って慌てて、なかなか料金を支払わない後藤に対し怒っているタクシーの運転手に金を渡し、外に出る。
外は少し、肌寒くて。
さっさと中へ入ろうと玄関に向かったら、
「……つーか、帰ってくんのおせぇっつうの」
――見覚えのない、チビがいた。
>325さん
みきあやばかりで、本当に申し訳ありませんでした…。
これからも待っててくださると、嬉しいです。
>326さん
大変長らくお待たせしました・゚・(ノД`)・゚・
>327さん
ものすごく久々に更新しました…。
気付いてもらえてよかったです。有難うございます。
>328さん
も、もちろん、見捨ててませんよ!>いちごま・いしよし
これをなんとか完結させないと…。
保田さんも救いたいですね。
>329さん
みきあやも書きます。そして、少年少女も…。
長らくお待たせしました。これからも楽しみにして頂けると幸せです。
- 335 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/13(土) 18:35
- レス返しと本文を分けずに投稿してしまいました・゚・(ノД`)・゚・
見難くて申し訳…。
- 336 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/13(土) 19:32
- 更新お疲れさまです。
ごとーさん、健気で一途だ。やることがいちいち微笑ましい。心が洗われるようです。
保田さんも、後藤さんに対しては本当に優しいのになあ。その場面が温かいほどにせつない…。
それにしても、おお、動きますか?!
- 337 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/14(日) 11:24
- わーい!いちごまだ!
更新ありがとうございます!
- 338 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/14(日) 18:54
-
CHAPTER68
思い出してみる。過去を。
心当たりがありそうな人を。だけど、そんな人いない。
じゃあ、さっきの言葉は後藤に向けて言ったのじゃないかもしれない。
でもここには、後藤しかいない。
じゃあ、母や姉、弟の知り合いだろうか。そうしたら、こんな外にいないハズだ。
もしかして…もしかしちゃって、今まで行方不明だった実は家族の一員?――んなわきゃない。
「……ええと。誰ですか」
「ん?」
「いや、アナタです」
後ろ振り向かなくても、人の玄関の前に座ってる人は、目の前のチビしかいない。
「……っていうか、覚えてないのヤグチのこと」
「ヤグチ……?」
ヤグチ、やぐち、矢口。
該当者、探し中。該当者、探し中。該当者……あっ。
「矢口真里?」
「正解!」
いやしかし。正解したとこで何ももらえないどころか、後藤の記憶により矢口真里って……
「…あの、“センチメンタル♂向き”の矢口真里?」
「…いや、その矢口真里でもあるけどさ。もっと、“センチメンタル♂向き”のヤグチの前に…」
「………?」
「オーディション、一緒に受けてたじゃないかぁ!!!」
「………は…?」
- 339 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/14(日) 18:54
- オーディションって、何の話?
もう一度過去を思い出してみるが、オーディションに当てはまったのは、こうして芸能界に入ることとなったあのオーディションだけ。
つんくにスカウトされてオーディションを受けるまで他のなんか受けたこともなかった。
それにそのオーディションだって、1人で行った。
「……あたし、オーディション1人でしたよ」
「なっ…ちーがう! 一緒に受けてたってのは、一緒のオーディション受けてたってこと!!」
「え………でも」
――いたっけ?
そう口に出さなくても、勘のいい矢口には、お見通し。
普通ならこれでプライドはギッタンギッタンなんだけど、矢口はなんだか力が抜けてしまった。
「……なんだよ……こんな馬鹿にヤグチは負けたのかい」
あははははとお世辞にも楽しんでいるという笑いじゃない笑いが出て来る。
しかしそうして笑っていると、なんだか本当におもしろくなってきた。
「……もぉ、いい。ヤグチの負けだよ。そりゃ、馬鹿には天才も負けるわ」
馬鹿は、後藤。天才は矢口。矢口の頭の方式は、それで出来てる。
あんなに泣いて悔しくて恨んだ過去までも、馬鹿みたいに思えてくる。
これからは本当に、笑い話に出来るような気がした。
面と向かって後藤と再び逢ったことで、矢口はなんだか吹っ切れたのだ。
- 340 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/14(日) 18:54
- 「…でも、そんな人が、何の用ですか?」
言わせてもらえば、今も昔も敵だ。後藤は、ワケも分からず笑っているその人を置いて、話を戻す。
忘れていたにせよ、後藤が芸能界に入る前のライバルだった人。
そして現在に至っては根も歯もないことを書かれ、載せられ。迷惑ばかり。
そんな人が、どうして家の前に。
「…失敬な。ヤグチは、忠告しに来てあげたんだ」
「忠告?」
「そう。アンタのマネージャーはやばい、ってね」
「はあ?」
やばいのは、この人じゃないんだろうか。
意味わかんないこと言っちゃって。
「……大丈夫?」
それは本当に心配してやったことなのに。
おでこに当てた手を、がうっと払われる。
「せ、せっかく、この親切で優しいヤグチ様の行為を…!」
「いや、ってか、やばいのはアナタでしょ」
「ちぃ〜がう!!!」
いくらこうして否定しても、どうも分かってもらえそうにない。
矢口は、一度自分を落ち着かせて、最初から順に説明することにした。
- 341 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/14(日) 18:56
-
―――――
―――
―
「――っていうワケなの。分かった?」
安倍と市井の写真を撮ったのは、他でもないこのワタクシ矢口真里。
そしてそれを頼んだのは、他でもないアナタのマネージャー。
市井のスキャンダルを狙うだけじゃなく、目的は後藤と市井を別れさせること。
挙句、別れさすことが出来なかった保田は、今度は探偵まで雇って――。
保田のこれまでの行いを、すべて後藤に洗いざらい話す。
「……はは、ウソだよそんなの。圭ちゃん、そんなことしないもん……。
それに、圭ちゃんはあたしといちーちゃんが付き合ってることなんて……」
「っていうか、知らないと思う方がおかしいって。じゃなきゃ、ヤグチに頼まないでしょ」
「…そ、そおだよ! なんで頼むのさ! そんなの、あたしが誰と付き合ってったって…。
そ、そりゃ、恋愛禁止だけど、でもっ……。圭ちゃんには関係ないじゃん!!」
「…圭ちゃんは、アンタには、芸能界で頑張って欲しいんだってさ。市井のためにこの世界捨てないで欲しいんだって。
だから、アンタが市井と別れるように、愛想つかすように他の女といるとこ写真撮ったりして。
でも、それがなんか圭ちゃんの思い通りにならなかったみたいでさ。逆ギレされて…」
「そんなのっ…」
「勝手にさせてあげればいいのにね。でもあの人は、アンタがすべてみたい」
とにかく、あの人はアブナイよ。
危険を感じた矢口は、こうしてわざわざやって来たのだ。
- 342 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/14(日) 18:56
- 「そんなの……そんなの、ウソだよ。圭ちゃんはそんなことしないもん」
「…信じないなら別にいいよ。だけどもうヤグチはあの人には関わりたくない。
これから、どんな手使うか分からないけど、絶対に2人の仲引き裂こうとするよ」
「…………」
「…言いたかったの、それだけだから」
混乱させたみたいだったらゴメンね。
そう言って立ち去ろうとする、小さい身体。
でもなぜか、その小さい身体を後藤は引き止めてしまった。
「……ねえ、なんでそんな事あたしに話したの?」
少なくとも矢口にとって、後藤に言うことによって何のプラスにもならない話。
しかも面が割れてしまったことで、これから後藤のスクープを撮るのも苦しくなってくる。
だけど、それでも言った矢口。
「……まぁ、ヤグチのせいでもあるからね…」
断わったことによって、あんな形で返されてくるとは――。
無視すればいいものの、どうしても矢口は黙っていることが出来なかった。
「…?」
「とにかく、ヤグチは言ったからね! 忠告したからね!」
「でもあたしはっ――」
「だからぁ、信じる信じないのはそっちの勝手だって」
- 343 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/14(日) 18:57
- これは矢口の問題。
保田は危ないと気付いていたのに、安易に発してしまった「探偵」という言葉。
それを口に出せば、保田がどう出るか頭のいい矢口は分かったハズなのに…。
こう見えても責任感が強い矢口は、自分の失言のフォローをするためにわざわざ自分で出向いたのだ。
しかも、過去のライバルの家まで。
もっとも、後藤は一向に信じてくれないけど。
…後はもう、矢口には関係のない話。
保田と関係するものには本当にもう近付かないようにしよう――そう決めて矢口は去って行った。
「……ウソだよ。そんなの……圭ちゃんがそんなことなんかするワケないもん…」
残された後藤は、先程と同じことを何度も何度も呟く。
保田を信じてはいるけれど、矢口の一言一言に気になる後藤がいた。
- 344 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/14(日) 18:57
-
更新しました。このまま順調にいけたら…いい…な。
>336さん
保田さんは優しいのですが、ちょっとずつ、その優しさにずれが現れ始めました。
そして、また、少しずつ動き出せそうです。
メル欄でアドバイスありがとうございます。
>337さん
いちごまです。更新、これからも頑張ります。
- 345 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/15(月) 00:37
- いいよ〜いいよ〜!待ってました!
作者さんは放置プレイがお好きなようで(w
- 346 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/15(月) 02:33
- おぉ!!更新されてるーー!!
今日、遅れて気づきました
ダメさんの書かれる後藤はやっぱし可愛い〜☆
- 347 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/15(月) 09:50
-
――CHAPTER69
矢口の突然の話は、いつも後藤の頭を離れることはなかった。
何処にいても何をしていても、頭の中に出て来て。
そんな話をした矢口を何度も恨んだりしたのだけど、言われてしまった後ではもう手の施しようがない。
それこそ記憶を消してもらうとか。……出来るワケない。
でも後藤は、戦っていた。保田を信じていた。
「圭ちゃん」
「ん?」
「ピスタチオ食べたい」
「……アンタねぇ」
さっきご飯食べたばっかじゃないの、呆れた保田の顔と声。
後藤はえへへと笑い、手を出す。
…その手の上に、少し時間が空いたけれど、しっかりと乗せてくれた、ピスタチオ。
「えー、1個だけ?」
「1個も、でしょうが。普通だったらあげないんだからね」
最近体重が減ってきたので、そのご褒美と言ってもいいんだろうか。
いつもはもらえないピスタチオ。
1つだけでも、有難くもらうことにする。
- 348 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/15(月) 09:51
- 昔から保田は、厳しい裏には、ちゃんと優しさがあった。
お姉ちゃんみたいだと思っているし、実際のお姉ちゃんよりも今は時を多く過ごしている。
情も愛情も、ちゃんとある。
信じているし信頼してるし、口うるさいのがたまにキズだけど、総合すると彼女は後藤にとって大好きなお姉ちゃんだ。
真っ直ぐ見つめてきた。
保田も後藤は可愛い妹。
だけど保田の愛情は、自分勝手だった。
それは決して、否定出来るものではない。彼女は、後藤のためと思って一生懸命だから。
でも実際は…彼女のためなんかじゃ、1つもない。
- 349 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/15(月) 09:52
- モグモグとピスタチオを食べていると、マナーモードにしていた携帯が震えて光る。どうやらメールらしい。
今すぐに出番があるワケではないし、他に何をするでもない待ち時間。
彼女はピスタチオを口にしたまま、メールを開く。
発信者は、いちーちゃん。
自然と緩む頬を隠すのを忘れ、メールを読む。
メール内容は、ごくごく単純なメール。
【こっちは仕事が意外と早く終わりました。後藤は今何してる?】
今は何してる? その問いには、今は出番待ちと答えが1つしかない。
けれどその1つだけを返すなんて、そんなの寂しい。
少しでもメールを続かせようと、話題も一緒に送り返す。
【今は次の出番待ち。。。もう仕事終わったんだ!?いいなぁ〜…
ごとーも早く終わっていちーちゃんと逢いたいです…】
カチカチと器用に指先を動かし、打ち込む後藤。
送ってしばらくしばらくして返ってくるメール。そしてまた返すメール。
何度か続いて、キリがよかったのかもう返って来なくなるメール。
少し寂しく感じたけど、また送ればいいやと思って、携帯から顔を上げた時だった。
「――友達?」
ものすごく冷たい瞳で、こっちを見る保田。
この目はそう……安倍との記事が出て、トイレで市井と喋り終わった時に見た、あの目。
「あ……う、うん……そう、友達…」
「――そう」
- 350 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/15(月) 09:52
- 言って、
「すいません保田さん、ちょっといいですかー?」
という控え室に申し訳なさそうに顔を出したスタッフの声に我に返ったのか、
「…ごめん、ちょっと行ってくるね」
といつもの顔で後藤に言う。
でも後藤には、あの冷たい瞳が忘れられなかった。
あんな保田は、今まで見たことなかった。
――アンタのマネージャーはやばい――
――とにかく、あの人はアブナイよ。――
――これから、どんな手使うか分からないけど、絶対に2人の仲引き裂こうとするよ――
ぐるぐるぐるぐる。
頭の中には、矢口の一言一言。
- 351 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/15(月) 09:53
- 信じている。信頼している。大好きだ。
圭ちゃんがそんなことするハズない。
保田とは、深い深い絆がある。
ある意味それは、市井よりも深い、長い長い絆が――。
しかし、そんな絆があるのに。
「………ウソだよ……圭ちゃんがそんなことするハズない」
顔を見ても。声を聴いても。喋っても。
――後藤の頭からは矢口の一言が消えることはなかった。
- 352 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/15(月) 09:53
- >345さん
お待たせして申し訳ないです。
放置プレイは、どちらかというとされる方が好(ry
>346さん
もうほんと、後藤さんをどうやって書いたら可愛くなるのか分からない奴なので、
その言葉は本当に救われます。
あやみきの方も、宜しくお願いします。
- 353 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/15(月) 10:11
-
更新ありがとうございます。
後藤さん、充分かわいいっすよ!
- 354 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/17(水) 19:15
-
――CHAPTER70
長かった1日の仕事も、ようやっと終わり。
午後9時、市井達はやっと解放される。
お疲れ様という言葉を合図に、スタッフ達と労をねぎらい、うーん、と腕を上げ身体を伸ばす。
「うっわ。超肩凝ってる〜」
言ったのは吉澤。
最近の疲れがずっと溜まっているのと、今日の仕事は身体を使うことだったのでそれで凝ったのだろうか。
特に痛い方の肩の反対側の手で揉みほぐすのだけど、少し揉んだところですぐ治ってくれるような肩こりはない。
「…年寄りめ」
そんな吉澤をあざ笑うかのように言ったのは市井。
市井は、肩なんか凝っちゃいなかった。
「くっ…!…へんっ、実際年取ってるのは市井さんの方だから別に何言われてもオイラは怒りません」
「なんだと?」
年取ってるったって、2歳じゃないか。それでも自分と比べたら年寄りですよ!
くだらない言い合い。
こんな言い合いが出来るってことは、2人ともまだ元気な証拠。
言い合いもその辺で止めておいて、まだ威嚇し合っているいちよしを脇に抱え、中澤が車まで引率。
そうして2人は、十数時間振りの家路に着く。
- 355 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/17(水) 19:16
- けれども、現場から寮へと帰る道はなんだか混んでいて。
マネージャーとしてはさっさと家に送ってあげて身体を休ませてあげたかったのだけど、渋滞じゃどうしようもない。
疲れをちょっとでも取ってもらうために、寮に着くまでに少しでも車の中で寝かせてあげることにした。
そんな状態のまま何十分過ぎたろうか。
まだ混んでいて、先がまったく見えないで中澤が苛々している時だった。
モゾモゾと後部座席に座っている市井が起きる気配。
「まだ着きそうにないから、寝てていいねんで?」
「あー…うん。でもいいや」
車の中で熟睡出来ないということでもあるんだろうか。
そうだとすると、市井の横で、今まさに涎を出しそうなほど熟睡している吉澤とは正反対。
「何、事故?」
「ラジオ聴いてたら、なんかそうらしいわ。でももうちょっと進んだら抜けれると思う」
「ふーん…」
気のない返事して、一度目を瞑る。
だがその目もすぐに開け、今度は窓に映される。
「ラジオうるさかったら切るけど?」
「いや、別にそんなんじゃないんだ」
熟睡出来ない原因を、もしかしたらラジオつけているから?と考えた中澤。
市井に聞いてみたが、否定される。
- 356 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/17(水) 19:16
- 「…なんか、ここ最近ずっと寝不足だったからさ、今もなんかそれが染み込んじゃって寝れないんだよね」
「寝不足っていつから?」
「……安倍さんとの記事が表に出てからくらいかな?」
「…まあ、寝不足にもなるわな」
何処行くのにも記者やリポーターやカメラマンに張られていた市井。
その攻撃に悩まされて、軽いノイローゼを起こす芸能人だっているのだ。
「でもほら、市井前言ってたやん? 誰かにずっとつけられてる感じするって」
「あぁ、うん」
「その後警備にもついてもらったから、もうそんなことなくなったやろ?」
「うん、なくなった」
前までは1人で歩いていると必ず感じた後ろに人の気配。
振り向いて確かめても発見出来なかったが、絶対につけられていた気配。
さすがにうんざりして怖くて、事務所に言って警備の人がついてくれるようになった。
そしてそれを相手も感付いたのか、もう市井をつけているような気配はなくなり、うんざりするこもなくなった。
「でも寝不足のクセは直さなアカンで〜」
「言われなくても直すよっ」
疲れているのを知っているのは、自分自身。
直すためにも、市井は無理やり目を瞑った。
- 357 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/17(水) 19:17
-
――
で、次に目を開けた時。
窓から覗く建物は、市井がよく知っている事務所の寮だった。
どうやら自分は寝不足から解放され、いつのまにか渋滞も抜け、帰ってきたらしい。
「おっ、市井起きたか。ちょうどよかった、吉澤起こすの手伝ってくれへん?」
寮に戻ってきたと言って揺すっても叩いても蹴っても起きる気配がない吉澤。
これは、爆睡しすぎだ。
「……こうなったら、このまま部屋まで運んであげたら?」
「誰が?」
「裕ちゃんが」
「いやや」
思い切り即答された。
「か、可愛い可愛いタレントじゃないかっ」
「でもあたしそんな力ないも〜ん」
「今更かわいこぶったって…」
「なんやと!?」
「い、いえ……」
襟を掴まれ軽く持ち上げられ。これの何処が力ないんだろう――市井は思う。
しかし市井も馬鹿じゃないので、突っ込むことはしない。
「じゃあ、どうすんのさ」
「市井が運んであげーや」
「市井の方が体格的にもどう考えても無理だよっ」
2人の頭には、両方が支えてやって運んであげるという考えはないらしい。
- 358 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/17(水) 19:17
- 「そしたらもう、吉澤起こすしかないな」
「…だね」
話し合いでは、どちらも吉澤を運ぶことを拒否。
結局は爆睡している吉澤を起こすことになる。
けれど問題は、叩いたり蹴ったりしても起きなかった吉澤を起こす方法。
…方法は、1つしかないと考えた。
「――石川を使うか」
真剣な顔で呟き、携帯を使って何処かへかけ始める市井。
そしてその携帯の向こうから聴こえてきたのは、アニメ声。
「もしもし、今大丈夫?」
―「あっはい。今仕事終わって車の中なんですよぉー。どうしたんですか?」―
「……いやぁ、吉澤起こして欲しいんだ」
―「爆睡中なんですね」―
「うん。頼む」
分かりましたー、と元気のいい声を聴いて、音が聴こえる所を吉澤の耳に合わせ――。
石川が、爆睡中の吉澤に声を送る。
残念ながらその声は、市井達の耳には聴こえなかったのだが…。
だけどその効果は、物凄い勢いでばっちり目を覚ました吉澤が物語ってくれた。
- 359 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/17(水) 19:17
- 「りりりりりりかちゃんっっっ!!!!!」
「うわあああ!?!」
起きたと思ったら、急に市井を抱きしめる吉澤。
…どうやら、石川が目の前にいると勘違いしたらしい。
声がしたのを携帯からだと知ると、一気にショボーンとなる。
「やぁっとお目覚めか。ほら、寮着いたで」
また寝てしまいそうな吉澤の背中を一度叩いて、今いる所を把握させる中澤。
吉澤は寝ぼけ眼で辺りをキョロキョロ。
「……今から梨華ちゃんのマンション行っちゃダメですかぁ?」
「はぁ〜? 無理無理。アンタらはまだ狙われてるかもしれんねんで?」
声を聴き、恋しくなったんだろう。寝起きの吉澤はそんなことを言い出し中澤に却下される。
「じゃあ梨華ちゃんにこっちに来てもらうとか…」
「寮には念の為女の子を通してもらわんようにしたから無理!」
「そ、そんなぁ〜!!!」
どんな誤解を招くか分からない。
それならばちょっと可哀想だが、しばらくの間女の子を遠ざける作戦にした事務所。
これ以上スキャンダルを出さないためにも、事務所も必死だった。
「じゃあ、何処かで逢うとか…」
「そんな暇あったら、少しでも早く寝ろ!」
そして石川に逢うことを諦め、渋々電話を切った吉澤。
市井と一緒に寮の中へと入る。
でもなんでかな、市井の部屋の前に座り込んでる女の子。
今さっき、女の子は中にいれない、そう聞かされたばかりなのに――。
2人が帰ってきたことに気付いたその女の子は、長い髪をなびかせ、市井に抱きついた。
- 360 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/17(水) 19:18
- >353さん
ありがとうございます……そう言ってもらえると頑張れます。
- 361 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/17(水) 20:26
- 更新お疲れさまです。
おお、もう一組の主役も満を持しての帰還!
吉澤くんも石川さんもお帰りなさい。懐かしい。また大活躍してくれよ。
で、おうっ、激甘!な予感。実に嬉しいです。
- 362 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/17(水) 20:45
- いいところで!
続きが楽しみです。
- 363 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/19(金) 16:45
-
――CHAPTER71
一体全体、どうなってんだ。
寮へ入るには、女の子は禁止されているハズなのに。
無邪気に抱きつき、「いちーちゃんっ」と甘える女の子。
――いちーちゃん!?
「ご、ごとぉ――!?」
「しーっ! 管理人さんに気付かれちゃうよ」
「んぐうぐ」
口を押さえられ、さっとしゃがむ動作。
後藤が心配した管理人に気付かれるという心配は、杞憂だったらしい。
ほぅと胸を撫で下ろし、市井の口を押さえていた手を離す。
「く、苦しいんだよオマエっ…けほっ……」
「大げさだよいちーちゃぁん」
「ごとーが馬鹿力なの!!!」
息苦しさに市井は憤りを覚えながらも、どうしてここに後藤がいるのか尋ねる。
出入り口は、1つしかない。
寮の中へ入るには、管理人の前を通らなきゃ不可能だ。
しかも今は、前と違い女の子断固拒否なのに。
「簡単だよ。男の子になればいいんだ」
- 364 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/19(金) 16:45
- 自信満々にそう言い、髪を一まとめにし、帽子を深く被る。
すると、どうしたことか。
ボーイッシュな服装を着て、暗闇だったこともあり、女の子のハズの後藤が男の子に見える。
いくら女の子を拒否すると言っても、管理人もボディチェックまでしたりしない。
完璧な管理だと思っていても、どこかに落とし穴はある。
「へへっ、完璧でしょ?」
「おお〜、ごっちんカッケー!!!」
「でしょでしょ?」
能天気な2人の会話に、市井は下を向くしかない。
実はほんの少し、そんな後藤が羨ましかったのだ。
一瞬だけの変装なら、簡単だ。
一瞬だけの変装なら、笑い話に出来る。
一瞬だけ男になって、後藤はすぐに帽子を外し髪を解くことで、女の子に戻れるんだ。
市井達は、女に戻ることは許されない。
市井達は、笑い話になんて出来ない。
いつまでも仮面を、被り続ける。
でもそれは、市井も望んだこと。
後藤と少しでも長くいるために、市井自らも望んだこと。
罪悪感をぎゅうっと心の奥底に閉じ込めて、一緒になって笑う。
- 365 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/19(金) 16:47
- 「とにかく、中入りなよ」
「うんっ!」
部屋の中へと後藤を促す。
でもなぜか吉澤は、それじゃあと言って自分の部屋に向かおうとする。
「なんで? 吉澤どこ行くのさ」
「どこ行くってアンタ……自分の部屋帰って録画予約してた梨華ちゃんのビデオ見るんですよ」
「そんなの後でも明日でも見れんじゃん」
「…後でも明日にでもしたら、ごっちんいなくなっちゃうでしょう」
まったく鈍いなぁ、なんて。
吉澤は、市井と後藤を2人きりにさせるつもりらしい。
「よっすぃー、今度なんか奢るからね♪」
「やったーはあとはあと」
そしてそれは、後藤も望んでいた。
「いちーちゃん、早く入ろうよ」
「う、うん…」
今度は後藤に部屋の中に促され、赤くなりながら市井も入る。
ストレートな吉澤の気の使い方に気付いた市井は、なんだか2人きりというのが物凄く恥ずかしかった。
とにかくお茶を入れて、心を落ち着かせる。
そういえば後藤と面と向かって話すなんて、2人きりじゃなくても久しぶりだった。
- 366 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/19(金) 16:48
- 「いちーちゃんの顔、テレビじゃないの久しぶりに見る」
「うん…後藤の生の顔も久しぶりに見る」
「なんかぁ、痩せた?」
頬の辺りに手を当てて、問い掛ける。
後藤にそんなつもりはなくても、意識しまくってる市井にとっては、もうたまらなくドキドキしていて。
「…べ、別に…」
いつものようにつっけんどんに返してしまう。
でも後藤は、この何ヶ月で市井の性格を分かっていた。
これは、照れてるんだ。
「可愛い」
にへら〜っと笑い、優しくキス。
十数日振りのキスは、とってもとっても幸せな気分を味わわせてくれる。
「…にしても、いきなりどうしたの…? 来るってメールもなかったし」
「あぁ……うん」
と、さっきまで笑顔だった後藤の顔が急に曇る。
「…どうした?」
「なんか…なんか心配なの」
「心配??」
一体何が。なんで。
「なんか……ちょっと色々あってさ。でも、いちーちゃんの顔見たら、そんなのもう忘れた!」
「ごとう……」
無理してる。
何を無理してるのか、それが市井には分からないんだけど。
- 367 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/19(金) 16:49
- 「ねえいちーちゃん…」
「ん?」
「あたしのこと好きだよね? あたしに何も隠してないよね? 何があっても一緒だよね…?」
「ごと…?」
「好きだよ……」
「んっ……」
泣きそうな顔して、市井の返事を待たずキスされる。
思えばこれが、最後のチャンスだったのかもしれない。
拒めば、返事をすることが出来たのに。
市井はそれをせずに、後藤のキスを受け止めた。
後藤が好きだよ。大好きだよ。
何があっても一緒にいるよ。いたいよ。
でもただ1つ、隠していることがあるんだ。
市井は、女なんだよ――――。
後藤は管理人を、一瞬だけ騙し。
市井は後藤を、ずっと騙しつづけている――。
- 368 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/19(金) 16:50
- 暗くて嫌になります…ネガネガ。
セリフの最後に「はあとはあと」とありますが、前のseekのハートマークを出すつもりだった名残なので、無視してください。
新しくなって消したつもりなんですが、消し忘れていました、すいません…。
>361さん
いしよしを応援してくれていた方、本当にお待たせしました。
いちごまとは対照的なラブラブを書けたら…。
>362
いいところで切ってしまい、申し訳ないでつ。
続きお待たせしました。さくさく行きたいですね…まあ、半年以上空いたわけですが・゚・(ノД`)・゚・
- 369 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/19(金) 18:42
- 更新お疲れさまです。
ああ…そうでした。
これが最大の悩みどころというかせつないところでしたね。忘れてた。いやいや。
保田さんがアレだとか矢口がナニだとかも、更新のたびにだんだん思い出してます。いやいや。
これ、どうなるんだろうなあ……。いしよし二人は幸せそうだけど……
- 370 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/19(金) 22:23
- 甘いようでせつなくて、せつないようで甘くて。
これぞ、いちごま!
更新ありがとーございます!
- 371 名前:ミッチー 投稿日:2003/09/20(土) 01:50
- やっぱりいちごまはいいっすね〜。
せつないねえ〜。
どうか幸せに……。
更新おつかれっす!
頑張って下さい。
- 372 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/21(日) 10:42
- ochi
- 373 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/23(火) 00:12
- ここのいちごますごく好きです☆
次の更新待ってます!そういえば今日は後藤さんの誕生日ですね( ´ Д `)
- 374 名前:G 投稿日:2003/09/23(火) 00:36
- ごま誕生日おめ。
ごっちん切ないぃ〜・・・
いちーちゃん、ごまのために勇気を出すのだぁぁぁ。
- 375 名前:名無しちゃむ 投稿日:2003/09/23(火) 16:22
- 元は市真です。ここでは名無しちゃむと名乗っていこうかと・・・w
更新キタ―――(゚∀゚)―――!!!!!いやぁもう最高っす。流石ダメさん、乙です。
矢口さん、優しいよ。マジ惚れましたw
ごま可愛いよ、ちゃむにベタ惚れなとこ一途な恋心。
ちゃむガンガレ!!ごまを愛せ、嘘も真実のヒトツだ。照れ屋の優しさかましたれъ( ゚ー^)
いしよし(ё)ラヴラヴw 圭ちゃん・・・勝手すぎる愛ですよ・゚・(ノД`)・゚・コアイyo
ごとーさん誕生日オメデト。18の後藤さんこれからもお願いします
勿論ちゃむに祝ってもらってください。色々とw
- 376 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/25(木) 23:03
-
――CHAPTER72
その日の市井の体調は、最悪だった。
身体はダルイし、お腹は痛いし。
理由は、風邪なんかじゃない。
自分が本当は女なんだと痛感すること――月経だ。
「ダメだ……しんどい…」
テーブルに顎を乗せて、もう降参。
なんだか今日はいつもよりお腹が痛くてたまらない。
「大丈夫ですか…?」
横で心配してくれる吉澤には有難いのだけれど、答える元気もない。
「薬飲んだんかいな」
「飲んだけど効かないんだよ……」
中澤も一緒に心配してくれるが、心配してくれたところでその症状を治す術はない。
薬が効かないとなると、痛みが治まるのを待つだけになる。
だがとにかく今の市井は、腹が痛くて痛くてどうしようもなかった。
「もっかい薬飲む?」
「いいよもう……」
どうせ飲んだって効かない。
苛々してる市井は、つっけんどんに答えを返す。
悪いなとは思いつつも、腹が痛くてそれどころじゃなかった。
- 377 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/25(木) 23:04
-
――
収録が終わっても、腹の痛みは変わらない。
収録の間もずっと顔を笑顔に保つので必死だった。
一応スタッフの人達には今日は市井は体調が悪いと言っているものの、市井1人に気を使ってばかりいられない。
話を急に振られたりしないように気をつけながら、笑顔を保つのと市井は大変だった。
そして、ようやく終わった収録。
楽屋に戻っても市井は待ち時間と同じく、テーブルでダウン。
しかし生理現象というものは、どうしようもなくて。尿を足す為に、立ち上がる。
「ちょっとトイレ行ってくる…」
いかにも体調が悪そうな市井を見て、途中で関係者達に心配されながらも、先を行く。
そうしてやってきた、トイレ。
「…………」
そこで、ピタと止まる。
こういう場合、どっちに入ればいいんだろう。
やっぱり男子便所に入るのは抵抗がある為、トイレは極力、コンビニだったり駅や公園のトイレでしていた。
どうしてもテレビ局やスタジオにいて我慢出来ない場合は、男子のトイレ。
男子トイレの中に入って、そしてまた個室に入る。
男子便の個室=そういう事なので、入る時は恥ずかしいのだけど。
男として芸能界にいる以上、仕方ない。
では、今回はどうしよう。
このスタジオには、あともうしばらくいる予定だ。
近くのコンビニのトイレを借りようと思っても、身体はあまり言う事を聞いてくれない。
市井が女であれば、男子トイレになんか入らず最初から女子トイレに入っている。
でも今の市井は、男。女だけど男。
ましてやここは、スタジオ。周りは市井=男として思ってる。
だけど今の市井の思考は、完全に女に戻っていた。
- 378 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/25(木) 23:04
- 市井は苛々していた。
お腹が痛くて、市井は冷静さを失っていた。
でも、我を忘れるほどの冷静さは失ってはいない。
まずは中に誰もいないか、確かめないと。
「…………」
とりあえず周辺に人がいないのを確認して、変質者に間違われないように女子トイレの中を覗いてみる。
……誰もいない。
奥からジャア〜と水の流れてるような音が聞こえたが、さっきまで中に入っていた人が流していたんだろう。
そして、その人は市井が男子トイレに入っている間にもう終わって帰ったのか、市井は、1人だった。
それでももう一度確認して、いざダッシュで個室になだれ込もうとした時――。
ジャアー。ガチャガチャ。キィ〜。
トイレにありがちな効果音。
水の流れる音、鍵を開ける音、ドアの開く音。
「えっ…」
これまた予想外のことに、市井の身体は止まってしまう。
当然動かないので、隠れることも出来ない身体。
そして、出て来た人。
「――――え?」
どうして神様は、矢口にしか優しくないんだろう。
出て来た人は、どうしてか保田だった。
- 379 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/25(木) 23:05
- やっぱり市井は、冷静さを失っていた。
手洗い場所に人がいなくても、人はいるのだ。
個室の中を調べるのを忘れていた。
そして、もう1つ忘れていたこと。
女子トイレには、尿をする時消音機器というのがあることを――。
さっきの水の流れる音は、まさしくその消音機だったのだ。
消音機の音と本当の水の流れる音が区別出来ないほど、市井は冷静さを失っていた。
「あ、アンタ……何してんの?」
本来いるハズのない空間に、にっくき相手の市井。
睨むことも忘れて、素で聞いてしまう。
けれども保田以上に状況が分からない市井。
「あ……いやっ…その…あは……」
「…ここ、女子トイレよ…?」
「えっ!? そ、そうなんですか!!! う、うわあ、ま、間違えました!!!!!」
「…………?」
大げさに驚いて、白々しく去って行く市井。
一体何?、疑問符ばかり湧き上がる保田の頭に、また1つの疑問が出て来た。
――ホントに、素で間違えたのかしら?
考えれば考えるほど、保田の頭には疑問が浮かぶ。
- 380 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/25(木) 23:05
-
ベタすぎて嫌になります…。
この為に女子トイレなんかを検索して、変なのばかり引っかかり気分が悪くなりました。
>369さん
本当に更新の間を空けすぎて申し訳ありません…。
作者の自分でさえ、未だにどんなキャラだったか思い出せず大変です…。
最後はまだまだ先ですが…お付き合いくださると幸せです。
>370
ありがとうございます。
いちごま、というものをちゃんと書いたのはこの作品が初めてなので…。
もっと早く更新できるように頑張ります。
>ミッチーさん
更新頑張ります。
それと…すいませんが、sageてください・゚・(ノД`)・゚・
ワガママで申し訳ありません…。
>372さん
ありがとうございますありがとうございます(ペコペコ
>373さん
!(゚Д゚;)
そ、そうですね、後藤さんの誕生日でしたね…わ、忘れてたなんてこたありません(大汗
>Gさん
市井くんが勇気を出すのは…いつなんですかね(w
>名無しちゃむさん
やぐヲタだったものですから、どうしても矢口さんを悪者することが出来ないという(w
でもやっぱりハッピーエンドが大好きなので、最後にはみんなよくなるように頑張りたいです。
- 381 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/25(木) 23:43
- こればっかりはどうしようもないですもんね。
重い人は無茶苦茶きついらしいですし。でも、それが現実ですし。シリアス。
ある意味、最大の敵ですよね。もう頑張れとしか言いようがない。
自分は子供なのでなにが引っかかったのかわかんないですが、検索して作品を書いてくれる作者さんに大感謝です。
- 382 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/27(土) 22:35
-
――CHAPTER73
身体がだるかったはずなのに。走るのが面倒くさかったはずなのに。
女子トイレから出て来た市井は、全力で走っていた。
もう、気持ち悪いとか言ってられない。
汗もダラダラで、楽屋に戻ってくる。
「お帰りなさ〜い」
「どうや? ちょっとは腹痛マシになった?」
気の許せる顔が目の前に並ぶが、市井の動揺は治まらない。
「ちょっと市井さん、汗すごいですよ?」
「おいおい、どうしてん」
心配してくれる2人。
息を整え、心を少し落ち着かせてから、ゆっくりと先程のことを話し出す。
「――アホかお前!!!」
話し終わった途端、頭に大きなゲンコツ。
だけど殴られるのも仕方ない。
「散々気ぃつけってあたし言うてるやろ!? なんでこんなとこで女子トイレになんか入んねん!」
「だって……だって…」
「だっても待っても言い訳は通じひんで! アンタとしたことが…らしくない」
「ごめん……」
「しかも見られたのが、圭ちゃんやなんて」
あぁ、なんだかすごく嫌な予感がする。
中澤は、頭を抱え込む。
- 383 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/27(土) 22:35
-
「っていうか、なんで保田さんがここに…」
「何言うてんの。タレントがここで仕事してんのにマネージャーがこーへんワケないやろ」
「えっ、そうなんですか?」
「そうなの!?」
後藤もこの建物の中にいるなんて、聞いてない。
同じ所で仕事をしているんだったら、もしかしたら逢えたかもしれないのに。
毎日いちいち電話やメールで「明日仕事どこでやんの?」なんてウザく思われそうで聞けない。
けど今日は聞いておけばよかった。こんな偶然、あまりない。
そんなことを思う時じゃないのに、つい思ってしまう。
「で、アンタは何てごまかしたん?」
「いや…だって完璧中に入っちゃってたし……『間違えました』でダッシュして逃げた…」
「……まあ、それしか言い訳はないわな」
はあ、と大きな呆れた溜息ついて。
「とにかくあたし、もっかいフォロー入れとくわ。まあ圭坊が忘れてくれとったら一番やねんけど」
「ごめんね……」
「もういいって」
過ぎた事をいつまでも気にしてても、どうしようもない。
今中澤が出来る事は、反省して落ち込んでる市井を守る事。
男になる為に更に短く切った市井の髪をぐしゃぐしゃ撫でて、安心させるように笑ってみせた。
- 384 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/27(土) 22:36
-
しかし中澤達は、今1つ危機感が欠けていた。
中澤がフォローをして保田が信じるなんて、そんなの信じるのは昔の保田だけ。
ましてや忘れるなんて、そこまで物忘れがひどい保田じゃない。
今の保田は、推理小説が大好きで、そこらの探偵よりもしつこいマネージャーだった。
トイレから戻り、まだ撮影している後藤を陰から見守る。
だが視線はちゃんと後藤に向いているが、頭の中はさっきの市井のことばかり。
あの焦り様。あの慌て様。あの動揺。
似たような言葉ばかり、頭の中で市井の様子を語る。
どう見てもあれは、いつもの比較的無口であまり表情を作らない市井ではなかった。
それははたして、素で女子トイレに入り指摘され気付いたからなのか、
最初から女子トイレと分かっていて、何かの目的で入ったのはいいが人がいたからあんな風になったのか…。
う〜んと唸っていると、目の前に影が。
「圭ちゃ〜ん。終わったよ」
「あ、後藤」
「……また考え事?」
「別にそんなんじゃないわよ」
「ふ〜ん…」
冷たく言って、2人一緒に楽屋へと戻る。
なんだか最近後藤が疑り深いのも、気のせいじゃない。
「次の仕事何?」
「楽屋で雑誌のインタビュー。ちゃんと答えなさいよ?」
「はぁ〜い」
- 385 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/27(土) 22:36
-
――
「…疲れた〜」
雑誌のインタビュアーが帰り、2人きりになった後藤の楽屋。
グテンと横になり、うーんと腕を伸ばす。
「…まったく。ほら、ダラダラしないの。次はダンスレッスンあるんだから」
「んあ〜…もうちょっと休ませて」
「移動中に休めるでしょ」
「……ケチ」
「何とでも言って」
ほら立った立ったと後藤を急かし、渋々後藤を立たせる。
が、そこでふと思った。
市井が女子トイレに入ったことを後藤に言ったらどうなるか、と。
もしかしたら「キモい」とか言って冷めてしまうかもしれない。
だけど単に笑うだけかもしれない。
それでも保田は、後藤の反応を見てみたかった。
「ねえ、そういえばさっきね」
「?」
「女子トイレで市井くんにあっ――」
「え!? いちーちゃんってここにいるの!?」
「……仕事だったんでしょ。いたら何か問題あんの?」
「あ……別に、うん」
白々しい演技。
気のない振りなんかしても、気のあるのはバレバレだ。
- 386 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/27(土) 22:37
-
保田は飯田みたいに、タレントに甘いマネージャーじゃない。
市井達が同じ所で仕事をしていたのを知っていたが、黙っていたのだ。
後藤にこれ以上近付けさせるワケにはいけない。
けどこうして市井の話題を口にしているのは、今だけ特別。
「…で、いちーちゃんどこにいたって?」
やっぱり気になるんだろう、気のない素振りしながらも、尋ねる後藤。
「なんでかね、女子トイレの中にいたのよ。女子トイレよ?」
女子トイレ、をさりげなく力強く言ってみる。
「えー、またぁ?」
そうすると、予想してあった――残念ながら保田の望んだ結果じゃないけれど――笑い顔。
軽蔑して冷めてしまうことは、明らかになさそうだった。
しかし、1つ気になる点。
「――『またぁ?』」
「ほら、前にも裕ちゃんとか圭織とかと一緒に食事したじゃん? 梨華ちゃんよっすぃ、いちーちゃんもいてさ」
「あぁ…うん」
「そん時、いや、ほ、ほんと偶然だよ? いちーちゃんがトイレ行って後藤もトイレ行きたくなってトイレ行ったんだけど、
そん時も間違っていちーちゃん女子便入りそうになってた。それによっすぃーも」
いちーちゃんて天然だったんだぁ、なんて後藤の能天気な笑い声。
「……ははっ、何それ」
保田もつられて、笑ってしまう。
そんな天然、あるハズないじゃないか――。
まさか、とは思う。
17年も男として育っているのに、そんなに間を空けず2度も間違うだろうか?
そうして保田は、ある仮定を立ててみた。
- 387 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/27(土) 22:37
-
やっとここまで来た・゚・(ノД`)・゚・
本当に長くて遅くて、申し訳ない。
>381さん
日頃男として生活している2人を女に戻すのは、もうこれしかないと思いまして。
でも反応が怖くて、載せるの実は怖かったんです…。
何度も何度も訂正してなんとか山は越えたので、これからもっと頑張りたいです。
- 388 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/27(土) 23:01
- 更新ありがとうございます。
怖いだなんてとんでもないですよ!
こっちは読めるだけで幸せですから。
このお話に引き込まれています!
おこがましいですが、これからもがんばってください。
- 389 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/29(月) 01:19
- 更新ありがとうございます。
いちーちゃんの秘密がばれちゃう!?
ドキドキドキドキ・・・ごっちんが泣くことだけはありませんように・・・。
- 390 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/29(月) 05:24
- 盛り上がってきましたね・・
そろそろバレそうな空気・・
どどどうなっちゃうんだ!!
- 391 名前:390 投稿日:2003/09/29(月) 05:27
- あーあと!
自分も全然気にならなかったですよ。
確かに性別の差が一番自然に出ちゃうとこでしょうね。トイレって。
- 392 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/29(月) 22:27
-
――CHAPTER74
「――へ? 市井くんが、女かもしれない、と?」
「うん、そう」
「ははは、まさか」
小さなこじんまりとした探偵事務所。
仕事が終わって後藤を送り終えた保田は、迷いもなくそこへ向かって、立てた仮定を口にする。
「あたしだってまさかとは思うわよ。でもね、あなたはトイレ行く時女子トイレと男子トイレ間違える?」
「いや、僕は……一応ちゃんと確かめますもん。間違えたらえらいことになりますし。
それに、もし間違えて入ろうと思っても、最初に気付きますよ。だって女子トイレに、小便器ないじゃないですか」
「でしょう? そう考えると市井くんの行動は奇妙なのよ」
「しかし……」
「証拠がない」
「はい…」
「でもこれが本当だとすると、大ニュースよ」
「ですよね…」
男として売っていたタレントが、実は女だった。
芸能界にもマスコミにも、そして後藤にも、大きな大きなニュースになる。
これまで、市井と後藤を別れさせるための数々の作戦に失敗してきた。
しかしこれが本当だとすると、どうだろう。
嫌でも後藤は市井を軽蔑し、それどころか嫌悪するだろう。
市井は、後藤を騙していたのだ。
市井は、本当は後藤と同じ女なのだ。
証拠はないのに、保田の頭の中では、その仮定は決定になっていた。
- 393 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/29(月) 22:28
-
――
それから数日。
保田は探偵と一緒に証拠となるのを一生懸命に聞き回るが、一向に収穫がない。
市井の友人関係なども、事務所がどうしてかガードしているので、交友関係も家さえも分からない。
同じ事務所でマネージャーという立場の保田ならどうにかなると思ったのだが、関係者でも同じことだった。
よく考えてみれば、こんなにべールが包まれ、情報がないタレントはそういない。
後藤なんかは友人に裏切られ、プリクラなんかよく流出しているというのに――。
疑問はどんどん膨らんで、それは保田にとって十分に“市井は女”ということを強くさせる。
女だとすれば、こんなに隠しているのも納得出来るからだ。
ただやっぱり、証拠が欲しい。
証拠がなければ、後藤には言えない。
だが無理やり市井を襲って着ぐるみを剥ぐ等という鬼畜な作戦は、さすがの保田も躊躇われた。
こうなったら、事務所という枠でなく、怪しまれない程度に、より近くの人間に聞いた方がいいのかもしれない。
ターゲットはまず、後藤真希。
「ねえ後藤…」
「んあ?」
「市井くん達って、実家とかってどこなの?」
「は?」
保田の口からそんな質問が出るなんて、思わなかった。
思わず聞き返す。
- 394 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/29(月) 22:28
-
「後藤仲いいじゃない? いや、ちょっと知り合いに2人のファンの子がいて、質問されたのよ」
「へぇ〜……」
納得したように相槌を打つが、頭の中にはこの前の矢口の言葉。
もしかしたら何か企んでるかもしれない……そんなことを思ってしまう自分自身。
けれど後藤は、本当に知らなかった。
「どこなんだろうねぇ。そういえばあたしも知らないや。
っていうかいちーちゃんあんま自分のこと喋んないし」
「そうなの? じゃあ、吉澤くんは?」
「よっすぃーは………いや、聞いたかもしれないけど覚えてない。聞いてなかったっけな?」
なんかわかんなくなってきた〜、と頭を抱え始める後藤。
そんなに深く考えないでよかったんだけど、と保田は苦笑い。
「…そうか、後藤は知らないのか…」
「んなのあたしじゃなくても事務所の人に聞けばいーじゃん?」
「あ…事務所の人に聞くほどでもないかなって。で、後藤が知ってれば教えてもらって、知らなかったらいいやぁって」
そこまでで、またいつもの仲良しな2人に戻る。
「ふーん。あ、コンビニ寄ってよ圭ちゃん」
「ダメ。またお菓子買う気でしょ」
「ぶ〜」
…後藤も知らない。
だったら、吉澤と幼馴染だという石川に、今度は的を変えてみる。
- 395 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/29(月) 22:29
-
しかし、保田と石川は、接点がないし仲良くもない。
マネージャーの飯田とは食事などをする仲だが、タレントの石川とまでは関係ない。
問題はどうやって、仲良くもない石川に怪しまれないように聞くかだった。
後藤と売る路線が反対な石川とは、一緒に仕事をする機会もない。
かといって事務所で会った時は、飯田や他の人が傍にいる。
2人きりになるチャンスは、ただ1つ。石川のマンション。
そのマンションに訪ねる理由が、保田にはなかった。
「さて、どうしよう…」
「何がぁ?」
「……なんでもない」
とにかく考えるのは、後藤を家に送ってからだ。
そして、後藤を家に送り1人になった車の中。
いいことかどうかは分からないが、あることを思いつく。
車のハンドルを切り、方向転換。
向かう先は、事務所の傍にある、いちよしが生活している寮。
初めていちよしと石川に会った時、つんくに紹介された関係。
吉澤と石川は幼馴染であり、石川は吉澤の彼女でもあるらしい、と。
実際はそう紹介された時に吉澤は否定しているのだが、保田の耳には聞こえなかったらしい。
だからその関係を利用して、石川の家に上がり、話を聞いてやる。
- 396 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/29(月) 22:30
-
寮の前に車を止めて、ゆっくりと降りる。
ここの管理人とは、顔見知りだ。挨拶をして吉澤を呼んでもらう。
不思議そうな顔してやって来た吉澤ににっこりと微笑んで。
「こんばんわ。夜遅くにごめんね」
「いや……で、でもどうしたんですか? ご、ごっちんならここになんかいませんよ?」
「いやぁ〜ね、誰も後藤探してないわよ」
「じゃ、じゃあ……」
なんで、ここに。
保田には、後藤の記事が載った時に怒られた思い出、松浦が寮に押しかけてきた時の思い出がある。
ようするに、怖い思い出しかないのだ。吉澤には。
だけど今は怒られる理由がないのに、こうして目の前にいて。
もしかして市井と後藤の交際がバレたのかと思ったが、それだったら市井を呼ぶだろうと思い直す。
吉澤には、保田が目の前にいる理由が分からない。
それでも保田は笑みを崩さなくて。その裏に作戦があるなんて、馬鹿な吉澤にはもっと分からなかった。
「…ねぇ、最近石川と逢ってる?」
「…は? 石川…梨華ちゃんと、ですか」
「そう」
逢ってない。全然逢ってない。
だから、実は今から思い切り変装して、ひっそりと向かおうとしていた所だったり。
もしかしたら保田は、その計画になぜか気付き、叱りに来たのかもしれない――。
こうなったら、今から向かおうと思ってたなんてことなんて、シラを切ろう。
「……逢ってませんよ、それが何か?」
だからどうした、と言わんばかりの態度。強気に出る方が勝ちだ、そう判断した吉澤。
けどその態度も、すぐに打ち消される。
「――だったら、今から石川と逢いたくない?」
「は、はいぃ?」
- 397 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/09/29(月) 22:30
-
がんばれがんばれ(自分に言い聞かせてる
>388さん
本当に、優しい読者様に読んで頂いて、幸せです・゚・(ノД`)・゚・
遅いペースではありますが、こちらからも幸せのお返しをしたいです。
本当に頑張らないといけないので、頑張ります!
>389さん
ドキドキドキドキ……ごっちんが泣いたらどうしよう…。
>390さん
そろそろバレそうな空気でつ。やばいでつ。
やっとここまできました。もうしばらくお待ちください。
どうしても過剰気味になってしまうので、そう言って頂けると軽くなります。
有難うございます。
- 398 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/29(月) 22:43
- 更新されてる!
早い更新、ありがとうございます。
話がどんどん動いてドキドキです!
吉澤くん…がんばれ!?
- 399 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/29(月) 23:06
- 更新お疲れ様です☆
今回の展開にすごくハラハラ(>д<)ドキドキしました!
続き待ってます。
- 400 名前:ちに 投稿日:2003/09/30(火) 11:45
- おお〜!久々に読みましたー!やっぱイイ話、イイ展開です!
ちなみに、386の件、
「17年も男として育っているのに、そんなに間を空けず2度も間違うだろうか?」
自分は間違たことあります(アホ…
保田さん、そういうアホな男もいますよ(w
- 401 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/01(水) 22:54
-
――CHAPTER75
交際を反対してたんじゃないんだろうか。
叱るつもりで来たんじゃないんだろうか。
なのに、どうしたことか。
保田は吉澤を乗せて、石川のマンションへ。
恋愛禁止、という保田の規則は破られたんだろうか。
それともその規則は、後藤だけというんだろうか。
あぁ、もう。ワカラン。
とにかく吉澤は、保田への疑問よりも石川への愛を優先させた。
保田がどんなことを思っているのか知らないが、それでも石川に逢わせてくれる気持ちが嬉しかったのだ。
――その裏に何があるかなんて分からずに。
中澤達に禁止されててずっと行けなかったマンション。
それが今、目の前にあって。
1、4、4、4、と石川の部屋番号を、慎重に押す。
すると聴こえる、石川の声。向こうにはちゃんと映像も映されているだろう。
―「よっすぃー!?」―
「梨華ちゃぁ〜ん」
ちょっと待ってねすぐ開ける、という石川の声の後、本当にすぐ開くマンションの中へと通じるドア。
尻尾を振って中へ入って行こうとしたが、忘れていた。
「…あ、保田さんありがとうございました」
どういう意図か知らないけど、感謝感謝。
丁寧に頭を下げて、お礼を言う。
- 402 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/01(水) 22:54
-
だが、お礼を言っても帰らない保田。
……あれ?
「何言ってんのよ。あんた1人を部屋まで行かせても心配でしょ。どこから見てるか分からないんだから。
あたしも一緒に、石川の部屋まで行くのよ」
「あ、そ、そうですよね」
石川もグラビアアイドルの中じゃ、早くも上位に立った人気だ。
写真を撮られ、2人の関係は幼馴染だからと発表しても、記事はもっとおもしろおかしく書き立てるだろう。
それならば、事務所関係者が1人いるのといないのでは、扱いが違う。
やっぱりちゃんと考えてるんだすごいよなぁ、なんて吉澤はただただ感心。
エレベーターに2人乗り、石川の部屋を目指す。
「で、でもいいんですかね?」
「何がよ」
「いや…中澤さんに黙って梨華ちゃんとこ行ったりして…」
「黙ってたら分からない」
「で、ですよね」
言わなきゃいいんだ、そうだよね。
さすがの保田も裏があるにしろ、事務所に内緒で吉澤を連れて行ったのがバレたとなると、
処分を受けるかもしれない。そうなったら後藤の傍にいられないかもしれない。
こうして逢いに行ってることがバレるとどちらにとってもいいことがないのだ。
「アンタ絶対あたしが連れてきてあげたとかって喋らないでよ?」
「んなの喋りませんよっ」
- 403 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/01(水) 22:55
-
内密にするということをしっかりと約束し、吉澤達はエレベーターを降り、石川の部屋の前へ。
だが、ずっと待っていたのか、吉澤達が部屋の前へ行くよりも早く駆け寄ってくる石川。
「よっすぃ〜!」
「りかちゃぁ――」
「外でイチャつくのはやめてくれる?」
感動の再会は、間に入った保田のせいで果たせず終わる。
「でも…どうして保田さんが?」
「へへっ。事務所にも中澤さんにも来るなって言われてたしさぁ。こうなったら黙って思い切り変装してでも行こうかと思ってた時、
寮に保田さんが訪ねてきてさ、1人じゃここ来るの変装とかしてもやっぱり色々危ないからって、わざわざついて来てくれたんだよ」
「え…で、でも保田さんはその、交際とかについてよく思ってないんじゃ…」
「あたしは後藤のマネージャー。後藤に関わらない交際なら別に」
「そうですかぁ……てっきり直接乗り込んで別れさせられるのかと」
「最初、自分も思った」
「あたしのキャラ、一体どれだけ怖いのよ!?」
…そうやって怒鳴るだけで、もうすでに怖い。
「と、とにかく本当にありがとうございました」
「え?」
「え?」
なぜ礼を言われるのか分からない保田。
なぜ礼を言われて保田が分からない顔をしてるのか分からない吉澤。
2人の考えは、少々違っているようだ。
- 404 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/01(水) 22:55
-
「……保田さん、ここでお別れじゃないんですか?」
「石川の部屋まで行くって言ったじゃない」
「来ましたけど…」
保田と向かい合って話している吉澤の横には、プレートに【石川】と書かれている部屋。
ここは、石川の部屋。
「……あのねぇ、アンタじゃあ帰りどうするつもりなのよ」
「えっ…歩いて帰りますけど。寮すぐそこですし」
「そーじゃないっ、バカ!!!」
「ひいっ」
梨華ちゃん怖いよう、とマジでビビる吉澤の姿に、石川も苦笑い。
保田は笑わず、怒ったまま。
「あたしが今ここで帰ったら、残されたのアンタ達2人になるでしょ? じゃあ帰る時撮られちゃうじゃない」
「はあ……」
「それに、実はちょっとあたし石川に用があるのよ」
「…はい?」
それははたして何処に仕舞ってあったのか。
若い2人には突っ込めず、姿を現すそれを、ただ眺めるだけ。
「……サインくれない?」
照れくさそうに現れたそれは、2人が芸能界に入って嫌というほど目にする事になった、色紙だった。
- 405 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/01(水) 22:56
-
――
「なんかごめんねぇ、吉澤連れてきたことをダシにしちゃったみたいでぇ」
「いえいえ。全然」
保田の作戦は大成功。
お人好しそうな石川は、サイン片手に部屋の中へ招き入れてくれた。
ダシにされた吉澤は、石川と2人きりじゃなくなったことで部屋の隅でショボーンと体育座りをしてこっちを見てる。
最初から吉澤はどうでもよかった。
ダシにしても吉澤をつれて来てくれたということで石川は機嫌がいいのか、保田の申し出にも素直に応じる。
そして取り留めのない会話をしていき、好印象も持たせる。
マネージャーという職業上、相手にどうすれば好印象を持たれるか、というのは研究していた。
ましてや石川は素直でまだ周りも分からない人間。
聞き出すのは簡単そうだった。
「ごめんね、ちょっとお手洗い借りていい?」
サインを書き終わったのを見計らって、石川に断わりを入れる。
本当はトイレになんか行きたくないのだけど、サインを書き終わったことで保田がその部屋の中にいる原因はなくなる。
そうなれば、早く違う部屋になって石川と2人きりにさせろという吉澤の圧力がかかりそうなので、一旦そこを離れ、作戦を練るのだ。
……もっとも、圧力がかかっても睨み潰すつもりだけど。
石川に了解をもらい、トイレに行く。そのトイレに行く時間だけ、吉澤にあげよう。
2人きりの時間は、それだけ。
後の時間は、悪いが石川には保田の相手をしてもらう。
だがそうなるには、何か話題がなければならない。しかも、保田の目的の市井の話。
しかしその話題は、目の前にあった。
トイレの横の壁に飾られている写真。
そこには、芸能界に入るより前であろう、市井、吉澤、石川が仲良く3人で写っていた――。
- 406 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/01(水) 22:56
-
>398さん
そろそろ話を動かさないと自分がやばいので(w
吉澤くん、頑張ってもらいたいです。
>399さん
ハラハラドキドキしてくださりありがとうございます。
続き、アップしましたー。
>ちにさん
( `.∀´)<まさかあんたも市井みたいに性別騙してるんじゃないでしょうね!
気をつけてくださいね(w
- 407 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/01(水) 23:21
- あ〜ドキドキしてきた〜
いつバレるんやろ〜(>_<)
- 408 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/02(木) 06:06
- 更新お疲れさまです。
やっす〜、怖いよ!
- 409 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/02(木) 19:06
- もうそろそろバレそうな感じが……
い、いちいちゃん…ファイト!!
- 410 名前:ミッチー 投稿日:2003/10/02(木) 19:23
- 久しぶりに見たらこんなことに…!!!!
更新おつかれっす!
トイレにはどんな写真があったんだぁ???
気になるなぁ〜。
- 411 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/02(木) 19:49
- 更新ありがとうごさいます(^O^)
今回もハラハラドキドキしました!次回も楽しみにしてます(>_<)
- 412 名前:名無しちゃむ 投稿日:2003/10/03(金) 17:32
- 圭ちゃん怖いよー・゚・(ノД`)・゚・
いちごま、いしよし、そんでもって関係者&矢口さん。そして圭ちゃん自身も幸せな方向へ連れてきたいぐらいっす・・・
写真気になります。更新乙っすヽ^∀^ノ
- 413 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/03(金) 17:57
-
――CHAPTER76
吉澤は、完璧に拗ねていた。
原因はすべて、保田のせい。
「よーっすぃ! なーんで体育座りしてるのぉ?」
保田がトイレへ行ってもじっと体育座りをしていじけている吉澤の元に、笑顔の石川がやって来る。
吉澤は一瞬嬉しそうな顔をしたものの、それもすぐ沈んだ顔に。
「…だって。せっかく2人きりになれると思ったのに…。保田さん全然協力してくれてないもん…」
「今2人っきりじゃない」
「今だけじゃんかぁ」
「だいじょーぶだよ。部屋他にもたくさんあるし、もうちょっとしたら保田さんも気利かせてくれるよ」
「ホント…?」
「多分。ううん、絶対」
「だよね」
だけど、そんな2人の想いもこの人がぶち壊す。
「石川ー、トイレ貸してくれてありがとう」
声が聞こえあわあわと勢いよく離れる2人。
結局、抱きしめるどころか、キスさえもさせてくれない。
それでも何もなかったように、2人は多少引きつった笑顔で保田を迎える。
「悪いね、ほんとごめんね」
「いえいえ、本当に全然」
「でさ、もう1個ごめんついでに……」
「えっ?」
「色々話聞かせてもらえないかな、って」
「「え……」」
――本当に、ごめんだよ。
- 414 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/03(金) 17:58
-
それでも心底申し訳なさそうに保田が訊ねるもんだから、石川の眉はハの字になる。
石川の後ろには、まだ体育座りして拗ねてるだろう吉澤。
石川の前には、申し訳なさそうに訊ねる保田。
……取るなら、吉澤との愛。でも、その吉澤を連れてきてくれたのは保田。
話って言っても、2、3言だよね……結局石川は、保田の話に傾けることにしたのだ。
「で、何なんですか? 話って」
「ああ、いや…別に大したことないんだけどね」
「はあ」
「トイレの横に、あなた達と市井くんの写真飾ってあったから。仲良いんだなぁって」
「ああ、あの写真ですか。そうですね、もうどの位の付き合いだっけ?」
石川に話をふられた吉澤は、仕方が無しに口を開く。
「そうだなぁ……2年くらい?」
「よっすぃーのお母さんと市井さんのお母さんが、高校時代かなんかで同じクラスだったみたいで。
同窓会で会った時に、『じゃあ今度子供連れてもう一回会おう』的な話になって、知り合ったんです」
「へえ」
「家は全然遠いんですけど、市井さんが東京遊びに来た時に時々遊んでるんだよね」
「うん」
遊んでた時にスカウトされて、今に至るんだけど。
「へえ。…っていうかさ」
「はい」
「――市井くんの実家ってどこなの?」
ごく自然に。
何でもないように、そう訊ねる。
- 415 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/03(金) 17:58
-
「市井さんですか? 市井さんは千葉ですけど。……でもなんでそんなこと聞くんですか?」
「え…いや別に、気になったから」
「あー、保田さんもしかして市井さんのこと好きなんですかぁ?」
「馬鹿言ってんじゃないわよ!!!」
「わっ、ご、ごめんなさい…」
――大失敗。
石川の、明らかにからかった発言に本気でむかついてしまった。
市井が大嫌いな保田は、からかいでもそんなことを言われたことに非常に腹が立ったのだ。
石川は怯え、吉澤は睨み、せっかく頑張って作った印象は、最悪となる。
「梨華ちゃん、大丈夫?」
「あ、う、うん……。保田さん、すいませんでした…」
「い、いや、こっちもムキになったのが悪かったのよ……ごめんね」
出来れば好印象のまま帰りたかったのだけど、そうはいかないみたいだ。
石川を怯えさせたことにより、完全に市井の相方の吉澤を敵に回してしまった。
だが、最高の情報をもらった保田は、もう無理をしてここにいる必要もない。
ここは早くずらかることだ。
「これ以上いたら石川も気まずいだろうし、あたし今日は帰るわね。悪いけど、吉澤も連れて帰るけど…」
「あ…はい」
「梨華ちゃん、また電話するよ」
「…うん」
「今日はごめんね。それから、アリガト」
「いえ、そんな」
じゃあと最後に手を振って、別れる。
石川と別れてからも、保田の背中には吉澤の視線が突き刺さっていた。
- 416 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/03(金) 17:59
-
――
「……すいませんでした」
これ以上ないくらいの土下座。
それを、吉澤はやってのける。
「おいおい、いきなりなんだよ?」
当然、いきなりそんな土下座をやられた人――市井は何が何だかわからない。
聞いても、ひたすら吉澤は謝るだけ。
「いやほんと、謝ってすむかどうかもわかりません」
「だから、なんだっつーの」
いつまで経っても謝っている理由が見当もつかない市井は、苛立ってくる。
そこでやっと、吉澤がその理由を口にする。
「……市井さんの実家が千葉ってこと、保田さんに言っちゃいました」
「は? ……なんだよ、そんなこと?」
「そんなこと?、じゃないですよ! あの人、怖いです。何かするかもしれません」
「怖いのは最初からじゃん」
ははは、と何を当たり前なことを笑う市井。
でも吉澤の顔は、いつになく真剣だ。
「あの人、市井さんのことなんかすっごい憎んでますよ。ごっちんとのこと、絶対バレてますよ」
「……でも、市井は憎まれるようなことをしてるわけだし………」
「それでも、おかしいですよ」
実際に会って見ていない市井には分からないかもしれない。
けれど、吉澤は見た。そして、矢口も見たのだ。
- 417 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/03(金) 18:00
-
嫌な予感がする。まさか、とは思うんだけど。
保田は、後藤と付き合っていることだけじゃなく、何もかもお見通しなんじゃないかって――。
考えると吉澤は、怖くなってきた。
「有り得ないですよね……そんなの」
「……有り得るワケないよ」
有り得たら、ゲームオーバーだ。
何もかも、終わってしまう。
市井は、そっちの方が怖かった。
――その答えも、もうすぐ分かる。
- 418 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/03(金) 18:01
- 从;‘ 。‘从<あたしってもう出番ないのかな…(ブツブツ
>407さん
もうすぐ、もうすぐです。
そして自分のストックがなくなるのももうすぐ(ry
>408さん
( `.∀´)<失礼ね!
>409さん
今回で76話なわけですが。
やっと、バレそうな感じを出せました。ここに辿り着くまで何をやっていたのか…
主役に頑張ってもらわないと、もう、大変です・゚・(ノД`)・゚・
>ミッチーさん
トイレには、仲良く映ってる3人の写真という、まあ普通の写真だったわけですが…。
それはただのきっかけで、ここからまた怖くなるという(w
>411さん
ハラハラドキドキしてくださり有難うございます。
段々スローペースになるかもしれませんが、次回も、お付き合い下さい。
>名無しちゃむさん
圭ちゃん怖くてごめんなさいー・゚・(ノД`)・゚・
幸せな方向へ、どうか連れてってあげてください。ついでに、おいらも・゚・(ノД`)・゚・
- 419 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/04(土) 06:13
- 更新お疲れ様です。
もうすぐヤマ場ですね。
楽しみにしてます。
- 420 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/04(土) 21:57
-
――CHAPTER77
もう夏も終わりだというのに、汗をかいて道を歩いている男。
男は背広にビッショリと張り付いた汗を少しでも乾かそうと空気を入れる。
少しの間はスゥッと気持ちよかったが、それも、少しだ。
すぐにまた、ムゥッとした感じが肌にまとわりつく。
千葉県に来たのはいい。そして、市井という家を探しに来たのはいい。
だが、子供がいてしかも女の子で10代で、という条件にはまる市井家はそういない。
探偵の端くれ、聞き込みも慣れてはいる。
だがこれまでの聞き込みは、猫を見なかったか犬を見なかったかという単純なものだ。
今回、初めて大きい仕事が入ってきた。
そしてそれを今、任されている。
やっぱり女だっていう仮定は大きな間違いなんだよ……という気はしたが、
暑くて死にそうでも、依頼者である保田の頼みのため、男はこうして頑張っているのだ。
そして、とある一軒に辿りつく。
それは、意外と小さなアパートだった。
「すいませーん」
「はーい」
出て来たのは、お母さんらしき人。
「あ、どうもこんにちは」
「こんにちは……」
はははと愛想笑いする男をセールスマンと思ったのか、女の人は怪訝な顔。
けれど、それは、セールスマンよりタチが悪かった。
- 421 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/04(土) 21:57
-
「…あの、この家に娘さんは……」
「は? いますけどそれが何か…」
「ああ、あの、僕はこういう者でして」
慌てて名刺を取り出し、納得してもらう。
それでも、怪訝な顔は直してくれないのだが。
「……何か?」
「ああ、いや、そのですね」
ええと、ええとと唸る男。
出て来た市井という苗字の女の人は、どんどん怪訝な顔に。
不信感を抱かせないように尋ねることも出来るかもしれないのだが、男はそれが出来なかった。
男は、こういう大仕事に、慣れていなかった。
そして、プレッシャーにも弱かった。何より、口下手だった。
だから、もしかしたら違うかもしれないのに、直球でこんなことを聞いてしまったのだ。
「お、お宅の娘さんは、ひょっとしてこの人じゃないんですか!?」
「……はい?」
……言ってからしまったと思っても遅い。
女の人の前には、勢いよく出された、市井の写真。
確かめもせず、確信も核心もなく、いきなりそんなこと。
「…あの、これって今テレビとかに出てる2人組の男の子ですよね」
「そ、そうです」
「……私の家には、娘しかいませんよ」
「い、いやだから…」
市井は女という疑いがあってですね。もうめちゃくちゃになりながら言うと、あはははと大笑いされる。
- 422 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/04(土) 21:58
-
「誰がそんなこと言ってるんですか? 探偵さんも大変ですね、そんなことでこうして調べなきゃならないなんて」
「………」
「でも、ありえないですよ」
「そ、そうですよね、やっぱり……」
これじゃ恥をかきにきたようなものだ。
頭を下げて、すぐにその場を後にする。
「はあ……もうヤダ…」
恥かいて落ち込んで、男の顔は青くなる。
事務所に帰ったら保田に電話して、女なんていうのは思い込みだと言おうと思った。
だって、普通に考えたら有り得ないし。
保田の眼光を見て真に受けてこうして探して聞き込んだ自分が、恥ずかしくなってくる。
足早に千葉を去ろうした時、後ろから声をかけられた。
「ちょっと兄ちゃん、写真落としたよ」
「えっ?」
渡されたそれは、さっきの女の人に見せた写真。――市井だ。
「あらこれ、紗耶香ちゃんじゃないか」
「…紗耶香ちゃん?」
「違うの?」
「いやこれは……あの、タレントの市井って子なんですけど」
「あー。紗耶香ちゃんに似てる子か」
「あの…紗耶香ちゃんて」
「あそこのアパートに住んでる子だよ」
そう言ったおばさんが差したのは、先程男が訪ねた市井さんチ。
――有り得ないことが、起ころうとしていた。
- 423 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/04(土) 21:58
-
「世の中に3人は同じ顔いるってほんとだねぇ」
「……紗耶香ちゃんの年は?」
「確かこの子と一緒だったと思うけど」
「紗耶香ちゃんは、今何処に?」
「いや、紗耶香ちゃんにそっくりだったから市井さんに聞いたんだけどね、
『うちの紗耶香はイギリスに留学してるから違いますよ』って笑いながら言ってたから」
「……ありがとうございました!!!」
「いえいえ……って、なんだったんだろうあの人……ヘンな人だねぇ」
- 424 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/04(土) 21:59
-
――
「保田さん、保田さん!!!」
――「……何よ、うるさいわね」―
仕事中にかけるのも迷惑かなと思ったが、そんなこと気にしてられない。
事務所に帰ってきた男は、早速保田に電話する。
「ひょっとしたら、ひょっとするかもしれません!!!」
―「はあ? 一体何がよ? ちょっとそれより、あたし早く戻らないと後藤が待ってるんだけど」―
「市井ですよ、い・ち・い!!!」
―「………ホントに?」―
「僕、やりましたよ! 頑張りましたよ!!!」
本当に頑張ったのは、ベラベラと余計なことを喋りまくったおばさんなんだろうけど。
その場にいなかった保田は、当然その探偵を褒める。
- 425 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/04(土) 21:59
-
―「仕事終わったら行くから」―
「はいっ、お待ちしてます!!」
―「やれば出来るんじゃないの」―
「ははっ……」
きっかけは全部あのおばさんのおかげなんだけど。
それでも男は、保田に褒められたことが、保田の期待にやっと応えることが出来て嬉しかった。
電話を切ったのを確認し、おーしと気合を入れてみる。
「よーし、調べるぞ」
もっともっと頑張れる。もっともっと期待に応えたい。
猫や犬以外の依頼で初めて頼りにされた男は、探偵としてのプライドが出て来たのだ。
市井に恨みはない。
けれどこれは、れっきとした仕事。
依頼があれば、精一杯それに応える。
男は何も、悪いことはしていなかった。
純粋に、仕事をしているのだ。
悪いのは、依頼した保田なのか。
それとも、騙している市井なのか。
市井を好きになってしまった、後藤が悪いのか。
もうそれも、分からないところまできていた。
- 426 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/04(土) 22:00
-
川;VvV从<美貴なんか出番すらないよ…(ブツブツ
>419さん
ヤマ場がいっぱいあるんです…それを越えてもまたヤマが・゚・(ノД`)・゚・
もうしばらくお待ち頂けると幸いです。
- 427 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/04(土) 22:26
- 圭ちゃん怖いよー・゚・(ノД`)・゚・
- 428 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/04(土) 23:39
- わああああ〜〜〜〜!
怖さのあまり居ても立ってもいられません(笑)
でも圭ちゃんもごっちん大事のあまりだと思うと、
複雑ですね。
いつも楽しみに読んでます。更新が一番楽しみな作品です!
作者さんのペースでお体お大事に・・・。
- 429 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/05(日) 01:03
- 更新お疲れ様です☆
市井さんどーなるんだろう……
続き待ってます!
- 430 名前:ミッチー 投稿日:2003/10/05(日) 16:37
- 更新お疲れ様デス。。。
あ〜あ……おばさん…
余計な事言っちゃったよぅ…
市井ちゃん!!もうすぐバレちゃうよ〜!!!
- 431 名前:ちに 投稿日:2003/10/06(月) 14:00
- お〜、いつも楽しみに読んでおりますが、ついにここまで!
ちなみにこの探偵って名前ないですけど、作者さん、イメージはあるんですか?
主要登場人物をハロプロ関係の人で固めたい私としては、彼を
経塚さんとして読んでます(たいせー)。って、どーでもいいですね…
あと、いちよしの馴れ初めを書いてくれてありがとうです!&
从‘ 。‘从の出番は自分も気にしてました(w
それでは、作者さんのペースで、がんばってくださいね!
- 432 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/06(月) 17:32
-
――CHAPTER78
「僕、あれから吉澤くんの家とかも探しに行ったんです。そこで、やっぱりおかしなことが」
「おかしなこと?」
「ええ」
仕事が終わり次第駆けつけた保田は、今は例の探偵事務所。
以前までは頼りなさそうにしていた目の前の男が、ちょっと見ない間に変わった気がする。
保田としてみれば、こうして意欲的になってくれたことに感激さえ覚える。
いつもは聞き手役の探偵だが、今日だけは保田が聞き手役に回っていた。
「保田さん、吉澤くんと石川さんは幼馴染って言ってましたよね」
「うん」
「石川さんの家は分かったんですよ。だって本名だったし、探し易くて」
「そっか。幼馴染なんだから吉澤くんとの家はそんな遠くないはずだから、吉澤くんの家もそこから探せばよかったんだ」
「ええ。でも、おかしいんです」
「おかしい?」
覚えているだろうか。
いちよしの2人がファンを前にしてイベントをした時のことを。
あの時、ファンに「2人は幼馴染なんですか?」と尋ねられた吉澤。
答えは、「そうですね。実家近くなんで」だ。
そう、吉澤の口からも、家が近くだということを証明している。
「近くって言っても、ファンに向かって言ってたから大分ぼかして言ってるだけかもしれない。
でもね、僕は素直に石川の家から近くで吉澤って家を探したんですけど、一軒しかなかったんですよ。
石川さんの家から結構離れた所には、何軒か吉澤って家はあったんですけど…」
「その近くの一軒は…?」
「その家には、女の子しかいないんです。あとは小学生の弟2人」
「…だけど? おかしいところがあるんでしょ?」
「はい」
- 433 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/06(月) 17:33
-
女の子しかいないから、ここじゃないのかと思った。
けれど、さっきの市井でのこともある。
直接吉澤家に聞くのではなく、ガードが甘い近所ならどうか――と。
男は、近所に聞いてみることにした。
そこで、確信する。
「みんな、市井くんの時と同じく、この子はあそこの吉澤さんちのひとみちゃんに似てるって言うんですよ。
でもひとみちゃんは、今、北海道かどこかのおばあちゃんの家に行っていていないんです。………有り得ますか?」
「……有り得るワケないじゃない」
「ですよね」
いちよしのそっくりさん2人揃ってご近所さんが見ていないと言うのだ。
そんなこと、有り得ない。
「…でも、何? 市井くんと吉澤くんの名前は紗耶香ちゃんとひとみちゃんって言うの?
ははっ、スネオとヨネオよりも可愛いじゃない」
「……でもまだ、証拠はないんですが…」
「証拠は無理よ。事務所か家族か本人が認めない限りね。でも、ご近所さんの声で十分確信出来たわ」
「確信しても、証拠がなかったら……」
「証拠なくても、そのうち自滅するわよ」
というか、自滅するように仕向けてやる。
保田にとって、市井が女、そして吉澤も女だったことに確信を持てたのは、素晴らしいことだった。
- 434 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/06(月) 17:33
-
「ありがとう」
「え、あ、いや……」
予想してなかった保田の感謝の言葉に、男は赤くなる。
「アンタ、いい探偵になれるわよ」
「あ…ありがとうございます!!!」
先輩や親に言われるより、保田に言われたその言葉は男にとってとんでもなく嬉しかった。
「それじゃあ、世話になったわね」
「いえ」
初めての大仕事は、これで終わり。
保田を外まで送るため、一緒に事務所を出る。
車に乗り込んだ保田。
それを笑顔で見送るつもりだったのだが、1つ言うことを忘れていた。
「保田さん、」
「何?」
「……あんまり、その…やばいことは……」
「何よ、心配してんの?」
「………」
「……大丈夫よ」
大丈夫。きっと大丈夫。
男は保田のその言葉を、信じるしかなかった。
一種の恋だったのかもしれない。
矢口や市井達が怖がるその眼光に、男は惹かれていたのと同時に憧れていたのだ。
保田の乗った車の排気とともに、その気持ちも一緒に外へと出したのだけど。
「……さーて、仕事しますかぁ。……って、依頼ないじゃん」
- 435 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/06(月) 17:34
-
――
次の日。
いつも通り仕事だった市井達は、今日も元気にスタジオへと向かう。
「ほらー、さっさと歩きや」
「へいへい」
「返事ははいや、吉澤ぁ」
「はーい」
「はーいって伸ばすなアホ! っていうか、突っ込みさせんな!」
「…裕ちゃん、怒ったら皺増えるよ」
「えっ、うそホンマや……って、まだギリギリ20代のあたしにそんな心配さすな!!!」
マネージャーである中澤を意地悪くからかういちよし。
中澤もぷりぷり怒りながらも、楽しそうだ。
そんな3人の前方から、見覚えのある2人組。
「あっ…」
声をあげたのは市井。
視線は、前の2人組の内の1人、――後藤真希に。
同じテレビ局で収録してたとは、知らなかった。
気付いた後藤も、同じようにビックリしている。
「おー、ごっちんに圭坊やんけ」
同じく前の二人組に気付いた中澤は2人に駆け寄り、挨拶を交わしている。
中澤と話しながらも後藤はというと、チラチラ市井を見ているんだけど。
「…市井さん」
「え、何?」
ちょんちょんと服を掴む吉澤。
何を言い出すかと思えば、こんなこと。
「保田さんと目を合わせたらダメですよ……石化しちゃうから」
メドゥーサか、保田さんは。
そう突っ込もうと思ったか、有り得る話そうでやめておいた。
- 436 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/06(月) 17:34
-
だがいつまでも、奥様の井戸端会議みたいに話なんかしてられない。
両方のタレントとも人気なため、スケジュールは詰まっているのだ。
偶然出会えた再会に会話も出来ぬまま、市井と後藤は通り過ぎなければならない。
「バイバイ、いちーちゃん、よっすぃー」
後藤の後ろには保田がいる。
当り障りのない挨拶で、せっかく会えた市井とも後藤はお別れ。
すれ違う市井に、うぅ〜と小さく唸って寂しいよぅとアピールしてみる。
市井は気付いてくれたみたいで笑ってくれた。
それだけで次の仕事も頑張れそうな気が、後藤にはしてきた。
次の仕事へ元気よく足早に向かう後藤の背中を見ながら、保田は市井達とすれ違い様呟く。
「……バイバイ、紗耶香ちゃんとひとみちゃん」
「っ」
振り返ると、笑顔で見ている保田。
「ちょっと…!」
慌てた市井が止めるより先に、保田は先を行く後藤の元へと向かっていった。
「い、市井さん…」
「そ、空耳だよ空耳……」
市井は、吉澤にそう言うしかなかった。
- 437 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/06(月) 17:35
-
(〜^◇^)<オイラの出番はもうすぐだぞ!キャハハ!
>427さん
(;`.∀´)<またそのセリフ! 怖くないわよ!
>428さん
こんな話を一番楽しみにしてくださって、本当に有難うございます…。
楽しみを持続出来るように、こまめに更新をしたいです。あくまで希望です・゚・(ノД`)・゚・
>429さん
市井さんどうなるんでしょうか……考えるだけで自分も怖くなります(w
続きお待たせしました。
>ミッチーさん
いつバレるか、いつバレるか。そしてバレるまでにどれほどかかったのか…。
そしてバレる理由はなんて単純なのか…文章力のなさに泣けてきます。
>ちにさん
探偵さんの名前ですか……イメージとかはないです、ごめんなさい。
変に名前を出したり意識して書くと、思い通りに動かせないかなと思いまして。
从‘ 。‘从さんの出番は、やっぱり好きなので出してあげたいですね(w
というか、大分前に出てそれ以来出てないのに、覚えててくれてありがとうございます>从‘ 。‘从
- 438 名前:ちに 投稿日:2003/10/06(月) 20:55
- なるほど〜。書いてる方はやはり色々考えておられるんですね(何を今更…
ではまあ自分の中ではたいせーってことで(こだわるなぁ…まあシャ乱Q好き
なもんで…。市井関係の男と言ったら…。まことも最初のほうに出てたし。)
んなことより!ついに保田さん、その名前を言っちゃいましたね!こわい〜!
- 439 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/06(月) 22:33
- 怖いよぅ、怖いよぅ。(がたがた…
陰湿なのがさらに怖い…。
- 440 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/06(月) 23:00
- 更新お疲れ様です!
保田さん…恐いっす(泣)
いしよし、がんばれぇ〜!
- 441 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/07(火) 08:21
- 更新ありがとうございます。
いちーちゃん、ピンチ!?
策士保田に負けるなー!
- 442 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/08(水) 10:31
- 圭ちゃん…まるでス○ーカーのよう…
こわいよぅ・゚・(ノД`)・゚・
- 443 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/08(水) 18:08
-
――CHAPTER79
あの反応。あの顔。
試して言った結果、保田の予想は当たっていた。
ほんと、可愛らしい名前じゃないか。そう、とっても女の子らしい――。
芸能界、有り得ないことも有り得る。
まさか、つんくが、中澤がこんなことを隠してたとは思わなかったけど。
男よりもタチが悪い。
だが、男よりも別れさすことは簡単だ。
こんなことが知れたら、どうなるだろうか。
世間からファンの子達まで大変なことになる。
だが、保田にはマスコミより先に知らせたい人がいた。
「ねえ後藤」
「んっ?」
「おもしろい話してあげようか」
「えー、圭ちゃんのダジャレはおもしろくないからいいよ〜」
「……ダジャレじゃないわよ。それに、ダジャレもおもしろいし」
「どうだか」
あは、と笑う後藤に、少し怒りを覚えたがこの際気にしない。
それよりも大事なことがある。
「で、何? そのおもしろい話って」
「……聞きたい?」
「…自分から言っといてじらすの?」
「だって、後でそんなの聞きたくなかったって言われたら困るし」
「…それっておもしろい話なの、ほんとに」
「少なくとも、あたしにとっては――ね」
――また、だ。
保田が怖く見える瞬間。
後藤は、保田に気づかれないように息を呑んだ。
- 444 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/08(水) 18:08
-
仕事も終わり、今は保田の車の中。
渋滞中で、まだ当分家にも着きそうにない。
よってこの空間には、保田と後藤、2人きり。
矢口の言葉がまた頭を過ぎる。
信じている。保田を、心の底から。
そう、信じているためには、この瞬間もキチンと保田と向き合わなければならない。
後藤は、小さくうんと頷いた。
その声を聞き逃さなかった保田は、運転しているため顔を見られないことをイイコトに、笑った。
「あたしね、ずっと不思議だったのよ」
「……?」
「だって、謎が多すぎると思わない?」
要点を掴めない出だし。
誰のことを差しているのかも、後藤には分からない。
「急に出て来て、新人なのに事務所にむちゃくちゃ守られて、さ。
後藤の時でも、最初はあんなにガードきつくなかったわよね」
そこまで言われて、やっと保田の差している人が分かった。
「………それって」
「うん、市井くん達のことなんだけど」
「…やっぱやめる。別に聞きたくない。だってあたし、関係ないもん」
「――嘘つきなさいよ。付き合ってるくせに」
「っ!」
矢口から聞いていたから、保田が2人の交際を黙認しているのは知っていた。
だけど、こうして口に出されるのは初めてだった。
それは、「恋愛禁止」という2人にとってのNGワードでもあったからだ。
後藤だけじゃなく保田も口に出してしまえば、何かがおかしくなる。
そのきっかけを、今保田が破ったのだ。
- 445 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/08(水) 18:08
-
嫌な予感がしていた。
市井を良く思っていない保田の口から、市井のことが語られるのだ。
聞きたくないよ、聞きたくないよ。
不思議だとは思っていた。謎が多いとも思っていた。
でも出来れば、それはそのままでもいいと思っていた。
――それなのに。
おかしくなる、おかしくなる。
やばい。やばい。やばい。
この雰囲気は、とてつもなくやばい。
「いいよっ、圭ちゃん! もう、いいから」
「ダメよ、後藤は聞かなくちゃいけない。だって後藤は、騙されてんのよ?」
「騙されてても何したっていいよ、あたしはいちーちゃんが――」
「――好き、なんて言わないでよ。だってあの子、…女の子なのよ?」
「え………?」
どうやって発表してやろうか。
色々と練っていたのだが、なんだかあっさりとしてしまった。
残念なのは、外が薄暗く車内に電気も点いていないため、後藤がどういう表情をはっきりしているか見れないところだ。
途中で後藤がこんなに拒絶したのは意外だった。
それは、後藤も何処かおかしいと思っていたからだろうか。
それでも後藤は、知ることを拒んだのだ。
後藤の嫌な予感は、当たった。
そんな事実、頭の片隅もなかった。思ったこともなかった。
だけど、それを知ったことで、おかしかったことが次々と辻褄が合ってくる。
- 446 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/08(水) 18:09
-
「あはっ……ありえないよ…」
「あたしも、証拠はない。でも、確信はある。
信じたくなかったら、直接市井くんに会って、男っていう証拠をあたしに見せてよ」
「いちーちゃんは、男だよっ…」
「だから、証拠はあんの? 裸を見たの? セックスをしたの?」
「っ、そ、そんなの、圭ちゃんに言うことじゃない!」
「でもあたし、あの子が男っていうの信じられないんだもん。だから、その証拠をあたしに与えてよ」
「与えてあげるよ……与えてあげればいいんでしょ…」
呟いて、渋滞中の車から降りて何処かへ消える後藤。
保田は、止めなかった。
むしろ、何処かへ消えてくれることを願っていたのだ。
行き先なんか、考えなくても分かる。
後藤は、証拠を探しに行ったのだ。
となれば、行き先は1つ。
「……全部、後藤のためよ」
後藤を騙していたなんて、許せない。
大きな罰を与えてもらえばいい。
後の後藤は、キチンと自分がなんとかする。
後藤は、スターになれる唯一の可能性なのだ。
保田の夢なんだ。
後藤が去っても一向に抜け出せない渋滞は、何処かへ間違って入ってしまった保田の想いのようにも見えた。
- 447 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/08(水) 18:09
-
――
仕事も終わり、ゴロンとベッドの上で横になっていた市井。
このまま目を瞑っていたら、すんなりと寝れそうなくらい、身体は疲れている。
けど今の時刻は、10代の少年少女が寝るにはまだ早い時間だ。
眠ってしまったらなんだか時間がもったいない気がして、寝ないように、目を瞑らないようにベッドに横になっている。
起きて掃除でもしよう、なんていう気にはなれなかった。
幸い、こうして横になっているだけでも、疲れは取れているようにも感じたし。
だが、そんな市井の耳に、何か声が聴こえる。
吉澤かと思ったが、吉澤は市井と別な仕事があるため、今はまだ寮には帰ってきていない。
当然、吉澤についているマネージャーの中澤でもない。
じゃあ誰か客だろうか。
客は寮の管理人を通さないと入れないことになっている。
そしたら、この声は、寮の管理人と誰かが話している声なんだろうか。
テレビをつけていなかった市井の耳には、そんな些細な声も耳に届いた。
本当は、届かなかった方がよかったのかもしれない。
だけど気になった市井は、部屋を出て、管理人室の方へと向かったのだ。
「あっ、市井くんダメだよ出てきちゃ!」
「すいません……誰かお客さんですか?」
「そうだけど…会わすワケには…」
事務所からの命令である。
しかも、そのお客さんは、
「いちーちゃんっ」
――そう、後藤だった。
- 448 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/08(水) 18:10
-
とうとうこの時がやってきました。(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
>ちにさん
ただ単に名前をつけるのがめんどくさいという理由もありますが(w
保田さん、ついに言っちゃいました。どうなることやら…
>439さん
(;`.∀´)<陰湿ってなによ!そんなに怯えなくたっていいじゃない!
>440さん
いしよし、頑張らせたいんですが…その前に市井さんに頑張ってもらいます、すいません。
>441さん
こちらこそ読んでくださり有難うございます。
ピンチです、いちーちゃん。負けないように頑張りたいです。
>442さん
(;`.∀´)<今度はストーカー……何よ!
- 449 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/08(水) 18:25
- どうでるごっつぁん。
ついにこの時が来ましたね…
次回の更新を心待ちにしています。
- 450 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/08(水) 18:31
- 更新ありがとうございます。
おおおっ!とうとうきてしまった!
いちごまの愛は揺るぎないと信じてます!
- 451 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/08(水) 18:51
- 更新お疲れ様です!
とうとうきましたね、この時が…
私もいちごまを信じてます!
いちー君がんばれ(>_<)
- 452 名前:名無しちゃむ 投稿日:2003/10/08(水) 20:33
- やっべー超良いところっすね。
んー。やっぱ圭ちゃん・゚・(ノД`)・゚・
いちごま愛は崩れてほしくないっすねー。一途なごまが可哀相だ
ダメさん更新お疲れさまでした、次回期待してますヽ^∀^ノ
- 453 名前:ミッチー 投稿日:2003/10/09(木) 13:13
- 更新お疲れ様デス。。。
圭ちゃん恐すぎ!!
ごっちんが可哀想…
市井ちゃん頑張ってね!!!
私もいちごまを信じてます!
- 454 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/12(日) 23:39
- うひょーードキドキだぁぁぁー
ごっちんどうする?どうする?この先どうするー?(byメロン記念日)
- 455 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/13(月) 02:32
- いや、自分は保田さんの愛情を信じ続けたいなあ。
この先どうなるにせよ…
みんながみんなを信じてくれ。
- 456 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/13(月) 05:33
- 愛か執着か…
ほんと紙一重ですね。
そこが怖い。
- 457 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/13(月) 17:27
-
――CHAPTER80
来てしまったものは仕方がない。
むしろ、このまま表で暴れてもらう方がこっちとしては困る。
管理人になんとか許可をもらった市井は、後藤を部屋に入れてあげる。
けれど、何しに来たのか、後藤は黙ったまま。
市井はちょっと困っていた。
「後藤、立ってるのもしんどいだろ…座れよ」
「…………」
「……ご、後藤?」
いつまで経っても口を聞いてくれない後藤。
こうして会うまでに、市井は後藤になんかしたっけ……色々考えてみる。
最後にあったのは、今日の仕事の時。
廊下ですれ違った、あの時だ。
その時は、別に普通だったはず。
「な、なあ…後藤、一体どうした?」
ポンと肩を叩いて刺激を与えようとしたのがいけなかったのか。
いきなり、その手を掴まれる。
後藤は、何気に怪力だ。
力を入れてないつもりでも、意外に非力な市井にはとんでもなく痛く感じる。
「ちょ、ちょっとごとーちゃん……い、痛いんですけど?」
「………」
それでも離してくれない。
それどころか、更に握られる手。
ああ、ちょっと待って。マジ痛い。
かといって乱暴に振り解くのはどうかと思われた。
「うわ、ちょっと見てよほら、赤くなってんよ……いた、いたたっ」
冗談ぽく言って離してもらおうとする作戦も、効かない。
どうしたら離してくれるんだこの人は、と思った時だった。
- 458 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/13(月) 17:28
-
「いちーちゃん」
「え?」
「いちーちゃん、あたしとセックスしようよ」
「え、ええっ!?」
「セックスしてさ、結婚してさ、子供作ろうよ。あたし、いちーちゃんが傍にいてくれたら、それだけでいいよ」
「はっ、ちょ……何言って――」
「ねえ、しようよ」
部屋に入ってから、ずっと俯いていた後藤。
その後藤の顔が、今やっと持ち上げられる。
――その顔は、泣いていた。
「どどどうしたんだよ後藤っ!」
「……なんでもない、なんでもないよ…」
「なんでもないって…じゃあなんで泣いてんだよ!」
いきなり来て。いきなり泣いてて。
今日会った時は、普通だったのに。
今日、会った時は………。
そうだ。
今日、後藤は普通だった。
でも、保田はそうじゃなかった。
…まさか。そんな、まさか。
電話などで親以外で久しぶりに呼ばれた、本当の名前。
正直、そんな名前だったことも忘れていたぐらいだった。
あれは、決して空耳なんかじゃなかった。あの時見た保田の笑顔は、嘘なんかじゃなかった。
保田は、それを後藤に伝えたんじゃなかろうか。
そして後藤は、ここに来たんじゃないだろうか。
そうだとしたら、もう、ゲームオーバーはそこまで来ている。
- 459 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/13(月) 17:28
-
泣いている、なんて、おかしい。
どうして、会う前から泣いているのだ。
信じていたのなら、泣く事も何の疑いもなくここに来たはずだ。
それなのに、後藤は泣いている。
――もしかしたら後藤は、不安だったんじゃないのか。
その不安が、どういう風に言ったのかは知らないが、保田の言葉で大きくなったとしたら……。
知らず知らずの内に、市井は後藤を不安にさせていたのだ。
だからこうして、後藤は市井の元へやってきた。
泣きながらでも、市井を信じているから。
けれど、その期待を裏切ってしまったら、後藤は、市井はどうなってしまうんだろう。
今度は市井が何も言えなくなってしまう。
「ねえ……いちーちゃん。あたしを、抱いてよ」
「…………」
「ねえ、いちーちゃんっ」
「…………」
「あたし、知りたいよっ。もっともっともっといちーちゃんのこと!」
「…………」
「何考えてるとか、いつも何してんだろうとか、あたしのこと好きなのかとか…」
「好きだよ、後藤のことは…」
「じゃあ、抱いてよ」
「…………」
「……黙ってないでさあ、なんか、言おうよ……」
限界、かなぁ…。限界、だよね。
後藤がこんなにも困惑している。
保田がすべてと言っていいほど知っている。
それなのに、このまま続けていけるわけがない。
ずっと、我慢していた。嘘をつきとおしていた。
それなのに、結局はこんなあっけない幕切れ。
こんなことになるなら出来ればちゃんと、自分の口から最初に言いたかった。
…言わなければ、いけなかった。
そう、それは、もう、最初の時に――。
- 460 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/13(月) 17:29
-
「いちーちゃん、ねえ。あたしは、いいんだよ? いちーちゃんと結ばれたらもうこれ以上ないくらい幸せだもん…」
そう言って、ギュウッと握り締めていた手を離し、ゆっくり近付いてくる後藤。
手を掴んだ後藤の次の行動は、市井を抱きしめるといった行動だった。――が。
「……なんで」
それを、市井に拒絶される。
「……無理だよ、市井に後藤は抱けない」
手は繋いでくれる。キスはしてくれる。
だけど、抱きしめてはくれない。抱いてはくれない。
芸能人だからと言っても、普通に付き合っている男女の関係としてはおかしい。
それでも、後藤はよかった。
だが、保田からの突然の告白により、後藤もおかしいと思い始めた。
どうして抱きしめてくれないんだろう。抱いてくれないんだろう。
証拠を見せてよ、と保田に言われた。
証拠を見せてやるために、こうして後藤は来た。
なのに、どうして泣いているんだろう。
なのに、どうしていちーちゃんは抱いてくれないんだろう。
「抱けないっていうのは……あたしを好きじゃないから、だ」
「違う」
「じゃあ、あたしにそんな魅力ないからだ」
「違う」
「じゃあ、じゃあ……」
「違うんだよ、後藤」
違うんだ、そうじゃないんだ……今にも泣きそうな市井の声。
――もういいよ、もう言わないで。
なのに、市井は続ける。
「後藤が悪いんじゃない。市井が、すべて悪いんだ」
- 461 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/13(月) 17:29
-
「……もう、後藤も分かってきてるはずでしょ? 保田さんに聞いたんでしょ?
そうだよ、市井は保田さんの言う通り――」
「違う!!! いちーちゃんは、男だよ! いちーちゃんはっ…いちーちゃんは………」
「……後藤」
「…ウソだよ。あたしは、信じないよ…? だって、証拠ないもん、証拠……」
「…証拠ならあるよ」
ごめんね、と小さく謝り、服を脱ぎ出す市井。
後藤は、尻餅をつくことも、驚くことも、後ずさりをすることも出来なかった。
ただただ、呆然と、市井を見ていた。
「……市井は、後藤と同じなんだよ」
太ってもいないのに、胸にある脂肪。
そう、後藤にもそれと同じものがある。大きさや形は違うけれど。
「………抱けないんだよ。結婚出来ないんだよ。子供作れないんだよ、こんな身体じゃ……」
「…ぅあ……ぁ…………」
「ごとー…ごめん………ごとー」
「ウソだ…ウソだ………ウソだあぁあぁああ!」
「ごとおっ…」
- 462 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/13(月) 17:29
-
>449さん
ついにこの時が来てしまいました…更新共々長らくお待たせして申し訳ありませんでした。
>450さん
とうとうきました。いちごまの愛……が、頑張ります。
>451さん
いちーくん、ほんと頑張ってくれないとおいらが困ります(w
>名無しちゃむさん
超良いところで切ってすいませんでした。
ごまが可哀想なのは、しばらく続きそうです…す、すいません。
>ミッチーさん
保田ヲタな方に怒られないかといつもビクビクしてます…。
ほんと、色んな意味で申し訳ない。
>454さん
ごっちん、こんなことをしちゃいました!(やっちゃった!(byタンポポ)
>455さん
保田さんを信じてくれて有難うございます。
この先、どうなってもそれでも信じていてくださると助かります。
>456さん
怖がらせてしまい申し訳ないです。
紙一重を保田さんはどこかで越えてしまったので、早く気付いてほしいのですが…
- 463 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/13(月) 20:59
- なんてとこで切るんだよぅ・゚・(ノД`)・゚・
続きが気になり過ぎて眠れない…
- 464 名前:名無しちゃむ 投稿日:2003/10/14(火) 00:40
- あー・・・。ここまで来ちゃいましたね・゚・(ノД`)・゚・
ちゃむの気持ちが痛いっす、言葉に表しきれないけど。凄くなんつーか・・・
カミングアウトってすっげー勇気が要りますよ
ごま・゚・(ノД`)・゚・愛がデカイから余計ショックかと
保田さーん本当に頼みますよ(´・ω・`)ショボーン
ダメさん乙っす。
- 465 名前:ミッチー 投稿日:2003/10/14(火) 16:55
- 更新お疲れ様デス。。。
つ、ついにごっちんが真実を知ってしまったあぁぁぁ!!!
なんか、こっちまで苦しくなっちゃいました。
ガンバレごっちん!ガンバレ市井ちゃん!
次回期待。。。
- 466 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/14(火) 21:11
- ううっ…せつないっす(涙)
ごま〜、真実の愛を信じるんだ!
- 467 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/14(火) 21:24
- クライマックス…
なんだろう、文章の勢いからして、すごい。ぐいぐい引き込まれます。テンション高い。
息詰めて次回を待ちます。
>>464,465
頼む! 頼むから、ネタバレはやめてくれ。土下座する勢いで頼む。(なにがネタバレかわからんということはなかろうな)
- 468 名前:和尚 投稿日:2003/10/15(水) 23:04
- 2人とも切なすぎるぞー!!
次の更新が気になりすぎて不整脈が・・・・。
- 469 名前:G 投稿日:2003/10/15(水) 23:55
- うわぁぁぁん!!
ごちーん!!
いちーちゃーん!!
二人には是非、この試練を乗り越えてほしい・・・ ゜・(ノД`)・゜・。
更新、乙でした。
- 470 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/16(木) 18:15
-
――CHAPTER81
その日、矢口真里は死にかけだった。
それは、なぜか。
明日を生きるお金が、もうないのだ。
残金100円。
矢口真里は、死にかけだった。
この矢口真里という人物は、反省とか学習能力とかがまったくないらしい。
案の定、これだ。
明日暮らす家のことも心配になりながら、残金100円のために100円で買える晩ご飯を探し歩いている。
余裕ぶっこいて、石黒が与えてくれた仕事やらもサボっていたのがまずかった。
気付けば、恋人のカメラくんに尽くしすぎてこの有り様。
カメラくんはいつまで経っても新品そのものなのに、矢口はというと空腹で今にも倒れそうだ。
「はら……はらへったよぉ…」
カメラを売れば、こんなにフラフラにならず、フランス料理でも食べているかもしれない。
だけど矢口は絶対にそれは出来なかった。
何より、稼いだお金を半分以上カメラに使っているのに。
自分の命より、このカメラの方が大事なのだ。
でも、命とお金がまだ少しでも残っている内は、まだ死にたくない。
フラフラになりながら、ふと視線を上に向けると、そこには有名なファーストフード店があった。
安く売る、というその店では、残金100円で買えるのもあった。
これ幸いとばかりに、しぼんでいた尻尾を元気に振り回しながら店の中に入る矢口であった。
- 471 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/16(木) 18:16
-
――
「いただきまーす」
顔は笑顔。口には一番安いハンバーガー。
矢口は今、至福の時を迎えていた。
いつもは極上パスタなどマンションに負けない高級品を好んで食べる矢口だったが、この際言ってられない。
お腹が空いている今は、なんでもおいしいのだ。
出来たてのそのハンバーガーを、笑顔で口に入れようとした時だった。
――ドンッ!
「うおぉっ!?」
背中に誰かがぶつかった感触。
背も低く空腹のためその衝撃に持ち堪えることの出来なかった矢口の身体は、前に傾く。
その時、一瞬カメラを気にしたのがいけなかった。
傾いたところで首にかけていたカメラが前の鉄柱にぶつかりそうになったのを、咄嗟に防ぐ。
――が。
慌てて両手で防いだことで、両手で持っていたハンバーガーは、簡単にグシャリと地面に食われてしまった。
「や、やぐちのばんごはん……」
こんなの、有り得ないよ。
今さっきまで自分の手の中にあったハンバーガー。
自分の胃の中に収まるはずだったハンバーガー。
確かに、カメラの方が大事だ。でも、今はハンバーガーも同じくらい大事だったのだ。
「誰だよ………」
殺してやる、とまではさすがにいかないが、こらしめてやる。
絶望感漂いまくっていた矢口の瞳に、復讐という名の炎が光る。
- 472 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/16(木) 18:16
-
ギロッと、保田に負けず劣らずの眼光で周囲を睨む。
真後ろにいたカップルはその勢いにビックリしてしまう。
「……今、ヤグチにぶつかった奴どこいった……」
「あ、あ、あっちです」
「あああの、髪の長い女の子です…」
「…チッ!」
怯えたカップルが言った該当する子を探してみると、もう、あんなに遠い。
空腹の矢口が走っても間に合うか、だ。
それでも食べ物の恨みは怖いため、カメラを気にしながらもダッシュで走る。
けれど、一向に追いつくどころか姿さえも見えなくなってしまった。
「……ちくしょっ、逃げられたか!」
…髪の長い女にしてみれば、矢口が勝手に追いかけているだけなんだが。
走るのも疲れ、歩くのにも疲れてきた。
それでも執念だけで探していると、神様は優しかった。
その、髪の長い女がいたのだ。
同じく走って疲れたのか、暗い道路の端っこで倒れそうになっている。
「…………」
一瞬、声をかけるのはどうかと思った。
…だって、彼女は泣いていたから。
それでも、謝ってはもらいたい。
もしよければ、ハンバーガー代を弁償してもらいたいくらいだ。
けれど、矢口がかけた言葉は、決してその子を責めるような言葉ではなかった。
- 473 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/16(木) 18:17
-
「…おい、どうしたのさ」
チョンチョン、と反応を窺うようにつっつく。
けれども、反応しない女の子。
長い髪がアダになって、顔も見えない。
「おーい……」
本当だったら、こんな心配してる暇なんかないのに。
自分ってこんなお人好しだったんだろうか、矢口は柄にもないことを考えてしまう。
それでも、放っておけず、どうしようか立ち往生。
お腹空いたよぅ。
立ってるのも疲れたよぅ。
カメラくんに埃がついちゃうよぅ。
いいかげん、決断する時だ。
放置か、関わるか。
はぁ、と一度溜息をついてから、来た道を矢口は引き返す。
矢口は、放置を選んだのだ。
「…………」
そのまま無言のまま引き返していると、自分がさっきまでいた場所の方で冷やかしたような声。
「ねえキミ〜、こんなとこで何やってんのぉ?」
振り向くと、そこには矢口の嫌いなブ男のしかもおっさん。
どうやら酔っ払っているおっさんは、女の子に絡んでいる様子。
……放っておけばいいのに。
自分でも気付かなかったお人好しという性格は、矢口の身体を反対方向へと変える。
- 474 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/16(木) 18:17
-
「おいおっさん」
「ああ?」
「アンタだよ、アンタ。何、今時エンコーなんか流行んないよ?」
「なっ…」
「こんな子誘うんならさぁ、オイラ誘ってよ。ね? はい、10万。10万でいいよ」
「あ、アホか! そんな金あるかよ! そそそれに俺はエンコーなんかしようとしてないんだから…」
「じゃあ、早くどっかいけよ」
「……っ」
シッシッと邪魔者はあっさりと追い出し、またそこには矢口と女の子の二人だけになる。
相変わらず、女の子は泣いたまま。
矢口はいいかげん苛立ってきた。
「あのさ。別にどうでもいいけどさ、泣くんなら家とかで泣けよ。気になるんだよ」
「……………」
「……っていうか、いいかげん何か言えよ、ん?」
無理じいはするつもりはなかった。
しかし、ちょっとだけ持った肩は力が入ってなかったのか、簡単に動いて、その反動で髪に隠れていた顔が見える。
「ごっ……後藤…真希、じゃん」
――何かの因縁だろうか。
いいかげん、勘弁してほしいと思った。
- 475 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/16(木) 18:18
-
(〜^◇^)<キタ━━━━━━━━━!!!!
>463さん
も、申し訳ないです(w
更新しました。
>名無しちゃむさん
とうとうここまで来てしまいました…こ、ここから更新するのが更に苦しくなるという(w
散々伸ばし伸ばしにしていたカムアウト。
それによってみんながどうなのか、もうしばらく様子を見ていてくれると助かります。
>ミッチーさん
真実知っちゃいました…うああ。
次回、こんな感じです。いかがでしょうか…
>466さん
うわーん、切なくてすいません・゚・(ノД`)・゚・
>467さん
テンション高いですか、有難うございます(w
散々皆さんをお待たせして勢いもなくなっていましたが、今度はつまらず、最後まで突っ走りたい…です。
>和尚さん
すいません、お待たせしました(w
>Gさん
市井と後藤の2人にはつらい思いをさせてるというのは分かってます…
試練、乗り越えさせてあげたいです。
- 476 名前:ミッチー 投稿日:2003/10/17(金) 13:31
- 更新お疲れ様デス。。。
最近、常にドキドキしながら読んでます。
久しぶりに矢口登場っすね。
泣いているごっちんを見て矢口はどうする!?
気になるねぇ…
頑張ってください!
- 477 名前:G 投稿日:2003/10/18(土) 00:18
- 更新お疲れさまです。
おぉーここに来てこの出会いですか・・・
この人が救世主となるのかそれとも・・・
- 478 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/20(月) 17:57
- うへー…。
期待。最高。
- 479 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/28(火) 19:45
-
――CHAPTER82
空腹で倒れそうな矢口から想像もつかないような、豪華な部屋。
その豪華な部屋のせいで矢口は苦労しているんだけど、矢口は退却せずに今もこうして住んでいる。
そんな豪華な部屋に、なんとまあ珍しい珍客が。
天下のアイドル、後藤真希だ。
普通ならここでココアや紅茶なんかを出すものなんだろうが、生憎矢口の家にはそんなものはなかった。
塞ぎこんでる後藤の目の前には、水道水が寂しく置かれている。
「…まあ、なんだ。まずい水で悪いけど、ちょっと飲んで落ち着きな?」
「………」
「………はぁ」
何度声をかけても喋ってくれない。
泣いていたのは収まったのだが、今度は放心状態とでも言おうか。
どっちにしろ、矢口は困り果てていた。
- 480 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/28(火) 19:45
-
家に入れるつもりなんかなかった。
もう2度と保田に関係する人とは関わりたくなかったのだし、まして後藤は矢口にとって仕事の相手だ。
なのに、なんで今こんな状態なんだろう。
声をかけてもうんともすんとも言わない後藤。
それを無理やり起こして、不恰好を承知で後藤をここまで連れてきたのだ。
しかし、場所を変えてみたところで、後藤の様子は変わらない。
「……とにかくさぁ、オイラじゃちょっと手に負えないよ。
…………ものすごく怖いんだけど、圭ちゃんに連絡するけど、いい?」
もしかしたら仕事を抜け出してきたのかもしれない。
そうだとしたら、保田は怒っているだろう。
しかも、その後藤をかくまっているのが矢口だと知ったら、どうなるか。
怖いけど、矢口にはもう後藤は手に負えなかった。
- 481 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/28(火) 19:46
-
「でもオイラ、メモリー消しちゃったんだよ……悪いけど、携帯貸してくれる?」
「…………」
聴こえてないのだろうか?
相変わらず無言で、反応もしない。
でも矢口は返事を待たず、後藤が持っていたバッグから携帯を取り出す。
ちょうどその時、その携帯が鳴って。
「ぅおおっ、ビビった……。誰だ、って…【いちーちゃん】って、市井くん?」
「っ…」
「おい、鳴ってるよ。出なよぉ」
「………」
市井、という言葉を聞き、小さく反応する後藤。
この時はまさか市井が原因だなんて知らないもんだから、少々乱暴になりながらも電話に出ることをすすめる。
「どうしたのさ、まさか喧嘩でもしたの? でも、ほら、こうして電話してきてくれてんだし…」
「……ゃ…」
「は? 何?」
「――嫌だって言ってんのっ!!!!」
「わああっ」
「ハァッ……ハァッ……」
いきなりの大声に、矢口はびっくりしてしまう。
そのびっくりした拍子に思わず、通話ボタンを押してしまった。
―「…っとお………」―
同時に床に落としてしまったため、市井の声ははっきり聴こえない。
後藤は、その携帯を拾うこともしなければ、その声を聴こうともしない。
いやいや、と首を振り、両耳を押さえ続けてる。
- 482 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/28(火) 19:47
-
「切ってよっ、もう、切って!!」
「え…あ、ああ……」
「ウソなんかききたくない……もうウソなんか……っく、ぅ〜……」
「わ〜っ、もう切ったから! ほら、切ったから! だから、もう泣くなよぉ〜…」
「ンッンッ……ハァッ……ック………ハァ〜……ぅ…」
「ほら、ちょっと落ち着こう…?」
ひきつけを起こしている後藤の背中を、優しく撫でる。
人の心配なんかしたのは、矢口にとって久しぶりだった。
しかも、相手は後藤真希。
慰めている一方で、不思議とお姉さんぶっている自分の様子が可笑しかった。
――
しばらくして、落ち着いた後藤からすべてが語られる。
何もかも、矢口にとっては衝撃だった。
しかし、直接関わっていない矢口でもこんな衝撃的なことなのに、
物凄く関わっている後藤の事を考えると、慰める言葉も何も浮かばない。
ただ、呆然とするしかなかった。
「……ありえないよ、こんなの」
「…………」
「なんかもう、わかんない……信じられないよ、誰も…」
「…………」
「……あはっ」
プツリと何かがずれたのか、急に笑い出す後藤。
「ははっ……ははは…はっ………っ…」
「…ごとう………」
- 483 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/28(火) 19:47
-
後藤の目の周りは、もう真っ赤で。
彼女が、矢口と会う前にどれだけ泣いていたのかは、十分に分かる。
それでも、泣いても泣いても泣き足らない。
泣きたくないのに、涙が出て来てしまう。
「…でも、なんかワケとかあったんじゃ――」
「ワケがあったから何!? ワケがあったからってあたしはずっと騙されてたの!? 嘘つかれてたの!?!」
「………ごめん」
後藤をフォローする言葉も出ず、向こうをフォローする言葉を口にすれば、後藤がまた泣く。
喋らなければ一番いいのかもしれない。
そう思って黙っていると、静かな空間に後藤のすすり泣く声ばかり。
助けて家に連れてきたのはいいが、結局矢口にはどうすることも出来ないのだ。
「…いっ、1日だけでいい………1日だけでいいから、ここにおいて…ングッ……」
電話にも出ない後藤。
それならば、直接会うしかない市井。
だったら、家が一番危険だ。
けれども1日市井を避けただけでどうにかなる問題ではないと思われた。
「…じゃあ、今はさ、ここ、何もないけど……それでよければ、気の済むまでいろよ……
別においらが邪魔なら、実家にでも帰っておくからさ」
「……………ありがとう」
「べ、別に……声かけたのはオイラだし」
礼を言われると思っていなかった矢口は、柄にもなく照れてしまった。
自分で言っておいて、何を言ってんだろうと思う。
気付けば、また後藤を助けてる。
でも、そんな話を聞いておいてはいさよなら、は矢口には言えなかった。
………誰だって、そうかどうかわからないけど。
- 484 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/28(火) 19:48
-
「で、でもさ、家の人か圭ちゃんには最低連絡しておいた方がいいよ」
「………なんで?」
「え…だって、心配するかもしれないし。それに、後藤、仕事もあるじゃん…」
「……お母さんは心配するかもしれないけど、…圭ちゃんが心配するわけないじゃん。ははっ」
「な、なんでだよ」
「…あたしは、聞きたくないって言ったんだよ………なのに、圭ちゃんはあたしの事考えずに言ったんだ。
そんなの、知りたくなかったっ……それに、圭ちゃんから聞いたあたしの立場って何…?
圭ちゃんはあたしといちーちゃん別れさせればそれでよかったんだよ、
あたしの事なんか、あたしの気持ちなんか、どうでもよかったんだ…!」
後藤の為、と言い張る保田。
だけど実際は、そんなの全然為になんかなっちゃいない。
後藤の為を思って言った保田の行動も、保田の言葉も、後藤にとっては何1つ嬉しくなかったのだ。
――結果、後藤は壊れた。
保田は、ものすごい勘違いをしていた。
「信じてたよ……好きだったよ、圭ちゃんのこと………でも、圭ちゃんは本当にあたしの事大切なのか分からなくなったよ…。
あたしは…あたしはぁ、圭ちゃんが思ってるような子じゃないんだよっ、あたしはまだ子供なんだよぉ……」
そんなこといきなり言われても、受け止めれる自信なんかない。
後藤は、保田が思っているよりずっとずっと、子供だったのだ。
大切にしてくれてると思ってた。分かってくれてると思ってた。
ずっとずっと傍にいた。ずっとずっと守ってくれていた。
楽しいこともあったし、悲しいこともあった。
それでもこの世界でやってこれたのは、傍に保田がいたから。
――なのに。
近くに居すぎたせいで、分からなくなってしまったのかもしれない。
お互いが思っていること、考えていることが。
保田が起こした勘違いは、これまでの後藤の信頼をすべて無くすには容易いことだった。
- 485 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/10/28(火) 19:48
-
お、遅くなって申し訳ありません。
これから、ストックが段々削られてきましたので、また更新ペースが落ちるかもしれません…モゴモゴ。
>ミッチーさん
ほんと久しぶりに矢口登場です。
矢口の時代です。矢口大好きです。頑張ります。
>Gさん
救世主となるか、はたまたデビルと化すか…。
その結果はもうしばらくお付き合いしてくださいますと、分かるかと思います。
>478さん
有難うございます。
遅い更新ですが、期待に応えれるように頑張りますので。
- 486 名前:G 投稿日:2003/10/28(火) 22:44
- 更新お疲れ様です。
矢口なんて良いやつなんだぁぁー!!
優しいくせに優しくないフリをする矢口(・∀・)イイ
ごちーんは・・・オイラも一緒に泣くよ・・・・゚・(ノД`)・゚・。
- 487 名前:ミッチー 投稿日:2003/10/29(水) 00:32
- 更新お疲れ様デス。。。
矢口は優しいねぇ…。
ごっちん…かわいそう…
市井ちゃん!頑張ってごっちんを救うんだ!!
矢口!協力してあげて!!!
- 488 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/16(日) 23:35
- 保全。
- 489 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/22(土) 19:58
- 最近ここ発見しました。いいすねー。
個人的にはいちごまにそこまで萌えないんですけど、これで開眼できそうです(w
しかしこのスレの発見とクライマックスが同時……。く、くるしい……(w
お忙しいでしょうが楽しみに待っております。更新待ってますねー!
- 490 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/23(日) 00:01
- 下げましょう。
ageちゃったら落としましょう。
- 491 名前:489 投稿日:2003/11/23(日) 02:39
- >>490
うあごめんちゃいミスってもた。
- 492 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/29(土) 23:53
- 作者さん頑張れ
- 493 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/01(月) 01:07
- あとちょっとだよ!もうひと踏ん張り!
応援しとります。。
- 494 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/11(木) 22:50
- まったり保全しながら待ってるので放置だけは…
- 495 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/14(日) 18:40
- 待ってるべさ〜
- 496 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/20(土) 19:23
- 最高だべさ。
いつまででも待つ。オイラは。
- 497 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/12/20(土) 21:28
-
――CHAPTER83
「………おかしいわね」
何度かけても繋がらない電話。
まさか、落としたなんてことはないだろうな、と一瞬考える。
でもそれもすぐに取り消される。
なぜなら彼女は、首から携帯を提げているからだ。
紐が切れない限り、落とすことなんてまあありえない。
当初の予定では、もうとっくに向こうから電話がかかってきているハズだった。
それなのに、依然としてかかってこない。
それどころかこうして電話をかけてみても、繋がらない。
「おかしいな……後藤は、もう他に何処にも行くところなんかないはずなのに」
市井と和解した、なんてことは有り得ないと思う。
言った後に後藤はあれだけショックを受けていたのだ。
保田の言った事が本当に真実だとしたならば、後藤は更にショックを受けたハズだ。
そして、ショックを受けた後藤を自分が、保田が癒す。
これで完璧だったハズなのに、当初の予定と少しずれてしまった。
今頃後藤は、何処にいるんだろうか。
まさか矢口の所にいて、自分を許せないと語ったとは知りもしない保田は、少し焦る。
明日もたくさんの仕事が入っているのだ。
後藤にもそれはもちろん伝えている。
でも保田は、探すという行為はしなかった。
後藤を、信じていたから。
明日になれば仕事に、自分の元に戻ってくる――そう信じていた保田は、携帯電話を置き、眠りについた。
- 498 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/12/20(土) 21:28
-
――次の日。
保田がいつものように後藤の家に迎えに行くと、母親が出て来る。
出て来た母親は、後藤は昨日は帰っていないと言った。
誰かの家に泊まるとは言っていたが、誰の家に泊まるのかは教えてくれなかった、と。
――有り得ないと思った。
後藤の交友関係も、母親より把握していると思う。
そんな保田に、後藤に泊まったりする友達がいるというのは信じがたい。
まして泊まった日というのは、昨日。
あれから市井の家に行ったであろう後藤。
そしてそこではっきりと事実を知った時に頼ってくるのは、自分しかないと思った。
それなのに後藤は来ず、誰かの家に泊まったと言う。
有り得ない、と思った。
市井が信用出来なくなった今、後藤が頼るのは自分しかいないはずだと思っていたし、
ましてや自分を信じられなくなったなんて、考えることもなかったのだ。
予想外の事に、保田は焦った。焦りまくった。
昨日は探さなかったが、今日は違う。
もしかしたら自分の元に来る前に何かあったのかもしれない。
それならば、自分が早く見つけてやらなければならない。
後藤は、きっと、自分を待っているんだ。
親に心配かけずに誰かの家に泊まったと嘘をつき、保田が探してきてくれるのを待っている――。
だったら、早く見つけてやらなければ。
今日のスケジュールくらい、なんとかする。
とにかく今は、一刻も早く後藤を見つけないと。
何処かで独りで蹲ってる後藤を想像すると、保田はいても立ってもいられなくってその場をすぐ後にした。
- 499 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/12/20(土) 21:29
-
――
昨日からずっと電話をかけ続けている。
一度だけ出てくれた時があったけれど、なぜかすぐ切れた。
当然だとは思ってる。
でも市井は、かけることしか出来ない。
いつのまにか携帯の発信履歴は、【後藤真希】の文字で埋め尽くされていた。
あの時、追いかけていれば引き止められたかもしれない。
もしかしたら後藤は、追いかけてきて、そんなの嘘だよという言葉が聞きたかったのかもしれない。
でも、追いかけることなんか出来なかった。
そんなの嘘だよ、と言うことも出来なかった。
だって、全部本当のことじゃないか。
これ以上、どう言えばいいんだ。
これ以上、どう接すればいいんだ。
バレるかもしれない。いつか絶対にバレる。
そう思っていても、実際にバレた時のことなんか考えたことなかった。
一番重要なことを、市井は考えてなかったのだ。
一番重要なこと、それは、バレた時のことじゃない。
バレた時の、後藤の気持ち――。
泣いた。逃げた。
一番泣かせたくない人を泣かせてしまった。
彼女の傍にいたくて、この世界に入ったのに。
彼女がいるから、自分も楽しかったのに。
- 500 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/12/20(土) 21:29
-
「馬鹿だ……馬鹿だよ………」
後悔してももう遅いことなんか、そんなの分かってる。
自分のせいで泣いた彼女に、泣くなよ、なんて言えない。
無邪気に笑っていた彼女の表情を、凍らせてしまった。
たった、1つの嘘のせいで。
他は、何1つ嘘なんかついてはいない。
本当だった、全部。1つの嘘、それ以外は。
――好きなんだ、後藤が。どうしても。
嘘じゃない。本当に嘘じゃない。
信じてほしいけど、信じてはくれないだろうか。
でも、本当に、嘘じゃないんだ。
この気持ちだけは、嘘なんかついたことなかったんだ。
コールをしてみるが、相変わらず反応がない発信先。
そんなこと、わかっていた。
こうしてかけていることで許されるとも思わない。
それでも、何度も何度も、電話をかける。
そうしていると、ノックの音が聞こえた。
ハッとして、立ち上がる市井。
現れたのは、後藤でもなく吉澤だった。
「ははっ…当たり前か……」
「…はい?」
「いや、なんでもない…それより、何?」
「いや、何って」
仕事の時間ですよ、時計を見せられる。
だけどそんなことはもう、どうでもよかった。
- 501 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/12/20(土) 21:30
-
「……もう無理なんだよ、吉澤…」
「はあ? なんですか、寝ぼけてるんですか?」
「もう、男の服着る必要なんかなくなったんだよ……もう、仕事なんかする事なくなったんだよ…」
「え……それって…」
「ああ、そうだよ。――バレたんだよ」
こんなことを喋っている内に、泣きたくなった。
どうしてだろう、後藤が出て行った後から今まで、泣くことはなかったのに。
「バッ、バレたって、やっぱり保田さんに!?」
「…昨日、後藤が来たんだよ。言ったら、泣いてどっか行っちゃった……あはは」
「い、市井さん…………ちくしょう、なんで保田さん言うんだよ、ごっちんに…!」
「なんで? 保田さんは正しいじゃないか。後藤の彼氏は女だったんだよ。言うに決まってんじゃん。
悪いのは、黙ってた自分なんだ…………遅かれ早かれ、こうなったんだよ。
でも、バレてジ・エンドなんてかっこわりー……どうせなら、自分の口から言いたかったよ……」
事実を人の口から聞いた後藤はどうだったんだろう。
男だと思ってた彼氏が女だったら自分だったらどうしただろう。
悪いのは、すべて自分だ。
そして、考えるのは後藤のことばかり。
みじめだった。無様だった。カッコ悪かった。
そんな自分を愛してくれた後藤。
そんな後藤を騙していた自分。
馬鹿だ。馬鹿だ。馬鹿だ。馬鹿だ。馬鹿だ。馬鹿だ。
こんなに好きなのに。こんなに愛してるのに。
結局自分が可愛くて、嘘を守ってしまった。
なのに、バレてしまった今、考えるのは後藤のことばかり。
自分が可愛かった。自分が傷つくのが怖かった。
けど実際は、自分が傷つくよりずっと、後藤がどれだけ傷ついたか考える方が、痛かった。
その痛さの重さを嫌というほど感じてしまった市井は、吉澤の胸で初めて泣いた。
- 502 名前:ダメ経営者 投稿日:2003/12/20(土) 21:30
-
言い訳の余地もありません…・゚・(ノД`)・゚・
マターリすぎて、ごめんなさい…。
しかも更新量がほぼ一定の5レスという短さで申し訳ない・゚・(ノД`)・゚・
再開の時に調子乗りすぎまして、ストックをほぼ放出してしまった本当にダメな奴でございます。
>Gさん
や、矢口好きなんで、やはりどうしても憎めない奴にしてしまうえこひいき作者でつ。
ごちーん…一緒に泣いてくれて有難うございます・゚・(ノД`)・゚・
>ミッチーさん
いやほんと可哀想な事をしてしまいました、後藤さんには。
ほんと、主役に頑張ってもらわないと・゚・(ノД`)・゚・
>488さん
どうも有難うございます(ペコペコ
>489さん
開眼して頂き、光栄でございます(w
更新、大変遅く、申し訳ないです。。。
>490さん
落として頂き、どうもありがとう御座います・゚・(ノД`)・゚・
>492さん
が、頑張ります!
>493さん
そ、そうですよね、あ、あともうひと踏ん張り…
応援、本当に有難う御座います・゚・(ノД`)・゚・
>494さん
保全、ありがとうございます。
放置は…(;^▽^)<説得力ないかもしれないけど、しないよ!
>495さん
(●´ ー `)<ありがとだべさ
>496さん
感謝感激だべさ。
優しい読者達のおかげで、スレも落ちず、ゆっくりとながら進める事が出来ます、ありがとうございます。
- 503 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/21(日) 00:13
- ダメ経営者さん
俺は必ず戻ってきてくれるあんたが大好きだ
- 504 名前:ちゃみ 投稿日:2003/12/21(日) 11:10
- 初レスでやんす。
ここまで来たらやめられるもんですか。
死ぬまで着いて行きます、よろしくね!
- 505 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/22(月) 01:27
- ありがとう
いい話です
- 506 名前:ミッチー 投稿日:2003/12/23(火) 01:11
- 更新お疲れ様デス。。。
いや〜、待ってました!!!
やっぱしこの話いいっスね!!
これからも、頑張って下さいネ!
ずっと応援してマス。。。
- 507 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/23(火) 21:48
- 更新きてた…・゚・(ノД`)・゚・
なんかみんな切ないなぁ。
最期、ハッピーエン(ryだと良いんですが…
次回も期待してますよ♪
- 508 名前:G 投稿日:2003/12/24(水) 17:55
- 更新乙です。
いちーもついに自分から動き出そうとしてくれるのかな??ワクワク
更新の頻度や量なんて気にしないでください。
放置さえ否定してくれればいくらでもマターリと待ってますのでw
- 509 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/16(金) 14:13
- 保全
- 510 名前:ダメ経営者 投稿日:2004/01/23(金) 18:32
- ――CHAPTER84
広い、静かな空間。
後藤はそこに、独りでいた。
何をするでもない。動くこともない。
ボーッと、矢口が貸してくれたベッドの上で、携帯を握り締めているだけ。
後藤が反応する時は、1つだけ。
携帯が着信を知らせた時だけだ。
ボーッと天井を見ていると、携帯が鳴る。
それは、ある人だけに特定された音楽。
「……っ」
着信相手は、もう、誰か分かっていた。
ギュウッと、携帯が潰れるんじゃないかという位、握る。
自分の意志とは反対に、出たがる電話を必死に手で押さえつける。
一番むかついている相手なハズなのに、反応してしまうのが情けない。
メロディが消え、静かになっても後藤は携帯を握る手を緩めなかった。
「……いちーちゃん…」
- 511 名前:ダメ経営者 投稿日:2004/01/23(金) 18:33
- 一番悪いのは、誰だ?
そう言われれば、100人中100人が答えるであろう市井の名前。
後藤だって、それは分かっている。
悪いのは、嘘をついていた市井だ。
後藤は、嘘をつかれていたのだ。ずっと。ずっと。
恋して、キスもして、色んな話をしていた市井は女だったのだ。
怒らないワケがない。傷つかないハズがない。
……なのに。
電話が鳴る度、泣けてくるのはなんでだろう。
目の周りが、こすりすぎて痛い。
鏡なんか見たら絶対にひどい顔になってる。
誰のせいだ。市井のせいだ。
アンタのせいでこんな風になったんだ、そう言ってこのひどい顔を見せてやりたい。
でも、こんなひどい顔見せたくない。
分からない、自分の気持ちが。
どうしたいのか、どうすればいいのか。
いちーちゃんは嘘をついてた。
いちーちゃんは女だった。
「信じられないよ……もう、全ッ然わかんない……」
何度発しただろう、その言葉。
発したことで何も変わらないのだけど、言わずにはいられない。
誰も信じられなくなったし、わかんなくなった。
…なのに、こうして携帯を握り締めている自分が一番分からない。
- 512 名前:ダメ経営者 投稿日:2004/01/23(金) 18:33
- 保田以上に憎んでいるのはもちろんだ。
保田は結局、勝手にきっかけを与えただけで、嘘をついた張本人ではない。
それでも自分のことを何1つ考えずに、市井と別れさせたい、それだけの理由で告げた保田も嫌だ。
だけど後藤が一番憎むべき相手は、嘘をついていた市井。
どうせなら、最後までつきとおしてくれたらよかったんだ。
今言われても、もうどうしようもない。
好きになってから言われても、困る。
「……ハァ」
泣き疲れた。
喉が痛い。
頭もガンガンしている。
泣くとロクなことがない。仕事だって泣いたら影響が……
「仕事ね……」
きっと保田は必死になって探しているだろう。
「…はは……馬鹿みたい…」
想像すると笑えてくる。
……けれど、涙も出て来る。
馬鹿みたいなのに、それを想像すると心が痛んだ。
一度深呼吸をして、心のモヤモヤを追い払う。
すぅっとした感じが後藤の身体の中を駆け巡ったが、それも一瞬。
モヤモヤはまた、後藤の身体を覆ってく。
まだ当分、ベッドから動けないみたいだった。
- 513 名前:ダメ経営者 投稿日:2004/01/23(金) 18:33
- ――
後藤を探して、もうかれこれ6時間程。
スケジュールは、文句を言われながらも今日1日はなんとかなった。
だけど、明日は多分そうはいかない。
どうしても今日中に後藤を見つけなければならない保田は、必死で探していた。
なのに、後藤はいない。
念の為、有り得ないと思いながらも後藤の友達関係もあたってみた。
地元の子、芸能人……等等。
しかしやっぱりどれもハズレ。
もし後藤を家に泊めていることを隠しているとしても、保田にはそれを見抜く自信があった。
なのに、それを持ってしても、該当する人がいない。
言葉は悪いが、何処かでのたれているとしても、そろそろ発見されてもおかしくない頃。
ましてや後藤は、芸能人。
外を歩いていて何処かに身を潜めていても気付かれないワケがない。
海外に飛ぶ行動力もなければ、何処かに旅行する元気もなかったであろう後藤。
都内にいるのは確実なのに、見つからない。
こんな馬鹿な話があってたまるか――保田は思う。
後藤が戻ってくるの先は必ず自分。
なのにどうしてかな。
一向に戻って来ない。あの時車を降りてから、一度も。
ショックが大きすぎて戻ってこれなかったということもある。
それならば、電話をかけてくれても、電話に出てくれてもいいもんじゃないか。
まさか。ありえない。
だけど、それしか考えられなかった。
もしかして、戻ってくるのを拒んでいる――?
- 514 名前:ダメ経営者 投稿日:2004/01/23(金) 18:34
- どうしてだろう。
後藤の為を思って、言ってやったのに。
恨むべき奴は、市井じゃないのか?
どうしてあたしまで。
保田は考える。
自分が男だと偽ってやった奴なんか、殴って叩いてフッてやったらいいのに。
それでも傷が癒えないのならば、絶対になんとかしてやる。
もう2度とあんな奴に騙されないように、守ってやる。
それくらい、後藤が大切だ。
ずっとずっと守ってきた存在で、妹みたいなものだ。
なのにその妹は、そんな姉を頼らず、拒んでいる。
こんな有り得ない話があってたまるか、と思う。
自分を頼らなければ、後藤は誰を頼るんだ?
ある種の嫉妬のような感情が、保田の中に出来る。
だっておかしいじゃないか。
自分は、こんなに後藤のことを想っているのに。
戻って来ないなんて、おかしいじゃないか。
後藤は自分をずっと信頼していると思っていた。
実際信頼していたし、大好きだった。
だけど、今の保田は、後藤が信頼していて大好きだった保田じゃなくなっていたんだ。
知らない内に意識がおかしくなっていたのかもしれない。
後藤の気持ちを真っ先に考えていたつもりなのに、実は考えてなかったなんて気付かなかったんだ。
保田の心は今、迷路の中に入っていた。
- 515 名前:ダメ経営者 投稿日:2004/01/23(金) 18:34
- お、おかしいな…最初は1日1回とかだったのに…
……1ヶ月に1回更新になってしまって、本当にすいません・゚・(ノД`)・゚・
>503さん
・゚・(ノД`)・゚・
遅いおいらを責めないで告白してくれた503さんがおいらも大好きでつ・゚・(ノД`)・゚・
>ちゃみさん
初レスありがとでやんす。
出来れば、死ぬまでに完結したいです、マジで…。
よろしくおねがいします。
>505さん
こちらこそありがとうございます・゚・(ノД`)・゚・
>ミッチーさん
お待たせして申し訳ありません。
もう段々とセリフもなく延々とグダグダしてるわけですが、それでも見てくださると幸せです。
>507さん
最後、ハッピーエン(ryがいいですよね、やっぱり。自分もそれが好きです。
好きなんですが………
>Gさん
いちーさん動いてくれるでしょうか。動いてくれなきゃ困る!ということで。
マターリマターリで、申し訳ないです。
>509さん
ありがとうございます(ペコペコ
- 516 名前:509の者 投稿日:2004/01/23(金) 23:24
- 更新されてるΣ( ゚д゚) 1ヵ月に1回でもイイです!。最後まで付いていきます!。
- 517 名前:ミッチー 投稿日:2004/01/24(土) 00:14
- 更新お疲れ様デス。。。
みんなガンバッテ欲しいっすネ!
作者さんのペースでガンバッテ下サイ。。。
マターリ待ってマス。。。
- 518 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/24(土) 09:08
- 圭ちゃーん
圭ちゃん頑張れ
- 519 名前:G 投稿日:2004/01/28(水) 01:57
- 更新お疲れさまです。
ごちーん…・゚・(ノД`)・゚・。
辛いだろうけど、いちーの切なさにも気付いてあげて!!
うわーん、ごちーん ゜・(ノД`)・゜・。
- 520 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/20(金) 16:18
- 圭ちゃん、はやく迷路から抜け出して!
- 521 名前:名無し。。 投稿日:2004/03/13(土) 20:27
- 待ってますぞ。
- 522 名前:名無し 投稿日:2004/03/22(月) 22:09
- 作者さん頑張ってくださいまし。
お待ちしております。
- 523 名前:あっキー 投稿日:2004/03/29(月) 09:48
- 保全
- 524 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/29(月) 11:24
- ageてはダメです
- 525 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/24(土) 20:44
- 保全
- 526 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/30(金) 00:19
- ほぜん
- 527 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/30(金) 00:27
- >>526
作者さんはひっそりしたいってさ
ひっそり待つ
- 528 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/02(日) 23:29
- ほ
- 529 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/03(月) 02:34
-
- 530 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/22(土) 01:00
- ほ
- 531 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/31(月) 01:15
- スレ違いだけど、本家少女少年が一応完結になったね
- 532 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/13(日) 01:15
- ほ
- 533 名前:名無し読者 投稿日:2004/06/13(日) 02:49
- 晒し上げ?
- 534 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/21(月) 11:03
- 保全
- 535 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/21(月) 12:09
- 保全はいいけど半角小文字で。
- 536 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/01(木) 23:53
- 保
- 537 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/15(木) 20:56
- 保
- 538 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/19(月) 11:53
- ( ´ Д `)
- 539 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/26(月) 11:01
- ほ
- 540 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/05(木) 13:24
- 保全
- 541 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/13(金) 10:43
- ほ
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